2024年J2最終節
2024年J2最終節では、2024年11月10日に行われた2024明治安田J2リーグ第38節(最終節)について記す。なお、本項では特に、最終節開始時点でJ1リーグへの自動昇格となる2位に入る可能性のあった横浜FC(横浜C)・V・ファーレン長崎(長崎)ならびに、同じくJ1昇格プレーオフ進出となる6位以内に入る可能性のあったファジアーノ岡山FC(岡山)・モンテディオ山形(山形)・ジェフユナイテッド千葉(千葉)・ベガルタ仙台(仙台)の6クラブの絡む試合を中心に記す。
最終節までの経緯
[編集]この年のJ2リーグは、第18節までは3位と4位の勝ち点差が2であったが[1]、それ以降は差が広がり、2位までの自動昇格枠を清水、横浜C、長崎で争う形となった。清水は後半戦になってからほぼ1位か2位にしかならず1枠自動枠を埋める流れで、横浜Cも14節に千葉に負けてから34節の鹿児島戦まで20試合負けなしの無敗街道を突き進み、もう1枠を埋める流れになっていた。長崎も2節に仙台に負けてからは24節の甲府戦まで負けなしと好調であったが、25節に水戸に敗れてからは6試合勝ちなしの大ブレーキとなり、横浜Cの無敗記録が止まる前の34節時点では2位清水と3位長崎の勝ち点差が10も離れていた[2]。
岡山はスベンド・ブローダーセンを中心とした堅い守りで横浜Cに次ぐリーグ最少失点で、セットプレーからの得点が持ち味。
山形は21節終了時点では15位と低迷していたが、7月までに土居聖真やディサロ燦シルヴァーノが加入し、翌月以降は13試合で11勝1分1敗で5位まで上がった。
千葉は28節の仙台戦で、後に得点王となる小森飛絢が2得点を決めたのをきっかけにそこから11試合13ゴールの活躍で残り2試合の時点で4位まで引き上げた。
仙台は昨季にJ2で史上初の2桁順位と低迷し、今季より森山佳郎が指揮を執り、下位に勝ちきれない試合があったものの、清水や長崎を破り、横浜Cにダブルするなど上位3チームから一番勝ち点を稼いだチームでもあった。
2位までに与えられる自動昇格争いのうち、清水は第36節に栃木に勝利した時点で2位以内を確定させJ1昇格を決めた。その翌節には横浜Cが栃木と引き分けて清水の優勝も確定した。もう1枠の自動昇格争いは、4位以下との勝ち点差を大きくつけた上位3チームにいた横浜Cと、長崎という構図だった。
この結果、最終節では横浜C・長崎の2クラブが自動昇格を、木山隆之体制3年目の岡山[3]、渡邉晋の下で脅威の追い上げを見せる山形[4]、小林慶行監督の下で16年ぶりのJ1復帰を目論む千葉[4]、森山佳郎体制で初のプレーオフ進出からのJ1返り咲きを目指す仙台の4クラブがプレーオフ進出を賭けて戦うこととなった[5]。以下は、第37節終了時点の順位表。
順 | チーム | 試 | 勝 | 分 | 敗 | 得 | 失 | 差 | 点 | 昇格または降格 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 清水エスパルス (C, P) | 37 | 25 | 4 | 8 | 67 | 38 | +29 | 79 | J1昇格 |
2 | 横浜FC | 37 | 22 | 9 | 6 | 60 | 27 | +33 | 75 | |
3 | V・ファーレン長崎 | 37 | 20 | 12 | 5 | 69 | 37 | +32 | 72 | J1昇格プレーオフ進出 |
4 | ファジアーノ岡山 (Q) | 37 | 17 | 13 | 7 | 48 | 29 | +19 | 64 | |
5 | モンテディオ山形 | 37 | 19 | 6 | 12 | 51 | 36 | +15 | 63 | |
6 | ジェフユナイテッド千葉 | 37 | 19 | 4 | 14 | 67 | 44 | +23 | 61 | |
7 | ベガルタ仙台 | 37 | 17 | 10 | 10 | 48 | 43 | +5 | 61 | |
8 | 徳島ヴォルティス | 37 | 16 | 6 | 15 | 42 | 44 | −2 | 54 | PO進出の可能性消滅 |
順位の決定基準: 1) 勝点、2) 得失点差、3) 総得点、4)直接対決の勝点、5) 直接対決の得失点差、6) 直接対決の得点数、7) 反則ポイント、8)抽選
(C) 優勝; (P) 昇格; (Q) 出場権獲得.
最終節
[編集]最終節、6クラブが絡む対戦カードは下記の通り。いずれも14時03分の同時キックオフが予定されていた。長崎と仙台の試合はチケットが完売し、山形も19,000人超えの超満員となった[6][7]。
- レノファ山口FC - 横浜FC(維新みらいふスタジアム)
- V・ファーレン長崎 - 愛媛FC(PEACE STADIUM Connected by SoftBank)
- 鹿児島ユナイテッドFC - ファジアーノ岡山FC(白波スタジアム)
- モンテディオ山形 - ジェフユナイテッド千葉(NDソフトスタジアム山形)
- ベガルタ仙台 - 大分トリニータ(ユアテックスタジアム仙台)
自動昇格の条件
[編集]自動昇格の可能性を残す2クラブについては、条件は以下の通りといえた[8]。
- 横浜C:引き分け以上で無条件にJ1自動昇格、敗北の場合は長崎が引き分け以下の場合
- 長崎:勝利して横浜Cが引き分け以下の場合
すなわち、横浜Cのみが自力で自動昇格を決められる状況にあり非常に有利な状況と言えたが、新スタ開業[9]かつ連勝中の長崎の勢いを考えると負ければ自動昇格を逃す可能性も限りなく高いということだった。
プレーオフ進出の条件
[編集]プレーオフ進出を争う3クラブについては、山形と千葉の直接対決が組まれており、プレーオフ進出となる条件は以下の通りであった[10][11]。
- 山形vs千葉でどちらかが勝利:勝利したクラブがプレーオフ進出、負けたクラブも仙台が負けた場合は同じ
- 山形vs千葉が引き分けた場合:仙台が勝てなければ共にプレーオフ進出[12]
- 仙台は勝利ならプレーオフ進出だが、引き分けの場合は千葉の敗北が条件
このように、仙台は勝利すれば自力でのプレーオフ進出を決められたが、得失点差で他の2チームより10点以上離されていたので、勝ち点が同じ場合はそれによる順位上げは望めない状況であった。また、現役引退を表明した遠藤康にとっては最後のユアスタでの試合となった。
前半
[編集]5会場のうち最初に試合が動いたのはNDスタで、2分に山形MFイサカ・ゼインがゴール前のキープから味方にパスを送ると、DF安部崇士が左足のコントロールショットを左サイドネットに打ち込み山形が先制する。この後も千葉の選手に退場者が出るなど前半だけで3点決めた山形は勝利をほぼ確実にした。
一方、ホームで戦う長崎と仙台もほぼ同じタイミングで先制に成功。長崎は14分にマテウス・ジェズスの先制点の直後にオウンゴールで失点するものの、前半終了間際にマルコス・ギリェルメがGKとの駆け引きを制して再びリードを奪う。仙台は16分に真瀬拓海の折り返しが相手のオウンゴールを誘い待望の先制点を奪う。その後はブロックを敷いてカウンター狙いに切り替えた[13]。
そして、唯一自力での自動昇格の可能性を残す横浜Cだったが、相手に攻められながらも決定機は作っていた。しかし、山口はこの試合が現役最後となる関憲太郎が最終ラインから守備を支えるなど双方無失点で前半を折り返す。岡山も決定機を作るが最後の精度を欠きスコアレスドローで折り返す。
この結果、このまま進めば横浜Cが自動昇格の座を死守、仙台が千葉に逆転で昇格プレーオフ進出となる状況であった。また、山形が前半終了時点で3点差かつ千葉の選手が1人少ない為に、仙台は引き分けでも千葉を逆転する事が望めた。
順位 | クラブ名 | スコア | 勝点[† 1] | 得失点 | 昇降 |
---|---|---|---|---|---|
2位 | 横浜FC | 0-0 | 76 | +33 | - |
3位 | V・ファーレン長崎 | 2-1 | 75 | +33 | - |
4位 | モンテディオ山形 | 3-0 | 66 | +18 | 1 |
5位 | ファジアーノ岡山 | 0-0 | 65 | +19 | 1 |
6位 | ベガルタ仙台 | 1-0 | 64 | +6 | 1 |
7位 | ジェフユナイテッド千葉 | 0-3 | 61 | +20 | 1 |
- ^ この時点でのスコアでそのまま試合終了すると仮定したもの
後半
[編集]後半早々の50分に2会場で試合が動き始める。長崎は50分にマテウス・ジェズスが相手ゴール前の右サイドでDF2人を引き付けてマルコス・ギリェルメにパス。パスを受けたギリェルメはGKの位置を見てこれを難なく流し込みこの日2点目。仙台も同じ時間帯に相良竜之介が右サイドでドリブルを仕掛けてからゴール前の密集地帯にパスを通すと、これを郷家友太が流し込み追加点。前半からリードしていたチーム達は複数得点差のリードを得た事で長崎、山形、仙台の勝利の可能性が一層高くなった。
それでも横浜Cも無失点で推移していたので、このまま進めば横浜Cが自動昇格圏かつ仙台が逆転で6位で自動昇格プレーオフ進出となる展開であった。
順位 | クラブ名 | スコア | 勝点[† 1] | 得失点 | 昇降 |
---|---|---|---|---|---|
2位 | 横浜FC | 0-0 | 76 | +33 | - |
3位 | V・ファーレン長崎 | 3-1 | 75 | +34 | - |
4位 | モンテディオ山形 | 3-0 | 66 | +18 | 1 |
5位 | ファジアーノ岡山 | 0-0 | 65 | +19 | 1 |
6位 | ベガルタ仙台 | 2-0 | 64 | +7 | 1 |
7位 | ジェフユナイテッド千葉 | 0-3 | 61 | +20 | 1 |
- ^ この時点でのスコアでそのまま試合終了すると仮定したもの
その後試合は各会場とも終盤に入り、ピースタでは長崎が72分に相手に1点を返されるも3分後に松澤海斗のゴールで再び2点差のリードを奪い、86分にマテウス・ジェズスのダメ押しとなる2点目が決まり3点差とする。NDスタでも80分に坂本亘基がダメ押しの4点目を奪取。仙台も2点のリードを保ちアディショナルタイムに突入し、3試合の結果はほぼ決まった。
こうなると残りの2試合のスコアが気になる状況だが、横浜Cは試合終了が近づくにつれて無理して攻めないで引き分け優先の戦いにシフトする。岡山はこのまま引き分けで終わると山形に順位を抜かれてしまうのでホーム開催権のある4位を目指してゴールを狙い続けるが、相手のシュートがポストに当たるなど決定機を作られる。
そして、各会場ともそのままのスコアで試合が終了。横浜Cは35節の仙台戦以降は1試合でも勝てば2位以内を確定出来たが、プレーオフ争いチームとの試合が続いて連敗するなど、足踏み状態が続いて最終節に辛くも2位を確定させた[14]。長崎は残り8試合を7勝1分で猛追をみせたが、勝点1の差で及ばずプレーオフに回る事となった[15]。また、山形は最終節で岡山を上回って4位に滑り込み[16]、千葉は最後の最後にまさかの大敗でプレーオフ進出を逃した[17][18]。仙台は2年前に最終節にプレーオフ圏外に落ちたが、今回は同じ轍を踏まずに初のプレーオフ進出を決めた[19]。
最終的に今季の自動昇格は清水、横浜C。J1昇格プレーオフは長崎ー仙台、山形ー岡山の組み合わせとなった[20]。
順位 | クラブ名 | スコア | 勝点[† 1] | 得失点 | 昇降 |
---|---|---|---|---|---|
2位 | 横浜FC | 0-0 | 76 | +33 | - |
3位 | V・ファーレン長崎 | 5-2 | 75 | +35 | - |
4位 | モンテディオ山形 | 4-0 | 66 | +19 | 1 |
5位 | ファジアーノ岡山 | 0-0 | 65 | +19 | 1 |
6位 | ベガルタ仙台 | 2-1 | 64 | +6 | 1 |
7位 | ジェフユナイテッド千葉 | 0-4 | 61 | +19 | 1 |
- ^ この時点でのスコアでそのまま試合終了すると仮定したもの
試合結果
[編集]モンテディオ山形 | 4 - 0 | ジェフユナイテッド千葉 |
---|---|---|
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レポート |
出典
[編集]- ^ “2024明治安田J2リーグ 順位表 【第18節】”. J.LEAGUE.jp (2024年6月2日). 2024年11月23日閲覧。
- ^ “2024明治安田J2リーグ 順位表 【第34節】”. J.LEAGUE.jp (2024年10月19日). 2024年11月23日閲覧。
- ^ “【J2第38節・鹿児島戦プレビュー】4連勝でPOへ/木山監督「4位だけを狙って勝つ」”. YBS NEWS NNN (2023年11月9日). 2024年11月23日閲覧。
- ^ a b 「【プレビュー】運命の一戦。モンテディオ山形対ジェフユナイテッド千葉の見どころ」『DAZN』2024年11月9日。2024年11月23日閲覧。
- ^ 「【J2】最終節どうなる? J1自動昇格は横浜FCか長崎 プレーオフは山形、千葉、仙台の争い」『日刊スポーツ』2024年11月10日。2024年11月23日閲覧。
- ^ “リーグ最終戦、チケット全席種完売🈵”. X (V・ファーレン長崎) (2024年11月7日). 2024年11月23日閲覧。
- ^ “🙇チケット完売御礼🙇”. X (ベガルタ仙台) (2024年11月10日). 2024年11月23日閲覧。
- ^ “第38節(11/10開催)での横浜FC、長崎の昇格決定条件【明治安田J2】”. J.LEAGUE.jp (2024年11月8日). 2024年11月23日閲覧。
- ^ PEACE STADIUM Connected by SoftBank
- ^ “第38節(11/10開催)での山形、千葉、仙台のJ1昇格プレーオフ進出決定条件【明治安田J2】”. J.LEAGUE.jp (2024年11月8日). 2024年11月23日閲覧。
- ^ “残り2枠の出場権を勝ちとるのは…?”. X (Jリーグ) (2024年11月8日). 2024年11月23日閲覧。
- ^ 仙台は2チームと10点以上得失点差があった為
- ^ “ベガルタ、したたかに 現実策に徹してプレーオフ進出決める”. 河北新報 (2024年11月10日). 2024年11月23日閲覧。
- ^ “横浜FCが2年ぶりのJ1復帰…昇格王手から4度目の正直”. スポーツ報知 (2024年11月10日). 2024年11月23日閲覧。
- ^ “V長崎 3位でJ1昇格プレーオフへ”. 長崎新聞 (2024年11月10日). 2024年11月23日閲覧。
- ^ “ファジ、リーグ戦5位が確定 最終戦は鹿児島にドロー”. 山陽新聞 (2024年11月10日). 2024年11月22日閲覧。
- ^ “今年もやってきた“得意な季節”…山形がクラブ新9連勝→4位浮上でPO進出! 大敗の千葉は仙台にPO出場権を明け渡す”. ゲキサカ (2024年11月10日). 2024年11月23日閲覧。
- ^ “最終節大敗でJ1昇格PO進出逃す…千葉が声明を発表”. GOAL.com (2024年11月11日). 2024年11月23日閲覧。
- ^ “「素敵なコレオ」「美しすぎるわ!」J2仙台が要塞・ユアスタで披露した「巨大コレオ」が圧巻すぎる!1万8千人が後押ししたビジュアルに「世界無形文化遺産認定」の声”. サッカー批評web (2024年11月11日). 2024年11月23日閲覧。
- ^ “2024 J1昇格プレーオフ 出場チーム決定!”. Jリーグ (2024年11月10日). 2024年11月23日閲覧。