羽田空港アクセス線
羽田空港アクセス線 | |||
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羽田空港アクセス線として活用予定の東海道貨物線(旧大汐線)/品川区大井 | |||
基本情報 | |||
通称 | 羽田空港アクセス線 | ||
現況 | 2023年6月頃に、東山手ルートの工事に着手。東山手ルートは、2031年度に開業予定。 | ||
国 | 日本 | ||
所在地 | 東京都 | ||
種類 | 普通鉄道(在来線) | ||
起点 |
田町駅付近(東山手ルート) 大井町駅(西山手ルート) 東京テレポート駅(臨海部ルート) | ||
終点 | 羽田空港新駅(仮称) | ||
全通 | 2031年度(東山手ルート、予定) | ||
所有者 | 東日本旅客鉄道 | ||
運営者 | 東日本旅客鉄道(第一種鉄道事業者) | ||
路線諸元 | |||
軌間 | 1,067 mm(狭軌) | ||
電化方式 | 直流1,500 V 架空電車線方式 | ||
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羽田空港アクセス線(はねだくうこうアクセスせん)(仮称)は、東日本旅客鉄道(JR東日本)が計画している東海道本線田町駅付近、東京臨海高速鉄道りんかい線大井町駅および東京テレポート駅と東京国際空港(羽田空港)との間を結ぶ計画の鉄道路線(空港連絡鉄道)である。
総事業費は2014年の報道で3200億円[1]、2020年の報道では3800億円[2]。完成まで10年程度を見込んでいる[3]。当初には(2019年2月)、JR東日本は東山手ルートとアクセス新線について、5月 - 6月頃に環境アセスメントの手続きを開始して約3年間で取りまとめ、工事の施工に約7年を要すると想定し、早ければ2029年度に開業するとしていたが[4][5]、2023年4月4日、開業目標を2029年度から2031年度に変更すると発表した[6]。
終日輸送人員は空港旅客のみで7万8000人、ピーク1時間の輸送量は現行の東京モノレール1万1000人、京急空港線1万4000人に対し、約2万1000人を想定[1]している。東京駅から羽田空港まで、約18分で到着できることが見込まれている[7]。
計画ルート
[編集]JR東日本は、羽田空港の第1ターミナルと第2ターミナルの間に終点となる「羽田空港新駅(仮称)」を設ける。そこから東京貨物ターミナル付近まで約5.0 kmの「アクセス新線」を建設する[8]。さらにそこから一部既存線を活用しつつ田町駅付近へ至る「東山手ルート」、大井町駅へ至る「西山手ルート」、東京テレポート駅へ至る「臨海部ルート」の3ルートを建設するとしている[9]。将来的には羽田空港新駅から第3ターミナルへの延伸も構想されている[9]。
アクセス新線区間
[編集]東京貨物ターミナル駅から羽田空港新駅までの約5 kmに、新設の複線トンネル(4.2km)を建設する[7]。当初計画では京浜島に立坑を建設する予定だったが、トンネル断面の変更(複円断面→単円断面)により、トンネル下部に避難空間を設けることで立坑を省略することとなった[11]。
なお、JR東日本が提出した鉄道事業許可申請書および関東運輸局の資料では、未開業区間(アクセス新線区間)である東京貨物ターミナル - 羽田空港新駅(仮称)間の路線名について東海道線と表記しており、最高速度は110 km/hとされている[12][13]。
羽田空港新駅(仮称)
[編集]羽田空港新駅は、京急空港線・羽田空港第1・第2ターミナル駅の手前(北ウイング側)、第1ターミナルと第2ターミナルの中間を通る首都高速湾岸線と第2ターミナル側にある駐車場(P3)との間の地下に開削トンネルで島式ホーム1面2線の構造で設置され、羽田空港新駅のホーム下で東京モノレール羽田空港線が交差する[7][14]。
ただし、アクセス新線区間のうち空港島内の駅やトンネルの躯体部分などの基盤施設については、空港施設として国(関東地方整備局)が整備する方針である[7][15]。
東山手ルート
[編集]アクセス新線区間 - 東京貨物ターミナル - 田町駅付近 - 東京駅[7]
- 新橋駅の上野東京ライン下り線から分岐し、東京貨物ターミナル駅からアクセス新線区間に入るルートである[7]。
- 東京貨物ターミナルから田町駅付近までは、休止線となっている東海道貨物線(大汐線)を改修して利用する[7]。新たに「大汐短絡線」[16]を建設することで田町駅付近で東海道線(旅客線)へ接続合流する。上野東京ラインを介して宇都宮線(東北本線)・高崎線・常磐線方面へ直通を想定している。
- 所要時間:羽田空港 - 東京駅間 約18分 現行:東京モノレール経由 28分、京急空港線経由 33分[1]
- 東海道線旅客線貨物線接続部(短絡線)
- 田町駅北方の山手線引き上げ線を撤去し、山手線・京浜東北線・東海道線上り線の線路を移設することで、東海道線の上下線の間に単線の接続線を設ける[7]。
- そこから単線シールドトンネルで東海道線下り線・東海道新幹線の下をくぐり、田町駅南側で地上へ出たのち、複線となり高浜西運河付近で大汐線改修区間に接続する[7]。
- 大汐線改修区間
- 東海道新幹線回送線と並行する大汐線を、複線で復旧させて使用する[7]。
- 東京貨物ターミナル内改良区間
- 東京貨物ターミナル駅内に、留置線や保守基地等の施設を整備する[7]。
- 貨物駅北部にある国際救援センター踏切付近は、当初計画では高架とする予定であったが、2021年5月19日に公開された「『羽田空港アクセス線(仮称)整備事業』変更届」[11]によると、高架橋の建設を取りやめ地平のままとする。
- 運転計画
- 15両編成まで対応し、運転本数は8本/時・144本/日を計画する。2020年5月には、「当初案の2倍強の運転本数を確保」との報道[2][17]があった。
西山手ルート
[編集]アクセス新線区間 - 東京貨物ターミナル - 大井町駅 - 大崎駅 - 新宿駅[9]
- 東京貨物ターミナルから「東品川短絡線」を建設し、品川シーサイド駅・大井町駅間でりんかい線に合流する。大崎駅から山手貨物線に乗り入れる。既にりんかい線と相互直通運転を行っている埼京線へ直通を想定する。また、新宿駅より中央本線に直通させる構想もある[18]。
- 所要時間:羽田空港 - 新宿駅間 約23分 現行:東京モノレール経由 46分、京急空港線経由 41分[1]
臨海部ルート
[編集]アクセス新線区間 - 東京貨物ターミナル - 東京テレポート駅 - 新木場駅[9]
- 東京貨物ターミナルから隣接するりんかい線・東臨運輸区(八潮車両基地)へ、回送線を複線化する。品川埠頭分岐点(東京テレポート駅構内)でりんかい線に合流する。りんかい線と線路が接続している京葉線へ直通を想定する[18]。
- 所要時間:羽田空港 - 新木場駅間 約20分 現行:東京モノレール経由 41分[1]
- 2024年の時点で、2031年度の開業を目指していると報じられた[19]。
沿革
[編集]構想経緯
[編集]2000年に運輸省(現:国土交通省)運輸政策審議会答申第18号(第18号答申)は「東京臨海高速鉄道臨海副都心線(現:りんかい線)の建設及び羽田アクセス新線(仮称)の新設」として、東京テレポート駅から東京貨物ターミナル駅を経て羽田空港に向かう路線がB路線(今後整備について検討すべき路線)[20]として取り上げ、「大崎方面からの直通ルートについても併せ検討する」とした。同答申では、同じくB路線として「東海道貨物支線の旅客線化等及び川崎アプローチ線(仮称)の新設」を取り上げ、品川駅および東京テレポート駅から浜川崎駅に向かう途中(現在:天空橋駅付近)に「羽田空港口駅(仮称)」を設けて羽田空港へ連絡する計画も取り上げられていたが、2002年にJR東日本が東京モノレールを子会社化したこともあり、これらの計画は進捗しなかった。
2013年10月29日にJR東日本が発表した「グループ経営構想V(ファイブ)『今後の重点取組み事項』について」[21]は、「今後の羽田空港の利用客増加を見据えた、空港アクセス改善策の検討」を記し、11月9日には、JR東日本が田町駅から休止中の東海道貨物線を活用して羽田空港へ向かう鉄道路線について整備の検討に入ったことをNHKが報じた[22][23]。
2014年8月19日にJR東日本は、国土交通省交通政策審議会の「東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会」で計画を明らかにした。本計画に関連して、東京都が保有する東京臨海高速鉄道の株式をJR東日本が買収する意向であることが明らかになった[24]。
2015年3月6日に東京都は「広域交通ネットワーク計画について≪交通政策審議会答申に向けた検討の中間まとめ≫」[25]を公表し、当路線は整備効果が高いとして「整備について優先的に検討すべき路線」5路線[注 1]に挙げた。7月10日に公表された「広域交通ネットワーク計画について≪交通政策審議会答申に向けた検討のまとめ≫」[26]も「羽田空港へのアクセスに特に効果が期待できる」として踏襲している[注 2]。当路線と競合する新空港線「蒲蒲線」(矢口渡駅 - 蒲田駅 - 京急蒲田駅 - 大鳥居駅)は、都が求める目標への寄与度が低いとして当路線より1段低い「整備について検討すべき路線」[注 3]とされ、都心直結線(押上駅 - 新東京駅 - 泉岳寺駅)は、費用便益比が1.0を下回るとして検討すべき路線からも外れた。
2016年4月7日に、東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会がまとめた交通政策審議会答申第198号[27]は、当路線を京葉線・りんかい線相互直通運転化と合わせて「国際競争力の強化に資する鉄道ネットワークのプロジェクト」に位置付け、4月20日に国土交通大臣に答申した。答申は優先順位を示していないが、課題の項目に「他の空港アクセス路線との補完関係を考慮しつつ、事業化に向けて関係地方公共団体・鉄道事業者等において事業計画の検討の深度化を図るべき」[28]と記載し、事業化に前向きな表現としている。また、この答申では久喜駅を介して東武伊勢崎線と直通運転する案についても提言されている[28][29]。
東京都は2018年度予算案で、東京メトロ株式の配当を原資とした「鉄道新線建設等準備基金」を創設して当線を含む6路線[注 4]の事業化を検討するとしている[30]。
2018年7月3日にJR東日本が発表した「グループ経営ビジョン『変革2027』」[31]は、「羽田空港アクセス線構想の推進」を記した。
2019年5月よりJR東日本は環境影響評価に着手[32]。
2020年2月8日、臨海部ルートと京葉線を乗り換えなしで結ぶ方針であること、羽田空港の終着駅を国際線ターミナル(現第3ターミナル)とすること、および西山手ルートから中央本線(長野、山梨方面)に直通させる構想があることが報道された[18]。
2020年4月30日、国土交通省関東地方整備局東京空港整備事務所は、2020年度事業概要において、空港アクセス鉄道(羽田空港アクセス線・京急空港線引上線)の基盤新規整備に新規着手することを発表。トラベルWatch(インプレス)によると、2020年度はJR東日本・京急との事業範囲の調整を含む整備に向けた調査・設計を推進してゆくとしている[32]。
事業許可後
[編集]2021年1月20日にJR東日本は「アクセス新線」区間である東京貨物ターミナル駅 - 羽田空港新駅(仮称)間の5.0 kmについて第一種鉄道事業許可を取得した[33][34][35]。事業費は田町駅 - 東京貨物ターミナル駅間(大汐線)の改良区間を含めて約3,000億円で、この時点では2022年度の着工、2029年度の運行開始を予定していた[33][34][35]。結局、2023年4月4日にJR東日本は当路線の着工を同年6月とし、2031年度の運行開始を目指すことを発表し、合わせて、羽田空港新駅は第2ターミナル駐車場に隣接した構内道路の地下1階に位置することが明らかにされた[36]。
品川区では途中駅設置の可能性を検討するための予算を区議会で可決した[37]。
2023年6月2日に起工式を開催し、本格着工することとなった[38]。
2023年12月7日、羽田空港における駅の建設を開始[39]。
2024年4月15日、田町駅付近の工事予定地で発見され、港区の教育委員会から保存が求められている高輪築堤の石積を避けて通すために計画を一部変更することを発表した[40][41][42]。
2024年7月24日、JR東日本は臨海部ルートを2031年度に東山手ルートと同時開業させる方向で調整しているとの報道があった[43]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 当路線以外の4路線は、東京メトロ有楽町線の豊洲駅 - 住吉駅間延伸、都営地下鉄大江戸線の光が丘駅 - 大泉学園町までの延伸、多摩都市モノレール線の上北台駅 - 箱根ケ崎駅間および多摩センター駅 - 町田駅間延伸。
- ^ 「整備について優先的に検討すべき路線」は(1)目標への寄与度(A評価は全路線の上位1/2以内)、(2)収支採算性(A評価は累積収支が40年以内で黒字化)、(3)費用便益比(A評価は1.0以上)がすべてA評価の第18号答申路線で、答申外で入ったのは羽田空港アクセス線のみ。
- ^ 「整備について検討すべき路線」は(1)がB評価(全路線の上位3/4以内)以上で第18号答申路線、もしくは(2)(3)がA評価の路線を条件とした。
- ^ 2015年の「広域交通ネットワーク計画について≪交通政策審議会答申に向けた検討のまとめ≫」で「整備について優先的に検討すべき路線」とした5路線に加え、新空港線「蒲蒲線」の蒲田駅 - 京急蒲田駅間が含まれている。
出典
[編集]- ^ a b c d e 大野雅人 (2014年8月20日). “羽田アクセス総取りか、JR新線3ルートの全貌(2/3)”. 日経コンストラクション. 日経BP. 2016年4月12日閲覧。
- ^ a b “羽田新線を国が工事、JR借用で調整 当初案2倍超の本数確保”. SankeiBiz (2020年5月12日). 2020年5月22日閲覧。
- ^ 大野雅人 (2014年8月20日). “羽田アクセス総取りか、JR新線3ルートの全貌(3/3)”. 日経コンストラクション. 日経BP. 2016年4月12日閲覧。
- ^ “JR東の「羽田空港アクセス線」計画、ついに始動 5〜6月に環境影響評価着手、開業は10年後”. 東洋経済オンライン (2019年2月15日). 2023年6月4日閲覧。
- ^ “JR東 都心と羽田空港結ぶ新線、29年度にも開業”. 日本経済新聞 (2019年2月15日). 2023年6月4日閲覧。
- ^ “羽田アクセス線、2年延期 - 朝日新聞デジタル” (2023年4月5日). 2023年6月4日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k “羽田空港アクセス線(仮称)の本格的な工事に着手します”. 2023年4月23日閲覧。
- ^ “羽田空港アクセス線(仮称)の環境影響評価手続きの実施について” (PDF). 東日本旅客鉄道 (2019年2月15日). 2019年2月21日閲覧。
- ^ a b c d 大野雅人 (2014年8月20日). “羽田アクセス総取りか、JR新線3ルートの全貌(1/3)”. 日経コンストラクション. 日経BP. 2016年4月9日閲覧。
- ^ 『令和6年版 交通政策白書』国土交通省、2024年 。
- ^ a b 東日本旅客鉄道 (2021年5月19日). “第4章 事業計画の変更内容” (PDF). 東京都環境局 環境アセスメント図書アップロード. 2021年6月18日閲覧。
- ^ 編集部 (2021年3月12日). “羽田空港アクセス線の設計最高速度「110km/h」許可時点の事業基本計画が判明”. 鉄道プレスネット. 2022年12月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年12月20日閲覧。
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- ^ 田町駅 - 浜松町駅間で、東海道新幹線の下をくぐり抜けるトンネルとなる。
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- ^ a b 『東日本旅客鉄道株式会社「羽田空港アクセス線」の鉄道事業許可 〜羽田空港への新たなアクセスルートにより、利用者利便性が向上します〜』(PDF)(プレスリリース)国土交通省鉄道局都市鉄道政策課、2021年1月20日。オリジナルの2021年2月4日時点におけるアーカイブ 。2021年1月20日閲覧。
- ^ a b “羽田空港新線を許可、国交省 都心直結、29年度開業予定”. 共同通信. (2021年1月20日). オリジナルの2021年1月20日時点におけるアーカイブ。 2021年1月20日閲覧。
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- ^ “「羽田空港アクセス線」起工式 東京-羽田が18分、31年度開業へ”. 朝日新聞 . (2023年6月2日) 2023年6月4日閲覧。
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- ^ “「高輪築堤跡」の石垣か 羽田空港アクセス線工事予定地で発見”. NHK 首都圏のニュース. 日本放送協会 (2023年11月26日). 2024年4月15日閲覧。
- ^ 松本俊哉 (2024年4月15日). “羽田空港アクセス線、高輪築堤を避けて現地保存の計画変更”. トラベル Watch. 2024年4月15日閲覧。
- ^ 共同通信 (2024年7月24日). “臨海部ルート、31年度開業へ 羽田空港アクセス線、JR東日本”. 47NEWS. 2024年7月26日閲覧。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 羽田空港アクセス線(仮称)の本格的な工事に着手します - 東日本旅客鉄道ニュースリリース
- 進行中の建設プロジェクト > 輸送改善プロジェクト - 東日本旅客鉄道
- 国土交通省関東地方整備局 東京空港整備事務所
- 羽田アクセス総取りか、JR新線3ルートの全貌 - 日経コンストラクション