経験過程
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経験過程(けいけんかてい、英: empirical process)は、経験測度の中心極限定理の一般化のひとつである。経験過程の理論は、ノンパラメトリック統計学などに応用される。
定義
[編集]ある一定の条件のもとで、経験測度Pnが、確率測度へ収束するという結果はよく知られている(Glivenko-Cantelliの定理)。経験過程の理論によって、この収束の速さを説明することができる。 中心化・基準化された経験測度は、
となる。これによる、適当な可測関数fの像は、
と書くことができる。中心極限定理により、適当な可測集合Aに対して、は、正規確率変数N(0, P(A)(1 − P(A)))へ分布収束する。同様に、適当な関数fに対して、は、正規確率変数へ分布収束する。
- 定義
- をSの可測な部分集合の族における経験過程という。
- をSからへの可測関数の族における経験過程という。
経験過程に関する有名な結果のひとつに、Donskerの定理がある。この定理は、ある一定のガウス過程へ弱収束する経験過程のクラス(Donskerクラス)についての研究につながった。DonskerクラスはGlivenko-Cantelliクラスになるが、その逆は一般的に正しくない。
例
[編集]例として、経験分布関数を考える。i.i.d.確率変数において、これは、
と与えられる。この例では、経験過程はのクラスによって特徴づけられる。このはDonskerクラスであることを示すことができ、特に、: はブラウン橋 B(F(x))に弱収束する。
参考文献
[編集]- P. Billingsley, Probability and Measure, John Wiley and Sons, New York, third edition, 1995.
- M.D. Donsker, Justification and extension of Doob's heuristic approach to the Kolmogorov–Smirnov theorems, Annals of Mathematical Statistics, 23:277–281, 1952.
- R.M. Dudley, Central limit theorems for empirical measures, Annals of Probability, 6(6): 899–929, 1978.
- R.M. Dudley, Uniform Central Limit Theorems, Cambridge Studies in Advanced Mathematics, 63, Cambridge University Press, Cambridge, UK, 1999.
- M.R. Kosorok, Introduction to Empirical Processes and Semiparametric Inference, Springer, New York, 2008.
- Galen R. Shorack and Jon A. Wellner, Empirical Processes with Applications to Statistics, Wiley, New York, 1986. SIAM Classics edition (2009), Society for Industrial and Applied Mathematics. ISBN 978-0-898716-84-9
- Aad W. van der Vaart and Jon A. Wellner,Weak Convergence and Empirical Processes: With Applications to Statistics, 2nd ed., Springer, 2000. ISBN 978-0-387-94640-5
- J. Wolfowitz, Generalization of the theorem of Glivenko–Cantelli. Annals of Mathematical Statistics, 25, 131–138, 1954.
外部リンク
[編集]- Empirical Processes: Theory and Applications, by David Pollard.
- Introduction to Empirical Processes and Semiparametric Inference, by Michael Kosorok.