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鷲竜類

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
鷲竜類
Aetosauria
生息年代: 後期三畳紀, 231.4–201.3 Ma
デスマトスクスの復元骨格
デスマトスクスの復元骨格
地質時代
後期三畳紀
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓類 Diapsida
下綱 : 主竜形類 Archosauromorpha
: 主竜類 Archosauria
階級なし : 偽鰐類 Pseudosuchia
: 鷲竜目 Aetosauria
学名
Aetosauria
Marsh1884[1]
和名
鷲竜類(しゅうりゅうるい)
アエトサウルス類[2][3]
アエトサウリア類[4]

鷲竜類(しゅうりゅうるい、学名Aetosauria)は、後期三畳紀に生息した、偽鰐類に属する主竜類の分類群[5]アエトサウルス類(アエトサウルスるい)[2][3]アエトサウリア類(アエトサウリアるい)とも呼ばれる[4]三角形に近い形態を示す頭蓋骨、微小な、先端が切り落とされたような上を向いた吻部を特徴とする[5]。吻部の形態はブタにも喩えられる[2][4]。全長2メートルを超える属も知られるが[3]、あまり大型の動物でない[6]

系統的に現生のワニに近いものの食性は植物食性[3]、あるいは雑食性であった[7]。吻部を用いて地中の植物を掘り起こして摂食したとする見解があり[5][2]、この場合鼻は塊茎の匂いを嗅ぎ分けることに寄与し[5]、また歯は噛み切りにくい硬い植物の処理に長けたと推察される[5]。四肢はラウイスクス科オルニトスクス科のような他の偽鰐類の分類群と同じく直立型であり、また四足歩行をした[2]。背部や腹部の全体には四角形皮骨板が整然と配列しており[5][2]、これはラウイスクス類のような大型の捕食動物からの防御に役立てられたとされる[5][2][3]。また、体には複数のスパイクが存在する[6]

偽鰐類の内部における系統関係は研究者によって見解が異なり、Brusatte et al. (2010)[8]ではワニ形類に最も近い分岐群として扱われる一方、Nesbitt (2011)[9]ではワニ形類から見てラウイスクス類やポポサウルス類英語版よりも遠縁とされる[2]。下位分類にはアルゼンチンアエトサウロイデス[2]スコットランドスタゴノレピス[5]、同じくスタゴノレピス科に属するアメリカ合衆国ティポソラックス[3]などの属がいる。

三畳紀全体を通じて存在したパンゲア大陸はその大部分が乾燥していたが、鷲竜類の生息した後期三畳紀においてモンスーン気候が発達しており、一部地域は湿潤環境であった[6]。彼らは陸棲捕食動物であるラウイスクス類のほか[5]、水辺に生息する主竜形類植竜類[3]両生類メトポサウルス類英語版[3]プラケリアスなどの[3]獣弓類[4]、初期の恐竜[2]と共存した。鷲竜類をはじめとする偽鰐類はその存続期間に亘って最も優勢な消費者であったが[7]、ワニ形類を除く他の全ての偽鰐類はジュラ紀を迎えることなく三畳紀末の大量絶滅絶滅した[2]。急激な生態系の変化に耐えられなかったと見られている[2]

出典

[編集]
  1. ^ Marsh O.C. (1884). “On the classification and affinities of Dinosaurian reptiles”. Nature 31: 68–69.
  2. ^ a b c d e f g h i j k l 小林快次『ワニと恐竜の共存 巨大ワニと恐竜の世界』北海道大学出版会、2013年7月25日、11頁。ISBN 978-4-8329-1398-1 
  3. ^ a b c d e f g h i 『世界の巨大恐竜博2006 生命と環境─進化のふしぎ』長谷川善和ケネス・カーペンター董枝明徐星 監修、日本経済新聞社NHKNHKプロモーション日経ナショナルジオグラフィック社、22-25頁。 
  4. ^ a b c d D. E. Fastovsky、D. B. Weishampel 著、藤原慎一松本涼子 訳『恐竜学入門 ─かたち・生態・絶滅─』真鍋真 監訳、東京化学同人、2015年1月30日、301頁。ISBN 9784807908561 
  5. ^ a b c d e f g h i マイケル・ベントン 編、鶴田暁子 訳『コーウェン地球生命史 第6版』ロバート・ジェンキンズ久保泰 監訳、東京化学同人、2023年7月24日、141-142頁。ISBN 9784807920488 
  6. ^ a b c マーク・A・ノレル 著、久保美代子 訳『アメリカ自然史博物館恐竜大図鑑』田中康平 監訳、化学同人、2020年12月10日、32, 48頁。ISBN 978-4-7598-2051-5 
  7. ^ a b ダレン・ナイシュ、ポール・バレット 著、吉田三知世 訳『恐竜の教科書 最新研究で読み解く進化の謎』小林快次久保田克博千葉謙太郎田中康平 監訳、創元社、2019年2月20日、38-39頁。ISBN 978-4-422-43028-7 
  8. ^ Brusatte, S.L.; Benton, M.J.; Desojo, J.B.; Langer, M.C. (2010). “The higher-level phylogeny of Archosauria (Tetrapoda: Diapsida)”. Journal of Systematic Palaeontology 8 (1): 3–47. doi:10.1080/14772010903537732. 
  9. ^ Nesbitt, S.J. (2011). “The early evolution of archosaurs: Relationships and the origin of major clades”. Bulletin of the American Museum of Natural History 352: 1–292. doi:10.1206/352.1.