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成長の限界

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Limits to growthから転送)
成長の限界
著者
原題The Limits to Growth
言語英語
出版日1972年3月2日 (52年前) (1972-03-02)[1]
出版社Potomac Associates英語版 – Universe Books
ページ数205
ISBN0-87663-165-0
OCLC307838
電子版あり[2]

成長の限界(せいちょうのげんかい、原題: 英語: The Limits to Growth〈英語圏で多用される略称は LTG〉)とは、ローマクラブが資源と地球の有限性に着目し[3]、マサチューセッツ工科大学のデニス・メドウズを主査とする国際チームに委託して、システムダイナミクスの手法を使用してとりまとめた研究で[4]、1972年に発表された[注 1]コンピュータを用いた再現手法英語版を援用して、経済と人口増加をモデル化し有限な資源の供給と対照した[6]。「人口増加環境汚染などの現在の傾向が続けば、100年以内に地球上の成長は限界に達する」と警鐘を鳴らしている[7]

以下の文は著名である。

人は幾何学級数的に増加するが、食料は算術級数的にしか増加しない — [8]

これは時系列で考えると「人は子供が生まれてその子供がまた子供を生むので「掛け算」で増えていくのに対し、食料はある土地では年に1回それも同じ量しか生産出来ない、つまり「足し算」になるという概念に基づく[注 2]

なお、この概念をトマス・ロバート・マルサス(『人口論』)が論じた時点では肥料は伝統的な有機質肥料が中心であり、単位面積あたりの農作物の収量は増え続ける人口に追いつかず、人類は常に貧困に悩まされるという現象は自明であったが[11]、1900年以降にハーバー・ボッシュ法などで化学肥料が安定供給されたことにより克服された[11]

本書で述べた予測結果と現状の比較は、例えば産業技術総合研究所は鉱物資源について「主要国のベースメタルレアメタルの生産量と埋蔵量、可採年数」[12]などが継続的に調査されている[注 3]

手法

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World3モデルの標準の解析結果。原書『The Limits to Growth』に掲載。

研究は「World3英語版」というコンピュータ・モデルを採用し、地球環境と人間のシステム2種の相互作用の結果をシミュレーションしており[注 4]、その基盤となった理論はメドウズの大学同僚のジェイ・フォレスター(Jay Forrester)教授が唱え[15]、著書『World Dynamics』に述べた[16]ものである。

委託者のローマクラブに代わり、研究の成果は1971年の夏にモスクワリオデジャネイロの国際会議で公表された[17]。著者代表としてドネラ・H・メドウズ英語版デニス・L・メドウズ英語版ヨルゲン・ランダース英語版の名前が記され、3名を含む寄稿者陣はウィリアム・W・ベーレンス3世英語版William W. Behrens III)を加えた研究者17名であった[18]。 この本は出版以来、日本語を含む30言語に翻訳されて累計販売部数はおよそ3000万部にのぼる[19]。時間が経っても議論を巻き起こして、複数の後続の出版物が主題に採用してきた[20][注 5]

続刊

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続論は翻訳され、『限界を超えて英語版』(1992年[注 6]と『成長の限界 : 人類の選択』(2005年[注 7]がある("※"=それぞれ和訳の発行年)。

共著者のヨルゲン・ランダース(スウェーデン語: Jørgen Randers)は2012年に40年後の予測を『2052: A Global Forecast for the Next Forty Years英語版』と題して出版した[32]。ドネラ・メドウズは鬼籍に入り、『成長の限界』の原著者デニス・メドウズとランダースはさらに10年を経た2022年に19名の寄稿者を得て著書『Limits and Beyond』を上梓している[注 8]

脚注

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注釈

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  1. ^ 日本語版の単行本は同年発行[5]
  2. ^ この一節はもともとはトマス・ロバート・マルサスの『人口論』による(初版1798年[9][10]
  3. ^ 「【金属工業・鉱業】」『業界・市場動向のしらべかた大阪府立中之島図書館〈図書館調査ガイド 19〉59-61頁[13]
  4. ^ 同モデルはシミュレーション用のコンピュータ言語 DYNAMO英語版(ダイナモ)で書かれた[14]
  5. ^ 安井[21]、Kassiola他[22]山本隆三[23]、Sen他[24]山本達也[25]谷口[26]Weizsäckerほか[27]
  6. ^ 日本語訳[28]、原題は『Beyond the Limits』(1992年)[29]
  7. ^ 情報提供はサピエ図書館[30]、原題は『The Limits to Growth: The 30-Year Update』(2004年)[31]
  8. ^ 原書[33]、日本語版[34]

出典

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  1. ^ The Limits to Growth+50” (英語). Club of Rome (2022年). 2024年6月12日閲覧。
  2. ^ 電子書籍、1972年版(英語)
  3. ^ 大来, pp. 20–25, 「国際協力におげるローマ・クラブの役割」
  4. ^ D.H.Meadows et al. 1972
  5. ^ メドウズ & 大来 1972
  6. ^ MacKenzie, Debora (4 January 2012). “Boom and doom: Revisiting prophecies of collapse”. New Scientist. 28 November 2017閲覧。
  7. ^ 茨城大学農学部霞ケ浦研究会 1977, 95コマ doi:10.11501/9583338
  8. ^ 進藤 2017, pp. 185
  9. ^ 中西 1997, pp. 17–20
  10. ^ フランク et al. 1924, pp. 77-
  11. ^ a b 農業環境技術研究所 2008, 「化学肥料の功績と土壌肥料学」
  12. ^ 産業技術総合研究所 2006
  13. ^ 大阪府立中之島図書館: “調べ方マニュアル : 詳細 調べ方 : 図書館調査ガイド19「業界・市場動向のしらべかた」(2006-01-20)”. レファレンス協同データベース. 国立国会図書館 (2006年2月3日). 2024年6月13日閲覧。 “ローマクラブが指摘した「成長の限界」の予測結果と現状を比較して、全体の傾向と個々の鉱物資源の傾向を掲載しています。ベースメタル、レアメタルの主要国の鉱物生産量と埋蔵量、可採年数などを収録しています。大阪府立中之島図書館 (2120002) 管理番号:中図調-0019”
  14. ^ Edward 2010, pp. 366–371
  15. ^ D.H.Meadows et al. 1972, p. 21
  16. ^ Forrester, Jay Wright (1971). World Dynamics. Wright-Allen Press. ISBN 0262560186. https://archive.org/details/worlddynamics00forr_3du 
  17. ^ D.H.Meadows et al. 1972, p. 186
  18. ^ D.H.Meadows et al. 1972, p. 8
  19. ^ Nørgård、Peet、Ragnarsdóttir 2010, pp. 59–63
  20. ^ Farley, Joshua C. “The Limits to growth debate”. The University of Vermont. 1 December 2017閲覧。
  21. ^ 安井 至、21世紀版"成長の限界"検討会 編『地球の破綻 : 21世紀版"成長の限界" = Bankruptcy of the earth』日本規格協会、2012年。ISBN 9784542301924NCID BB1136567X 
  22. ^ Kassiola, Joel Jay、松野 弘、岡村 龍輝、帯谷 博明、孫, 榮振、所 伸之『産業文明の死 : 経済成長の限界と先進産業社会の再政治化』ミネルヴァ書房、2014年。ISBN 9784623065981NCID BB15748557 
  23. ^ 山本 隆三『電力不足が招く成長の限界』エネルギーフォーラム、2015年。ISBN 9784885554490NCID BB18995701 
  24. ^ Sen, Amartya Kumar、Drèze, Jean、湊 一樹『開発なき成長の限界 : 現代インドの貧困・格差・社会的分断』明石書店、2015年。ISBN 9784750342818NCID BB20269371 
  25. ^ 山本 達也『暮らしと世界のリデザイン : 成長の限界とその先の未来』花伝社、共栄書房(発売)、2017年。ISBN 9784763408068NCID BB23454620 
  26. ^ 谷口 正次『経済学が世界を殺す : 「成長の限界」を無視した倫理なき資本主義』扶桑社〈扶桑社新書 241〉、2017年。ISBN 9784594077112NCID BB24901655 
  27. ^ Weizsäcker, Ernst U. von (Ernst Ulrich)、Wijkman, Anders、中村 秀規、林良嗣、野中 ともよ、森杉 雅史、柴原 尚希、吉村 皓一『Come on!目を覚まそう! : ローマクラブ『成長の限界』から半世紀 : 環境危機を迎えた「人新世」をどう生きるか?』明石書店、2019年。ISBN 9784750349329NCID BB29623367 
  28. ^ メドウズ et al. 1992
  29. ^ D.H.Meadows, Randers, D.L.Meadows 1992, ISBN 0-930031-62-8
  30. ^ D・H・メドウズ et al. 2005, 名古屋ライトハウス情報文化センター、国立国会図書館書誌ID:000007671079
  31. ^ D.H.Meadows, Randers, D.L.Meadows 2004, ISBN 1931498512
  32. ^ Randers 2012 :ISBN 978-1-60358-467-8
  33. ^ Bardi、Alvarez Pereira 2022
  34. ^ D・L・メドウズ et al. 2022  :ローマクラブ日本 編(丸善出版、2022年)

参考文献

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主な執筆者、編者の順。

洋書

主な執筆者や編者のアルファベット順。

関連図書

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発行年順。

  • 続刊、『成長の限界』(1972年)、『限界を超えて』(1992年)、『成長の限界 : 人類の選択』(2005年)の全3刊。(情報提供元: サピエ図書館資料検索)
    • 、デニス・L・メドウズ、ヨルゲン・ランダース 著、松橋 隆治、村井 昌子 訳『限界を超えて : 生きるための選択』茅 陽一 監訳、1992年12月。doi:10.11501/13292244ISBN 4-478-87027-6国立国会図書館書誌ID:000002221489 。原題『Beyond the limits』
      • 音声DAISY版:福岡市立点字図書館作成(音声デイジー、CD、サピエ図書館所蔵)
    • ドネラ・H・メドウズ、デニス・L・メドウズ、ヨルゲン・ランダース 著、枝廣淳子 訳『成長の限界 : 限界を超えて』ダイヤモンド社、2005年3月。ISBN 4-478-87105-1国立国会図書館書誌ID:000007671079 
      • 音声DAISY版:名古屋ライトハウス情報文化センター作成(音声デイジー、CD、サピエ図書館所蔵)
  • 大来佐武郎(著)、科学技術と経済の会編集部(編)「国際協力におけるローマ・クラブの役割」『技術と経済』第6巻10(通号69)、科学技術と経済の会、1972年10月、20-25頁、doi:10.11501/3300886 国立国会図書館デジタルコレクション NDLJP:3300886、送信サービスで閲覧可能(13-15コマ)、掲載誌別題『Technology and economy』。
  • 公文俊平 著「「成長の限界」と今日の問題性 : 変革期の人間社会」、日本青年会議所 編『省資源日本の構図』ダイヤモンド社、1974年。doi:10.11501/11975433国立国会図書館書誌ID:000001150144 
  • 東京都立大学都市研究委員会 編『都市研究関係文献目録』 昭和48年版、東京都立大学都市研究委員会〈都市研究文献目録 ; 8〉、1974年10月。doi:10.11501/11917441 国立国会図書館デジタルコレクション NDLJP:11917441、送信サービスで閲覧可能(41コマ、99コマ)
  • 茨城大学農学部霞ケ浦研究会(編)「霞ケ浦」、三共出版、1977年7月、doi:10.11501/9583338 国立国会図書館デジタルコレクション NDLJP:9583338、送信サービスで閲覧可能(95コマ、109コマ)
  • 河宮信郎「エントロピー入門 : 4 : 経済的「進歩」とエントロピー」『経済セミナー』第355号(日本評論社、1984年8月)国立国会図書館デジタルコレクション NDLJP:1413648、国立国会図書館内限定(90-96頁、47コマ–)。
  • 「REPORTS チェンマイ市のごみ処理事情(上)」『生活と環境』第35巻第6号(通号410)(日本環境衛生センター、1990年6月)国立国会図書館デジタルコレクション NDLJP:3443472/1/15、送信サービスで閲覧可能(25-33頁、15コマ–)。
  • 米沢 健「広域行政の新たな展開--福岡市を中心として」大阪市政策企画室企画部総合計画担当 編『都市問題研究』第45巻第4号(通号508)(大阪市政策企画室企画部、1993年4月)送信サービスで閲覧可能(71-82頁、40コマ–)掲載誌別題『Journal of municipal problems』
  • 三浦義雄『滅びのアテナ : 自然と人間社会とのかかわり』北樹出版、1998年。 
  • 鉱物資源の動向 : 「成長の限界」から35年』産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門、2006-08 。「1970年以降の鉱物資源の動向についてまとめた資料です。レアメタルについては、クロム、コバルトなど15鉱物がとりあげられ、埋蔵量、生産量等が解説とともに掲載されています。後述のMineral Commodity Summariesが主な出典データです。」 

関連項目

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外部リンク

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