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菅野道夫

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
菅野 道夫
生誕 (1940-02-03) 1940年2月3日
日本の旗 日本横浜市
死没 (2023-08-09) 2023年8月9日(83歳没)
研究分野 ファジィ理論
研究機関 東京工業大学
理化学研究所
出身校 東京大学
主な業績 ファジィ測度
菅野積分(Sugeno integral
主な受賞歴 日本ファジイ学会 論文賞(1994年)
日本ファジイ学会 業績賞(1999年)
IEEE Neural Network Council ファジィシステムパイオニア賞(2000年)
IEEE Frank Rosenblatt Award(2010年)
IPMU Kampé de Fériet賞(2012年)
IEEE SMC Lotfi A. Zadeh Pioneer賞(2017年)
プロジェクト:人物伝
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菅野 道夫(すげの みちお、1940年昭和15年〉2月3日 - 2023年令和5年〉8月9日)は、日本のファジィ理論研究者[1]数学者人工知能学者、言語学者。工学博士[2]東京工業大学名誉教授[3]マドリード工科大学名誉博士[4]。 国際ファジィ工学研究所 顧問、日本ファジィ学会 会長、International Fuzzy Systems Association(国際ファジィシステム学会)会長などを歴任した。

来歴

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  • 高校生の頃は理論物理学に興味を持ち、東京大学物理学科に進んだが、卒業後の1960年代終わり頃に、ロトフィ・ザデーの論文に感銘を受けたことから、ファジィ理論の研究に取り組み始めた。[5]
  • 1975年に工学博士号を取得[2]
  • 1976年から1977年にかけて、クイーン・メアリー・カレッジ(ロンドン大学)、および、トゥールーズのオートメーション・システム解析研究所(LAAS)[6]にて在外研究を行った[7]
  • 1978年以降、ファジィ理論を制御工学に応用する研究を進め、1980年から83年にかけて、浄水場の水質をコントロールする、日本初のファジィアプリケーションを開発した。[8]
  • 1987年、音声で大まかな指示を与えるだけで、自由自在に走り方をコントロールできる模型自動車の試作に成功した。[9]
  • 1993年、大学入学センター試験「現代文」で、菅野道夫「ファジィ理論の目指すもの」が採用された。[10]
  • 1994年1月、人間の言葉を無線で送り、地上から人間の言葉を無線で伝え、自在に遠隔操縦できる「知的無人ヘリコプター」の公開実験を行った(静岡県、向笠飛行場にて)。それ以前のヘリは、有人でも無人でも複雑な操作が必要だったが、このヘリでは、「もう少し前進」「大きく右へ旋回」といったあいまいな指示でも、その意味をほぼ正確に読み取って伝えることができるため、専門的な訓練を受けなくてもすぐ操縦できるという利点がある。[11]
  • 1995年2月、小型「知的無人ヘリコプター」の公開実験にて(静岡県、向笠飛行場)、人工衛星によるGPSを利用して飛び、あらかじめ記憶させた模様の描かれた場所に着陸する世界初の試みに成功した。[12]
  • 1970年代後半より、ファジィ理論とファジィ制御の研究を進める中で、言語に興味をもつようになった。ウィトゲンシュタインの哲学を知り 、チョムスキーよりもウィトゲンシュタインの観点に近い言語理論があるのではないかと考えるようになっていたところ、80年代後半にM・A・K・ハリデーの言語学理論に出会った。[13] 1990年頃にシステムの言語モデルに関心を持つようになり、ハリデーの選択体系機能言語学を本格的に学び始めた。[14]
  • 2000年、東京工業大学の定年退職を機に理化学研究所・脳科学総合研究センターへ移り、ハリデーを顧問に迎えて、人間の知の体系としての言語システムにもとづく日常言語コンピューティングのプロジェクトに取り組んだ。[14]
  • 今日、研究者の評価を示す指標として用いられるh-index(h指数)には、論文の被引用数を被積分関数としファジィ測度を計数測度とする菅野積分(Sugeno integral)が用いられている。[15][16]
  • 2023年8月9日、死去[17]

略歴

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  • 1940年 横浜市出身
  • 1962年 東京大学 理学部物理学科卒業
  • 1962年 三菱原子力工業 研究員
  • 1965年 東京工業大学 工学部制御工学科 助手
  • 1977年 東京工業大学大学院 総合理工学研究科システム科学専攻 助教授(ファジイシステム理論、システム数学)
  • 1985年 東京工業大学大学院 総合理工学研究科システム科学専攻 教授(ファジイシステム理論)
  • 2000年 理化学研究所脳科学総合研究センター 知能アーキテクチャ研究グループ 言語知能システム研究チーム チームリーダー[18]
  • 2005年 同志社大学 文化情報学部 文化情報学科 特別客員教授
  • 2010年 European Center for Soft Computing(ヨーロッパ・ソフトコンピューティング・センター)名誉研究員

学術賞歴

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  • 1986年 日本自動制御協会 椹木記念論文賞
  • 1988年 日刊工業新聞社 技術科学図書文化賞 優秀賞
  • 1990年 北米ファジィ情報処理学会 優秀論文賞
  • 1992年 日本ファジイ学会 優秀著述賞
  • 1994年 日本ファジイ学会 論文賞
  • 1994年 国際MOISIL賞
  • 1997年 International Fuzzy Systems Association (国際ファジィシステム学会)フェロー[19]
  • 1999年 日本ファジイ学会 業績賞
  • 2000年 IEEE Neural Network Council ファジィシステムパイオニア賞[20]
  • 2003年 国際ファジイシステム学会 Outstanding Achievement賞
  • 2010年 IEEE Frank Rosenblatt賞[21]
  • 2012年 IPMU (Information Processing and Management of Uncertainty in Knowledge-Based Systems) Kampé de Fériet賞[22]
  • 2017年 IEEE SMC Lotfi A. Zadeh Pioneer賞[23]

委員歴

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  • 日本ファジィ学会 副会長 (1989-1990)
  • 国際ファジィ工学研究所 顧問 (1989-1995)
  • 日本ファジィ学会 会長 (1991-1993)
  • IEEE, SMC東京支部支部長(1994-1996)
  • International Fuzzy Systems Association (国際ファジィシステム学会)会長 (1997-1999)
  • 日本機能言語学会 理事(1997-2002)

著書・訳書

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関連文献

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脚注

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  1. ^ 『ファジィ:新しい知の展開』中村雄二郎ほか, 日刊工業新聞社, 1989年, 248頁。
  2. ^ a b 菅野道夫『Theory of fuzzy integrals and its applications』 東京工業大学〈工学博士 乙第586号〉、1975年。NAID 500000378066http://t2r2.star.titech.ac.jp/cgi-bin/publicationinfo.cgi?q_publication_content_number=CTT100595242 
  3. ^ 東京工業大学STARサーチ 菅野道夫 - 東京工業大学
  4. ^ Doctores Honoris Causa, Universidad Politécnica de Madrid
  5. ^ D・マクニール、P・フライバーガー『ファジィ・ロジック』寺野寿郎監修/田中啓子訳、新曜社、1995年、226頁。
  6. ^ LAAS - Laboratoire d'Automatique et d'Analyse des Systèmes、現在の名称はLaboratoire d'Analyse et d'Architecture des Systèmes
  7. ^ Adolfo Rodríguez de Soto, Enric Trillas (2006). Algunos genios de la computación. Biografías breves, Publicaciones Universidad de León, p.140. ISBN 978-8497732925
  8. ^ D・マクニール、P・フライバーガー『ファジィ・ロジック』寺野寿郎監修/田中啓子訳、新曜社、1995年、228頁。
  9. ^ 『日本経済新聞』1987年7月14日付。
  10. ^ センター試験 国語(現代文)対策 WIKIBOOKS
  11. ^ 『朝日新聞』1994年1月23日付朝刊、第13版、第26面。
  12. ^ 『朝日新聞』1995年2月25日付朝刊、第13版、第1面。
  13. ^ 菅野道夫「言語と脳の内なる邂逅」『RIKEN BSI NEWS』第13号、理化学研究所脳科学総合研究センター、2001年。 
  14. ^ a b 菅野道夫「ファジィ理論との邂逅とショケ積分への道」『知能と情報』第29巻第3号、日本知能情報ファジィ学会、2017年、83頁。 
  15. ^ 成川康男, 藤本勝成「菅野積分の歩んできた,そして,歩んで行く道のり -菅野先生の喜寿をお祝いして- 第3回:菅野積分の数理」『知能と情報』第28巻第5号、日本知能情報ファジィ学会、2016年、132-140頁、doi:10.3156/jsoft.28.5_132 
  16. ^ 今岡春樹「菅野道夫先生を悼んで」『知能と情報』第36巻第1号、日本知能情報ファジィ学会、2024年、1頁、doi:10.3156/jsoft.36.1_1 
  17. ^ “菅野道夫さん死去 東京工業大名誉教授、ファジー理論”. 東京新聞. (2023年8月21日). https://www.tokyo-np.co.jp/article/271542 2023年8月21日閲覧。 
  18. ^ 研究最前線 言語を操る知的コンピュータを創る - 理化学研究所
  19. ^ IFSA FELLOW COMITTEE AND PROCEDURE - International Fuzzy Systems Association
  20. ^ Fuzzy Systems Pioneer Award - IEEE. (なお、NNC (Neural Networks Council) は現在のCIS (Computational Intelligence Society))
  21. ^ IEEE FRANK ROSENBLATT AWARD RECIPIENTS - IEEE
  22. ^ Kampé de Fériet Award - IPMU Conferences
  23. ^ Lotfi A. Zadeh Pioneer Award - IEEE, SMC

関連項目

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外部リンク

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