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現場代理人

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

現場代理(げんばだいりにん)とは、工事請負契約の当事者(注文者から仕事を請負う「請負人」と請負人の仕事の結果に報酬を支払う「注文者」)のうち、「請負人」の契約履行に関する権限を授与されたものである。

概要

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建設工事の請負人(受注者)が、契約内容の変更の承諾など請負人の契約の定めに基づく行為を、請負人に代わって現場代理意思表示契約約款仕様書の定めに基づく協議承諾通知指示請求報告申出解除など)させる[1]ために権限授与するときは、現場代理人へ授与する権限の範囲及び現場代理人の代理行為についての注文者の請負人に対する意見の申出の方法(代理人が請負人から与えられた権限の行使に関し、実行すべき事項を実行しないなど代理人として著しく不適当と認められる場合における注文者から請負人への措置請求の方法など)を、注文者書面代理権授与通知書など)により通知しなければならない。(民法第99条から第118条まで、建設業法第19条の2第1項)


これについては、注文者と請負者が相互に交付する契約約款に予め代理人の権限意見の申出方法が記載されている建設工事標準請負契約約款叉はこれに準拠した契約書を使用し、注文者への現場代理人の通知について簡略にしておくことが一般的である。

建設工事標準下請契約約款(抜粋) 現場代理人の権限の考え方の例示
(請負代金内訳書及び工程表)
  1. 下請負人は設計図書に基づく請負代金内訳書、工事計画書及び工程表を作成し、契約締結後速やかに元請負人に提出して、その承認を受ける。
(請負代金内訳書及び工程表)
  1. 下請負人は設計図書に基づく請負代金内訳書、工事計画書及び工程表現場代理人が署名または押印した施工計画書)を作成し、契約締結後速やかに元請負人に提出して、その承認を受ける。
(関係事項の通知)
  1. 下請負人は、元請負人に対して、この工事に関し、次の各号に掲げる事項をこの契約締結後遅滞なく書面をもって通知する。
    1. 現場代理人及び主任技術者の氏名
    2. 雇用管理責任者の氏名
    3. 安全管理者の氏名
    4. 工事現場において使用する一日当たり平均作業員数
    5. 工事現場において使用する作業員に対する賃金支払の方法
    6. その他元請負人が工事の適正な施工を確保するため必要と認めて指示する事項
  2. 下請負人は、元請負人に対して、前項各号に掲げる事項について変更があったときは、遅滞なく書面をもってその旨を通知する。
(関係事項の通知)
  1. 下請負人は、元請負人に対して、この工事に関し、次の各号に掲げる事項をこの契約締結後遅滞なく現場代理人の署名または押印した書面をもって通知する。
    1. 現場代理人及び主任技術者の氏名
    2. 雇用管理責任者の氏名
    3. 安全管理者の氏名
    4. 工事現場において使用する一日当たり平均作業員数
    5. 工事現場において使用する作業員に対する賃金支払の方法
    6. その他元請負人が工事の適正な施工を確保するため必要と認めて指示する事項
  2. 下請負人は、元請負人に対して、前項各号に掲げる事項について変更があったときは、遅滞なく現場代理人の署名または押印した書面をもってその旨を通知する。
(条件変更等)
  1. 下請負人は、工事の施工に当たり、次の各号のいずれかに該当する事実を発見したときは、直ちに書面をもってその旨を監督員に通知し、その確認を求める。
    1. 設計図書と工事現場の状態とが一致しないこと。
    2. 設計図書の表示が明確でないこと(図面と仕様書が交互符合しないこと及び設計図書に誤謬又は脱漏があることを含む。)。
    3. 工事現場の地質、湧水等の状態、施工上の制約等設計図書に示された自然的又は人為的な施工条件が実際と相違すること。
    4. 設計図書で明示されていない施工条件について予期することのできない特別の状態が生じたこと。
  2. 監督員は、前項の確認を求められたとき又は自ら同項各号に掲げる事実を発見したときは、直ちに調査を行い、その結果(これに対してとるべき措置を指示する必要があるときは、その指示を含む。)を書面をもって下請負人通知する。
  3. 第1項各号に掲げる事実が元請負人と下請負人との間において確認された場合において、必要があると認められるときは、設計図書を訂正し、又は工事内容、工期若しくは請負代金額を変更する。この場合において、工期又は請負代金額の変更については、元請負人と下請負人とが協議して定める。
(条件変更等)
  1. 下請負人は、工事の施工に当たり、次の各号のいずれかに該当する事実を発見したときは、直ちに現場代理人の署名または押印した書面[2]をもってその旨を監督員に通知し、その確認を求める。
    1. 設計図書と工事現場の状態とが一致しないこと。
    2. 設計図書の表示が明確でないこと(図面と仕様書が交互符合しないこと及び設計図書に誤謬又は脱漏があることを含む。)。
    3. 工事現場の地質、湧水等の状態、施工上の制約等設計図書に示された自然的又は人為的な施工条件が実際と相違すること。
    4. 設計図書で明示されていない施工条件について予期することのできない特別の状態が生じたこと。
  2. 監督員は、前項の確認を求められたとき又は自ら同項各号に掲げる事実を発見したときは、直ちに調査を行い、その結果(これに対してとるべき措置を指示する必要があるときは、その指示を含む。)を署名または押印した書面[3]をもって下請負人又は下請負人の現場代理人通知する。
  3. 第1項各号に掲げる事実が元請負人と下請負人又は下請負人の現場代理人との間において確認された場合において、必要があると認められるときは、設計図書を訂正し、又は工事内容、工期若しくは請負代金額を変更する。この場合において、工期又は請負代金額の変更については、元請負人と下請負人又は下請負人の現場代理人とが署名または押印した書面により協議して定める。

なお、現場代理人は、上記のとおり注文者との請負契約における請負人(受注者)の代理人であるため、下請負人との請負契約など注文者としての立場での事業主の代理(建設業法第19条の2第2項の監督員[4]建築士法工事監理は、建築工事に限る。))の権限や官公署への手続きなど注文者との契約に関わりのない行為に関する権限及び自社の作業中の労働者[5]を直接指導又は監督する行為(職長作業主任者の職務)は、現場代理人の権限には含まれていない[6]

また、現場代理人の選任は請負人の判断によるもので法令による定めはなく、注文者との契約により強制されない限り、必ずしも選任をしなければならないものではない。但し、この場合における現場代理人の権限は、請負人本人が行使する

現場代理人に必要な資格等

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現場代理人には、請負人に代わり代理行為を行使するための能力は必要とせず(民法第102条)、代理権の範囲内の現場代理人の行為の効果は、本人に帰属するため(民法第99条)、無権代理に該当する行為や違法行為を除き、現場代理人が責任を負う事はない。

なお、現場代理人は、請負人の代理人であるため、請負人本人である代表権を有する取締役事業主などの選任は適当ではない

契約の定めによるもの

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建設工事標準請負契約約款や個別の入札条件等によって、工事現場に常駐し、その運営、取締り、請負人と代理人との雇用関係について定めるものがある。(以下の職務内容、義務、責任については、現場代理人が負うべきものとしての根拠となる定めはない。実際に携わる職務内容に応じ、資格要件事業者責任等について考慮する必要がある。)

  • 工事現場に常駐(当該工事を専任で担当し、工事現場に常に駐在していること。)すること。
  • 工事現場の一切の事項を処理し、その責めを負う。(責任に関する事項は、現行の標準請負契約約款では削除されている。)
  • 工事現場の運営、取締りを行うこと。
    • 工事の施工上必要とされる労務管理工程管理安全管理その他の管理行為。(労働安全衛生法で定める職長のとしての職務)
  • 請負人との直接的かつ恒常的な雇用関係(期間の定めがない雇用関係)を有すること。

その他

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施工体制台帳・再下請負通知書(記入例)

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現場代理人の代理権の範囲及び現場代理人の代理行為についての注文者の請負人(受注者)に対する意見の申出の方法[9]の記入について

  • 請負人の法律行為、代理権の範囲及び意見の申出方法について契約約款に記載があり、かつ代理権の範囲等が契約約款記載のとおりである場合の記入例
権限・・・建設工事請負契約書第10条第1項記載のとおり
意見の申出方法・・・理由を明示した書面による(建設工事請負契約書第12条第1項記載のとおり(標準下請契約約款では第11条第1項))
  • 契約約款に請負人の法律行為の記載はあるが、現場代理人の権限の範囲などの記載がないため、代理権授与通知書等により通知する場合の記入例
権限・・・代理権授与通知書記載のとおり
意見の申出方法・・・理由を明示した書面による(代理権授与通知書記載のとおり)

土木工事共通仕様書等における用語の定義(参考)

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  • 指示とは、契約図書の定めに基づき、監督職員が受注者に対し、工事の施工上必要な事項について書面により示し実施させることをいう。
  • 承諾とは、契約図書で明示した事項について、発注者若しくは監督職員または受注者が書面により同意することをいう。
  • 協議とは、書面により契約図書の協議事項について、発注者または監督職員と受注者が対等の立場で合議し、結論を得ることをいう。
  • 提出とは、監督職員が受注者に対し、または受注者が監督職員に対し工事に係わる書面またはその他の資料を説明し、差し出すことをいう。
  • 提示とは、監督職員が受注者に対し、または受注者が監督職員または検査職員に対し工事に係わる書面またはその他の資料を示し説明することをいう。[10]
  • 報告とは、受注者が監督職員に対し、工事の状況または結果について書面により知らせることをいう。
  • 通知とは、発注者または監督職員と受注者または現場代理人の間で、監督職員が受注者に対し、または受注者が監督職員に対し、工事の施工に関する事項について、書面により互いに知らせることをいう。
  • 連絡とは、監督職員と受注者または現場代理人の間で、監督職員が受注者に対し、または受注者が監督職員に対し、契約書第18条に該当しない事項または緊急で伝達すべき事項について、口頭、ファクシミリ、電子メールなどの署名または押印が不要な手段により互いに知らせることをいう。
なお、後日書面による連絡内容の伝達は不要とする。
  • 受理とは、契約図書に基づき受注者の責任において監督職員に提出された書面を監督職員が受け取り内容を把握することをいう。
  • 確認とは、契約図書に示された事項について、監督職員等が臨場若しくは請負者が提出した資料により、監督職員がその内容について契約図書との適合確かめ、受注者に対して認めることをいう。
  • 把握とは、監督職員等が臨場若しくは請負者が提出又は提示した資料により施工状況、使用材料、提出資料の内容等について、監督職員が契約図書との適合を自ら認識しておくことをいい、受注者に対して認めるものではない。
  • 立会いとは、契約図書に示された項目について、監督職員等が臨場し、内容を確かめることをいう。

(契約図書と書面)

  • 契約図書とは、契約書、共通仕様書[11]、特記仕様書[12]、図面[13]、現場説明書[14]及び現場説明に対する質問回答書[15]をいう。また、土木工事においては、工事数量総括表[16]を含むものとする。
  • 書面とは、手書き、印刷物等による工事打合せ簿等の工事帳票[17]をいい、発行年月日を記載し、署名または押印したものを有効とする。

代理人による契約書などへの記名押印(参考)

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代理人によって契約締結などする場合、

  1. 請負人の住所及び氏名[18]
  2. 代理人の住所、
  3. 代理人の肩書き(現場代理人)を記入し、代理人署名または記名押印をする。[19]
(書面には、何者の代理であるかを明らかにするため、請負人の名を記入する方が客観的に確実であり妥当。)
例)□□建設株式会社
現場代理人 ◇◇ ◇◇ 印

現場代理人の現状

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現場代理人に選任された者が兼任する他の職務[20]との混同、建設業法の施工体制台帳再下請負通知書など書類の空欄を埋めるための実態が伴わない記名など、現場代理人への代理権授与行為の事実がない、または現場代理人に代理権を授与された自覚がないものや、請負契約に係る請負人の法律行為の定めがない契約[21]などにおける現場代理人の職務内容の思い込みによる行為の行使(無権代理代理権の濫用)や、発注者の担当監督職員の理解不足により、書面への請負人本人の記名押印(いわゆる角印丸印の押印)や、その書面を現場代理人から直接届出させるよう指図するなど使者[22]との混同が見受けられる。

また、請負人または請負人の現場代理人による見積条件と実際の施工条件が異なった場合における通知などについて、発注者または発注者の監督職員の都合により、受付を拒否(無視)または受け付けた書面を破棄あるいは差し替えを指図されるなど実務においても問題がある。

なお、現場代理人に限らず、直接の雇用関係にない請負人の作業中の労働者[5]への工事を施工させるための指示・管理などにあたる行為(当該請負人の職長作業主任者の職務)は、労働基準法第6条第24条職業安定法第44条労働者派遣法第4条第1項に接触する。(民法第623条第632条

労災保険関係成立票の事業主の代理人

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事業主が、自ら行うべき労働保険事務の全部又は一部を行わせるための代理を選任し、労働保険代理人選任・解任によって事前に提出した者を記載したもの掲げたもの。現場代理人である必要はなく、必ずしも選任しなければならないものではない。 選任しない場合は、労災保険関係成立票の事業主の代理人の欄は記入しない。労働者災害補償保険法施行規則第3条、労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則第73条)

注釈

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  1. ^ 署名叉は記名押印が必要な書面によって意思表示するときは、請負人に代わって、現場代理人の署名叉は記名押印するなど。
  2. ^ 条件変更の確認通知書(53ページ参照)
  3. ^ 条件変更の確認書及び変更指示書又は、条件変更による変更指示書(54、55ページ参照)
  4. ^ 直接の雇用関係にない、受注者の労働者(職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者)への指揮・監督は法令違反となる。
  5. ^ a b c 職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者
  6. ^ 兼任するためには、代理権授与や資格要件を満たすことが別途必要。
  7. ^ 事業を行う者で、労働者を使用するもの。労働安全衛生法における主たる義務者である「事業者」とは、法人企業であれば当該法人(法人の代表者ではない。)、個人企業であれば事業経営主を指している。
  8. ^ 法違反があった場合の罰則の適用は、労働安全衛生法第122条に基づいて、当該違反の実行行為者たる自然人(本件では、法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者)に対しなされるほか、事業者たる法人または人に対しても各本条の罰金刑が課せられることとなる
  9. ^ ここでいう、「意見の申出方法」とは、協議等ではなく、代理人が請負人から与えられた権限の行使に関し、実行すべき事項を実行しないなど代理人として著しく不適当と認められる場合における注文者から請負人への必要な措置の請求等の方法を指す。
  10. ^ 提示については、工事打合せ簿を作成する必要はない。(「土木工事書類作成マニュアル」より)
  11. ^ 各建設作業の順序、使用材料の品質、数量、仕上げの程度、施工方法等工事を施工するうえで必要な技術的要求、工事内容を説明したもののうち、あらかじめ定型的な内容を盛り込み作成したもの
  12. ^ 特記仕様書とは共通仕様書を補足し、工事の施工に関する明細または工事に固有の技術的要求を定める図書。設計図書に基づき監督職員が受注者に指示した書面及び受注者が提出し監督職員が承諾した書面は、特記仕様書に含まれる。
  13. ^ 入札に際して発注者が示した設計図、発注者から変更または追加された設計図、工事完成図等をいう。なお、設計図書に基づき監督職員が受注者に指示した図面及び受注者が提出し、監督職員が書面により承諾した図面を含むものとする。
  14. ^ 工事の入札に参加するものに対して発注者が当該工事の契約条件等を説明するための書類
  15. ^ 質問受付時に入札参加者が提出した契約条件等に関する質問に対して発注者が回答する書面
  16. ^ 工事施工に関する工種、設計数量及び規格を示した書類
  17. ^ 施工計画書、工事打合せ簿、品質管理資料、出来形管理資料等の定型様式の資料、及び工事打合せ簿等に添付して提出される非定型の資料をいう。
  18. ^ 押印不要
  19. ^ 裁判になった場合を考慮し、契約上の権利・義務に関する事項のうち、現場代理人が権限内の事項として処理することが適当でない重要なものについては、現場代理人の権限から除外するべきであるが、それらを含めた権限を授与するときは、実印の使用(予め、代理権授与通知書に実印を押印。印鑑証明書添付。)が望ましい。
  20. ^ 使者、監督員(注文者としての立場の事業主の代理人)、主任技術者、職長、作業主任者、統括安全衛生責任者、元方安全衛生管理者、安全衛生責任者
  21. ^ 注文書叉は注文書と請書のみを交付する約款がない契約
  22. ^ 代理人の意思表示に関する権限と異なり、使者は請負人本人の意思を伝える行為に留まる。請負人の署名叉は記名押印した書面の提出等。

関連項目

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外部リンク

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