茶髪
茶髪(ちゃはつ、ちゃぱつ)とは、茶色に染めた、あるいは脱色した髪色を表現する語。
髪を染める文化
[編集]人の身体的な装飾の一つとして、髪の毛を自分の自然状態の色ではない色に染めるという慣習や文化は古来より多くの社会や文化圏に存在した。大和民族(いわゆる「日本人」)の場合、大部分の人は遺伝形質的には髪の色は漆黒であり、褐色や茶色を帯びている人は著しい少数の割合なので、加齢による白髪を黒髪に染める慣習や文化は古来より存在し、白人と交易するようになって以後、白人への憧れ、劣等感も相まって東北アジア人にはない茶髪や金髪に染めるという慣習や文化が広まった。
茶髪という言葉自体は1994年頃から使われだした[1]。日本においては「茶髪の若者=不良」というイメージを持たれていたが、1990年代中頃に、歌手の安室奈美恵に憧れファッションを模倣する「アムラー」が登場した頃から一般的になり始めたとされる[2]。また、当時ブームとなったサッカーのJリーグでも、髪の色で個性をアピールする選手が増えた。茶髪が好まれる理由としては「黒髪よりも軽く明るく見える」「お洒落、垢抜けて見える」「日焼けした肌に合う」「周りと違いを出せる」「ファッションの選択肢が増える」などがある[1][3]。ただし、後述のように学校や職場の規定で禁止されている場合もあり、茶髪よりもトーン(明るさ)を落としながら、黒髪よりも軽く見せる「暗髪(くらかみ)」が流行ったりしている。
脇坂クリニック大阪とAACクリニック銀座は、2017年に東京と大阪の1600人を対象にして「東京大阪の髪に関する意識調査」を実施した[4]。その結果、次の表のように男性において黒髪に半数に迫るほど支持が集まり、女性においては暗い茶髪に半数以上の支持が集まった。また、明るい茶髪に関しては男女ともに支持は10%代にとどまっている。
黒髪 | 暗い茶髪 | 明るい茶髪 | |
---|---|---|---|
東京・男性 | 49.5 | 38.5 | 12.0 |
大阪・男性 | 49.5 | 36.5 | 14.0 |
東京・女性 | 27.5 | 59.5 | 13.0 |
大阪・女性 | 29.0 | 52.0 | 19.0 |
茶髪に対する批判
[編集]染髪に対する批判として、身体の健康という観点からの批判と、人としてなすべきマナーやモラルという観点からの批判がある。
身体の健康という観点からの批判としては、毛髪や毛根や皮膚を損傷させ、ガンの原因になるという見解がある[5]。
日本におけるマナーやモラルという観点からの批判としては、大部分の日本人は髪色が黒なので自然状態のままであるべき、白人を真似て茶髪や金髪に人工的に染めることは、学生としても社会人としても不適切であるというもの[6]。
以下は飽くまで、日本における禁止規制である。
校則における禁止
[編集]日本では多くの幼稚園、小学校、中学校、中等教育学校、高等学校、高等専門学校が校則で茶髪や金髪などの染髪を禁止している。校則において、茶髪や金髪などの染髪を禁止するか容認または不問にするかは、学校による差異があり、服装や頭髪やその他の身だしなみに対する規制が厳しい学校では禁止しているが、規制がゆるい学校では容認または不問にしている。髪の色が先天的に漆黒ではなく茶色や褐色の生徒に対しても黒く染めることを強要する場合があり、2005年には生まれつき髪が赤茶けている生徒に、教員から黒髪を繰り返し強要・黒いスプレーを髪にかけられるなど退学を迫らせたとして、学校を提訴する事件も起きている[7]。日本全国の小学校、中学校、中等教育学校、高等学校、高等専門学校のうち、どの程度の割合の学校が禁止しているかは、政府による調査や統計が存在しないので不明である。
就業規則における禁止
[編集]日本では多くの政府や自治体の行政機関や法人、民間企業や法人が、就業規則や服務規程において、茶髪や金髪などの染髪を事実上禁止している。(学校は校則で禁止することが多いが、社会人はTPOが基本であり「常識として染めない」ことから規則ではあえて禁止にしないことが多い)就業規則や服務規程において、茶髪や金髪などの染髪を禁止するか容認または不問にするかは、業界や企業や業務部門や職種による差異があり、服装や頭髪やその他の身だしなみに対する規制が厳しい業界・機関・企業・法人・業務部門・職種では禁止しているが、規制がゆるい業界・機関・企業・法人・業務部門・職種では容認または不問にしている。工場作業員など、客と応対することがない職業では認めていることが多い。逆に接客業であっても、コンビニ等のフランチャイズ店は各店舗のオーナーに権限があるので、染めてもいいかどうかは店舗によって異なる。ただし、茶髪が認められている企業でも、茶髪のままで面接に行けば「常識がない」と判断されて不採用になる可能性が高い。日本全国の政府や自治体の機関や法人、民間の企業や法人のうち、どの程度の割合の業界・機関・企業・法人・業務部門・職種が禁止しているかは、政府による調査や統計が存在しないので不明である。アパレルショップでは店長に茶髪に染めることを強要され、拒否したスタッフが解雇された例がある[8][信頼性要検証]。一般的傾向として、銀行、証券、保険、商社、ホテル、旅館、百貨店、鉄道、航空は、服装や頭髪やその他の身だしなみに対する規制が厳しい業界と認識されている。
2004年、日本ヘアカラー協会 (JHCA) が、ヘアカラーの明るさの基準となる「JHCAレベルスケール」を開発。当初は美容師の勉強用ツールという目的だったが、多くの企業が「JHCAレベルスケール」を採用し、規則のボーダーライン判断にも用いるようになった[9]。
スポーツにおける禁止
[編集]- 水泳
- 2002年、日本水泳連盟では、「けばけばしいと応援してくれる人が少なくなる」「繁華街にいる若者と一緒だ。スポーツは(教育の)最後の砦という意識がある」といった理由で、水泳選手の茶髪を自粛するよう指導する方針を固め[10]、2010年にはシンクロ・水球・飛び込み選手にも適用拡大されることになった[11]。
- プロ野球
- 茶髪を選手に禁止した監督として、東北楽天ゴールデンイーグルスの野村克也[12]、2009年着任の横浜ベイスターズの尾花高夫・千葉ロッテマリーンズの西村徳文[13]・オリックス・バファローズの岡田彰布[14]、2014年の埼玉西武ライオンズの伊原春樹[15]、2015年のソフトバンクホークスの工藤公康[16]などがいる。WBC(2013年)では山本浩二[17]も。
- 逆に選手側から、東京ヤクルトスワローズでは2010年オフの契約交渉の席で石川雅規投手が、「チームの決めごとについて。茶髪、ヒゲなどについて最低限のルールをしっかりしよう」と選手の身だしなみについて要望を出した[18]。
- バレーボール
- バレーボール全日本男子の植田辰哉監督(2005年に就任)は、最初のミーティングで選手に、「寝癖のついたような頭や茶髪は禁止」と、自身の方針を伝えた[19]。
- 2013年には中田久美が、自身が監督を務める久光製薬スプリングスで、茶髪を禁止とした。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b “「おしゃれ白書'97」にみる現代女性の髪色感”. ポーラ文化研究所 (1997年11月25日). 2019年2月25日閲覧。
- ^ “「茶髪と平成」ヘアカラー老舗と振り返る アムラーで特別ボーナス”. withnews (2019年1月15日). 2019年2月25日閲覧。
- ^ “圧倒的大差! 「黒髪」VS「茶髪」、男性が好きなのはどっち?”. ファナティック. マイナビ (2015年3月27日). 2019年2月25日閲覧。
- ^ “モテる女子の決定版!男子の好きな「髪色」がとうとう明らかになったらしいぞ!”. CanCam.jp(キャンキャン) (2017年3月18日). 2020年4月6日閲覧。
- ^ “理容・美容業界にも知らされていない染毛剤の毒性”. 【環境といのちを守る会】全国本部事務局・ワダ通商. 2017年3月21日閲覧。
- ^ 有馬明恵. “日本のテレビ・コマーシャルにみる異文化受容──ヘアケア関連CMの分析を中心に── p.45” (PDF). 慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所. 2017年3月21日閲覧。
- ^ “黒スプレーかけられた 宮城の女子生徒が提訴”. 47NEWS. 共同通信 (全国新聞ネット). (2005年4月8日). オリジナルの2012年7月21日時点におけるアーカイブ。
- ^ “茶髪を拒否したら解雇!〜シリーズ「解雇理由」3月・4月分”. 労働相談センター・スタッフ日記 (2010年8月1日). 2017年3月21日閲覧。[信頼性要検証]
- ^ “職場で愛されるヘアカラーの髪色選び [カラーコーディネート]”. All About (2006年4月30日). 2017年3月21日閲覧。
- ^ “ピアスは支障のない範囲で 日本水連がHPで説明”. 47NEWS. 共同通信 (全国新聞ネット). (2002年5月7日). オリジナルの2012年7月19日時点におけるアーカイブ。
- ^ “茶髪禁止令 シンクロ・水球・飛び込み選手らも”. asahi.com (朝日新聞社). (2010年2月21日). オリジナルの2010年2月23日時点におけるアーカイブ。
- ^ “野村イズム継承…楽天、茶髪&長髪“NG””. スポニチ Sponichi Annex (スポーツニッポン新聞社). (2010年3月13日). オリジナルの2011年1月11日時点におけるアーカイブ。
- ^ “茶髪&ひげ禁止!巻き返し図る横浜とロッテの本気度”. ZAKZAK (産経デジタル). (2009年11月16日). オリジナルの2011年1月26日時点におけるアーカイブ。
- ^ “茶髪禁止!岡田監督「教育的始動」”. デイリースポーツonline (デイリースポーツ/神戸新聞社). (2009年10月25日). オリジナルの2011年1月26日時点におけるアーカイブ。
- ^ “選手の要望で「ダボユニフォーム」、茶髪、ひげOKへ 西武の方針転換に野球ファンがガックリ”. J-CASTニュース (ジェイ・キャスト). (2014年6月6日) 2017年3月21日閲覧。
- ^ “なぜ工藤監督は、茶髪もガムも禁止するのか”. 東洋経済オンライン. 東洋経済新報社 (2015年3月6日). 2017年3月21日閲覧。
- ^ “WBC山本浩二監督の“金髪・茶髪禁止令”に野球界から批判の声が聞こえないのはなぜか”. ダイヤモンド・オンライン. ダイヤモンド社 (2013年1月29日). 2017年3月21日閲覧。
- ^ “ヤクルト石川「茶髪&ヒゲ禁止」訴える”. nikkansports.com (日刊スポーツ新聞社). (2010年12月14日) 2017年3月21日閲覧。
- ^ “トークスクエア” (PDF). 旧新日鉄『Nippon Steel Monthly(ニッポンスチールマンスリー)』. 新日鉄住金 (2008年10月). 2017年3月21日閲覧。