緊急用務空域
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
緊急用務空域(きんきゅうようむくういき、英語: emergency response airspace[1])は、日本において災害発生時に警察や消防活動など緊急用務を行うための航空機の飛行が想定される場合、無人航空機(ドローン・ラジコン機)などの飛行が原則的に禁止される空域。災害などの規模に応じて国土交通省航空局によって指定され、航空局のWebサイトや公式X(旧Twitter)などで公示される[2]。
概要
[編集]2021年に栃木県足利市で発生した山林火災の際、消火活動中にドローンが目撃されたことで、事故を避けるために消防防災ヘリの活動が中断された[3][4]。国土交通省はこれを受けて2021年(令和3年)5月に航空法施行規則を改正し、消防、救助、警察業務その他の緊急用務を行うため空域を「緊急用務空域」として指定できるようにした。ドローンの操縦者は、飛行を開始する前に当該空域が緊急用務空域に該当するか否かを確認する義務を負う[5]。
対象
[編集]原則としてすべての無人航空機が飛行禁止となる。空港周辺、150m 以上の空域、人口集中地区上空などにおける飛行許可(包括許可含む)を事前に得ていた場合でも飛行できない[2]。
ただし、「災害等の報道取材やインフラ点検・保守など、緊急用務空域の指定の変更又は解除を待たずして飛行させることが真に必要と認められる飛行」に関しては、国土交通大臣からの許可を新たに得ることで実施可能である[2]。例えば、2024年1月1日に発生した能登半島地震では翌日に緊急用務空域が指定されたが、被災地の輪島市が日本UAS産業振興協議会に要請を行い、民間ドローンによる行方不明者の捜索、被害状況の確認、孤立地域への薬品配送などが実施された[6]。
緊急用務空域が指定されている状況下の許可取得に関しては、DIPS2.0を通じた通常の手続ではなく、電話や電子メール等で飛行許可・承認申請手続が可能となるケースがある[7]。
また、無人航空機以外では、航空機の飛行に影響を及ぼすおそれのある行為(気球、花火、凧揚げ等)についても一時的に許可または通報が必要になることがある[8]。
設定された例
[編集]- 大規模な地震
脚注
[編集]- ^ @mlit_mujinki (2024年1月8日). "国土交通省航空局公式アカウントの投稿". X(旧Twitter)より2024年1月11日閲覧。
- ^ a b c “緊急用務空域の設定に関するQ&A”. 国土交通省 航空局 (2023年11月30日). 2024年1月11日閲覧。
- ^ “無関係のドローン…山林の消火活動中断 足利市長「絶対やめて」”. 産経新聞 (2021年2月27日). 2024年1月11日閲覧。
- ^ “ドローン接近、ヘリの消火活動止まる 足利の山林火災”. 下野新聞 (2021年2月28日). 2024年1月11日閲覧。
- ^ “消防空域はドローン禁止 国交省、山林火災の消火中断受け”. 産経新聞 (2021年3月15日). 2024年1月11日閲覧。
- ^ “JUIDA、能登半島地震に対する活動について発表”. ドローンジャーナル(インプレス) (2024年1月9日). 2024年1月11日閲覧。
- ^ “能登半島地震発生後、2024年1月11日時点における国土交通省Webサイトのアーカイブ”. 2024年1月11日閲覧。
- ^ “航空機の飛行に影響を及ぼすおそれのある行為(気球、花火、凧揚げ等)”. 国土交通省. 2024年1月11日閲覧。
- ^ @mlit_mujinki (2023年3月8日). "福島県白河市及び郡山市における林野火災に関する緊急用務空域の告知". X(旧Twitter)より2024年1月11日閲覧。
- ^ @mlit_mujinki (2023年11月2日). "愛媛県大洲市における林野火災に関する緊急用務空域の告知". X(旧Twitter)より2024年1月11日閲覧。
- ^ @mlit_mujinki (2024年1月2日). "石川県で発生した令和6年能登半島地震に関する緊急用務空域の告知". X(旧Twitter)より2024年1月11日閲覧。
関連項目
[編集]- 航空法
- 重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律
- 特定用途空域(英: Special use airspace)
外部リンク
[編集]- 国土交通省 無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール
- 国土交通省航空局 無人航空機 (@mlit_mujinki) - X(旧Twitter)