828フィルム
828フィルム(はちにいはちフィルム、英語: 828 film )は、スチル写真用のフィルムの規格である。バンタムフィルムとも呼ばれることがあるが、これはコダックが1935年に発表した写真機コダックバンタム(英語: Kodak Bantam )に由来する和製英語である。
概要
[編集]135フィルム同様に35mm幅のフィルムを使用し、同じようなパトローネに包まれているが、120フィルム同様に、裏紙があってパーフォレーションの穴がないロールフィルムである。画面サイズはほとんどの場合28×40mm判8枚撮りで、同じフィルム幅の135フィルムが24×36mm(ライカ)判であることと比較すると大きな画面が得られる。
同様に35mm幅で裏紙がある「ボルタフィルム」という規格があるが、互換性はなかった。
フィルムの生産が終了以降828フィルム用カメラを使用する場合には、裏紙とパトローネを用意してパーフォレーション穴の開いていない長尺の135フィルムを巻きなおすか、120フィルムを裁断する等の手法が試みられている。
略歴
[編集]コダックは1935年に新機種の写真機「バンタム」の発表とともに新規格828フィルムを製造販売開始した[1][2]。
1930年代の時点でコダックのほかに、米国のアーガス、ドイツのフォクトレンダー、英国のコロネットカメラが828フィルム用カメラを製造販売している。
1955年9月の『ポピュラーサイエンス』誌の広告記事「正しい仕事に正しいフィルムを選ぶ法」では、コダックプラスXフィルム、コダックトライXフィルム、コダクロームフィルム、エクタクロームフィルムの各項目に135フィルムと一対として、また、コダカラーフィルムの項目では116フィルム、120フィルム、127フィルム、616フィルム、620フィルムとならぶ「ポピュラーなロールフィルム」として挙げられている[3]。エクタクロームフィルムの項目には、当時のエクタクローム現像処方「E-2」の現像キットでは、20枚撮の135フィルム6本分、あるいは828フィルム10本分が現像できると記されている[3]。
コダックは1985年3月に生産を終了、50年間の歴史を終了した[1][2]。
おもなフィルム製品
[編集]いずれも生産終了品である。
- コダックベリクロームフィルム V828 - 白黒ネガフィルム
- コダックベリクロームパン VP828 - 白黒ネガフィルム
- コダックプラスXフィルム PX828 - 白黒ネガフィルム
- コダックトライXフィルム TX828 - 白黒ネガフィルム
- コダクロームフィルムK828 - カラーリバーサルフィルム
- コダクロームII KR828 - カラーリバーサルフィルム
- エクタクロームフィルムE828 - カラーリバーサルフィルム
- コダカラーフィルムC828 - カラーネガフィルム
- コダカラーII C828 - カラーネガフィルム
- コダカラーX CX828 - カラーネガフィルム
おもなカメラ
[編集]いずれも生産終了品である。
コダック
[編集]アメリカコダックのフィルムカメラ製品一覧#バンタムシリーズ参照。
アーガス
[編集]- アーガスモデルM(1939年発売)
コロネット
[編集]- コロネットカブ(1939年発売) - 当初完全プラスティック製。1946年に金属部分を加えたマイナーチェンジ版となった。
- コロネットカブフラッシュ(1948年発売)
- コロネットカブアナスティグマット(1948年発売)
- コロネットヴァイカウント(1957年発売)
トレイド
[編集]訪問販売による女性向け写真機で1960年代に販売された。
- フォトロン
- フォトロンII
- フォトロンIII
脚注
[編集]参考文献
[編集]- How to choose the right film for the right job - Popular Science, 1955年9月、p.238-239.
- 『国産カメラ図鑑』、すぎやまこういち・直井浩明・ジョン・R・ブロック・粟野幹男、スギヤマ工房、改訂版、1985年1月 ISBN 4257031875
- 『ザ・アメリカンキャンプブック』、エイムック1962、枻出版社、2010年5月25日 ISBN 4777916340