AIDC T-5
AIDC T-5 勇鷹
AIDC T-5(勇鷹)は、中華民国(台湾)の漢翔航空工業(AIDC)が製造中の高等ジェット練習機である。愛称は「Brave Eagle」。
開発
[編集]高等ジェット練習機プログラム
[編集]高等ジェット練習機プログラム(AJT)は、中華民国空軍がAIDC AT-3およびノースロップF-5の高等練習機飛行隊を66機の新造機へ移行することを目指して、2000年代初頭に始まった。
候補としてAT-3の近代改修版のAT-3 MAX、AIDC F-CK-1(経国)の進化型のXAT-5、アレーニア・アエルマッキのM-346の3案が提示された[1]。2014年、AIDCは台湾でM-346を組み立てるため、アレーニア・アエルマッキとの覚書に署名した。すべてのM-346のエンジンはハネウェルとAIDCの合弁会社IAEによって台湾で組み立てられている[2]。国防部は韓国のKAI T-50も評価した[3]。
AIDCと国家中山科学研究院(NCIST)が提携して開発・生産を行い、2026年に納入開始予定という条件の下、XAT-5が落札したと2017年に発表された。4つのプロトタイプが作成され、プログラムの総費用は686億台湾ドル(22億米ドル)になると予測されている[4]。
命名
[編集]AIDCは台湾固有のタイワンアオカササギにちなんで新しいジェット機を「Blue Magpie」と名付けていたが、2018年11月27日、国防部は練習機の正式名称を選ぶコンテストを開始すると発表した。コンテストは台湾国民のみ参加できるとし、漢字2文字の名称と100語以内の説明文を公募した。優勝者、2位、3位にはそれぞれ50,000、30,000、20,000台湾ドルが授与される[5]。
2019年9月24日、蔡英文総統が最初の試作機ロールアウト式典で、新しい航空機を「Brave Eagle」(勇鷹)と正式に命名した[6][7]。
製造
[編集]2017年に米国はXAT/AT-5用に132基分のハネウェル/ITEC F124エンジンの部品輸出を承認した[8] 。2018年、AIDCは最初の試作機が2019年9月に公開され、2020年6月に飛行試験が開始されることを発表した[9] 。
2019年、台湾の国防部が初飛行は2020年6月で、小規模生産は2021年11月に開始し、本格生産は2023年3月に開始予定と国会で発言した[10]。
2020年6月10日初飛行、台中清泉崗基地周辺空域を飛行した[11][12]。
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蔡英文総統がロールアウトで試作機に座っている
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ロールアウト時の画像
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AIDC T-5の初飛行実証,2020年6月22日
設計
[編集]設計はAIDC F-CK-1を基にして同系列のハネウェル/ITEC F124エンジンを共有するが、複合材料のボディなど80%の新たな部品が含まれる。
F-CK-1と比べると高度なアビオニクスの追加、燃料容量の増加があり、少し大きくなる予定[13] 。燃料貯蔵量の増加とともに低速と低高度での安定性を高めるため[14]、翼型は少し変更されてF-CK-1よりも翼が厚くなる[15]。
ラムエアスクープはイートンコーポレーションと協力して再設計され、22個の部品をレーザー粉末床溶融結合法で加工された2つのアルミニウム部品で置き換えた[16] 。
AT-3・F-CK-1と同様、メインホイール、カーボンブレーキ、ブレーキ制御システムをメギットが供給予定[17]。射出座席システムはマーチンベーカー・エアクラフトが提供予定[18]。構成部品の55%以上が台湾で作られる[19]。
この練習機は平時の訓練と戦時の戦闘、二つの役割を果たすよう最初から設計されたと報告されている[20]。
アビオニクスとセンサー
[編集]国家中山科学研究院はAIDC T-5用のAESAレーダーを開発しているが、台湾企業トロンフューチャーテックも窒化ガリウムベースのAESAをこのプログラムに入札した[21] 。
2019年にピラステクノロジーがプラットフォーム用のレーダーと通信アンテナを供給予定と発表された[14]。
運用
[編集]2019年9月、4つの試作機のうち最初のA1が中華民国の蔡英文総統により発表された[14]。
派生型
[編集]2019年、ノースロップF-5E/FタイガーII飛行隊の代替用として軽戦闘機AT-5派生型が計画されていると報道された[22]。
運用者
[編集]諸元・性能
[編集]出典: [23]
諸元
- 乗員: 2名
- 全長: 14.21 m
- 全高: 4.42 m
- 翼幅: 9.46 m
- 最大離陸重量: 12,200 kg
- 動力: F124-200TW ターボファンエンジン、 2,834.8 kgf (27.800 kN) × 2
性能
- 最大速度: 1,030 km/h (640 mph) 0.84M
- 航続距離: 1,350 km (839 海里)
脚注
[編集]- ^ Minnick. “Taiwan Exhibits New Fighter Trainers at Expo”. defensenews.com. Defense News. 8 May 2019閲覧。
- ^ Wendell Minnick and. “Taiwan Advanced Jet Trainer Nears Bidding Process”. defensenews.com. Defense News. 8 May 2019閲覧。
- ^ Pocock. “Taiwan Confirms Indigenous Jet Trainer Development”. ainonline.com. The Convention News Company, Inc.. 12 May 2019閲覧。
- ^ J.R. Wu and Michael Perry. “Taiwan to build 66 jet trainer aircraft by 2026 to bolster defenses”. reuters.com. Reuters. 8 May 2019閲覧。
- ^ Yeh. “Military launches naming contest for its new jets”. focustaiwan.tw. Focus Taiwan. 11 May 2019閲覧。
- ^ “Advanced Jet Trainer Rollout Ceremony”. AIDC (24 September 2019). 10 November 2019閲覧。
- ^ “Taiwan unveils prototype of indigenous advanced jet trainer”. Focus Taiwan (Central News Agency). (24 September 2019) 24 September 2019閲覧。
- ^ “TRADE REGISTERS”. armstrade.sipri.org. SIPRI. 28 May 2019閲覧。
- ^ Grevatt. “Taiwan starts production of XAT-5 prototype”. janes.com. Janes. 8 May 2019閲覧。
- ^ Liao. “Taiwan plans to start mass-producing trainer aircraft in 2023”. www.taiwannews.com.tw. Taiwan News. 16 July 2019閲覧。
- ^ 洪哲政 (2020年6月10日). “「勇鷹」高教機原型機首升空 航迷快手攔截機影” (中国語). 聯合報. オリジナルの2020年6月10日時点におけるアーカイブ。
- ^ 涂鉅旻 (2020年6月10日). “航迷驚艷16分鐘!「勇鷹」首翱翔 2架IDF戰機伴飛” (中国語). 自由時報. オリジナルの2020年6月10日時点におけるアーカイブ。
- ^ Banks. “In Face of Chinese ‘Aggression’ Taiwan Beefs Up its Own Defenses”. intpolicydigest.org. International Policy Digest. 8 May 2019閲覧。
- ^ a b c Choo. “PICTURE: Taiwan unveils “Brave Eagle” AJT”. www.flightglobal.com. Flight Global. 8 October 2019閲覧。
- ^ “Taiwan to purchase 66 advanced training airplanes”. janes.com. Janes. 16 July 2019閲覧。
- ^ “Eaton Uses Additive Manufacturing to Supply Parts to Aerospace Industrial Development Corporation”. finance.yahoo.com. Yahoo. 16 July 2019閲覧。
- ^ Staff Writer. “Meggitt Begins Delivery of Braking Systems for Taiwan’s AIDC XAT-5 Blue Magpie Advanced Jet Trainer”. defpost.com. Def Post. 16 July 2019閲覧。
- ^ Writer. “AIDC, Martin-Baker sign deal on AJT ejection seats”. www.taipeitimes.com. Taipei Times. 16 July 2019閲覧。
- ^ a b “国防部の研究機関ら、高等練習機66機製造へ 産業発展に期待/台湾”. 中央社フォーカス台湾. (2017年4月26日) 2020年3月16日閲覧。
- ^ Joseph Ye. “New trainer jets also viable in wartime: scholar”. focustaiwan.tw. Focus Taiwan. 22 October 2019閲覧。
- ^ Minnick. “Taiwan AESA Radar to Challenge International Market Share”. nationalinterest.org. National Interest. 16 July 2019閲覧。
- ^ Jennings. “Taiwan rolls out indigenous T-5 aircraft”. www.janes.com. 22 October 2019閲覧。
- ^ “T-5 Yung Yin Advanced Jet Trainer (AJT)”. Airforce Technology (2020年6月23日). 2022年9月5日閲覧。
関連項目
[編集]- 関連機
- 同世代の高等練習機