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2023年ガザ地区の人道危機

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
イスラエル軍空爆で破壊されたアパートの廃墟を視察するガザ地区の住民たち(2023年10月)

2023年ガザ地区の人道危機(2023ねんガザちくのじんどうきき)では、2023年パレスチナ・イスラエル戦争の結果としての人道的危機について述べる。

空爆

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イスラエル軍によるガザ地区に対する攻撃(2023年10月)

イスラエルによるガザへの空爆は集団的懲罰にあたり戦争犯罪であると批判されている[1][2]

イスラエルからの空爆は、1日で6000発の爆弾の投下が行われ[3]、10月16日までに、空爆によって700人以上の子どもを含む2750人が死亡し、10000人近くが負傷した[4]。同日には、空爆によって、消防や捜索救助などの緊急対応サービスを担当するパレスチナ民間防衛(PCD)の本部が破壊された[5]

一方でイスラエル側によるガザ地区に住む民間人への被害も確認されており、8日時点でガザの高層住宅4棟を破壊するなどの被害が確認されている[6]。イスラエル国防相のヨアヴ・ガラントはガザ封鎖を宣言した9日、「われわれは「人間の顔をした獣」と戦っており、それにふさわしい行動をする」と述べ、特定集団を非人間化する名称で呼ぶことは「ジェノサイド(集団殺害)の兆候」であると専門家より批判された[7]

包囲

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また、ガラントがガザへの包囲を宣言し、電気、食料、水、ガスの供給ができなくなる危険性が生じた。ガザ地区内ではすでに40万人以上が水に関するインフラで被害、インターネット通信も危機的状況、唯一の発電所であるガザ発電所も燃料の枯渇が懸念され、結果的に停止した[8][9]。10日、欧州連合 (EU) のボレル外交安全保障上級代表は「イスラエルは国際人道法(戦時国際法)に従って自衛権を行使しなければならない」と語り、ガザのパレスチナ住民に対する水や食料などの遮断は「国際法違反」との認識を示した[7]フィリップ・ラッツァリーニは、「ガザは水が不足しており、ガザは生命が不足している」と述べた[10]

イスラエル軍による空爆の後、シファ病院で治療を受ける子供と治療を待つ男性(2023年10月)

これらに対して国連世界食糧計画はガザ地区への食糧供給を8倍に、国連パレスチナ難民救済事業機関によるとガザ地区の住民はこれらに恐怖を抱いていると公表した[8]。ユニセフのキャサリン・ラッセル事務局長は「ガザ地区への電力の遮断や、食料、燃料、水の供給を止める措置は、子どもたちの命を危険にさらすことにつながりかねない。人道状況が急速に悪化する中、子どもたちやその家族がどこにいようと、人道支援に携わる人々が安全に、命を守るための活動や、物資を届けることをできるようにしなければならない。」と懸念を表明しながら支援を行うことを誓った。またガザではそもそも病院まで運ぶ道のりが空爆により危険で、そして墓地もスペースが埋まっていることなどから、アイスクリームを冷凍するためのトラックに遺体を入れる例などもあったとガザ保健当局が発表した。10月15日、イスラエルは給水再開に同意したが、対象はガザ南部のみであった[11][12][13]。しかし、ガザの給水ポンプは電力に依存しているため、このイスラエル側の同意は、再度の給水アクセスを保証するものではなかった[14][15]。イスラエルのエネルギー・水省のスポークスマンは、ガザ南部の1カ所でしか水は流れていないと述べた。しかし、ボランティアやガザ政府のスポークスマンは、水はそもそも利用できないと語っている[16]。10月16日、エネルギー相のイスラエル・カッツは、ハーンユーニス南部近郊のブネイ・サヒラで水が利用できるようになったと主張したが、ガザ内務省の報道官エヤド・アル=ボゾムは、ガザのどこであっても水はまだ利用できないと述べた[17]。同日までに、ガザ住民は海水や農業用井戸の汽水を飲むようになり、水系感染症の恐れが高まった[4][14]。医師や病院スタッフは水の枯渇から、点滴液を飲んだ[18]

戦争犯罪

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11日には国際刑事裁判所が、パレスチナ国で行われた戦争犯罪の疑いを調査する2014年時点のマンデートが、現在の紛争にも及ぶと発表した[19]

国際連合

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ガザの数百万人に救命支援を届けるための「人道的一時停止」を求める安保理決議案がブラジルにより提出され、理事国15カ国中12カ国から「賛成」票を獲得し、ロシアと英国は棄権したが、米国は決議案の採択を阻止するために拒否権を発動した[20][21]

健康管理

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30日にはトルコ・パレスチナ友好病院が空爆の被害にあい[22]、11月1日、トルコ・パレスチナ友好病院の院長は、ガザで唯一のがん専門病院が発電機の燃料切れで「完全に機能停止」していると述べた[23]。また、ガザ保健省は、アル・ヘロウ国際病院の産科病棟がイスラエル軍の爆撃を受けたと発表した[23]。11月2日、インドネシア病院は主発電機が稼働しなくなったと発表した[24]。ガザ厚労省前述のトルコ・パレスチナ友好病院の爆撃の影響で11月3日時点で12人のガン患者が死亡したと発表した[25]。同省は、800人の重傷患者が治療を受けるためにガザを離れる必要があると述べ、医療システムの崩壊により、過去数日間に多くの重傷患者が死亡したと指摘した[25]。アル・シファ病院前の医療車列がイスラエル軍の無人機ミサイルによって破壊された[25]。アル・クッズ病院とインドネシア病院も攻撃を受けた[25]。11月4日、カマル・アドワン病院の発電機が停止した[26]。またアル・ナセル小児病院の入り口がイスラエルの空爆を受けた[26]

関連項目

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出典

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  1. ^ ガザ攻撃は「集団的懲罰」、人質は戦争犯罪と国連専門家”. ロイター (2023年10月12日). 2023年10月23日閲覧。
  2. ^ More bloodshed will never resolve the Israel-Palestine conflict” (英語). Moneycontrol (2023年10月11日). 2023年10月11日閲覧。
  3. ^ George, Susannah; Dadouch, Sarah; Hendrix, Steve; Brown, Cate (2023年10月14日). "Evacuation order sets off chaotic scramble as Gazans run for their lives". Washington Post (アメリカ英語). ISSN 0190-8286. 2023年10月17日閲覧
  4. ^ a b Al-Mughrabi, Nidal; Al-Mughrabi, Nidal (2023年10月16日). "In Gaza, people resort to drinking salty water, garbage piles up". Reuters (英語). 2023年10月17日閲覧
  5. ^ (日本語) Gaza paramedic’s outcry over bombing of civil defence headquarters | AJ #shorts, https://www.youtube.com/watch?v=15vl8ebYQ_I 2023年10月17日閲覧。 
  6. ^ ハマスとイスラエルの戦闘、死者970人超 国連安保理、対応協議へ”. 毎日新聞. 2023年10月10日閲覧。
  7. ^ a b 平田 雄介, 黒瀬 悦成 (2023年10月12日). “ガザの人道危機へ懸念強まる イスラエルが水・食料を遮断、EUは「国際法違反」の認識”. 産経ニュース. 2023年10月13日閲覧。
  8. ^ a b イスラエル、反撃は「始まったばかり」 ガザ地区「完全包囲」で人道危機の恐れ”. BBCニュース (2023年10月10日). 2023年10月10日閲覧。
  9. ^ 日本放送協会 (2023年10月12日). “【12日詳細】パレスチナ ガザ地区 唯一の発電所が操業停止 | NHK”. NHKニュース. 2023年10月13日閲覧。
  10. ^ Saleh, Heba; Khaled, Mai (2023年10月15日). "'Why has the world abandoned us?' Palestinians in Gaza plead for humanitarian relief". Financial Times. 2023年10月17日閲覧
  11. ^ Fuel reserves at Gaza hospitals likely to run out in 24 hours, UN warns” (英語). BBC News. 2023年10月17日閲覧。
  12. ^ Israel resumes water supply to southern Gaza after heavy pressure” (英語). The Jerusalem Post | JPost.com (2023年10月15日). 2023年10月17日閲覧。
  13. ^ Renewed water supply to south Gaza agreed with Joe Biden: Israeli minister” (英語). Hindustan Times (2023年10月15日). 2023年10月17日閲覧。
  14. ^ a b Kerr, Simeon; Khaled, Mai (2023年10月16日). "Gaza water supplies dwindle as Israel lays siege to strip". Financial Times. 2023年10月17日閲覧
  15. ^ After the bombing, Gaza struggles to restart power, water, hospitals, markets and fishing for its 2.1m people” (英語). Oxfam International (2022年5月25日). 2023年10月17日閲覧。
  16. ^ Water runs out at UN shelters in Gaza. Medics fear for patients as Israeli ground offensive looms” (英語). AP News (2023年10月15日). 2023年10月17日閲覧。
  17. ^ "Hamas says Gaza water still cut off; Israel says some provided in south". Reuters (英語). 2023年10月16日. 2023年10月17日閲覧
  18. ^ "U.S. seeks Gaza aid, safe zones as Israeli invasion looms"”. ワシントンポスト. 2023年10月17日閲覧。
  19. ^ Is Israeli bombing of Gaza a violation of international laws?” (英語). www.aljazeera.com. 2023年10月15日閲覧。
  20. ^ US Vetoes Draft Resolution Calling For 'Humanitarian Pauses' for Aid to Gaza”. The Wire. 2023年10月19日閲覧。
  21. ^ 安保理、ガザ戦闘「中断」求める決議案否決 米国が拒否”. 日本経済新聞. 2023年10月20日閲覧。
  22. ^ Turkish-Palestinian Friendship Hospital in Gaza severely damaged from Israeli airstrikes”. www.aa.com.tr. 2023年11月6日閲覧。
  23. ^ a b Najjar, Edna Mohamed,Joseph Stepansky,Farah. “Israel-Hamas war updates: Israel’s Jabalia attacks may be ‘war crimes’ – UN” (英語). Al Jazeera. 2023年11月6日閲覧。
  24. ^ Stepansky, Farah Najjar,Joseph. “Israel-Hamas war updates: Israel says its forces surround Gaza City” (英語). Al Jazeera. 2023年11月6日閲覧。
  25. ^ a b c d Stepansky, Farah Najjar,Joseph. “Israel-Hamas war updates: Israeli strike hits Gaza medical convoy” (英語). Al Jazeera. 2023年11月6日閲覧。
  26. ^ a b Pietromarchi, Mersiha Gadzo,Virginia. “Israel-Hamas war updates: Another Gaza school hit by heavy Israeli bombing” (英語). Al Jazeera. 2023年11月6日閲覧。