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信玄公旗掛松事件(しんげんこうはたかけまつじけん)とは、国鉄(現JR東日本)中央本線日野春駅(山梨県北杜市長坂町富岡)駅構内に隣接した線路脇に、かつて生育していた、武田信玄が軍旗を立て掛けたという伝承・由来のある「信玄公旗掛松」と呼ばれる老松が、蒸気機関車の煤煙、蒸気、振動などにより枯死してしまったとして、老松の所有者(地権者)であった清水倫茂(しみずりんも)が、一個人として国(鉄道院)を相手取り訴訟を起こした損害賠償請求事件である。
国家賠償法成立以前の、大正年間(1910年代 - 1920年代)に起きた当訴訟事件は、鉄道事業という公共性の高いものであっても、「他人の権利を侵略・侵害することは法の認許するところではない、松樹を枯死させたことは、権利の内容を超えた権利の行為である。」、すなわち「権利の濫用」に当たると司法によって判断され、第一審甲府地方裁判所、第二審東京控訴院(今日の東京高裁に該当)それぞれの判決において、原告である清水倫茂は勝訴し、最高機関である大審院(今日の最高裁に該当)第二民事部の判決(大判大正8年3月3日民録25輯356頁)でも、「国側(鉄道院)に過失があった」と認められ、原告側が勝訴した歴史的裁判であった。
これは近代日本の民事裁判判決において、権利濫用の法理が実質的に初めて採用された民事訴訟案件であり、加害者の権利行使の不法性(違法性)について重要な判断が示されるなど、その後の末川博、我妻栄、青山道夫ら、日本の法学者による「権利濫用論」研究の契機となった、日本国内の法曹界では著名な判例である>。
信玄公旗掛松事件は2013年6月20日 (木) に秀逸な記事に認定されました。
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