「戦争は女の顔をしていない」の版間の差分
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『'''戦争は女の顔をしていない'''』(せんそうはおんなのかおをしていない、[[ロシア語|露]]: {{Lang|ru|У войны не женское лицо}})は、[[1985年]] |
『'''戦争は女の顔をしていない'''』(せんそうはおんなのかおをしていない、[[ロシア語|露]]: {{Lang|ru|У войны не женское лицо}})は、[[1985年]]に出版された[[スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ]]による[[ベラルーシ]]のノンフィクション小説。[[第二次世界大戦]]の[[独ソ戦]]で従軍した女性たちの証言をまとめた作品である<ref name=sankei>{{Cite web|和書|date=2020-05-09|url=https://www.sankei.com/article/20200509-6LA4YVIHCJORRNZTE2ZL7CECEM/|title=【話題の本】『戦争は女の顔をしていない』 埋もれた声が伝える戦争|publisher=産経ニュース|accessdate=2021-01-30}}</ref>。 |
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[[1985年]]に出版されたアレクシエーヴィッチのデビュー作である<ref name=sankei/>。アレクシエーヴィッチは[[雑誌記者]]だった30歳代、1978年から500人を超える女性たちから聞き取り調査を行った。原稿は完成したものの、検閲によって2年間出版を許可されず、[[ペレストロイカ]]後に出版された。ベラルーシの大統領[[アレクサンドル・ルカシェンコ]]は祖国を中傷する著書を外国で出版したと非難し、ベラルーシでは出版禁止になっている<ref>{{Cite web|和書|date=|url=https://www.iwanami.co.jp/book/b256544.html|title=戦争は女の顔をしていない|publisher=岩波書店|accessdate=2021-01-30}}</ref>。アレクシエーヴィチが「ユートピアをめくる記録文学」と呼んでいる5つの作品の第1作にあたる。 |
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== 概要 == |
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[[1985年]]に出版されたアレクシエーヴィッチのデビュー作である<ref name=sankei/>。アレクシエーヴィッチは[[雑誌記者]]だった30歳代、1978年から500人を超える女性たちから聞き取り調査を行った。本は完成したものの、2年間出版を許可されず、[[ペレストロイカ]]後に出版された。[[ベラルーシの大統領]]である[[アレクサンドル・ルカシェンコ]]は祖国を中傷する著書を外国で出版したと非難し、[[ベラルーシ]]では長らく出版禁止になっていた<ref>{{Cite web|和書|date=|url=https://www.iwanami.co.jp/book/b256544.html|title=戦争は女の顔をしていない|publisher=岩波書店|accessdate=2021-01-30}}</ref>。 |
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== 背景 == |
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この書籍は、1980年代の終わりまでに200万部の発行部数を記録した<ref>[http://news.tut.by/culture/467702.html Светлана Алексиевич получила Нобелевскую премию по литературе — первую в истории Беларуси]</ref>。 |
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=== 独ソ戦 === |
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[[ソヴィエト連邦]]の[[ヨシフ・スターリン]]政権は、1937年から1938年にかけて[[内務人民委員部]](NKVD)による[[大粛清]]で約68万人を処刑した{{efn|大粛清の前の1932年から1934年には、[[ソビエト連邦における農業集団化|農業集団化]]や[[クラーク撲滅運動]]が原因でウクライナを中心に約500万人が飢餓で死亡しており、[[ホロドモール]]と呼ばれる{{sfn|スナイダー|2015a|pp=104-105}}{{sfn|スナイダー|2015b|p=242}}。}}{{sfn|スナイダー|2015a|pp=144, 152, 181}}。大粛清では軍の最高幹部や将校も処刑されたためにソ連軍は弱体化し、フィンランドとの[[冬戦争]]でそれが顕著となった{{efn|独ソ戦の前年の1940年時点で、師団長の7割以上、連隊長の約7割、[[政治将校#ソビエト連邦の政治委員・政治将校|政治委員]]や政治部隊長の6割は1年ほどの経験だけで、実戦経験に乏しかった{{sfn|大木|2019|pp=6-7}}。}}{{sfn|松戸|2011|p=71}}{{sfn|大木|2019|pp=5-7}}。 |
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[[ナチス・ドイツ]]は1940年にソ連への侵攻計画の立案を開始し、ドイツ軍は1941年の[[バルバロッサ作戦]]でソ連に侵攻し、独ソ戦が始まった{{sfn|スナイダー|2015a|pp=249-250, 255}}。スターリンは、ドイツの捕虜になった者や生き残った者を裏切り者とみなし、1941年には捕虜は脱走兵にあたるとして家族を逮捕すると発表した{{sfn|スナイダー|2015a|p=279}}{{sfn|アレクシエーヴィチ|2016|p=439}}。捕虜となった者や、ドイツ占領下で対独協力をして反逆罪に問われた者などは[[グラーグ|強制収容所]]へ送られた{{sfn|松戸|2011|p=71}}。 |
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2019年、本作を原案とした[[映画]]『[[戦争と女の顔]]』が[[ロシア]]の[[映画監督]]である{{仮リンク|カンテミール・バラーゴフ|ru|Балагов, Кантемир Артурович}}によって製作され、[[第72回カンヌ国際映画祭]]「[[ある視点]]」部門で監督賞、[[カンヌ国際映画祭 FIPRESCI賞|国際映画批評家連盟賞]]を受賞した<ref>{{Cite web|和書|url=https://eiga.com/news/20220407/8/ |title=「戦争は女の顔をしていない」が原案 カンヌ国際映画祭2冠「戦争と女の顔」7月公開決定 |publisher=[[映画.com]] |date=2022-04-07 |accessdate=2022-09-22}}</ref>。 |
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=== ソ連の女性兵士 === |
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[[File:RIAN archive 58861 Before leaving for the front.jpg|thumb|200px|前線に出発するソ連軍の女性兵士たち]] |
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* [[リシャルト・カプシチンスキ]]賞(2011年)<ref>{{Cite web|title=Nagroda im. Ryszarda Kapuścińskiego|url=http://www.press.pl/imprezy/pokaz/2036,Nagroda-im_-Ryszarda-Kapuscinskiego|publisher=www.press.pl|accessdate=2020-02-02}}</ref> |
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第二次世界大戦時のソ連軍では、80万人から100万人の女性が戦地に行った。女性は徴兵の対象ではなかったため志願による参加であり、医療、看護、調理、洗濯、戦闘などを行なった。正規軍の他に[[赤軍パルチザン|パルチザン]]に参加した女性もいた{{sfn|橋本|2023|p=38}}。ソ連政府は戦闘に参加した女性を称賛し、象徴とされた女性兵士やパルチザンもいた{{efn|狙撃兵の[[リュドミラ・パヴリチェンコ]]は象徴的な存在として宣伝塔になった{{sfn|橋本|2023|pp=38-39}}。パルチザンに参加してドイツ軍に処刑された[[ゾーヤ・コスモデミヤンスカヤ]]は、ソ連で初の女性英雄の称号を与えられ、時代ごとの政治的事情に合わせた像が各地に作られた{{sfn|橋本|2023|pp=41-42}}。}}{{sfn|橋本|2023|pp=41-42}}。 |
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しかし実際に従軍した女性兵士は、性的な偏見を持たれることがあり、セクシャルハラスメントやストーカー行為、パワーハラスメントを受けた。戦場から帰還すると男性は英雄扱いをされる傾向にあったが、他方で女性は性的なことで功績を得たと誤解されないように勲章を隠すこともあった{{sfn|橋本|2023|pp=44-45}}。 |
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== 日本語版 == |
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日本語版は2008年に、三浦みどり訳で[[ロシア文学]]専門の出版社である[[群像社]]で刊行。 |
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=== 証言文学・記録文学 === |
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2015年10月に群像社は、アレクシエーヴィチのノーベル賞受賞を受け、1000冊の増刷を予定していたが<ref>[http://books-ruhe.co.jp/cgi_bin/bbs/shinbunka/read.cgi?no=6656 群像社、『戦争は女の顔をしていない』を1000部重版](2015年10月15日) 出版・書店 業界 NEWS BOOKSルーエ、2020年02月26日閲覧。</ref>、著者の著作権を管理する代理人から権利消失のため出版できないと通知されたことを公式サイトで公表した<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.gunzosha.com/20151021message.html|title=アレクシエーヴィチの本の販売について|publisher=群像社|accessdate=2020-02-26}}</ref><ref>{{Cite web|和書|date=2015-10-23|url=https://www.huffingtonpost.jp/2015/10/21/gunzosha_n_8353632.html|title=【群像社】ノーベル文学賞作家に増刷を断られた中小出版社、健気な声明(全文)|publisher=HUFFPOST|accessdate=2020-02-26}}</ref><ref>{{Cite web|和書|date=2015-12-30|url=https://www.nippon.com/ja/people/e00092/|title=ロシア文学と共に30年—群像社 島田進矢氏に聞く|publisher=公益財団法人ニッポンドットコム|accessdate=2020-02-26}}</ref>。 |
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独ソ戦で最もパルチザンの戦いが激しかったのは[[白ロシア・ソビエト社会主義共和国|ベラルーシ]]だった。森林や沼沢地が多いベラルーシはパルチザンの活動に適しており、ドイツ軍とゲリラ戦を繰り広げた{{sfn|スナイダー|2015b|pp=9, 22}}。ベラルーシの作家{{仮リンク|アレシ・アダモーヴィチ|be|Алесь Адамовіч}}はパルチザン経験があり、『{{仮リンク|私は炎の村から来た|be|Я з вогненнай вёскі…}}』(1975年)や『{{仮リンク|封鎖・飢餓・人間|be|Блакадная кніга}}』(1977年 - 1981年)などで独ソ戦時代の人々の証言を発表した{{efn|アダモーヴィチの小説『ハティニ物語』(1971年)は『[[炎628]]』(1985年)として映画化された{{sfn|越野|2023|p=44}}。}}{{sfn|越野|2023|pp=44-45}}。こうした作品は[[戦争文学]]の他に記録文学や証言文学とも呼ばれる{{efn|ロシア語の記録文学の先駆者としては{{仮リンク|ソフィア・フェドルチェンコ|ru|Федорченко, Софья Захаровна}}の『戦争における人々』(1917年)がある{{sfn|アレクシエーヴィチ他|2021|p=347}}。}}{{sfn|沼野|2021|p=}}{{sfn|越野|2023|pp=44-45}}。複数の証言者の語りを記録・編集する方法について、アダモーヴィチ自身はコーラス文学と呼んでいる{{sfn|越野|2017b|pp=152–153}} |
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=== 政治的背景 === |
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[[岩波書店]]が翻訳権を獲得して2016年に再刊された。 |
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[[ミハイル・ゴルバチョフ]]政権が主導した改革政策の[[ペレストロイカ]]では、情報政策として[[グラスノスチ]](情報公開)も進められた。当初は経済改革を目標としていたが、1986年の[[チェルノブイリ原発事故]]をきっかけとして政治や社会システム、個人の権利の保護などにも及んだ{{sfn|松戸|2011|pp=212-215}}。かつてのスターリン政権時代には不可能だった言論の自由が広まるきっかけとなった{{sfn|沼野|2021|p=345}}。 |
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=== 著者 === |
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[[File:Swetlana Alexijewitsch 2013.jpg|thumb|200px|アレクシエーヴィチ]] |
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アレクシエーヴィチは、ジャーナリストとして[[ミンスク]]の新聞や文芸誌で働いていた1970年代にアダモーヴィチの作品を知った。『私は炎の村から来た』を読んだアレクシエーヴィチは、その作品が自分の道を見つける道標だと思った{{sfn|アレクシエーヴィチ他|2021|p=72, 338}}。さらに戦争の英雄として知られる男性を取材した際は、妻の戦争体験の方に関心を抱いた。こうしてアレクシエーヴィチは女性を対象にした取材を行い、雑誌に掲載された{{sfn|アレクシエーヴィチ他|2021|pp=74-78}}。取材は1978年に始まり、7年間で500人以上の証言を記録した{{sfn|アレクシエーヴィチ|2016|pp=1, 43}}。 |
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== 内容 == |
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本作品はロシア語で執筆されている。ベラルーシでは[[ベラルーシ語]]と[[ロシア語]]が国家語であり、アレクシエーヴィチのような都市部の住民はロシア語の話者が多い{{efn|ベラルーシ語、ロシア語、ウクライナ語は9世紀から15世紀にかけて別の言語に分かれた。国家としてのベラルーシは1922年にソヴィエト連邦の構成国となり、[[ソ連崩壊]]によって独立した。ベラルーシ語は話し言葉、ロシア語は文章で使われる傾向が強かった{{sfn|沼野|2021|pp=349-350}}。}}{{sfn|沼野|2021|p=350}}。 |
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アレクシエーヴィチは、自分が心を動かされるものが「小さき人々」の物語にあると書いている。それは、戦争、国、英雄のものではない物語にあたる{{sfn|アレクシエーヴィチ|2016|p=63}}。英雄や官僚的な偉業はなく、人間らしい仕事をしたか人間らしくない仕事をした人だけがいる。そして人間だけでなく他の生物も苦しんでおり、言葉を発せずに苦しんでいるのでより恐ろしい。そのようにアレクシエーヴィチは表現している{{sfn|アレクシエーヴィチ他|2021|p=317}}。 |
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=== 構成 === |
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証言者の語りが中心となり、聞き手である作者の意見が少ない{{efn|証言とともに自身の分析や意見を書いているアダモーヴィチの作風とは異なる{{sfn|越野|2017a|pp=10-11}}。}}。アレクシエーヴィチは自身の発言を少なくしている理由として、次のように語っている。人は苦しむと気高い声で話すようになる。それは作者には手が届かないような声である。作者は自らの居るべき場所をわきまえ、気高い声のあとで哲学を語る必要はない{{sfn|アレクシエーヴィチ他|2021|p=347}}。 |
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=== 証言 === |
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本作品の始まりとなった取材はミンスクで暮らす元狙撃兵の証言であり、最初の章に置かれた。11回表彰されたというその女性は、戦争について「話したくない」と語っている{{sfn|アレクシエーヴィチ|2016|pp=43-45}}。当初のアレクシエーヴィチは片端から取材をしていたが、証言者が別の取材相手を紹介してくれるようになり、連絡先が増えて戦友会のような集まりにも招かれた{{sfn|アレクシエーヴィチ|2016|p=130}}。アレクシエーヴィチはソ連の各地で取材を行い、{{仮リンク|アプシェロンスク|ru|Апшеронск}}、[[ヴィテプスク]]、[[ヴォルゴグラード]]、[[ガーリチ]]、[[キーウ]]、[[スーズダリ]]、[[スモレンスク]]、[[モスクワ]]、{{仮リンク|ヤルトロフスク|ru|Ялуторовск}}など多数に及んだ。[[赤の広場]]やモスクワ・ホテルで行われる退役軍人の集まりにも招待された{{sfn|アレクシエーヴィチ|2016|pp=43-45}}。 |
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アレクシエーヴィチは女性たちが志願した理由について知りたいと思い、その証言がまとめられている{{sfn|アレクシエーヴィチ|2016|pp=62-63}}。女性が受けた性差別として、徴兵で断られたり士官として認められなかった体験、周囲のセクシャルハラスメントを避けるために上官と交際した体験などが語られている。性差別や偏見は、帰還兵となったのちに同性からも受け続けた{{sfn|アレクシエーヴィチ|2016|pp=71, 327-328, 367}}{{sfn|安元|2016|pp=38-39}}。戦争が終わった後も地雷処理で働いた工兵や、故郷で差別されて結婚できなかった帰還兵がいた{{sfn|アレクシエーヴィチ|2016|p=35, 332, 351, 367}}。 |
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戦場で女性的な日常は禁じられていて不可能だとアレクシエーヴィチは考えていたが、証言者たちは美しさについても語った{{sfn|アレクシエーヴィチ|2016|pp=283-284}}。戦場でイヤリングを隠し持っていたことや、身体に障害が残れば女性として終わりだと恐れていた話、最も恐ろしかったのは男性用の下着を履いていたことだった話などが収録されている{{sfn|アレクシエーヴィチ|2016|pp=61-62, 124, 285-286}}。戦場での恋愛として、包帯のガーゼでウエディングドレスを縫った話や、前線で夫を亡くした話もある。他方、戦後になると男性が去ってしまう場合があった{{sfn|アレクシエーヴィチ|2016|pp=349, 352}}。 |
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正規軍の兵士だけでなく[[赤軍パルチザン|パルチザン]]の証言もあり、アレクシエーヴィチは「家族を犠牲にするかもしれない場所で戦うことの恐ろしさ」と書いている{{sfn|アレクシエーヴィチ|2016|pp=370-372}}。パルチザンの目撃談として、子供を射殺されて発狂した母親、包囲されて子供を犠牲にせざるを得なかった母親、[[ヒヴィ|ドイツ軍に協力したソ連人]]、またパルチザン自身が捕えられて拷問を受けた体験などが収録されている{{sfn|アレクシエーヴィチ|2016|pp=34, 383, 406-407, 426-427}}。味方のパルチザンに食料を奪われた被害者側としての証言もある{{sfn|アレクシエーヴィチ|2016|pp=34, 383, 406-407}}。 |
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捕虜になったことのある者やドイツの収容所生活を体験した者は、スターリン政権によって流刑地へ送られており、その目撃談もある{{sfn|アレクシエーヴィチ|2016|p=39}}。捕虜から生還した家族が、裏切り者として内務人民委員部の暴力的な取り調べを受けて障害者にされたこともあった{{sfn|アレクシエーヴィチ|2016|pp=430-431}}。スターリン政権やソ連軍に対する批判として、戦前の[[大粛清]]による収容所や流刑、[[ソビエト連邦における農業集団化|農業集団化]]による国力や軍の弱体化が犠牲を大きくしたと元兵士たちによって語られている{{sfn|アレクシエーヴィチ|2016|pp=135-136}}{{sfn|安元|2016|p=40}}。検閲官が特に不快感を示したエピソードとして、兵士が月経のための装備を支給されなかったため川で身体を洗おうとして爆撃された話や、前線に行く兵士が給料の全額で菓子を購入した話などがある{{efn|アレクシエーヴィチは、菓子のエピソードを聞いた時に証言者と笑い合ったと回想している{{sfn|アレクシエーヴィチ他|2021|p=314}}。}}{{sfn|アレクシエーヴィチ他|2021|p=314}}。ソ連軍兵士によるドイツ市民への[[戦時性暴力]]の証言もあり、2002年版では男性の元兵士による性暴力の証言も加筆された{{efn|ソ連軍兵士はドイツへの進軍で性暴力を行った。ドイツ軍は、ソ連軍よりもイギリス軍やアメリカ軍に降伏したいと考えて西へ移動したため、ドイツでは民間人が取り残された。ソ連軍兵士はのちに[[東側諸国]]で同盟国となるポーランド、ハンガリー、ユーゴスラヴィアでも性暴力を行い、スターリンはこれを黙認した{{sfn|スナイダー|2015b|pp=143-147}}。}}{{sfn|アレクシエーヴィチ|2016|pp=448-449}}。 |
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アレクシエーヴィチは戦場の実態とともに、敵味方を超えた人間関係についての証言も選んだ。入院したソ連軍とドイツ軍の兵士が相手の容態を心配する光景、捕虜にパンを与えたときに「憎むことができないということが嬉しかった」と思った体験、前線で敵軍の負傷兵を治療した兵士、ドイツを容赦しないと思いつつも、ドイツの子供を見捨てることができず配給を与えた話などが記録されている。アレクシエーヴィチは本作品の各所で戸惑いを表明しながら、「道はただ一つ。人間を愛すること。愛をもって理解しようとすること」と書いている{{sfn|アレクシエーヴィチ|2016|pp=207, 442-443}}{{sfn|安元|2016|pp=39-40}}。 |
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== 評価、影響 == |
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本作が雑誌掲載された際に、アダモーヴィチは次のように賛辞をした。「本ができるには登場人物たちの娘にあたるほどの年若い作家の誠実な努力があった。五百人を越える一人一人の聞き書きというこのスヴェトラーナの書き方は妥協を許さないものだが、他人の痛みに対して人間の心を塞いでいる邪魔な物を突き破るにはこれが必要だった」。しかしアダモーヴィチの後押しにもかかわらず、問題作と見なされて単行本の出版は差し止められた{{sfn|アレクシエーヴィチ|2016|pp=483-484}}{{sfn|アレクシエーヴィチ他|2021|pp=77-78}}。検閲官の発言として、本作品はソ連軍の兵士に対する中傷であること、小さな物語は必要ではなく勝利のような大きな物語が必要であること、などをアレクシエーヴィチは記憶している{{sfn|アレクシエーヴィチ|2016|p=32}}。 |
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ペレストロイカの影響で単行本が出版されるとベストセラーとなり、1980年代の終わりまでに200万部の発行部数を記録した。2004年の最終稿では、ペレストロイカ直後には語れなかったことが加筆された{{sfn|アレクシエーヴィチ|2016|p=485}}。 |
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[[ベラルーシの大統領]]の[[アレクサンドル・ルカシェンコ]]は、アレクシエーヴィチが外国で著書を出版し、祖国を中傷して金をもらっていると非難し、ベラルーシでの出版を禁止した{{sfn|アレクシエーヴィチ|2016|p=486}}。他方、ロシアでは1997年の2巻本、2004年の普及版、2007年の選集などで出版された{{sfn|アレクシエーヴィチ|2016|p=487}}。日本語版は2008年に、三浦みどり訳で[[ロシア文学]]専門の出版社である[[群像社]]で刊行された。2015年10月に群像社は、アレクシエーヴィチのノーベル賞受賞を受け、1000冊の増刷を予定していたが<ref>[http://books-ruhe.co.jp/cgi_bin/bbs/shinbunka/read.cgi?no=6656 群像社、『戦争は女の顔をしていない』を1000部重版](2015年10月15日) 出版・書店 業界 NEWS BOOKSルーエ、2020年02月26日閲覧。</ref>、著者の著作権を管理する代理人から権利消失のため出版できないと通知されたことを公式サイトで公表した<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.gunzosha.com/20151021message.html|title=アレクシエーヴィチの本の販売について|publisher=群像社|accessdate=2020-02-26}}</ref><ref>{{Cite web|和書|date=2015-10-23|url=https://www.huffingtonpost.jp/2015/10/21/gunzosha_n_8353632.html|title=【群像社】ノーベル文学賞作家に増刷を断られた中小出版社、健気な声明(全文)|publisher=HUFFPOST|accessdate=2020-02-26}}</ref><ref>{{Cite web|和書|date=2015-12-30|url=https://www.nippon.com/ja/people/e00092/|title=ロシア文学と共に30年—群像社 島田進矢氏に聞く|publisher=公益財団法人ニッポンドットコム|accessdate=2020-02-26}}</ref>。のちに岩波書店が翻訳権を獲得して2016年に再刊された[https://www.iwanami.co.jp/book/b256544.html]。 |
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アレクシエーヴィチは[[2015年]]に[[ノーベル文学賞]]を受賞した。スウェーデン・アカデミーは「私たちの時代の苦悩と勇気への記念碑」「素材だけでなく形式においても新しい文学ジャンルの成果」と評価した{{sfn|沼野|2021|pp=}}。アレクシエーヴィチは本作品をきっかけとして同様の手法で執筆を続けており、さまざまな関連作品も作られている([[#関連作品|後述]])。 |
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== 書誌情報 == |
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* 『戦争は女の顔をしていない』 群像社(2008年7月){{ISBN2|978-4-903619-10-1}} |
* 『戦争は女の顔をしていない』 群像社(2008年7月){{ISBN2|978-4-903619-10-1}} |
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* 『戦争は女の顔をしていない』 |
* 『戦争は女の顔をしていない』 岩波現代文庫(2016年2月){{ISBN2|978-4-00-603295-1}} |
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== 関連作品 == |
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=== ユートピアをめぐる記録文学 === |
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2019年4月27日からウェブコミック配信サイト[[ComicWalker]]([[KADOKAWA]])で漫画の連載が始まり、2020年1月27日に同社よりコミックス第1巻が発売されている。[[小梅けいと]]が作画を担当し、[[速水螺旋人]]が監修をしている<ref>{{Cite web|和書|url=https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_AM00000019010000_68/|title=戦争は女の顔をしていない|website=ComicWalker|accessdate=2019-05-01}}</ref>。単行本第1巻の帯には、富野由悠季が推薦文を寄稿{{R|natalie20200127}}。2023年4月時点で累計70万部を突破している<ref>{{Cite journal|和書|date = 2023-04-26|title=戦争は女の顔をしていない 4 4月27日(木)発売|journal =電撃マオウ|volume=2023年6月号|publisher = KADOKAWA|page=337|asin = B0C1ZC9F75}}</ref>。 |
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アレクシエーヴィチは取材をするなかで、戦時中に子供だった人々の体験にも注目した。このテーマはのちに『{{仮リンク|最後の証人たち|ru|Последние свидетели}}』(邦題『ボタン穴から見た戦争』)として出版された{{sfn|アレクシエーヴィチ他|2021|p=78}}。アレクシエーヴィチは本作品を含む5作品を「ユートピアをめくる記録文学」と呼び、他に『最後の証人たち』(1985年)、『{{仮リンク|亜鉛の少年たち|ru|Цинковые мальчики}}』(1991年)、『[[チェルノブイリの祈り]]』(1997年)、『セカンドハンドの時代』(2013年)が含まれる。アレクシエーヴィチは、自分よりも前の世代を「共産主義に染まった最後の世代」や「ユートピアに魅せられた世代」と呼んでいる。そしてユートピアをめぐる5作品を100年間にわたるロシア・ソ連の精神史としている{{sfn|越野|2017b|pp=154-155}}{{sfn|アレクシエーヴィチ他|2021|pp=309-310}}。 |
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=== 戯曲 === |
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2021年7月、第50回[[日本漫画家協会賞]]が発表され、まんが王国とっとり賞に本作が選出されている<ref>{{Cite news|url=https://natalie.mu/comic/news/438319|title=日本漫画家協会賞、今年の大賞は「鬼滅の刃」「NEW NORMAL!」|newspaper=コミックナタリー|publisher=ナターシャ|date=2021-07-26|accessdate=2022-03-31}}</ref>。2023年5月1日から5月7日まで、単行本第4巻の発売を記念し、[[京浜東北線]]と[[根岸線]]にて貸し切りの中吊り広告を展開<ref>{{Cite news|url=https://natalie.mu/comic/news/522901|title=「戦争は女の顔をしていない」戦争の二面性を表す黒と白の電車中吊り広告を展開|newspaper=コミックナタリー|publisher=ナターシャ|date=2023-05-01|accessdate=2023-05-01}}</ref>。 |
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[[File:Omsk Drama Theatre.jpg|thumb|200px|本作品が初めて戯曲化されたオムスク・ドラマ劇場]] |
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本作品は1985年から戯曲化されており、初演はシベリアの[[オムスク]]にある{{仮リンク|オムスク・ドラマ劇場|ru|Театральное искусство в Омске}}だった。ロシア各地や国外で巡業を重ねて、公演回数は2021年時点で100回以上となる。上演時間は2時間半におよび、役作りのために[[キーウ]]に住む元女性兵士に会いに行ったという俳優もいる{{efn|オムスクは演劇が盛んな都市で、伝統的なロシア演劇であるゴーゴリ、ドストエフスキー、チェーホフなどの作品の他に安部公房や三谷幸喜などの作品も上演している{{sfn|アレクシエーヴィチ他|2021|p=49}}。}}{{sfn|アレクシエーヴィチ他|2021|pp=49-50}}。ペレストロイカの時期に40の劇場で上演されると好意的な書評が増え、アレクシエーヴィチに連絡をして証言をする人々も増えた{{sfn|沼野|2021|pp=344-345}}。 |
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=== 映画 === |
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* スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ(原作)・小梅けいと(作画)・速水螺旋人(監修)『戦争は女の顔をしていない』KADOKAWA、既刊4巻(2023年4月27日現在) |
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2019年、本作を原案とした映画『[[戦争と女の顔]]』がロシアの映画監督である{{仮リンク|カンテミール・バラーゴフ|ru|Балагов, Кантемир Артурович}}によって製作され、[[第72回カンヌ国際映画祭]]「[[ある視点]]」部門で監督賞、[[カンヌ国際映画祭 FIPRESCI賞|国際映画批評家連盟賞]]を受賞した<ref>{{Cite web|和書|url=https://eiga.com/news/20220407/8/ |title=「戦争は女の顔をしていない」が原案 カンヌ国際映画祭2冠「戦争と女の顔」7月公開決定 |publisher=[[映画.com]] |date=2022-04-07 |accessdate=2022-09-22}}</ref>。 |
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*# 2020年1月27日発売<ref name="natalie20200127">{{Cite news|url=https://natalie.mu/comic/news/364765|title=「戦争は女の顔をしていない」小梅けいとによるコミカライズ版1巻が発売|newspaper=コミックナタリー|publisher=ナターシャ|date=2020-01-27|accessdate=2022-03-31}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.kadokawa.co.jp/product/321909000511/|title=戦争は女の顔をしていない 1|publisher=KADOKAWA|accessdate=2020-02-26}}</ref>、{{ISBN2|978-4-04-912982-3}} |
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*# 2020年12月26日発売{{R|pv2}}<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.kadokawa.co.jp/product/322009000048/|title=戦争は女の顔をしていない 2|publisher=KADOKAWA|accessdate=2020-12-31}}</ref>、{{ISBN2|978-4-04-913595-4}} |
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*# 2022年3月26日発売<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.kadokawa.co.jp/product/322108000701/|title=戦争は女の顔をしていない 3|publisher=KADOKAWA|accessdate=2022-03-31}}</ref>、{{ISBN2|978-4-04-914125-2}} |
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*# 2023年4月27日発売<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.kadokawa.co.jp/product/322212000763/|title=戦争は女の顔をしていない 4|publisher=KADOKAWA|accessdate=2023-04-27}}</ref>、{{ISBN2|978-4-04-914995-1}} |
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=== |
=== 漫画 === |
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2019年4月27日からウェブコミック配信サイト[[ComicWalker]](KADOKAWA)で漫画の連載が始まり、2020年1月27日に同社よりコミックス第1巻が発売された。[[小梅けいと]]が作画を担当し、[[速水螺旋人]]が監修をしている{{efn|単行本第1巻の帯には、富野由悠季が推薦文を寄稿{{R|natalie20200127}}。}}<ref>{{Cite web|和書|url=https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_AM00000019010000_68/|title=戦争は女の顔をしていない|website=ComicWalker|accessdate=2019-05-01}}</ref>。2021年7月、第50回[[日本漫画家協会賞]]が発表され、まんが王国とっとり賞に本作が選出されている{{efn|2023年5月1日から5月7日まで、単行本第4巻の発売を記念し、[[京浜東北線]]と[[根岸線]]にて貸し切りの中吊り広告が展開された<ref>{{Cite news|url=https://natalie.mu/comic/news/522901|title=「戦争は女の顔をしていない」戦争の二面性を表す黒と白の電車中吊り広告を展開|newspaper=コミックナタリー|publisher=ナターシャ|date=2023-05-01|accessdate=2023-05-01}}</ref>。}}<ref>{{Cite news|url=https://natalie.mu/comic/news/438319|title=日本漫画家協会賞、今年の大賞は「鬼滅の刃」「NEW NORMAL!」|newspaper=コミックナタリー|publisher=ナターシャ|date=2021-07-26|accessdate=2022-03-31}}</ref>。2023年4月時点で累計70万部を突破している<ref>{{Cite journal|和書|date = 2023-04-26|title=戦争は女の顔をしていない 4 4月27日(木)発売|journal =電撃マオウ|volume=2023年6月号|publisher = KADOKAWA|page=337|asin = B0C1ZC9F75}}</ref>。コミックス発売に合わせて漫画のコマを利用したプロモーションビデオがYouTubeで公開された<ref name="pv1">{{Cite web|和書|date=2020-01-26|url=https://www.youtube.com/watch?v=vJt1aRQsshI|title=『戦争は女の顔をしていない』試し読みPV(CV:日笠陽子ほか)|work=YouTube KADOKAWAオフィシャルチャンネル|accessdate=2021-01-30}}</ref>。PVには、軍医・ブレウス大尉のエピソード(漫画第2話)<ref>{{Cite web|和書|date=2020-02-03|url=https://eiga.com/news/20200203/2/|title=ノーベル文学賞作家の「戦争は女の顔をしていない」コミカライズ第1巻発売 試し読みPVには日笠陽子出演|website=映画.com|accessdate=2021-01-30}}</ref>や書記・ヴィレンスカヤ軍曹、ソ連初の女性機関士・アレストワ機関士、射撃手・アフメートワ二等兵のエピソード(漫画第7話)<ref name="pv2">{{Cite web|和書|url=https://natalie.mu/comic/news/410242|title=「戦争は女の顔をしていない」を田中敦子、高山みなみ、水田わさびらが朗読|work=コミックナタリー|date=2020-12-25|accessdate=2021-01-22}}</ref>が使われている{{efn|主なキャストは、ブレウス大尉/ナレーション:[[日笠陽子]]{{R|pv1}}、ヴィレンスカヤ軍曹/ナレーション:[[田中敦子 (声優)|田中敦子]]{{R|pv2}}、 |
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コミックス発売に合わせて、漫画のコマを利用したプロモーションビデオが作られ、[[YouTube]]で公開されている<ref name="pv1">{{Cite web|和書|date=2020-01-26|url=https://www.youtube.com/watch?v=vJt1aRQsshI|title=『戦争は女の顔をしていない』試し読みPV(CV:日笠陽子ほか)|work=YouTube KADOKAWAオフィシャルチャンネル|accessdate=2021-01-30}}</ref>。 |
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アレストワ機関士:[[高山みなみ]]{{R|pv2}}、アフメートワ二等兵:[[水田わさび]]{{R|pv2}}}}。 |
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* スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ(原作)・小梅けいと(作画)・速水螺旋人(監修)『戦争は女の顔をしていない』KADOKAWA、既刊4巻{{efn|1巻 2020年1月27日発売<ref name="natalie20200127">{{Cite news|url=https://natalie.mu/comic/news/364765|title=「戦争は女の顔をしていない」小梅けいとによるコミカライズ版1巻が発売|newspaper=コミックナタリー|publisher=ナターシャ|date=2020-01-27|accessdate=2022-03-31}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.kadokawa.co.jp/product/321909000511/|title=戦争は女の顔をしていない 1|publisher=KADOKAWA|accessdate=2020-02-26}}</ref>、{{ISBN2|978-4-04-912982-3}}、2巻 2020年12月26日発売{{R|pv2}}<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.kadokawa.co.jp/product/322009000048/|title=戦争は女の顔をしていない 2|publisher=KADOKAWA|accessdate=2020-12-31}}</ref>、{{ISBN2|978-4-04-913595-4}}、3巻 2022年3月26日発売<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.kadokawa.co.jp/product/322108000701/|title=戦争は女の顔をしていない 3|publisher=KADOKAWA|accessdate=2022-03-31}}</ref>、{{ISBN2|978-4-04-914125-2}}、4巻 2023年4月27日発売<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.kadokawa.co.jp/product/322212000763/|title=戦争は女の顔をしていない 4|publisher=KADOKAWA|accessdate=2023-04-27}}</ref>、{{ISBN2|978-4-04-914995-1}}}}(2023年4月27日現在) |
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PVには、軍医・ブレウス大尉のエピソード(漫画第2話)<ref>{{Cite web|和書|date=2020-02-03|url=https://eiga.com/news/20200203/2/|title=ノーベル文学賞作家の「戦争は女の顔をしていない」コミカライズ第1巻発売 試し読みPVには日笠陽子出演|website=映画.com|accessdate=2021-01-30}}</ref>や書記・ヴィレンスカヤ軍曹、ソ連初の女性機関士・アレストワ機関士、射撃手・アフメートワ二等兵のエピソード(漫画第7話)<ref name="pv2">{{Cite web|和書|url=https://natalie.mu/comic/news/410242|title=「戦争は女の顔をしていない」を田中敦子、高山みなみ、水田わさびらが朗読|work=コミックナタリー|date=2020-12-25|accessdate=2021-01-22}}</ref>が使われている。 |
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== 受賞 == |
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* [[リシャルト・カプシチンスキ]]賞(2011年)<ref>{{Cite web|title=Nagroda im. Ryszarda Kapuścińskiego|url=http://www.press.pl/imprezy/pokaz/2036,Nagroda-im_-Ryszarda-Kapuscinskiego|publisher=www.press.pl|accessdate=2020-02-02}}</ref> |
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== 脚注 == |
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{{脚注ヘルプ}} |
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=== 注釈 === |
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{{Notelist|2|}} |
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=== 出典 === |
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{{Reflist|20em}} |
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== 参考文献 == |
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* {{Citation| 和書 |
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| author = スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ |
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| title = 戦争は女の顔をしていない |
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| editor = 三浦みどり |
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| publisher = 岩波書店 |
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| series = 岩波現代文庫 |
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| year = 2016 |
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| ref = {{sfnref|アレクシエーヴィチ|2016}} |
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}} |
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* {{Citation| 和書 |
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| author = スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ, 鎌倉英也, [[徐京植]], [[沼野恭子]] |
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| title = アレクシエーヴィチとの対話 「小さき人々」の声を求めて |
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| editor = |
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| publisher = 岩波書店 |
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| year = 2021 |
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| isbn = |
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| ref = {{sfnref|アレクシエーヴィチ他|2021}} |
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}} |
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** {{Cite book|和書|author=沼野恭子|title=ユートピアの声――アレクシエーヴィチの文学|ref={{SfnRef|沼野|2021}}}} |
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* {{Cite journal|和書|author=越野剛 |title=スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ作品の形式的側面について |url=https://doi.org/10.15026/93175 |journal=国際シンポジウム「文化の汽水域 : 東スラヴ世界の文化的諸相をめぐって」報告集 |publisher=東京外国語大学 沼野恭子研究室 |year=2017 |month=dec |volume= |issue= |pages=5-13 |naid= |issn= |accessdate=2024-04-03 |ref={{sfnref|越野|2017a}}}} |
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* {{Citation| 和書 |
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| author = [[大木毅]] |
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| title = 独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 |
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| publisher = 岩波書店 |
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| series = 岩波新書 |
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| year = 2019 |
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| isbn = |
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| ref = {{sfnref|大木|2019}} |
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}} |
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* {{Cite journal|和書|author=越野剛 |title=アレシ・アダモーヴィチとドストエフスキー : 独ソ戦争と古典文学の対話 |url=https://digital-archives.sophia.ac.jp/repository/view/repository/20230316003 |journal=上智ヨーロッパ研究 |publisher=東京 : 上智大学 |year=2023 |month=mar |volume= |issue=14 |pages=43-57 |naid= |issn=18835635 |accessdate=2024-04-03 |ref={{sfnref|越野|2023}}}} |
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* {{Citation| 和書 |
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| author = [[ティモシー・スナイダー]] |
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| title ={{仮リンク|ブラッドランド ヒトラーとスターリン 大虐殺の真実|en|Bloodlands}}(上) |
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| publisher = 筑摩書房 |
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| year = 2015 |
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| isbn = |
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| ref = {{sfnref|スナイダー|2015a}} |
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}}(原書 {{Cite| 洋書 |
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| last = Snyder |
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| first = Timothy |
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| authorlink = |
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| year = 2010 |
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| title = Bloodlands |
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| isbn = |
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}}) |
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* {{Citation| 和書 |
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| author = ティモシー・スナイダー |
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| title =ブラッドランド ヒトラーとスターリン 大虐殺の真実(下) |
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| publisher = 筑摩書房 |
|||
| series = |
|||
| year = 2015 |
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| isbn = |
|||
| ref = {{sfnref|スナイダー|2015b}} |
|||
}}(原書 {{Cite| 洋書 |
|||
| last = Snyder |
|||
| first = Timothy |
|||
| authorlink = |
|||
| year = 2010 |
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| title = Bloodlands |
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| publisher = |
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| isbn = |
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}}) |
|||
* {{Cite journal|和書|author=橋本信子 |title=女性兵士をめぐるイメージと実態 : ソ連、ロシア、ウクライナを事例に |url=http://hdl.handle.net/10466/0002000264 |journal=女性学講演会 |publisher=大阪公立大学女性学研究センター |year=2023 |month=mar |volume=26 |issue= |pages=37-54 |naid= |issn=18821162 |accessdate=2024-04-03 |ref={{sfnref|橋本|2023}}}} |
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* {{Citation| 和書 |
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| author = |
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| title = ベラルーシを知るための50章 |
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| editor = [[服部倫卓]], 越野剛 |
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| publisher = 明石書店 |
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| series = エリア・スタディーズ |
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| year = 2017 |
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| ref = {{sfnref|服部, 越野編著|2017}} |
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}} |
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** {{Cite book|和書|author=越野剛|title=ノーベル賞作家アレクシエーヴィチの文学の世界――戦争・原発事故・社会主義|ref={{SfnRef|越野|2017b}}}} |
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* {{Citation| 和書 |
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| author = [[松戸清裕]] |
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| title = ソ連史 |
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| publisher = 筑摩書房 |
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| series = ちくま新書 |
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| year = 2011 |
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| isbn = |
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| ref = {{sfnref|松戸|2011}} |
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}} |
|||
* {{Cite journal|和書|author=安元隆子 |title=スベトラーナ・アレクシエービッチ『戦争は女の顔をしていない』論 |url= https://www.ir.nihon-u.ac.jp/pdf/research/publication/02_37-1_04.pdf |journal=国際関係研究 |publisher=日本大学国際関係学部国際関係研究所 |year=2016 |month=oct |volume=37 |issue=1 |pages=35-44 |naid= |issn=13457861 |accessdate=2024-04-03 |ref={{sfnref|安元|2016}}}} |
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== 関連文献 == |
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; 主なキャスト |
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* {{Citation| 和書 |
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: ブレウス大尉/ナレーション:[[日笠陽子]]{{R|pv1}} |
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| author = アレーシ・アダーモビチ, {{仮リンク|ダニール・グラーニン|ru|Гранин, Даниил Александрович}} |
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: ヴィレンスカヤ軍曹/ナレーション:[[田中敦子 (声優)|田中敦子]]{{R|pv2}} |
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| authorlink = |
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: アレストワ機関士:[[高山みなみ]]{{R|pv2}} |
|||
| title = 封鎖・飢餓・人間 ドキュメント 1941-1944年のレニングラード(上・下) |
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: アフメートワ二等兵:[[水田わさび]]{{R|pv2}} |
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| publisher = 新時代社 |
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| series = |
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| translator = 宮下トモ子 |
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| year = 1986 |
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| isbn = |
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| ref = {{sfnref|アダーモビチ, グラーニン|1986}} |
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}}(原書 {{Cite| 洋書 |
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| last1 = Адамовіч |
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| first1 = Алесь |
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| last2 = Гранин |
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| first2 = Даниил Александрович |
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| authorlink = |
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| year = 1977-1981 |
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| title = Блокадная книга |
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| publisher = |
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| isbn = |
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}}) |
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* {{Citation| 和書 |
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| author = ロジャー・D・マークウィック, ユーリディス・シャロン・カルドナ |
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| authorlink = |
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| title = 女たちの独ソ戦: 彼女たちはなぜ戦場へ行ったか |
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| publisher = 垣内出版 |
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| series = |
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| translator = 五十嵐徳子, 河本和子, 藤原克美 |
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| year = 2023 |
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| isbn = |
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| ref = {{sfnref|マークウィック, カルドナ|2023}} |
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}}(原書 {{Cite| 洋書 |
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| last1 = Markwick |
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| first1 = Roger |
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| last2 = Cardona |
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| first2 = Euridice Charon |
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| authorlink = |
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| year = 2012 |
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| title = Soviet Women on the Frontline in the Second World War |
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| publisher = |
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| isbn = |
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}}) |
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* {{Citation| 和書 |
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| author = {{仮リンク|レギーナ・ミュールホイザー|de|Regina Mühlhäuser}} |
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| title = 戦場の性 独ソ戦下のドイツ兵と女性たち |
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| publisher = 岩波書店 |
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| series = |
|||
| translator = 姫岡とし子 |
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| year = 2015 |
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| isbn = |
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| ref = {{sfnref|ミュールホイザー|2015}} |
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}}(原書 {{Cite| 洋書 |
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| last = Mühlhäuser |
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| first = Regina |
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| authorlink = |
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| year = 2010 |
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| title = Eroberungen: Sexuelle Gewalttaten und intime Beziehungen deutscher Soldaten in der Sowjetunion, 1941 – 1945 |
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| publisher = |
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| isbn = |
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}}) |
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== 関連項目 == |
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* {{仮リンク|ソ連における検閲|ru|Цензура в СССР}} |
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{{Reflist}} |
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* {{仮リンク|第二次世界大戦におけるソ連の女性|en|Soviet women in World War II}} |
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== 外部リンク == |
== 外部リンク == |
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62行目: | 258行目: | ||
{{DEFAULTSORT:せんそうはおんなのかおをしていない}} |
{{DEFAULTSORT:せんそうはおんなのかおをしていない}} |
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[[Category:ノンフィクション書籍]] |
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[[Category:1985年の書籍]] |
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||
[[Category:独ソ戦]] |
[[Category:独ソ戦]] |
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70行目: | 266行目: | ||
[[Category:漫画作品 せ|んそうはおんなのかおをしていない]] |
[[Category:漫画作品 せ|んそうはおんなのかおをしていない]] |
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[[Category:2019年の漫画]] |
[[Category:2019年の漫画]] |
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[[Category: |
[[Category:カドコミ]] |
||
[[Category:戦争漫画]] |
2024年5月21日 (火) 12:28時点における版
戦争は女の顔をしていない У войны не женское лицо | ||
---|---|---|
著者 | スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ | |
発行日 | 1985年 | |
発行元 | Mastatskaya Litaratura | |
ジャンル | 第二次世界大戦におけるソビエト連邦の女性 | |
国 | 白ロシア・ソビエト社会主義共和国 | |
言語 | ロシア語 | |
形態 | 文学作品 | |
ページ数 | 320 | |
次作 | The Last Witnesses | |
|
『戦争は女の顔をしていない』(せんそうはおんなのかおをしていない、露: У войны не женское лицо)は、1985年に出版されたスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチによるベラルーシのノンフィクション小説。第二次世界大戦の独ソ戦で従軍した女性たちの証言をまとめた作品である[1]。
1985年に出版されたアレクシエーヴィッチのデビュー作である[1]。アレクシエーヴィッチは雑誌記者だった30歳代、1978年から500人を超える女性たちから聞き取り調査を行った。原稿は完成したものの、検閲によって2年間出版を許可されず、ペレストロイカ後に出版された。ベラルーシの大統領アレクサンドル・ルカシェンコは祖国を中傷する著書を外国で出版したと非難し、ベラルーシでは出版禁止になっている[2]。アレクシエーヴィチが「ユートピアをめくる記録文学」と呼んでいる5つの作品の第1作にあたる。
背景
独ソ戦
ソヴィエト連邦のヨシフ・スターリン政権は、1937年から1938年にかけて内務人民委員部(NKVD)による大粛清で約68万人を処刑した[注釈 1][5]。大粛清では軍の最高幹部や将校も処刑されたためにソ連軍は弱体化し、フィンランドとの冬戦争でそれが顕著となった[注釈 2][7][8]。
ナチス・ドイツは1940年にソ連への侵攻計画の立案を開始し、ドイツ軍は1941年のバルバロッサ作戦でソ連に侵攻し、独ソ戦が始まった[9]。スターリンは、ドイツの捕虜になった者や生き残った者を裏切り者とみなし、1941年には捕虜は脱走兵にあたるとして家族を逮捕すると発表した[10][11]。捕虜となった者や、ドイツ占領下で対独協力をして反逆罪に問われた者などは強制収容所へ送られた[7]。
ソ連の女性兵士
第二次世界大戦時のソ連軍では、80万人から100万人の女性が戦地に行った。女性は徴兵の対象ではなかったため志願による参加であり、医療、看護、調理、洗濯、戦闘などを行なった。正規軍の他にパルチザンに参加した女性もいた[12]。ソ連政府は戦闘に参加した女性を称賛し、象徴とされた女性兵士やパルチザンもいた[注釈 3][14]。
しかし実際に従軍した女性兵士は、性的な偏見を持たれることがあり、セクシャルハラスメントやストーカー行為、パワーハラスメントを受けた。戦場から帰還すると男性は英雄扱いをされる傾向にあったが、他方で女性は性的なことで功績を得たと誤解されないように勲章を隠すこともあった[15]。
証言文学・記録文学
独ソ戦で最もパルチザンの戦いが激しかったのはベラルーシだった。森林や沼沢地が多いベラルーシはパルチザンの活動に適しており、ドイツ軍とゲリラ戦を繰り広げた[16]。ベラルーシの作家アレシ・アダモーヴィチはパルチザン経験があり、『私は炎の村から来た』(1975年)や『封鎖・飢餓・人間』(1977年 - 1981年)などで独ソ戦時代の人々の証言を発表した[注釈 4][18]。こうした作品は戦争文学の他に記録文学や証言文学とも呼ばれる[注釈 5][20][18]。複数の証言者の語りを記録・編集する方法について、アダモーヴィチ自身はコーラス文学と呼んでいる[21]
政治的背景
ミハイル・ゴルバチョフ政権が主導した改革政策のペレストロイカでは、情報政策としてグラスノスチ(情報公開)も進められた。当初は経済改革を目標としていたが、1986年のチェルノブイリ原発事故をきっかけとして政治や社会システム、個人の権利の保護などにも及んだ[22]。かつてのスターリン政権時代には不可能だった言論の自由が広まるきっかけとなった[23]。
著者
アレクシエーヴィチは、ジャーナリストとしてミンスクの新聞や文芸誌で働いていた1970年代にアダモーヴィチの作品を知った。『私は炎の村から来た』を読んだアレクシエーヴィチは、その作品が自分の道を見つける道標だと思った[24]。さらに戦争の英雄として知られる男性を取材した際は、妻の戦争体験の方に関心を抱いた。こうしてアレクシエーヴィチは女性を対象にした取材を行い、雑誌に掲載された[25]。取材は1978年に始まり、7年間で500人以上の証言を記録した[26]。
内容
本作品はロシア語で執筆されている。ベラルーシではベラルーシ語とロシア語が国家語であり、アレクシエーヴィチのような都市部の住民はロシア語の話者が多い[注釈 6][28]。
アレクシエーヴィチは、自分が心を動かされるものが「小さき人々」の物語にあると書いている。それは、戦争、国、英雄のものではない物語にあたる[29]。英雄や官僚的な偉業はなく、人間らしい仕事をしたか人間らしくない仕事をした人だけがいる。そして人間だけでなく他の生物も苦しんでおり、言葉を発せずに苦しんでいるのでより恐ろしい。そのようにアレクシエーヴィチは表現している[30]。
構成
証言者の語りが中心となり、聞き手である作者の意見が少ない[注釈 7]。アレクシエーヴィチは自身の発言を少なくしている理由として、次のように語っている。人は苦しむと気高い声で話すようになる。それは作者には手が届かないような声である。作者は自らの居るべき場所をわきまえ、気高い声のあとで哲学を語る必要はない[19]。
証言
本作品の始まりとなった取材はミンスクで暮らす元狙撃兵の証言であり、最初の章に置かれた。11回表彰されたというその女性は、戦争について「話したくない」と語っている[32]。当初のアレクシエーヴィチは片端から取材をしていたが、証言者が別の取材相手を紹介してくれるようになり、連絡先が増えて戦友会のような集まりにも招かれた[33]。アレクシエーヴィチはソ連の各地で取材を行い、アプシェロンスク、ヴィテプスク、ヴォルゴグラード、ガーリチ、キーウ、スーズダリ、スモレンスク、モスクワ、ヤルトロフスクなど多数に及んだ。赤の広場やモスクワ・ホテルで行われる退役軍人の集まりにも招待された[32]。
アレクシエーヴィチは女性たちが志願した理由について知りたいと思い、その証言がまとめられている[34]。女性が受けた性差別として、徴兵で断られたり士官として認められなかった体験、周囲のセクシャルハラスメントを避けるために上官と交際した体験などが語られている。性差別や偏見は、帰還兵となったのちに同性からも受け続けた[35][36]。戦争が終わった後も地雷処理で働いた工兵や、故郷で差別されて結婚できなかった帰還兵がいた[37]。
戦場で女性的な日常は禁じられていて不可能だとアレクシエーヴィチは考えていたが、証言者たちは美しさについても語った[38]。戦場でイヤリングを隠し持っていたことや、身体に障害が残れば女性として終わりだと恐れていた話、最も恐ろしかったのは男性用の下着を履いていたことだった話などが収録されている[39]。戦場での恋愛として、包帯のガーゼでウエディングドレスを縫った話や、前線で夫を亡くした話もある。他方、戦後になると男性が去ってしまう場合があった[40]。
正規軍の兵士だけでなくパルチザンの証言もあり、アレクシエーヴィチは「家族を犠牲にするかもしれない場所で戦うことの恐ろしさ」と書いている[41]。パルチザンの目撃談として、子供を射殺されて発狂した母親、包囲されて子供を犠牲にせざるを得なかった母親、ドイツ軍に協力したソ連人、またパルチザン自身が捕えられて拷問を受けた体験などが収録されている[42]。味方のパルチザンに食料を奪われた被害者側としての証言もある[43]。
捕虜になったことのある者やドイツの収容所生活を体験した者は、スターリン政権によって流刑地へ送られており、その目撃談もある[44]。捕虜から生還した家族が、裏切り者として内務人民委員部の暴力的な取り調べを受けて障害者にされたこともあった[45]。スターリン政権やソ連軍に対する批判として、戦前の大粛清による収容所や流刑、農業集団化による国力や軍の弱体化が犠牲を大きくしたと元兵士たちによって語られている[46][47]。検閲官が特に不快感を示したエピソードとして、兵士が月経のための装備を支給されなかったため川で身体を洗おうとして爆撃された話や、前線に行く兵士が給料の全額で菓子を購入した話などがある[注釈 8][48]。ソ連軍兵士によるドイツ市民への戦時性暴力の証言もあり、2002年版では男性の元兵士による性暴力の証言も加筆された[注釈 9][50]。
アレクシエーヴィチは戦場の実態とともに、敵味方を超えた人間関係についての証言も選んだ。入院したソ連軍とドイツ軍の兵士が相手の容態を心配する光景、捕虜にパンを与えたときに「憎むことができないということが嬉しかった」と思った体験、前線で敵軍の負傷兵を治療した兵士、ドイツを容赦しないと思いつつも、ドイツの子供を見捨てることができず配給を与えた話などが記録されている。アレクシエーヴィチは本作品の各所で戸惑いを表明しながら、「道はただ一つ。人間を愛すること。愛をもって理解しようとすること」と書いている[51][52]。
評価、影響
本作が雑誌掲載された際に、アダモーヴィチは次のように賛辞をした。「本ができるには登場人物たちの娘にあたるほどの年若い作家の誠実な努力があった。五百人を越える一人一人の聞き書きというこのスヴェトラーナの書き方は妥協を許さないものだが、他人の痛みに対して人間の心を塞いでいる邪魔な物を突き破るにはこれが必要だった」。しかしアダモーヴィチの後押しにもかかわらず、問題作と見なされて単行本の出版は差し止められた[53][54]。検閲官の発言として、本作品はソ連軍の兵士に対する中傷であること、小さな物語は必要ではなく勝利のような大きな物語が必要であること、などをアレクシエーヴィチは記憶している[55]。
ペレストロイカの影響で単行本が出版されるとベストセラーとなり、1980年代の終わりまでに200万部の発行部数を記録した。2004年の最終稿では、ペレストロイカ直後には語れなかったことが加筆された[56]。
ベラルーシの大統領のアレクサンドル・ルカシェンコは、アレクシエーヴィチが外国で著書を出版し、祖国を中傷して金をもらっていると非難し、ベラルーシでの出版を禁止した[57]。他方、ロシアでは1997年の2巻本、2004年の普及版、2007年の選集などで出版された[58]。日本語版は2008年に、三浦みどり訳でロシア文学専門の出版社である群像社で刊行された。2015年10月に群像社は、アレクシエーヴィチのノーベル賞受賞を受け、1000冊の増刷を予定していたが[59]、著者の著作権を管理する代理人から権利消失のため出版できないと通知されたことを公式サイトで公表した[60][61][62]。のちに岩波書店が翻訳権を獲得して2016年に再刊された[1]。
アレクシエーヴィチは2015年にノーベル文学賞を受賞した。スウェーデン・アカデミーは「私たちの時代の苦悩と勇気への記念碑」「素材だけでなく形式においても新しい文学ジャンルの成果」と評価した[20]。アレクシエーヴィチは本作品をきっかけとして同様の手法で執筆を続けており、さまざまな関連作品も作られている(後述)。
書誌情報
- 『戦争は女の顔をしていない』 群像社(2008年7月)ISBN 978-4-903619-10-1
- 『戦争は女の顔をしていない』 岩波現代文庫(2016年2月)ISBN 978-4-00-603295-1
関連作品
ユートピアをめぐる記録文学
アレクシエーヴィチは取材をするなかで、戦時中に子供だった人々の体験にも注目した。このテーマはのちに『最後の証人たち』(邦題『ボタン穴から見た戦争』)として出版された[63]。アレクシエーヴィチは本作品を含む5作品を「ユートピアをめくる記録文学」と呼び、他に『最後の証人たち』(1985年)、『亜鉛の少年たち』(1991年)、『チェルノブイリの祈り』(1997年)、『セカンドハンドの時代』(2013年)が含まれる。アレクシエーヴィチは、自分よりも前の世代を「共産主義に染まった最後の世代」や「ユートピアに魅せられた世代」と呼んでいる。そしてユートピアをめぐる5作品を100年間にわたるロシア・ソ連の精神史としている[64][65]。
戯曲
本作品は1985年から戯曲化されており、初演はシベリアのオムスクにあるオムスク・ドラマ劇場だった。ロシア各地や国外で巡業を重ねて、公演回数は2021年時点で100回以上となる。上演時間は2時間半におよび、役作りのためにキーウに住む元女性兵士に会いに行ったという俳優もいる[注釈 10][67]。ペレストロイカの時期に40の劇場で上演されると好意的な書評が増え、アレクシエーヴィチに連絡をして証言をする人々も増えた[68]。
映画
2019年、本作を原案とした映画『戦争と女の顔』がロシアの映画監督であるカンテミール・バラーゴフによって製作され、第72回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で監督賞、国際映画批評家連盟賞を受賞した[69]。
漫画
2019年4月27日からウェブコミック配信サイトComicWalker(KADOKAWA)で漫画の連載が始まり、2020年1月27日に同社よりコミックス第1巻が発売された。小梅けいとが作画を担当し、速水螺旋人が監修をしている[注釈 11][71]。2021年7月、第50回日本漫画家協会賞が発表され、まんが王国とっとり賞に本作が選出されている[注釈 12][73]。2023年4月時点で累計70万部を突破している[74]。コミックス発売に合わせて漫画のコマを利用したプロモーションビデオがYouTubeで公開された[75]。PVには、軍医・ブレウス大尉のエピソード(漫画第2話)[76]や書記・ヴィレンスカヤ軍曹、ソ連初の女性機関士・アレストワ機関士、射撃手・アフメートワ二等兵のエピソード(漫画第7話)[77]が使われている[注釈 13]。
- スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ(原作)・小梅けいと(作画)・速水螺旋人(監修)『戦争は女の顔をしていない』KADOKAWA、既刊4巻[注釈 14](2023年4月27日現在)
受賞
- リシャルト・カプシチンスキ賞(2011年)[82]
脚注
注釈
- ^ 大粛清の前の1932年から1934年には、農業集団化やクラーク撲滅運動が原因でウクライナを中心に約500万人が飢餓で死亡しており、ホロドモールと呼ばれる[3][4]。
- ^ 独ソ戦の前年の1940年時点で、師団長の7割以上、連隊長の約7割、政治委員や政治部隊長の6割は1年ほどの経験だけで、実戦経験に乏しかった[6]。
- ^ 狙撃兵のリュドミラ・パヴリチェンコは象徴的な存在として宣伝塔になった[13]。パルチザンに参加してドイツ軍に処刑されたゾーヤ・コスモデミヤンスカヤは、ソ連で初の女性英雄の称号を与えられ、時代ごとの政治的事情に合わせた像が各地に作られた[14]。
- ^ アダモーヴィチの小説『ハティニ物語』(1971年)は『炎628』(1985年)として映画化された[17]。
- ^ ロシア語の記録文学の先駆者としてはソフィア・フェドルチェンコの『戦争における人々』(1917年)がある[19]。
- ^ ベラルーシ語、ロシア語、ウクライナ語は9世紀から15世紀にかけて別の言語に分かれた。国家としてのベラルーシは1922年にソヴィエト連邦の構成国となり、ソ連崩壊によって独立した。ベラルーシ語は話し言葉、ロシア語は文章で使われる傾向が強かった[27]。
- ^ 証言とともに自身の分析や意見を書いているアダモーヴィチの作風とは異なる[31]。
- ^ アレクシエーヴィチは、菓子のエピソードを聞いた時に証言者と笑い合ったと回想している[48]。
- ^ ソ連軍兵士はドイツへの進軍で性暴力を行った。ドイツ軍は、ソ連軍よりもイギリス軍やアメリカ軍に降伏したいと考えて西へ移動したため、ドイツでは民間人が取り残された。ソ連軍兵士はのちに東側諸国で同盟国となるポーランド、ハンガリー、ユーゴスラヴィアでも性暴力を行い、スターリンはこれを黙認した[49]。
- ^ オムスクは演劇が盛んな都市で、伝統的なロシア演劇であるゴーゴリ、ドストエフスキー、チェーホフなどの作品の他に安部公房や三谷幸喜などの作品も上演している[66]。
- ^ 単行本第1巻の帯には、富野由悠季が推薦文を寄稿[70]。
- ^ 2023年5月1日から5月7日まで、単行本第4巻の発売を記念し、京浜東北線と根岸線にて貸し切りの中吊り広告が展開された[72]。
- ^ 主なキャストは、ブレウス大尉/ナレーション:日笠陽子[75]、ヴィレンスカヤ軍曹/ナレーション:田中敦子[77]、 アレストワ機関士:高山みなみ[77]、アフメートワ二等兵:水田わさび[77]
- ^ 1巻 2020年1月27日発売[70][78]、ISBN 978-4-04-912982-3、2巻 2020年12月26日発売[77][79]、ISBN 978-4-04-913595-4、3巻 2022年3月26日発売[80]、ISBN 978-4-04-914125-2、4巻 2023年4月27日発売[81]、ISBN 978-4-04-914995-1
出典
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参考文献
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- スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ, 鎌倉英也, 徐京植, 沼野恭子『アレクシエーヴィチとの対話 「小さき人々」の声を求めて』岩波書店、2021年。
- 沼野恭子『ユートピアの声――アレクシエーヴィチの文学』。
- 越野剛「スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ作品の形式的側面について」『国際シンポジウム「文化の汽水域 : 東スラヴ世界の文化的諸相をめぐって」報告集』、東京外国語大学 沼野恭子研究室、2017年12月、5-13頁、2024年4月3日閲覧。
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- ティモシー・スナイダー『ブラッドランド ヒトラーとスターリン 大虐殺の真実(下)』筑摩書房、2015年。(原書 Snyder, Timothy (2010), Bloodlands)
- 橋本信子「女性兵士をめぐるイメージと実態 : ソ連、ロシア、ウクライナを事例に」『女性学講演会』第26巻、大阪公立大学女性学研究センター、2023年3月、37-54頁、ISSN 18821162、2024年4月3日閲覧。
- 服部倫卓, 越野剛 編『ベラルーシを知るための50章』明石書店〈エリア・スタディーズ〉、2017年。
- 越野剛『ノーベル賞作家アレクシエーヴィチの文学の世界――戦争・原発事故・社会主義』。
- 松戸清裕『ソ連史』筑摩書房〈ちくま新書〉、2011年。
- 安元隆子「スベトラーナ・アレクシエービッチ『戦争は女の顔をしていない』論」『国際関係研究』第37巻第1号、日本大学国際関係学部国際関係研究所、2016年10月、35-44頁、ISSN 13457861、2024年4月3日閲覧。
関連文献
- アレーシ・アダーモビチ, ダニール・グラーニン 著、宮下トモ子 訳『封鎖・飢餓・人間 ドキュメント 1941-1944年のレニングラード(上・下)』新時代社、1986年。(原書 Адамовіч, Алесь; Гранин, Даниил Александрович (1977-1981), Блокадная книга)
- ロジャー・D・マークウィック, ユーリディス・シャロン・カルドナ 著、五十嵐徳子, 河本和子, 藤原克美 訳『女たちの独ソ戦: 彼女たちはなぜ戦場へ行ったか』垣内出版、2023年。(原書 Markwick, Roger; Cardona, Euridice Charon (2012), Soviet Women on the Frontline in the Second World War)
- レギーナ・ミュールホイザー 著、姫岡とし子 訳『戦場の性 独ソ戦下のドイツ兵と女性たち』岩波書店、2015年。(原書 Mühlhäuser, Regina (2010), Eroberungen: Sexuelle Gewalttaten und intime Beziehungen deutscher Soldaten in der Sowjetunion, 1941 – 1945)
関連項目
外部リンク
- 戦争は女の顔をしていない - 群像社
- 戦争は女の顔をしていない - 岩波書店
- Schrecken der Schlachten – Eine Besprechung des Buches im Deutschlandfunk (von Karla Hielscher)
- Die Frau, die vor ihren Büchern Angst hat – FAZ 紙上の記事。ケルスト・ホルムによるこの本の背景と著者スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチについての記事。ドイツ語。