警視庁サイバー犯罪対策課
警視庁サイバー犯罪対策課(けいしちょうサイバーはんざいたいさくか)は、東京都の警視庁生活安全部にある警察組織。
概要
[編集]日本の警察はサイバー犯罪(ハイテク犯罪)対策としてサイバー犯罪対策室を道府県警察本部に設置している[1]。東京都の場合はハイテク犯罪対策総合センター[2]を2000年2月に設置した。前身は1999年5月7日に設置の警視庁ハイテク犯罪対策センター[3]である。
警視庁組織規則第57条の3によると、ハイテク犯罪対策総合センターは港区新橋に置かれ、「ハイテク犯罪に係る総合的対策」「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」「インターネット端末利用営業の規制に関する条例」「高度な情報技術を利用する犯罪の取締り」に関する任務にあたった。
センターは警視庁本部に設置されていたハイテク犯罪総合対策本部およびハイテク犯罪総合対策本部幹事会の事務局を兼ねた(警視庁ハイテク犯罪総合対策実施要綱)。
警察職員勤務規程によると職員は私服で勤務する。
2005年9月の段階で、センターはデジタルアーツ、ネットスター、ウェブセンス・ジャパン、JWordの4社に犯罪関連サイト情報を提供している[4]。
2010年4月1日、センター内に高度情報犯罪取締班を新設した[5]。
2011年4月1日、ハイテク犯罪対策総合センターからサイバー犯罪対策課に格上げされた。
組織
[編集]管理職は課長、管理官、班長、警視庁サイバー犯罪捜査官等のサイバー犯罪捜査官らで構成される。理事官が置かれることがある。
- 課長
- 1名の警視。警視庁ハイテク犯罪総合対策本部と幹事会の事務局長を務める他、警視庁重大ハイテク犯罪対処連絡室室員(設置時)、警視庁サイバーテロ対処本部本部員(設置時)を務める。
- 管理官(課長代理等)
- 課内の「サイバー犯罪対策」・「サイバー犯罪情報」・「第一サイバー犯罪捜査」・「第二サイバー犯罪捜査」・「第三サイバー犯罪捜査」・「第四サイバー犯罪捜査」の6つを分掌する。警視庁警察通信対策委員会に構成員として参加する。
- 班長
- 警部または警部相当職員。上官の命を受け係の事務を掌理する。
課長代理の担当
[編集]- サイバー犯罪対策
- 管理係(課内庶務・総合対策企画)
- 対策係(関係機関および団体との連絡、サイバー犯罪相談、ネット端末利用営業届出、ネット端末利用営業条例違反者行政処分)
- 技術調査係(サイバー犯罪調査研究、アクセス管理者指導及び支援、サイバー犯罪対策に係る電子計算機管理運用)
- 第一サイバー犯罪捜査
- 情報係(情報収集及び管理、初動捜査)
- 捜査第一・第二係(サイバー犯罪捜査指導、不正アクセス禁止法違反取締、ネット端末利用営業規制条例違反取締、生活安全部長特命サイバー犯罪捜査)
- 第二サイバー犯罪捜査
- 捜査第三〜第五係(高度な情報技術利用犯罪取締)
- 第三サイバー犯罪捜査
- 捜査第六〜第八係(ネット上の違法情報および有害情報に係る犯罪取締)
- 第四サイバー犯罪捜査
- 捜査第九・第十係(同上)
- 情報追跡係(ネット上の違法情報および有害情報の発信元捜査)
- 新設
- サイバー犯罪特別対処班(道府県警捜査共助依頼によるプロバイダ等差押および検証、同ネットバンキング不正送金事案初動捜査)
- 機動サイバー班(ネット上の犯罪予告解析、所轄警察署の初動捜査支援、対処法指導)
- 名称未定(不正アクセスや新型ウイルス研究の専門班)※2014年秋発足予定[6]
(警視庁本部の課長代理の担当並びに係の名称及び分掌事務に関する規定)
ハイテク犯罪テクニカルオフィサー
[編集]かつて警視庁に所属する警察官に付与された資格。警部以下の階級で管理職でない職員は、ハイテク犯罪対策総合センターでのハイテク犯罪に係る実務経験が2年以上経過するとハイテク犯罪テクニカルオフィサーの認定に推薦される基準を満たした(警視庁ハイテク犯罪テクニカルオフィサー運用要綱)。
相談と情報提供
[編集]身に覚えのない電話や電子メールが迷惑である、インターネットで知り合った相手からインターネットを利用した嫌がらせを受けている、インターネット掲示板で誹謗・中傷を受け仕事に支障が生じ悩んでいる、犯罪予告された、名誉毀損を受けた、詐欺・悪徳商法に遭った、インターネットオークションで商品が届かない、などの事例が対策課に寄せられている[7][8]。
相談は、東京都内の場合、サイバー犯罪対策課で電話により受理している。管轄の警察署でも相談できる。被害届は管轄の警察署で受理する[9]。民事上の損害賠償などの相談については警察は民事不介入であるため、内容に応じて弁護士会その他の機関・団体等を紹介している[10]。
緊急の場合は110番通報が推奨されている。
検挙事例
[編集]サイバー犯罪対策課と各警察署が連携し検挙に至る。他人の無線LAN、インターネットカフェ、携帯電話(特にスマートフォン)等からの犯行も検挙している。
- 不正アクセス禁止法違反 - クラッキング(ハッキング)など。
- 器物損壊罪 - コンピュータウイルスなど。
- 業務妨害罪 - インターネット掲示板の犯行予告など。
- 詐欺罪 - フィッシングなど。
- 詐欺幇助 - インターネット詐欺集団に他人のクレジットカードの情報を売るなど。
- 電子計算機使用詐欺罪(刑法第246条の2) - インターネットバンキングの不正送金など。
- 著作権法違反、著作隣接権侵害、公衆送信権侵害、送信可能化権侵害 - ファイル共有ソフトによる楽曲の無断配信など。
- 特定電子メール送信適正化法違反 - 迷惑メール送信など。
- 携帯電話不正利用防止法違反 - インターネット上に他人名義の携帯電話買い取りの広告など。
- 犯罪収益移転防止法違反 - インターネット上に他人名義のキャッシュカード販売の広告など。
- 旅券法違反、入管難民法違反 - インターネット上で購入した他人の身分証を利用し、パスポートを不正に申請・取得するなど。
- 電磁的記録不正作出及び供用の罪(刑法第161条の2)
- 私電磁的記録不正作出・同供用罪(刑法第161条の2第1項、第3項) - ポイントカードのポイント詐取など。
脚注
[編集]- ^ “サイバー犯罪対策室”. 日経パソコン用語事典2008. 日経BP ITpro. 2010年8月23日閲覧。
- ^ 警視庁本部処務規程により課等に該当する。
- ^ “警視庁、24時間体制の「ハイテク犯罪対策センター」開設”. 日経BP (1999年5月7日). 2010年8月23日閲覧。
- ^ “警視庁、JWordにも有害サイト情報を提供”. ITmedia (2005年9月9日). 2010年8月23日閲覧。
- ^ “高度なネット犯罪に対応、専従取締班を設置 警視庁”. 産経新聞 (2010年4月1日). 2010年11月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年8月23日閲覧。
- ^ “サイバー犯罪の捜査員増員 警視庁、署の初動捜査支援”. 日本経済新聞 (2013年9月20日). 2014年7月14日閲覧。
- ^ 警視庁公式サイト「情報セキュリティ広場 / 誹謗・中傷・個人情報の流布」より。
- ^ “ハイテク犯罪の現状と対策 - 警視庁ハイテク犯罪対策総合センターの相談と事件事例 -” (PDF). 2005 (平成17) 年度 研究紀要. 東京都高等学校情報教育研究会 (2006年5月). 2010年8月23日閲覧。
- ^ “2)「ハイテク犯罪と捜査について」” (PDF). 平成16年度5月度 技術士CPD中央講座 リスクマネージメント. 日本技術士会 (2004年5月15日). 2010年8月23日閲覧。
- ^ “IHJ:当協議会について:【警視庁】相談・通報機関の窓口情報”. インターネットホットライン連絡協議会. 2010年8月23日閲覧。
関連項目
[編集]- サイバーポリス
- サイバーフォースセンター(警察庁サイバー警察局情報技術解析課サイバーテロ対策技術室)
- コンピュータ・フォレンジック
- サイバー犯罪対策室