石灰化上皮性歯原性腫瘍
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石灰化上皮性歯原性腫瘍(せっかいかじょうひせいしげんせいしゅよう、Calcifying epthelial odontogenic tumor; CEOT)は、歯原性腫瘍の一種で、通常良性腫瘍であるが、リンパ節転移を起こす悪性例の報告も数例存在する[1]。Pindborg腫瘍 (Pindborg tumor) とも。1955年にPindborgにより命名された腫瘍[2]で、かつては歯原性石灰化上皮腫と訳された。
疫学
[編集]好発年齢は特になく、10 - 90歳代まで発生する[3]。わずかに女性に多い[4]。60 - 70 %が下顎に発生し[3]、特に大臼歯部に多く、約50 %で埋伏歯と関連している[5]。大部分は骨中心性である。歯原性遺残上皮、埋伏歯の退縮エナメル上皮、含歯性嚢胞の裏装上皮、口腔粘膜上皮などが由来として考えられている[3]。
診断
[編集]X線所見
[編集]境界明瞭な単房性 (2/3) または多房性 (1/3) の透過像の中に石灰化物を認める[4]。
病理組織学的所見
[編集]アミロイド様の物質の沈着が見られ、細胞間橋の目立つ多角形細胞のシート状から索状の増殖が見られる。また、多形性が見られるが、異型核分裂像は見られない。そのため、鑑別診断としては容易であるが、細胞の多形性を悪性所見であるとしないよう注意が必要である。
アミロイドはコンゴーレッド染色やチオフラビンT染色で証明する[3]。
症状
[編集]大部分は骨内性で、緩慢に増大する無痛性腫瘤[5]。まれに骨外性[5]。上顎骨に発生した場合、突出、鼻出血、鼻腔閉塞が発生する事がある。
治療
[編集]一般に摘出術が行われるが、大きなものでは顎骨切除術、再建術が選ばれることもある[5][4]。
予後
[編集]再発は稀である。
脚注
[編集]- ^ 長浜純二・佐藤啓司・棚町啓之・加島健司・駄阿勉・賀来直美・中山巌・横山繁生「悪性歯原性石灰化上皮腫の1例」『日本臨床細胞学会雑誌』第41巻第6号、特定非営利活動法人日本臨床細胞学会、2002年11月、406-410頁、ISSN 0387-1193、2010年5月3日閲覧。
- ^ J.J. Pindborg (1955). “Calcifying epithelial odontogenic tumor”. Acta Pathol. Microbiol. Scand 111 (Suppl.): 71.
- ^ a b c d 賀来亨 著「7.歯原性腫瘍 症例2」、賀来, 亨、立川, 哲彦; 田中, 陽一 ほか 編『カラーアトラスEBMに基づいた口腔病理診断学』(第1版)永末書店、京都市上京区、2003年11月28日、133-134頁。ISBN 4-8160-1130-7。
- ^ a b c 高田隆、森昌彦、小川郁子 著「第7章 口腔腫瘍 2歯原性腫瘍 2.良性上皮性歯原性腫瘍 3)石灰化上皮性歯原性腫瘍(Pindborg腫瘍)」、白砂兼光、古郷幹彦 編『口腔外科学』(第3版)医歯薬出版、東京都文京区、2010年3月10日、209-211頁。ISBN 978-4-263-45635-4。 NCID BB01513588。
- ^ a b c d 覚道健治 著「V.顎口腔領域の腫瘍及び類似疾患」、栗田, 賢一、覚道, 健治、小林, 馨 編『SIMPLE TEXT 口腔外科の疾患と治療』(第1版)永末書店、京都市左京区、1998年11月23日、143-144頁。ISBN 4-8160-1071-8。