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麦角アルカロイド

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麦角アルカロイド(ばっかくアルカロイド、: ergot alkaloid)は、麦角菌ソライロアサガオハワイアン・ベービー・ウッドローズ等に含まれる、人体に毒性を示す成分である[1][2]。1960年代から薬理の研究が進み、2000年代にも中毒の話題[3]や、妊娠中、この成分と菌に汚染された麦類を食べることに言及がある[4]。有機物として、他の医薬品を生産するため利用してもいる[5]。あるいはカベルゴリン[6]など誘導体が知られ、パーキンソン病治療薬ほかに展開できるかどうか研究が進む[7]

概要

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様々な毒性を示し[8][9][10][11][12]、歴史上、麦角中毒(Ergotism(英語))と呼ばれる食中毒症状、向精神作用を示唆する事例をヨーロッパなどでしばしば引き起こしてきた(魔女狩りイソベル・ガウディー英語版ほか)。 獣医学では子牛の脚が部分的に壊死し、関与が疑われた例がある[13]。ベナクチジンにはイヌの中毒例が報告されている[14]

FDAの判断

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このアルカロイドの一種であるベナクチジン(Benactyzine(英語)は緩和薬として市販薬に調合された[15][16]。だがアメリカ食品医薬品局はベナクチジンの効果を疑問視して[注 1]、国内の小売り市場からこれを含む商品を撤去させた[17][いつ?]

血管の収縮

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日本国内にはかねてから血管収縮作用の研究があった[21]。麦角アルカロイドが作用する脳内の部位の特定(リスリドとして[22][23][24])、またオキシトシンと比較し、分娩時の止血への応用が検討された[25]

誘導体

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麦角アルカロイドの誘導体であるリスリド[26]Lisuride(英語)[22][27]、同じく誘導体のカベルゴリン[28]が研究された。

天然の有機化合物を討論する場では、麦角アルカロイド全般の合成研究[29][30]からエルゴリン骨格に注目された[31]。薬学界も1980年代には既に議論がある[32]

1990年代に天然有機化合物として期待されカノクラビン[33]量産の検討が進んだ(Chanoclavine-I(英語)の場合[34]、アゼピノインドール型クラビシピチン酸[35]の合成[38]の場合)。

脚注

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  1. ^ 副反応に口の渇き、吐き気[17]、大量摂取によって幻覚様反応を起こすとされる[17][18]

出典

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  1. ^ 阿部又三「麦角菌に関する研究(第3報)形態学的研究(その3)菌核の形成に就て」『日本農芸化学会誌』第22巻第5-6号、日本農芸化学会、1949年、152-156頁、doi:10.1271/nogeikagaku1924.22.152ISSN 0002-1407CRID 1390282679511254144 
  2. ^ 阿部又三 ; 大和谷三郎 ; 山野藤吾 ; 高津嘉春 ; 山田三郎「菌類によるアルカロイドおよび関連物質の生産 (第1報)」『日本農芸化学会誌』第41巻第2号、日本農芸化学会、1967年、68-71頁、doi:10.1271/nogeikagaku1924.41.68ISSN 0002-1407CRID 1390282679510383488 
  3. ^ 宮崎茂「エンドファイト中毒に関する最近の話題」『マイコトキシン』第53巻第1号、2003年、57–62頁、doi:10.2520/myco.53.57CRID 1390001204784465920 
  4. ^ 鈴木信「妊娠中のハトムギ使用について」『日本補完代替医療学会誌』第15巻第2号、2018年9月30日、141–151頁、doi:10.1625/jcam.15.141 
  5. ^ Rose, Anthony H.、中山清「第9章 抗生物質および他の医薬品の生産 §3.麦角アルカロイド」『工業微生物学』、岩崎書店、1963年、p209 (コマ番号0112.jp2)、doi:10.11501/2501342 
  6. ^ カベルゴリン”. jglobal.jst.go.jp. 化学物質情報. J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター. 2022年9月16日閲覧。
  7. ^ "市川潔 ; 小嶋正三「パーキンソン病治療薬カベルゴリン(カバサール)の薬理学的特性」『日本薬理学雑誌』第117巻第6号、日本薬理学会、2001年、395-400頁、doi:10.1254/fpj.117.395ISSN 0015-5691CRID 1390001204271406208 
  8. ^ 佐藤庄治(著)、新潟医科大学(編)「家兎剔出子宮交感神經系ニ對スル麥角「アルカロイド」ノ作用ニ就テ 筋ノ週期的刺戟ニヨルZuckungenノ高サノ波動性動搖ニ就テ」『新潟医科大学研究報告』第2巻第1号、新潟医科大学、1929年(昭和4年)、464-484 (コマ番号0247.jp2-0267.jp2)、doi:10.11501/1145352 
  9. ^ 最新医学研究会 編「各論 27.麦角アルカロイド」『医学受験シリーズ』 4巻、文光堂、1956年、57 (コマ番号0034.jp2)頁。doi:10.11501/2432247全国書誌番号:20873771 公開範囲は国立国会図書館内限定、図書館・個人送信対象。
  10. ^ パウル・カラー、石井, 輝司(訳)「第72章 麦角アルカロイド,ピロカルピン,ソラニン,シチシン,エゼリン,ストリキニーネ及び構造不明のアルカロイド」『有機化学』第3巻、共立出版、1957年、p.1214-1222 (コマ番号0115.jp2-0119.jp2)、doi:10.11501/1376703 
  11. ^ 赤堀四郎ほか(編)「第10章 薬物の生化学 §10・2 薬物作用各論」『生化学講座』第8 (医学の生化学)第2(病態化学)、共立出版、1959年、p237 (コマ番号0125.jp2)、doi:10.11501/1373016 
  12. ^ 井本稔 ほか(編)「10.2 麦角アルカロイド」『大有機化学』第17 下(複素環式化合物 第4)、朝倉書店、1960年、p303 (コマ番号0159.jp2)、doi:10.11501/1372605 
  13. ^ 坂本礼央, 坂口翔一, 庄野春日, 泉大樹, 舘野栄吉, 松本高太郎, 古岡秀文, 猪熊壽「麦角アルカロイド中毒を疑った肢端壊死の子牛の2症例」『北海道獣医師会雑誌』第54巻、北海道獣医師会、2010年、525-527頁、CRID 1050001337582798208ISSN 00183385 掲載誌別題『Journal of the Hokkaido Veterinary Medical Association』。
  14. ^ Schenk, J; Löffler, W; Weger, N (1976). “Therapeutic effects of HS-3, HS-6, benactyzine, and atropine in soman poisoning of dogs”. Archives of Toxicology (Springer) 36: 71-81. doi:10.1007/BF00277565. PMID 989716. 
  15. ^ ドレ, ジャン、ドニケル, ピエール、秋元, 波留夫 訳、栗原, 雅直 訳「第7章 穏和安定薬 §交感神経ならびに副交感神経遮断作用をもつ穏和安定薬:新しい麦角アルカロイド,ベナクチジン」『臨床精神薬理学』紀伊国屋書店、1965年、p264 (コマ番号0139.jp2)頁。doi:10.11501/1380882 
  16. ^ Raymond, MJ; Lucas, CJ (1956). “Benactyzine in psychoneurosis, with a note on the E.E.G. changes in normal subjects”. British Medical Journal (BMJ Publishing Group) 1 (4973): 952. doi:10.1136%2Fbmj.1.4973.952. PMC 1979798. PMID 13304390. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/13304390/. 
  17. ^ a b c “Looking backwards: a possible new path for drug discovery in psychopharmacology”. Nature Reviews. Drug Discovery 1 (12): 1003–1006. (December 2002). doi:10.1038/nrd964. PMID 12461521. 
  18. ^ Fisher, Seymour (1959). Child Research In Psychopharmacology (1st ed.). Springfield, Illinois: Charles C Thomas Pub.. p. 13 
  19. ^ 武井和夫、島津邦男「慢性頭痛 診断と治療の進歩 II 片頭痛 6 予防薬の使い方」『日本内科学会雑誌』第90巻第4号、一般社団法人 日本内科学会、2001年、613-619頁、CRID 1390001206440957952doi:10.2169/naika.90.613ISSN 0021-5384 
  20. ^ 岩澤義郎、檀上卓馬「〈新薬紹介総説〉 5-HT1B/1D受容体作動型片頭痛治療薬コハク酸スマトリプタン(イミグラン)」『日本薬理学雑誌』第117巻第6号、日本薬理学会、2001年、387-393頁、CRID 1390001204271401600doi:10.1254/fpj.117.387ISSN 0015-5691 
  21. ^ 血管収縮作用による片頭痛の予防薬としての検討[19]、治療薬の創薬との関連[20]
  22. ^ a b 宮澤友明、村山千恵、中川英彦「異型化赤血球誘発ラット脳梗塞に対するLisurideの影響」『日本薬理学雑誌』第98巻第6号、日本薬理学会、1991年、449-456頁、doi:10.1254/fpj.98.6_449ISSN 0015-5691CRID 1390001204272139392 
  23. ^ 三好理絵、鬼頭昭三、水野久美子、井ノ川雅恵「III-14 麦角アルカロイド, lisuride の脳内結合部位について」『日本組織細胞化学会総会プログラムおよび抄録集』、日本組織細胞化学会、1984年10月、111頁、CRID 1543950420084366464 
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  31. ^ 木口敏子、橋本千代美、内藤猛章、二宮一弥「30 エルゴリン骨格をもつ麦角アルカロイドの全合成」『天然有機化合物討論会講演要旨集』第27巻第0号、天然有機化合物討論会実行委員会、1985年、222-229頁、doi:10.24496/tennenyuki.27.0_222ISSN 2433-1856CRID 1390282681050619904 
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  35. ^ (-)-クラビシピチン酸”. jglobal.jst.go.jp. 科学技術用語情報. J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター. 2022年9月16日閲覧。
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  37. ^ 染井正徳、浜元昭一、中川享子、山田文夫、太田敏晴「62 麦角アルカロイド、(±)-clavicipitic acidの5工程全合成(ポスター発表の部)」『天然有機化合物討論会講演要旨集』第35巻第0号、天然有機化合物討論会実行委員会、1993年、479-486頁、doi:10.24496/tennenyuki.35.0_479ISSN 2433-1856CRID 1390282681054629504 
  38. ^ 天然有機化合物討論会の論文発表[36] [37]

関連項目

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