2018年東海道新幹線車内殺傷事件
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2018年東海道新幹線車内殺傷事件 | |
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場所 | 日本・神奈川県、東海道新幹線新横浜駅 - 小田原駅間を走行中ののぞみ号車内 |
日付 |
2018年(平成30年)6月9日 21時45分ごろ[1] |
攻撃手段 | 鉈 |
死亡者 | 1人 |
負傷者 | 2人 |
動機 | 無期懲役による刑務所生活への憧れ[2] |
対処 | 無期懲役 |
管轄 | 神奈川県小田原警察署 |
2018年東海道新幹線車内殺傷事件(2018ねんとうかいどうしんかんせんしゃないさっしょうじけん)は、2018年(平成30年)6月9日に、神奈川県を走行中の東海道新幹線「のぞみ265号」車内で発生した殺人事件。
事件の経緯
[編集]2018年(平成30年)6月9日21時45分頃、神奈川県の新横浜駅 - 小田原駅間を走行中の東海道新幹線「のぞみ265号」(N700系G32編成) (東京発新大阪行き)の12号車(785-1632)において、犯人A (当時22歳の男)が旅客3人を鉈で切りつけ、1人を殺害し、2人に重傷を負わせた[3]。
のぞみ265号は新横浜駅を21時42分、定刻どおりに発車した[4]。それから間もなく、12号車の後方の2列シートの左側に座っていた犯人Aが立ち上がり、右隣の席に座っていた旅客B(女性)を鉈で切りつけた[5]。そののち、犯人Aは止めに入ろうとした旅客D(38歳男性、兵庫県尼崎市在住)ともみ合いになり、旅客Dが転倒したすきに通路を挟んで左隣にいた旅客C(女性)を切りつけた。旅客Dは切りつけられた2人を後方に避難させ、犯人Aに立ち向かったが、犯人Aに馬乗りになられて幾度も切りつけられた[4]。
12号車での事件を聞いて駆けつけた車掌は、外したシートの座面やキャリーバッグを盾のようにして構えながら旅客Cに刃物を振り下ろしている犯人Aに近づき、説得した[5]。列車は非常用ボタンの作動により綾瀬市内で緊急停止した後[5]、22時3分に小田原駅に緊急停車し[6]、Aは駅で待機していた警察官に殺人未遂の現行犯で逮捕された。
旅客Dは搬送時すでに心肺停止となっており、まもなく死亡した。旅客Bと旅客Cの2人は重傷を負った[8]。
裁判
[編集]Aは東京駅から指定席車両の12号車に乗車しており、新横浜駅から乗車した被害者らに凶行を行ったが、所持していたのは東京駅から名古屋駅までの自由席特急券であった[9]。7月13日、横浜地検小田原支部はAの精神鑑定を行うための留置を開始した[10]。精神鑑定の結果、Aは刑事責任能力があると判断され、11月19日、横浜地方検察庁小田原支部によって殺人罪などで起訴された[11]。
2019年11月28日、横浜地方裁判所小田原支部で初公判が行われ、Aは「殺すつもりでやりました」と起訴事実を認めた。旅客Bと旅客Cに怪我を負わせたことについては「残念ながら殺し損ないました」と、旅客Dの殺害については「通路に倒れている人を殺そうとして見事に殺しきりました」と述べた[12]。動機について「子供の頃から刑務所に入りたかった」[13]「自分で考えて生きるのが面倒くさかった。他人が決めたルール内で生きる方が楽だと思い、無期懲役を狙った」[3]という趣旨の供述をしており、また攻撃対象については「誰でもよかった」と供述した[1]。
同年12月18日、横浜地方裁判所小田原支部は求刑通り無期懲役を言い渡し[14]、控訴せず翌2020年1月に確定した[15]。
反応・影響
[編集]著名人の反応
[編集]落語家の桂ぽんぽ娘が東京都内での仕事を終え京都市の自宅に帰るため当該列車に乗車しており、事件発生中の状況などを自身のTwitterに投稿した[16][17]。
新幹線の安全対策強化
[編集]事件を受けて、新幹線を運行する各社は新幹線の安全対策強化に取り組んだ。
東海道新幹線を運行する東海旅客鉄道(JR東海)は6月13日、警備員を増員して車内や駅構内での巡回を強化する方針を明らかにした[18]。また、7月25日には防護盾・刺又など防護用具や救急用品を車内に配備し、緊急対応用のグループ通話システムを整備することも発表した[19]。2019年3月には、東海道新幹線の全列車において警備員が同乗する態勢が実現したことを発表した[20]。東日本旅客鉄道(JR東日本)[21]や西日本旅客鉄道(JR西日本)[22][23]でも、本事件を踏まえて警備員増員や不審者対策の訓練、防護装備品・救急用品の増備など、JR東海と同様の対策に取り組んだ。
一方、利用者の間からは空港と同様の手荷物検査を導入するべきであるとの声も上がったが[24]、JR東海の金子慎社長は「利便性を著しく損なうので、できないと考えている」として、現時点での導入は難しいとの見解を示している[25]。
運輸規程・運輸規則の改正
[編集]事件を受けて、国土交通省は2018年11月、鉄道運輸規程を改正し、列車内への梱包されていない刃物の持ち込みを禁止する条項を加える方針を決定し[26]、2019年4月1日より施行した。また2019年1月には、この事件を踏まえて旅客自動車運送事業運輸規則を改正し、バス・タクシーの車内においても梱包されていない刃物を持ち込むことを禁止する条項を追加することを公布し[27]、こちらも4月1日より施行した。
日本国外メディアの反応
[編集]日本国外のメディアではBBC[28]やFOXニュース[29]が一報を知らせた。
脚注
[編集]- ^ a b 「東海道新幹線で3人死傷 逮捕の22歳「誰でもよかった」」『神奈川新聞』2018年6月10日。オリジナルの2019年5月31日時点におけるアーカイブ。2019年5月31日閲覧。
- ^ 「被告「3人殺すと死刑なので、2人までと」 新幹線殺傷公判」『産経ニュース』2019年12月4日。オリジナルの2021年7月29日時点におけるアーカイブ。2019年12月6日閲覧。
- ^ a b 「新幹線殺傷「無期懲役を狙った」 22歳男を起訴」『産経新聞』2018年11月19日。オリジナルの2018年11月19日時点におけるアーカイブ。2019年5月31日閲覧。
- ^ a b 「新幹線殺傷事件の被害者・Dさんの無念を思う」『週刊現代』、講談社、2018年6月28日、 オリジナルの2022年8月14日時点におけるアーカイブ、2019年5月29日閲覧。
- ^ a b c 「【新幹線3人死傷】10カ所以上の刺し傷 殺人容疑で男送検」『神奈川新聞』2018年6月12日。オリジナルの2019年5月31日時点におけるアーカイブ。2019年5月31日閲覧。
- ^ 山下奈緒子「「話を聞きます」車掌、15分間説得続ける 新幹線殺傷」『朝日新聞』2018年6月13日。オリジナルの2019年5月22日時点におけるアーカイブ。2019年6月1日閲覧。
- ^ 「新幹線で男性切られ死亡 容疑の22歳男逮捕「誰でもよかった」」『東京新聞』中日新聞社、2018年6月10日。オリジナルの2018年6月12日時点におけるアーカイブ。2019年6月1日閲覧。
- ^ 安藤仙一朗「死亡男性、上半身に10カ所以上の傷 新幹線3人死傷」『朝日新聞』2018年6月10日。オリジナルの2018年6月10日時点におけるアーカイブ。2019年5月29日閲覧。
- ^ 「新幹線車内に刃物2本、計画的犯行か 3人死傷事件」『朝日新聞』2018年6月10日。オリジナルの2018年8月27日時点におけるアーカイブ。2019年6月1日閲覧。
- ^ 「新幹線3人殺傷、容疑者の鑑定留置開始 地検小田原支部」『』朝日新聞、2018年7月13日。オリジナルの2018年8月30日時点におけるアーカイブ。2019年5月31日閲覧。
- ^ 「新幹線殺傷 22歳男起訴 横浜地検支部、殺人や殺人未遂」『日本経済新聞』2018年11月20日。オリジナルの2019年5月29日時点におけるアーカイブ。2019年5月29日閲覧。
- ^ 「新幹線殺傷の被告、女性客2人を「残念ながら殺し損ないました」…初公判」『読売新聞』2019年11月28日。オリジナルの2019年11月28日時点におけるアーカイブ。2019年11月28日閲覧。
- ^ 「【新幹線殺傷】殺人罪で男を起訴 「刑務所入りたかった」」『神奈川新聞』2018年11月19日。オリジナルの2019年5月31日時点におけるアーカイブ。2019年5月31日閲覧。
- ^ 「新幹線殺傷事件 無期懲役の判決」『NHK NEWS WEB』2019年12月18日。オリジナルの2020年1月11日時点におけるアーカイブ。2019年12月18日閲覧。
- ^ 「新幹線殺傷、無期懲役が確定 検察・弁護側とも控訴せず」『朝日新聞』2020年1月7日。オリジナルの2020年1月7日時点におけるアーカイブ。2020年8月2日閲覧。
- ^ 「「自分も襲われるかも」 新幹線3人死傷、乗客の女性」『朝日新聞』2018年6月10日。オリジナルの2018年6月10日時点におけるアーカイブ。2019年6月27日閲覧。
- ^ 「桂ぽんぽ娘、事件の新幹線に乗車…SNSに「はやく捕まえて」 一夜明け落語会出演」『デイリースポーツ』2018年6月10日。オリジナルの2018年6月12日時点におけるアーカイブ。2019年6月27日閲覧。
- ^ 「【新幹線3人殺傷】車内巡回を強化、殺傷事件受け JR東海」『産経新聞』2018年6月13日。オリジナルの2018年6月13日時点におけるアーカイブ。2019年5月31日閲覧。
- ^ 『東海道新幹線 安全確保に向けた車内搭載品の充実等について』(PDF)(プレスリリース)東海旅客鉄道、2018年7月25日 。2019年6月1日閲覧。
- ^ 「東海道新幹線の全列車に警備員 殺傷事件受け、安全対策」『共同通信』2019年5月30日。オリジナルの2019年5月31日時点におけるアーカイブ。2019年5月31日閲覧。
- ^ 『新幹線におけるさらなるセキュリティ向上の取組みについて』(PDF)(プレスリリース)東日本旅客鉄道、2018年9月4日 。2019年5月31日閲覧。
- ^ 「山陽新幹線で安全訓練 車内殺傷事件受け、岡山」『産経新聞』2018年9月3日。オリジナルの2018年6月13日時点におけるアーカイブ。2019年5月31日閲覧。
- ^ 『山陽新幹線におけるさらなる車内の安全確保に向けた取り組みについて』(プレスリリース)西日本旅客鉄道、2018年9月3日 。2019年5月31日閲覧。
- ^ 「【新幹線3人死傷】手荷物検査は賛否 新型探知機開発を」『神奈川新聞』2018年6月12日。オリジナルの2019年5月31日時点におけるアーカイブ。2019年5月31日閲覧。
- ^ 「新幹線の手荷物検査に慎重 JR東海、巡回を強化」『日本経済新聞』2018年6月13日。オリジナルの2018年6月18日時点におけるアーカイブ。2019年5月31日閲覧。
- ^ 贄川俊「列車への刃物持ち込み禁止へ 強制下車も、来年4月から」『朝日新聞』2018年11月7日。オリジナルの2018年12月24日時点におけるアーカイブ。2019年6月1日閲覧。
- ^ “バス及びタクシーへの刃物類の持込みを禁止します”. 国土交通省 (2019年1月18日). 2019年6月1日閲覧。
- ^ “Deadly stabbing on Japan bullet train”. BBC. (2019年6月9日) 2019年5月31日閲覧。
- ^ “Knife attack on Japan bullet train leaves 1 dead, 2 hurt”. FOX News. (2019年6月9日) 2019年5月31日閲覧。
関連項目
[編集]- 無敵の人 (インターネットスラング)
- 日本の鉄道に関する事件
- 東海道新幹線火災事件 - 2015年、この事件と同じ東海道新幹線の新横浜駅 - 小田原駅間を走行中の車内で発生した事件。
- 小田急線刺傷事件
- 京王線刺傷事件