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鳩のいる聖母子

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
『鳩のいる聖母子』
フランス語: La Vierge et l'Enfant à la colombe
英語: Madonna and Child with a Dove
作者ピエロ・ディ・コジモ
製作年1490年ごろ
種類ポプラ板上にテンペラ
寸法87 cm × 58 cm (34 in × 23 in)
所蔵ルーヴル美術館パリ

 

鳩のいる聖母子』(はとのいるせいぼし、: La Vierge et l'Enfant à la colombe: Madonna and Child with a Dove)は、イタリアルネサンスの画家ピエロ・ディ・コジモが1490年ごろにポプラ板上に油彩で制作した絵画である。本来、この絵画はオドアルド・ファルネーゼ枢機卿英語版の所有であったもので、ファルネーゼ家のコレクションに受け継がれ、ナポリカポディモンテ宮殿に移された[1]。しかし、ナポレオン戦争中の1802年にフランス軍によりローマサン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会に運ばれた後[1][2]、1803年または1804年にパリに持ち去られ[1]、以来ルーヴル美術館に所蔵されている[1][2][3]

作品[編集]

奇矯な人柄と特異な作風で知られるピエロ・ディ・コジモは、一般的な宗教画にもしばしば個性的な解釈を加えている[2]。本作の聖母マリア天国の女王として玉座に座っているのではなく、地面に座り、神の意志のままに自分を差し出す「謙遜の聖母」の姿勢を取っている[3]。ピエロ・ディ・コジモはこの謙遜の表現を質素なヴェールを用いて強調し[3]、田舎風の[2]庶民の女性のようなマリア像を作りあげている[3]。彼女は、神に仕える人間らしい侍女として慎ましい格子模様の黒っぽい壁掛けの前に座り[3]、重く沈んだ視線を前の欄干に置かれた本 (『聖書[3]、あるいは祈祷書[2][3]) に投げながら[2][3]、幼子イエス・キリストの動きを制御しようとしている[3]

イエスは前にいる鳩を指さしている[2]か、捕まえようとしている[3]が、彼も何か重く不安なエネルギーに満たされている[2]。本が「神の言葉と意志」を表すように、鳩は「聖霊」を象徴する。これらの要素の組み合わせの中に、キリスト教の中心奥義である「受肉 (神の言葉がイエス・キリストの肉体を借りたこと)」の概念が暗示されている[3]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d La Vierge et l'Enfant à la colombe”. ルーヴル美術館公式サイト (フランス語). 2024年6月2日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h 『NHKルーブル美術館III 中世からルネサンスへ』、1985年、134頁。
  3. ^ a b c d e f g h i j k 『ルーヴル美術館 収蔵絵画のすべて』、2011年、80頁。

参考文献[編集]

外部リンク[編集]