財閥 (韓国)
財閥 | |
---|---|
各種表記 | |
ハングル: | 재벌 |
漢字: | 財閥 |
発音: | チェボル |
2000年式: M-R式: 英語: |
Jaebeol Chaebŏl Chaebol |
財閥(チェボル、朝: 재벌、英: Chaebol)は、大韓民国の経済で大きな役割を果たしている大規模産業コングロマリット。現代韓国の経済体制は財閥経済とも言える。
旧宗主国の日本では大東亜戦争(太平洋戦争・第二次世界大戦)後に独占禁止法で禁じられた、創業者一族による同族経営を柱とする私的独占の企業支配体系が特徴である。1997年からのアジア通貨危機とIMFによる韓国救済の中で、当時第2位の財閥だった大宇財閥が解体された。しかし、現在も財閥は韓国経済の中で非常に大きな位置を占めている。
発祥
[編集]大東亜戦争以前の日本統治時代は、朝鮮民事令(明治45年朝鮮総督府制令第7号)により朝鮮半島においても大日本帝国(日本本土)の商法(現・会社法)が適用され、一家族ないしは1つの持株会社が複数の業種において支配的な立場を有する大企業を傘下に収めることは可能であった。
戦後、日本では独占禁止法・集中排除法並びに同族排除法が施行され、三井・三菱・住友をはじめ15あった大財閥が解体された。
しかし、独立を間近に控えていた上、日本本土と違って地場発祥の大資本がほとんど育っていなかった韓国では日本のような財閥解体は行われず、財閥・政商を中心とする旧宗主国大日本帝国の産業支配体系が温存された。これが現在に通じる財閥経済の発祥であると言って差し支えない。
日本との関係
[編集]どの財閥も、旧宗主国の日本と並々ならぬ深い関係を持っている。中でもロッテグループは在日コリアン1世の重光武雄が日本で創業した菓子メーカーが韓国に「凱旋」して財閥化しており、日本発祥であることを疑う余地がない。
サムスンは、前身の三星商会(現・サムスン物産)が日本統治時代に創業しており、かつ創業者は日本の早稲田大学を卒業していた。
ヒョンデ自動車は、創業期に日本の三菱自動車工業から技術導入を行った。
主な財閥
[編集]10大財閥
[編集]一般的に言われる10大財閥は以下の企業グループである[1]。
グループ名 | 創業者 | 中心人物 | 創業年 | 総資産[注 1] | 主な企業 | 備考 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
サムスン | 삼성 | 李秉喆 | 李健煕 | 1938年 | 363兆2000億ウォン | サムスン電子、サムスン物産、サムスン生命保険、サムスン火災海上保険 | |
SK | SK | 崔鍾建 | 崔泰源 | 1953年 | 170兆7000億ウォン | SKイノベーション、SKテレコム、SKハイニックス | |
現代自動車 | 현대자동차 | 鄭周永 | 鄭夢九 | 1967年 | 218兆6000億ウォン | 現代自動車、起亜自動車、現代モービス、現代製鉄、現代建設 | |
LG | LG | 具仁会 | 具光謨 | 1947年 | 112兆3000億ウォン | LGエレクトロニクス、LG化学、LGユープラス | |
ロッテ | 롯데 | 重光武雄 | 重光昭夫 | 1948年 | 110兆8000億ウォン | ロッテ製菓、ロッテ七星飲料、ロッテショッピング、ホテルロッテ、ロッテケミカル | |
ハンファ | 한화 | 金鍾喜 | 金升淵 | 1952年 | 58兆5000億ウォン | ハンファ、ハンファケミカル、ハンファ生命 | |
GS | GS | 許昌秀 | 2005年 | 62兆ウォン | GS、GSカルテックス、GSリテール、GS建設 | [注 2] | |
HD現代 | HD현대 | 鄭周永 | 閔季植 | 1972年 | 54兆3000億ウォン | HD現代重工業、現代尾浦造船、現代斗山インフラコア、HD現代オイルバンク | [注 3] |
新世界 | 신세계 | 李秉喆 | 李明熙 | 1963年 | 32兆5173億ウォン | 新世界百貨店、イーマート、ウェスティン朝鮮ホテル | [注 4] |
CJ | CJ | 李秉喆 | 李在賢 | 1953年 | 33兆7797億ウォン | CJ第一製糖、CJ CGV、CJ ENM、CJ大韓通運、CJ 4DPLEX | [注 5] |
問題点
[編集]財閥の創業家は、アメリカや日本の上場企業のような株主ないし社外役員、外部監査人などによる経営監視が厳しく行き届いていないことが他国と比べて多い。
財閥のトップは、自グループ内はもちろんのこと韓国政界や経済界にも強い影響力を発揮する。仮に犯罪行為を犯して収監されても、早期に仮釈放させて国の経済に貢献させよという論調が出る社会構造となっている。例えば、1990年から2012年にかけて、しばしば韓国10大財閥のトップが横領や背任、暴力行為等で逮捕されることがあったが、有罪判決を受けても大抵は執行猶予が付くとともに頃合いを見て特赦が与えられ、犯罪行為自体が無かったも同然となっており[2]、「有銭無罪」と批判されている[3]。
また、企業コンプライアンス・ビジネス倫理の確立も他国と比べて遅れ、金升淵、崔哲源、趙顕娥など、財閥一族の横暴な行為(韓国では「カプチル」と呼ばれるパワーハラスメント)が繰り返されて問題になっており、映画(ベテラン)にもなっている。2014年、韓進グループの中核企業大韓航空における、いわゆる「ナッツリターン事件」では、以前から存在した財閥企業の世襲や同族経営の問題点が明るみに出た。
サムスン電子・大韓航空などがグローバル企業として発展していく中で、それら財閥系企業に入社することを最終目標とする若者が増え、就職試験を少しでも高いレベルの大学から受験することを目指そうとして韓国全体が極端な学歴社会になり、大学受験競争が激化したという指摘もある。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ “サムスン、LG、ロッテ…韓国経済を支える10大財閥とその行方”. 現代ビジネス (2019年2月2日). 2020年8月24日閲覧。
- ^ “韓国に世界がア然! 財閥経済犯に「釈放」待望論 先進国では考えられない… (3/3ページ)”. 夕刊フジ (2015年1月15日). 2018年8月1日閲覧。
- ^ “[社説]イ・ジェヨンへの“温情判決”は有銭無罪の復活か”. ハンギョレ (2018年2月6日). 2019年8月31日閲覧。