秋田港・能代港沖の洋上風力発電
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秋田港・能代港沖の洋上風力発電(あきたこう・のしろこうおきのようじょうふうりょくはつでん)とは、2022年の商用運転開始を目標に建設されている洋上風力発電事業である。日本海に面した秋田港(秋田県秋田市)と能代港(同能代市)の港湾区域内に、それぞれ13基と20基の着床式風力発電設備を設置、合計出力約14万kWを目指す計画であり、これは日本国内で初の商業ベースでの大型洋上風力発電事業でもある[1]。本項では、秋田沖・能代沖の両計画についてまとめて概説する。
概要
[編集]冒頭で述べたとおり、秋田港と能代港の港湾区域内に、それぞれ13基と20基の着床式風力発電設備を設置、秋田港では約5.5万kW、能代港では約8.4万kWの発電能力を見込む[2]。1基あたりの発電能力はおよそ4,200kWで、 ベスタスと三菱重工業との合弁会社であるMHIベスタス製である[3][4]。
事業主体は秋田洋上風力発電株式会社(AOW)だが、これは筆頭株主である丸紅をはじめ、関西電力、中部電力、東北自然エネルギー(東北電力の関連会社)、コスモエコパワー(コスモエネルギーホールディングスの子会社)、大林組からなる秋田県外企業6社と、秋田銀行をはじめとする秋田県内企業7社によって設立された特別目的会社(SPC)である。事業期間として20年間を見込み、発電した電力は固定価格買取制度に基づき東北電力に売却する事業スキームとなっている。なお、総投資額はおよそ1,000億円に及ぶが、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行のメガバンク3行を共同主幹事行とした、国内外の金融機関からの協調融資により資金を調達するとしている[1]。
建設までの経緯
[編集]西を日本海に面した秋田県は、年間を通じて風況が安定し、国内でも有数の風力発電の適地とされる[2][5][6]。秋田県では、再生可能エネルギー導入に向けて2014年に、「秋田港・能代港再生可能エネルギー導入検討協議会」を設置、有識者・港湾利用者・漁業関係者・放送関係者・行政関係者らからなる検討会を実施し、秋田・能代両港の港湾区域内での適地の選定、風車の設置想定、予想される課題の洗い出し等を行った[7]。その結果両港とも年間6.5~7m/s以上の平均風速を得られ、事業化の目安を満たすことが判明している。検討会を経て同年に秋田県で事業者の公募を行い、応募した2事業者を検討した結果、2015年2月5日に丸紅が事業者として選定された[5][8]。同年丸紅/大林組/エコ・パワー株式会社[注釈 1]による環境アセスメントが行われた。8月21日に計画段階環境配慮書が受理され[10][11]、10月30日に環境大臣意見が付され[12][13]、11月13日に経済産業大臣意見が付された。その際『洋上風力発電事業の環境影響については十分に解明されていない点もあることから、調査、予測及び評価の実施、並びに環境保全措置の実施検討に当たっては、最新の知見及び先行事例の知見を反映すること』(二重鍵括弧内は環境省ホームページよりそのまま引用[12][13])が求められている。引き続き2016年4月には丸紅ほか出資企業により先述の特別目的会社秋田洋上風力発電株式会社(AOW)が設立され、引き続き事業化に向け出資企業の共同で調査を行うと発表された[5][14]。2020年2月には正式に事業化が決定、建設フェーズに移行した[1][15]。また、秋田・能代両港は、鹿島港・北九州港とともに2020年8月に洋上風力の整備港としても指定されている[16]。
2020年2月には秋田洋上風力発電(AOW)より能代市内に大型風車の維持管理拠点を設置することが公表され[17]、3月には工事を受注した鹿島・住友電工JVにより本格的に工事に着手することが明らかにされた[18]。同月丸紅からはイギリス・シージャックス社と基礎据付工事の契約締結と洋上風力据付船の導入について発表された[19]。これはモノパイル式の基礎を港湾内に打設するためで、シージャックス社が保有する自己昇降式作業台船(SEP船)「ザラタン」号を同社の日本法人シージャックス・ジャパン保有として傭船したものである[20][21]。「ザラタン」号は2021年4月20日に秋田港に入港[22]、能代港では5月11日から打設作業を開始[23]、秋田港では6月11日から打設作業を行った[23]。この際打設にともなう騒音により市民から苦情が寄せられている[24]。また、工事の進捗にともない秋田洋上風力発電の出資企業である大森建設など4社により作業船運航会社「アキタOWサービス」が設立され、作業員の輸送船「レッドスター」号が新造された[25][26]。基礎の打設工事は2021年9月をもって終了し、風車本体の設置工事は2022年に入ってからとなる見込みである[27]。また、2021年10月8日には秋田市土崎港にある商業施設「秋田ベイパラダイス」内に秋田洋上風力発電の展示紹介コーナーが設置されている[28]。
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秋田洋上風力発電能代事業所
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能代港の沖合に停泊する「ザラタン」号
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能代市の沖合に設置された洋上風力発電の基礎杭
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アキタOWサービス保有の作業員輸送船「レッドスター」
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秋田市土崎港の商業施設「秋田ベイパラダイス」内に設置された秋田洋上風力発電の展示コーナー
関連項目
[編集]- 洋上風力発電
- 新能代風力発電所
- 海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(再エネ海域利用法) - 本事業区域には適用されない。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b c 丸紅20200203.
- ^ a b 朝日20210808.
- ^ 日経20200319.
- ^ 『メガソーラービジネス』20210428.
- ^ a b c 丸紅20160727.
- ^ 中部電力20160727.
- ^ 秋田県庁20140402.
- ^ 日経20150206.
- ^ コスモ20190528.
- ^ 経済産業省20151113a.
- ^ 経済産業省20151113b.
- ^ a b 経済産業省20151030a.
- ^ a b 経済産業省20151030b.
- ^ 日経20160727.
- ^ 日経20200203.
- ^ 日経20200831.
- ^ 北羽20200220.
- ^ 鹿島20200326.
- ^ 丸紅20200327.
- ^ 商船三井20210428.
- ^ 『インフラト』20210507.
- ^ 秋田魁新報20210421.
- ^ a b 秋田魁新報20210512.
- ^ 秋田魁新報20210614.
- ^ 北羽20210620.
- ^ 河北20210628.
- ^ 秋田魁新報20210928.
- ^ 秋田魁新報20211009.
参考文献
[編集]新聞記事
[編集]- 「秋田県、能代港の洋上風力発電に丸紅を選定」『日本経済新聞』2015年2月6日。2022年1月1日閲覧。
- 「丸紅・関電など14社、秋田で洋上風力の事業化調査」『日本経済新聞』2016年7月27日。2022年1月1日閲覧。
- 「中部電力・丸紅・関西電力・大林組など、秋田港及び能代港での洋上風力発電プロジェクトを実施・融資契約を締結」『日本経済新聞』2020年2月3日。2022年1月1日閲覧。
- 「下浜地区に大型風車の維持管理拠点」『北羽新報』2020年2月3日。2022年1月1日閲覧。
- 「三菱重系、洋上向け風車を国内初の正式受注」『日本経済新聞』2020年3月19日。2022年1月1日閲覧。
- 「洋上風力の整備港を初指定へ 国交省、秋田など4カ所」『日本経済新聞』2020年8月31日。2022年1月1日閲覧。
- 「秋田・能代港に洋上風車設置へ SEP船、秋田港に入港」『秋田魁新報』2021年4月21日。2022年1月1日閲覧。
- 「能代港湾内で洋上風力基礎工事 50メートルの杭など設置へ」『秋田魁新報』2021年5月12日。2022年1月1日閲覧。
- 「秋田港でも洋上風車の基礎工事開始 SEP船で打設作業」『秋田魁新報』2021年6月12日。2022年1月1日閲覧。
- 「海から「ゴーン」 洋上風車工事、苦情訴える住民も」『秋田魁新報』2021年6月14日。2022年1月1日閲覧。
- 「洋上風力発電アクセス船建造」『北羽新報』2021年6月20日。2022年1月1日閲覧。
- 「秋田・能代沖洋上風力発電 作業員輸送船を新造」『河北新報』2021年6月28日。2022年1月1日閲覧。
- 増田洋一「国内初の大型洋上風力発電 建設着々と」『朝日新聞』2021年8月8日。2022年1月1日閲覧。
- 「風車基礎工事終了、騒音で苦情も 秋田港と能代港、本体は来春」『秋田魁新報』2021年9月28日。2022年1月1日閲覧。
- 「再生エネルギーをPR、秋田市に施設開設 展示会も実施中」『秋田魁新報』2021年10月9日。2022年1月1日閲覧。
官公庁ほか公的機関の情報
[編集]- “秋田港・能代港再生可能エネルギー導入検討協議会”. 秋田県庁 (2014年4月2日). 2021年12月30日閲覧。
- 『丸紅株式会社、株式会社大林組及びエコ・パワー株式会社「(仮称)秋田港洋上風力発電事業計画段階環境配慮書」に対する意見について』(PDF)(プレスリリース)経済産業省 商務流通保安グループ 電力安全課、2015年11月13日 。2021年12月30日閲覧。
- 『丸紅株式会社、株式会社大林組及びエコ・パワー株式会社「(仮称)能代港洋上風力発電事業計画段階環境配慮書」に対する意見について』(PDF)(プレスリリース)経済産業省 商務流通保安グループ 電力安全課、2015年11月13日 。2021年12月30日閲覧。
- “(仮称)秋田港洋上風力発電事業に係る計画段階環境配慮書に対する環境大臣意見の提出について(お知らせ)”. 環境省 (2015年10月30日). 2021年12月30日閲覧。
- “(仮称)能代港洋上風力発電事業に係る計画段階環境配慮書に対する環境大臣意見の提出について(お知らせ)”. 環境省 (2015年10月30日). 2021年12月30日閲覧。
プレスリリース
[編集]- 『秋田県秋田港及び能代港洋上風力発電事業の開発可能性調査共同実施について』(PDF)(プレスリリース)丸紅、2016年7月27日 。2016年7月27日閲覧。「秋田県は日本国内でも有数の風況の良い地域であり」
- “秋田県秋田港及び能代港洋上風力発電事業の開発可能性調査共同実施について”. 中部電力株式会社 (2016年7月27日). 2021年12月30日閲覧。
- “エコ・パワー株式会社(風力発電事業)の完全子会社化および社名変更について”. コスモエネルギーホールディングス株式会社 (2019年5月28日). 2022年1月1日閲覧。
- 『秋田県秋田港及び能代港における洋上風力発電プロジェクトの実施、及び融資契約の締結について』(PDF)(プレスリリース)丸紅、2020年2月3日 。2021年12月30日閲覧。
- “国内初の商用洋上風力発電事業「秋田港・能代港洋上風力発電施設建設工事」本格着工”. 鹿島建設株式会社 (2020年3月26日). 2021年12月30日閲覧。
- 『英国シージャックス社 秋田県秋田港及び能代港における洋上風力発電所向け基礎据付契約締結及び洋上風力据付船の導入について』(PDF)(プレスリリース)丸紅、2020年3月27日 。2021年12月30日閲覧。
- “商船三井、Seajacks社運航船「Seajacks Zaratan」が秋田港・能代港洋上風力発電基礎の据付を開始”. 商船三井株式会社 (2021年4月28日). 2021年12月30日閲覧。
その他インターネット記事
[編集]- 工藤宗介 (2021年4月28日). “秋田港と能代港の洋上風力、据付工事を開始、合計140MW”. メガソーラービジネス. 2021年12月30日閲覧。
- “【工事】商船三井、洋上風力発電向けSEP船が秋田港に入港/基礎据付工事を4月末より開始”. インフラト (2021年5月7日). 2021年12月30日閲覧。