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無水マレイン酸

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
C4H2O3から転送)
無水マレイン酸[1]
識別情報
CAS登録番号 108-31-6 チェック
PubChem 7923
ChemSpider 7635 チェック
UNII V5877ZJZ25 チェック
EC番号 203-571-6
国連/北米番号 2215
ChEBI
ChEMBL CHEMBL374159 チェック
RTECS番号 ON3675000
バイルシュタイン 106909
Gmelin参照 2728
特性
化学式 C4H2O3
モル質量 98.06 g mol−1
外観 白色の結晶または針状[3]
匂い irritating, choking[3]
密度 1.48 g/cm3
融点

52.8 °C, 326 K, 127 °F

沸点

202 °C, 475 K, 396 °F

への溶解度 Reacts
蒸気圧 0.2 mmHg (20°C)[3]
磁化率 -35.8·10−6 cm3/mol
危険性
安全データシート(外部リンク) MSDS at J. T. Baker
GHSピクトグラム 腐食性物質急性毒性(低毒性)経口・吸飲による有害性
GHSシグナルワード 危険(DANGER)
Hフレーズ H302, H314, H317, H334, H372
Pフレーズ P260, P261, P264, P270, P272, P280, P285, P301+312, P301+330+331, P302+352, P303+361+353, P304+340, P304+341, P305+351+338
NFPA 704
1
3
1
引火点 102 °C (216 °F; 375 K)
爆発限界 1.4%-7.1%[3]
許容曝露限界 TWA 1 mg/m3 (0.25 ppm)[3]
半数致死量 LD50 465 mg/kg (oral, mouse)
850 mg/kg (oral, rat)
875 mg/kg (oral, rabbit)
390 mg/kg (oral, guinea pig)
400 mg/kg (oral, rat)[4]
関連する物質
関連する酸無水物 無水コハク酸
関連物質 マレイン酸
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。
瓶に入った無水マレイン酸

無水マレイン酸(むすいマレインさん、英語: maleic anhydride)とは、有機化合物の1種で、マレイン酸の2個のカルボキシル基が分子内で脱水縮合してできるカルボン酸無水物分子式 C4H2O3 の、無色の昇華性針状結晶の固体である。

性質と反応性

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刺激臭がある。水、メタノールに易溶。アセトンクロロホルムに溶ける。水に溶かすと加水分解してマレイン酸が生じる。

無水マレイン酸は、高分子の原料として工業的に重要である。電子不足オレフィンであるため、スチレンなどのモノマーラジカル重合により容易に共重合が進行する。スチレンとの共重合体は交互共重合体の例として有名である。

最低空軌道 のエネルギー準位が低く、ディールス・アルダー反応におけるジエノフィル(求ジエン体)としての反応性が高い。

無水マレイン酸と第一級アミンを原料としてマレイミド骨格が合成できる。マレイミド骨格はチオールとの反応性が高く、ペプチドのシステイン残基を捕捉するために利用される。

用途

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不飽和ポリエステル樹脂の原料、フマル酸コハク酸リンゴ酸などの食品添加物となる有機酸の原料、塩化ビニル安定剤、合成樹脂改質剤。

製造

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無水マレイン酸は、ベンゼンブタンなどの炭化水素五酸化バナジウム触媒の存在下で気相酸化させて製造される。

無水マレイン酸の 2015年度日本国内生産量は 85,397 t、販売出荷量は 50,789 t であった[5]

アセトアルデヒドからの合成

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アセトアルデヒドアルドール縮合し、さらに脱水してクロトンアルデヒドを作る。

これを接触酸化して無水マレイン酸を得る。[6]

毒でんぷん騒動

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本製品は工業用途向けであり、大量に摂取すると腎機能の低下などを招くことが知られており、食品への使用は想定されていない。しかし、2013年台湾にて無水マレイン酸を含むデンプンが流通していることが発覚し、毒性を理由に回収されたことがある[7][8]ライスヌードルタピオカパールの食感改善目的に添加されたものと見られるが、回収された違法でんぷん商品は206トンを上回った[9]

法規制

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毒物及び劇物指定令により、原体および1.2%を超える製剤が劇物に指定されている。[10]

脚注

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  1. ^ Merck Index, 11th Edition, 5586.
  2. ^ a b “Front Matter”. Nomenclature of Organic Chemistry : IUPAC Recommendations and Preferred Names 2013 (Blue Book). Cambridge: The Royal Society of Chemistry. (2014). p. 835. doi:10.1039/9781849733069-FP001. ISBN 978-0-85404-182-4 
  3. ^ a b c d e NIOSH Pocket Guide to Chemical Hazards 0376
  4. ^ Maleic anhydride”. 生活や健康に直接的な危険性がある. アメリカ国立労働安全衛生研究所英語版(NIOSH). 2024年11月28日閲覧。
  5. ^ 経済産業省生産動態統計年報化学工業統計編 - 経済産業省
  6. ^ 正雄, 伊藤 (1976). “無水マレイン酸製造法の進歩”. 有機合成化学協会誌 34 (7): 505–511. doi:10.5059/yukigoseikyokaishi.34.505. ISSN 00379980. https://doi.org/10.5059/yukigoseikyokaishi.34.505. 
  7. ^ “違法食品添加物事件が海外波及-食の安全に揺れる台湾”. 産経ニュース (産経新聞社). (2013年6月8日). https://web.archive.org/web/20130608104930/http://sankei.jp.msn.com/world/news/130608/chn13060807010001-n1.htm 2013年6月8日閲覧。 
  8. ^ 台湾揺るがす「毒でんぷん」 グルメ観光に打撃懸念 日本経済新聞、2013/6
  9. ^ 台湾の食品 デンプンから違法添加物が検出人民日報、15 May 29 2013
  10. ^ 毒物及び劇物指定令 第二条 [1]

関連項目

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