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角化嚢胞性歯原性腫瘍

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
角化嚢胞性歯原性腫瘍
組織像
概要
分類および外部参照情報
ICD-10 K09.0
ICD-9-CM 526.0

角化嚢胞性歯原性腫瘍(かくかのうほうせいしげんせいしゅよう、Keratocystic odontogenic tumor;KCOT[1])は、歯原性腫瘍の一種で、良性腫瘍である。多発する場合は基底細胞母斑症候群の1症状としての発生が多い[2]

歯原性角化嚢胞(しげんせいかっかのうほう、odontogenic keratocyst;OKC)として嚢胞に分類されていた[1][3]が、浸潤性や再発率の高さ、増殖活性の高さから2005年のWHO分類により腫瘍として取り扱うようになった[2]。臨床所見はエナメル上皮腫と共通することが多いが、歯根吸収は稀である。

診断

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確定診断は病理診断にてなされる。

病理組織所見

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表面が波状を示す錯角化重層扁平上皮英語版で裏装されている[4]。上皮の基底面は平坦で上皮釘脚の伸長は見られない。また、立方形から円柱形の基底細胞の柵状配列が見られる。裏装上皮は乳頭間隆起を欠き、結合組織からの剥離傾向が強く、嚢胞壁内の嬢細胞や小上皮塊の存在とあわせて再発の原因とされる。

画像所見

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単房性・多房性の境界明瞭なX線透過像を有し、辺縁は帆立貝状所見を訂することがある[5]CT画像では病変内部に不定形角化物が認められることがある[5]MRIでは通常内部が不均一なT1強調像では低信号から中間信号、T2強調像では強信号を示し、造影像では辺縁の1層のみ造影される[6]

鑑別

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エナメル上皮腫含歯性嚢胞歯根嚢胞との鑑別が必要となる場合がある[5]

原因

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歯堤由来の疾患で、埋伏歯と関係があると考えられている。

遺伝

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基底細胞母斑症候群による角化嚢胞性歯原性腫瘍のみでなく、症候群以外の症例でも、ヘッジホッグシグナル伝達経路の一つであるPTCH遺伝子の変位が報告されており、これと関係があるとする研究がある[1][7][8]

症状

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腫脹が最も一般的な症状であるが、無症状で、歯科におけるX線撮影にて偶然発見されることが多い[9]

悪性転換

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扁平上皮癌への悪性転換が発生することがあるが、極めて稀である[10]

疫学

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好発年齢は10-30歳代で、発生頻度としては男性の下顎大臼歯部に多い[2]。摘出後の再発が15~58%ある[2]

治療

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全摘出術が行われるが、再発の対策に、骨削除なども行われる[2]。腫瘍の大きさが大きな場合には、開窓術により腫瘍の縮小をはかり、その後に全摘術が行われることもある[11]

顎骨切除が行われることもある[1][12]

参考画像

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脚注

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  1. ^ a b c d Madras J, Lapointe H (March 2008). “Keratocystic odontogenic tumour: reclassification of the odontogenic keratocyst from cyst to tumour”. J Can Dent Assoc 74 (2): 165–165h. PMID 18353202. http://www.cda-adc.ca/jcda/vol-74/issue-2/165.html. 
  2. ^ a b c d e 高田隆森昌彦小川郁子 著「第7章 口腔腫瘍 2.歯原性腫瘍 2.良性上皮性歯原性腫瘍 5)角化嚢胞性歯原性腫瘍」、白砂兼光古郷幹彦 編『口腔外科学』(第3版)医歯薬出版東京都文京区、2010年3月10日、212-214頁。ISBN 978-4-263-45635-4NCID BB01513588 
  3. ^ Mateus GC, Lanza GH, de Moura PH, Marigo Hde A, Horta MC (November 2008). “Cell proliferation and apoptosis in keratocystic odontogenic tumors”. Med Oral Patol Oral Cir Bucal 13 (11): E697–702. PMID 18978709. http://www.medicinaoral.com/medoralfree01/v13i11/medoralv13i11p697.pdf. 
  4. ^ Thompson LDR. Head and neck pathology - (Foundations in diagnostic pathology). Goldblum JR, Ed.. Churchill Livingstone. 2006. ISBN 0-443-06960-3.
  5. ^ a b c 吉中正則松尾綾江口腔・顎顔面領域の検査と疾患~顎骨・軟組織の病変と画像所見~」『日本放射線技術学会雑誌』第64巻第11号、社団法人日本放射線技術学会、2008年、1410-1425頁、ISSN 0369-4305、ONLINE ISSN 1881-48832010年5月30日閲覧 
  6. ^ 有吉靖則上杉康夫木村吉宏坂下英明島原政司藤田茂之 著「各論 2 腫瘍性疾患 A 良性歯原性腫瘍 角化嚢胞性歯原性腫瘍」、島原政司有吉靖則 編『顎口腔領域におけるMRI診断』(第2版第1刷)学建書院東京都文京区、2010年10月20日、83-84頁。ISBN 978-4-7624-1623-1NCID BB03594591 
  7. ^ PATCHED, DROSOPHILA, HOMOLOG OF, 1; PTCH1. OMIM. URL: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/dispomim.cgi?id=601309. Accessed on: December 25, 2008.
  8. ^ 小宮山一雄 (2009年4月7日). “角化嚢胞性歯原性腫瘍”. MyMed 医療電子教科書. マイメド. 2010年5月30日閲覧。
  9. ^ Habibi A, Saghravanian N, Habibi M, Mellati E, Habibi M (September 2007). “Keratocystic odontogenic tumor: a 10-year retrospective study of 83 cases in an Iranian population”. J Oral Sci 49 (3): 229–35. doi:10.2334/josnusd.49.229. PMID 17928730. https://doi.org/10.2334/josnusd.49.229. 
  10. ^ Piloni MJ, Keszler A, Itoiz ME (2005). “Agnor as a marker of malignant transformation in odontogenic keratocysts”. Acta Odontol Latinoam 18 (1): 37–42. PMID 16302459. 
  11. ^ 良性腫瘍”. 口腔外科とは?. 日本口腔外科学会. 2011年7月29日閲覧。
  12. ^ 佐藤廣 著「第3章 顎・顎関節の疾患 1)歯原性嚢胞 ④歯原性角化嚢胞(原始性嚢胞)」、編集 佐藤, 廣白数, 力也; 又賀, 泉 ほか 編『口腔顎顔面疾患カラーアトラス』監修 道健一(第1版第2刷)、永末書店京都市上京区、2001年8月23日、184頁。ISBN 4-8160-1099-8