コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

過酢酸

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
過酢酸
識別情報
略称 PAA
CAS登録番号 79-21-0 チェック
PubChem 6585
ChemSpider 6336 チェック
UNII I6KPI2E1HD チェック
EC番号 201-186-8
国連/北米番号 3107 3105
KEGG D03467 チェック
ChEBI
ChEMBL CHEMBL444965 チェック
RTECS番号 SD8750000
特性
化学式 CH3CO3H
モル質量 76.05 g/mol
外観 無色の液体
密度 1.0375 g/mL
融点

0℃ [2]

沸点

105℃ (25℃ (1.6 kPa)[2])

酸解離定数 pKa 8.2
屈折率 (nD) 1.3974 (589 nm, 20 °C)[2]
粘度 3.280 cP
危険性
GHSピクトグラム 可燃性腐食性物質急性毒性(低毒性)水生環境への有害性
GHSシグナルワード 危険(DANGER)
Hフレーズ H226, H242, H302, H312, H314, H332, H400
Pフレーズ P210, P220, P233, P234, P240, P241, P242, P243, P260, P261, P264, P270, P271, P273
NFPA 704
2
3
2
引火点 40.5 °C (104.9 °F; 313.6 K)
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

過酢酸(かさくさん、peracetic acid)は、過酸過カルボン酸のひとつ。PAA と略される。鼻を突く酢酸臭がある液体で、に易溶。

合成

[編集]

過酢酸はアセトアルデヒド自動酸化で工業的に生産される[2]

O2 + CH3CHO → CH3CO3H

硫酸のような強酸触媒の存在下で、酢酸過酸化水素から過酢酸が生成する[3]

H2O2 + CH3CO2H is in equilibrium with CH3CO3H + H2O

消毒薬としての利用

[編集]

過酢酸は殺菌消毒薬として使用され、6% 溶液がアセサイドという商品名で販売されている。主に医療器具の滅菌殺菌消毒に 0.2%–0.3% の濃度で用いられる。ほとんど全ての細菌真菌芽胞ウイルスに対しグルタルアルデヒドと同等かそれ以上の効果を示すが、グルタルアルデヒドと違い、人体に対する感作性やアレルギー性、変異原性が低い。分解生成物は酢酸過酸化水素で、過酸化水素は最終的に酸素に分解される。

過酢酸は、炭疽菌に代表される芽胞にも有効であり、グルタルアルデヒドホルムアルデヒド次亜塩素酸ナトリウム過酸化水素とともに世界保健機関 (WHO) が炭疽菌の消毒薬として推奨するもののひとつとなっている。

有機合成分野での応用

[編集]

有機合成の分野では、酸化剤として汎用される。多くの場合は過酸化水素と無水酢酸から系中で発生させて用いるが、純度の高いものは潜在的に爆発性があるとされ、危険である。通常の目的には危険性の低いメタクロロ過安息香酸 (mCPBA) を用いるべきである。

法規制

[編集]

日本の消防法において、第5類危険物(自己反応性物質)である有機過酸化物に属する。

出典

[編集]
  1. ^ Nomenclature of Organic Chemistry: IUPAC Recommendations and Preferred Names 2013 (Blue Book). Cambridge: The Royal Society of Chemistry. (2014). p. 749. doi:10.1039/9781849733069-FP001. ISBN 978-0-85404-182-4 
  2. ^ a b c d Klenk, Herbert; Götz, Peter H.; Siegmeier, Rainer; Mayr, Wilfried (2005), "Peroxy Compounds, Organic", Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, Weinheim: Wiley-VCH, doi:10.1002/14356007.a19_199
  3. ^ Rangarajan, B.; Havey, A.; Grulke, E.; Culnan, P. D. (1995). “Kinetic parameters of a two-phase model for in situ epoxidation of soybean oil”. J. Am. Oil Chem. Soc. 72 (10): 1161–1169. doi:10.1007/bf02540983.