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HFpEF

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

HFpEF(ヘフペフ[1]英語: heart failure with preserved ejection fraction)は、かつて主に拡張不全と呼ばれていた病態で、左室拡張機能障害に起因する心不全

概要

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「左室拡張機能障害に起因する心不全(拡張不全)」とも呼ばれていたが、駆出率が低下した心不全(英語: heart failure with reduced ejection fractionHFrEF、左室収縮機能障害に起因する心不全、収縮不全)でも拡張機能障害を認めることが多いため、左室駆出率(英語: left ventricular ejection fraction;LVEF)が保持されている(preserved )心不全は、主にHFpEFと呼ばれるようになった。

病態

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「今日の治療指針2019」(医学書院)による分類は、

  • 駆出率が40%未満の心不全をheart failure with reduced ejection fraction(HFrEF、ヘフレフ[1]
  • 駆出率が40%以上50%未満の心不全をheart failure with mid-range ejection fraction(HFmrEF、ミッドレンジ[1]
  • 駆出率が50%以上ある心不全をheart failure with preserved ejection fraction(HFpEF、ヘフペフ)

HFrEFにおいては通常拡張能も低下しており、逆にHFpEFにおいても一部の心筋の収縮能は低下しているため、正確には、HFrEF=収縮不全、HFpEF=拡張不全ではないが、それぞれの主因で収縮不全、拡張不全とよぶことも多い。

診断

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  1. 臨床的「心不全」の診断にあてはまる(例:Framingham基準[2]に合致するなど)
  2. 左室駆出率の低下を認めない
  3. 拡張機能指標の異常を有する

以上すべてを満たすこと。ただし2019年現在、拡張機能を非観血的に評価することが困難なため、臨床の現場では、1.と2.を満たすものとなっている[3]

治療

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心臓の拡張機能障害の原因となる高齢、糖尿病、虚血などが基本にあるため、日常生活の管理が重要となる[4]。HFrEFと異なり、予後改善効果を示す明確な薬物療法はない[3]

心血管病既往のある2型糖尿病患者に対するSGLT2阻害薬の投与は有効である(クラスⅠ,エビデンスレベルA)[5]。SGLT2阻害剤は計6成分が承認されているが、このうちエンパグリフロジン(ジャディアンス)とダパグリフロジン(フォシーガ)は心不全の適応追加に向けた開発を行っており、両剤ともにHFrEF患者およびHFpEF患者(いずれも糖尿病の有無は問わない)をターゲットにしている[6]

脚注

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  1. ^ a b c 心不全の薬物治療の最前線 - 循環器病治療の最新情報2016 公益財団法人 日本心臓財団
  2. ^ 急性心不全治療ガイドライン(2011年改訂版) 日本循環器学会(JCS) (PDF)
  3. ^ a b HFpEF〈heart failure with preserved ejection fraction、拡張不全〉循環器用語ハンドブック(トーアエイヨー)
  4. ^ 「今日の治療指針2019」第6章 循環器疾患―慢性心不全(医学書院)
  5. ^ 日本循環器学会,他:急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)
  6. ^ “「HFpEF」の新薬開発、SGLT-2阻害剤に期待  心不全治療、エントレストの主要項目未達で”. 日刊薬業(じほう). (2019年10月15日). https://nk.jiho.jp/article/145612 2019年10月15日閲覧。 

参考文献

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