(415029) 2011 UL21
(415029) 2011 UL21 | |
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(415029) 2011 UL21 の軌道。それぞれの天体の位置は2024年1月1日0時 (UTC) 時点のもの。
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小惑星番号 | 415029 |
分類 | 地球近傍小惑星 (NEO)[1][2] 潜在的に危険な小惑星 (PHA)[1][2] |
軌道の種類 | アポロ群[1][2] |
発見 | |
発見日 | 2011年10月17日[1] |
発見者 | カタリナ・スカイサーベイ[1] |
発見場所 | アリゾナ州・ツーソン ( アメリカ合衆国) |
軌道要素と性質 元期:TDB 2,460,400.5(2024年3月31.0日) | |
軌道長半径 (a) | 2.122 au[1] |
近日点距離 (q) | 0.735 au[1] |
遠日点距離 (Q) | 3.508 au[1] |
離心率 (e) | 0.653[1] |
公転周期 (P) | 1128.683 日[1] (3.090 年[1]) |
軌道傾斜角 (i) | 34.887°[1] |
近日点引数 (ω) | 284.974°[1] |
昇交点黄経 (Ω) | 275.318°[1] |
平均近点角 (M) | 346.481°[1] |
最小交差距離 | 0.017 au[1] (地球軌道に対して) |
ティスラン・パラメータ (T jup) | 3.246[1] |
衛星の数 | 1 |
物理的性質 | |
直径 | 1.89 km(計算上)[3] 2.31 ± 0.70 km[4] 2.5 km[5] |
自転周期 | 1.562 ± 0.001 時間[6] 2.732 ± 0.002 時間[7] 3.31 ± 0.01 時間[8] |
スペクトル分類 | S(仮定)[3] |
絶対等級 (H) | 15.80 ± 0.20[4] 15.94[1] |
アルベド(反射能) | 0.158[4] |
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(415029) 2011 UL21 の衛星 | |
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分類 | 小惑星の衛星 |
発見 | |
発見日 | 2024年6月27日[9] |
発見場所 | GSSR[9] ( アメリカ合衆国) |
発見方法 | レーダー観測 |
軌道要素と性質 | |
軌道長半径 (a) | > 3 km[10] |
公転周期 (P) | 0.86 日(推定)[10] |
物理的性質 | |
直径 | 400 m(推定)[10] |
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(415029) 2011 UL21 は、アポロ群に分類される地球近傍小惑星 (NEO) および潜在的に危険な小惑星 (PHA) である。地球近傍小惑星に分類される小惑星としては最も大きいものの一つであり、2 km 程度の大きさを持つ。
発見と名称
[編集]2011年10月17日にアメリカ合衆国・アリゾナ州のツーソンで観測が行われている全天サーベイであるカタリナ・スカイサーベイによる観測から発見された[1][2][11]。発見時の見かけの明るさは18.4等級で、2024年6月末時点で発見されてから1,800回以上の観測記録が存在している[2]。正式な発見の約20年前である1989年と1990年にそれぞれ2回ずつパロマー天文台から観測されていたことが判明している[2]。
正式な固有名は与えられておらず、(415029) 2011 UL21 という名称は小惑星番号と仮符号を示したものである。軌道の精査などにより、発見されてから約3年後の2014年11月6日に小惑星センター (MPC) から発行された小惑星回報 (Minor Planet Circular) の「M.P.C. 90793」にて小惑星番号415,029番が付与された[12]。
軌道の特徴
[編集]2011 UL21 は軌道が大きく歪んだ楕円軌道を3年余りの公転周期で公転しており、その離心率は約 0.653 に達している。極端な軌道を描いているため、太陽からの軌道長半径は約 2.122 au(約3億1700万 km) だが、太陽に最も近づく近日点では金星軌道のすぐ外側である約 0.735 au(約1億1000万 km)まで接近し、逆に最も遠ざかる遠日点では約 3.508 au(約5億2500万 km)まで離れる。黄道面に対しても軌道が大きく傾いており、軌道傾斜角は35度弱となっている[1]。太陽からの距離は大きく変動するが、軌道長半径は地球よりも外側であることからアポロ群と呼ばれる地球近傍小惑星の分類に属し、かつ地球軌道との最小交差距離 (MOID) が0.05 au(約750万 km、月までの距離の約19倍)以内に達している比較的大型の小惑星であるという条件を満たしていることにより、潜在的に危険な小惑星 (PHA) に分類されている[1][2]。
物理的特徴と地球への接近
[編集]2011 UL21 は絶対等級 (H) が約16等級であり[1][4]、これは現在知られている潜在的に危険な小惑星の中でも特に明るいことで知られる[13]。Collaborative Asteroid Lightcurve Link が運用している Astroid Lightcurve Database ではスペクトル分類をS型、アルベド(反射能)を 0.20 と仮定して直径を 1.89 km と計算している[3]。2020年に公表された広視野赤外線探査機 (WISE) のNEOWISE計画による観測結果では 2.31 km と測定されており[4]、ジェット推進研究所 (JPL) が運営している Near-Earth Object Program Office では 2.5 km と推定されていた[5]。欧州宇宙機関 (ESA) によると、直径を 2.31 km とした場合、2011 UL21 は既知の地球近傍小惑星全体の 99% より大きいことが知られている[14][15]。これほどの大きさを持っている場合、複数の大陸間に渡る規模の影響を引き起こし、大きな気候変動を引き起こすのに十分な量の破片が大気中に散乱される可能性があるため、一部のメディアなどでは「惑星殺し (Planet Killer)」とも表現されている[15][16][17]。
2011 UL21 は、2024年6月27日20時16分(協定世界時)に月までの距離の約17倍に相当する約664万 km まで地球に接近した[1]。20世紀から22世紀までにおいて、この接近は地球に2番目に近くまで近づいたもので、この期間内において最も地球に接近するのは2089年6月25日3時48分で、月までの距離の約7倍に相当する約267万 km まで近づくと計算されている[1]。1900年以降に地球から750万 km 以内にまで接近した小惑星の中では 2011 UL21 は10番目に大きいとみられている[15]。これほどの規模を持つ小惑星が地球の近くまで接近することは珍しいため、2024年の接近直前には多くのメディアで 2011 UL21 の接近が報道されたが、ジェット推進研究所が運営している地球近傍天体研究センター (CNEOS) によって発見直後はトリノスケールにおいて「1」と評価されていたものの[18]、詳細な観測による軌道精査の結果により、2011年11月4日の時点で 2011 UL21 の潜在的な地球への衝突可能性は無いと評価されており[19]、欧州宇宙機関も最接近の3日前に 2011 UL21 が地球へ影響を及ぼすことなく「安全に通過する」と発表している[14]。
衛星
[編集]2024年に 2011 UL21 が地球へ接近した際にアメリカのカリフォルニア州にあるゴールドストーン太陽系レーダーによるレーダー観測から、2011 UL21 から約 3 km 離れた位置を公転する小型の衛星の存在が確認された[9]。宇宙物理学者の Robert Johnston は衛星の直径を 400 m、公転周期を0.86日(約20時間38分)と推定している[10]。主星の 2011 UL21 とは2.6等級の等級差がある[10]。
出典
[編集]- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x “JPL Small-Body Database Browser: 415029 (2011 UL21)”. JPL Small-Body Database. Jet Propulsion Laboratory (2024-06-28 last obs.). 2024年6月30日閲覧。
- ^ a b c d e f g “(415029) 2011 UL21”. Minor Planet Center. International Astronomical Union. 2024年6月30日閲覧。
- ^ a b c “Asteroid Selection”. Asteroid Lightcurve Database (LCDB). 2024年6月30日閲覧。(「Number」の欄に「415029」と入力)
- ^ a b c d e Masiero, Joseph R.; Mainzer, A. K.; Bauer, J. M. et al. (2020). “Asteroid Diameters and Albedos from NEOWISE Reactivation Mission Years 4 and 5”. The Planetary Science Journal 1 (1): 10. arXiv:2002.07941. Bibcode: 2020PSJ.....1....5M. doi:10.3847/PSJ/ab7820. 5.
- ^ a b “Earth Impact Risk Summary: 2011 UL21”. NASA/JPL Near-Earth Object Program Office. 2011年11月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年6月30日閲覧。
- ^ Warner, Brian D. (2018). “Near-Earth Asteroid Lightcurve Analysis at CS3-Palmer Divide Station: 2017 October-December”. The Minor Planet Bulletin (ISSN 1052-8091). Bulletin of the Minor Planets Section of the Association of Lunar and Planetary Observers 45 (2): 138-147. Bibcode: 2018MPBu...45..138W.
- ^ Warner, Brian D. (2018). “Near-Earth Asteroid Lightcurve Analysis at CS3-Palmer Divide Station: 2018 April-June”. The Minor Planet Bulletin (ISSN 1052-8091). Bulletin of the Minor Planets Section of the Association of Lunar and Planetary Observers 45 (4): 366-379. Bibcode: 2018MPBu...45..366W.
- ^ Warner, Brian D.; Stephens, Robert D. (2021). “Near-Earth Asteroid Lightcurve Analysis at CS3-Palmer Divide Station: 2021 January - March”. The Minor Planet Bulletin (ISSN 1052-8091). Bulletin of the Minor Planets Section of the Association of Lunar and Planetary Observers 48 (3): 294-302. Bibcode: 2021MPBu...48..294W.
- ^ a b c Ian J. O'Neill (2024年7月3日). “NASA’s Planetary Radar Tracks Two Large Asteroid Close Approaches”. Jet Propulsion Laboratory. NASA. 2024年7月6日閲覧。
- ^ a b c d e Johnson, Robert (2024年7月1日). “(415029) 2011 UL21”. Asteroids with Satellites Database. Johnston's Archive. 2024年7月6日閲覧。
- ^ “MPEC 2011-U39 : 2011 UL21”. Minor Planet Electronic Circular (MPEC). Minor Planet Center (2011年10月28日). 2024年6月30日閲覧。
- ^ “MPC 90383-90850” (PDF). Minor Planet Circular. Minor Planet Center (2014年11月6日). 2024年6月30日閲覧。
- ^ “List Of Potentially Hazardous Asteroids (PHAs)”. Minor Planet Center (2024年6月29日). 2024年6月30日閲覧。
- ^ a b “Asteroid (415029) 2011 UL21 flies past Earth”. European Space Agency (2024年6月24日). 2024年6月30日閲覧。
- ^ a b c Harry Baker. “Mountain-size 'planet killer' asteroid will make a close approach to Earth today — and you can watch it live”. Live Science. 2024年6月30日閲覧。
- ^ Jamie Seidel (2024年6月27日). “‘Planet Killer’ asteroid will be one of the closest asteroids to plunge past planet Earth this year”. NewYork Post 2024年6月30日閲覧。
- ^ James Liddell (2024年6月28日). “How to watch ‘planet killer’ asteroid big enough to ‘end civilization’ fly near Earth this week”. The Independent 2024年6月30日閲覧。
- ^ “Observations of small Solar-System bodies”. hohmanntransfer (2011年10月27日). 2014年11月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年6月30日閲覧。
- ^ “Sentry: Earth Impact Monitoring Object Details | Removed Objects”. Center for Near Earth Object Studies (CNEOS). NASA/JPL. 2024年6月30日閲覧。(「Search」の欄に「2011 UL21」と入力)
関連項目
[編集]- 小惑星の一覧 (415001-416000)
- 潜在的に危険な小惑星
- 2024年に地球へ接近した小惑星の一覧
- アポフィス (小惑星)
- 2022 AP7 - 2011 UL21 と同等の直径を持つ可能性がある、同様に「惑星殺し」と表現された潜在的に危険な小惑星
- 2024 MK - 2011 UL21 の地球への最接近の約42時間後に地球へ接近した小惑星