コンテンツにスキップ

RoboCopter 300

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

RoboCopter 300(ロボコプター300)は、日本の川田工業が、既存の有人ヘリコプターを改造する形で開発した大型産業用無人ヘリコプター

概要[編集]

川田は1987年昭和62年)の航空事業部設立からバブル崩壊などに伴い1997年平成9年)に凍結されるまでの間、自社製の有人パーソナルヘリコプターの開発を進めており[1][2]、パーソナルヘリコプターの操縦を容易にするべく開発されていた自動制御技術を応用する形で、RoboCopter 300の開発を開始した[1]

有人機であるシュワイザー / ヒューズ 300を改造する形で開発・製造されており、既存機をベースとすることで開発コスト・期間を抑えている[3]。原型機でコックピットが存在したスペースに操縦系統であるアクチュエータシステムを収めている他[4]、スロットルの自動調整のためのRPMガバナ、ローターエンゲージ時の操作を自動化するオートエンゲージシステムなどが新たに搭載されている[5]。エンジンは、自動車用無鉛ハイオクガソリンを燃料にできるよう改造されたライカミング製のHO-360英語版を装備している[3]。機体サイズ故に搭載能力も大きく、容量180 Lの農薬散布装置や空中撮影用のCCDカメラおよび赤外線カメラとカメラスタビライザ[1][6]、気象観測装置などを搭載できる[7]

機体の操縦は地上の計器操作盤(プロポ)から行われ[8]、スイッチの切り替えによってラジコン操縦と制御コンピューターによる自動制御の2つのモードを選択することができる[9]。また、操縦不能になった際は自動的にその場に着陸するよう設定がなされている。運航には操縦者の他、飛行前点検などを行う地上操作者と2名の監視者の計4名を必要とする[8]

1996年(平成8年)10月14日には[10]ヒューズ 300Cを改造した[8][10]先行開発機が初飛行し、これによる各種実験を経た[8]1997年9月29日には[10]、シュワイザー 300CBを改造した試作機[11](量産型仕様)が川田のヘリ・テクノロジーセンターで初飛行している[10]。その後は2002年(平成14年)頃まで川田社内で自律飛行制御技術などの飛行試験を行った他[12]、産業用途での展開も図られ[1]ワーナー・グレイでは商用運航が行われている[7]。また、後に川田が行った1500シリーズなどの小型無人航空機開発に際しても、RoboCopter 300の自律制御技術が応用されている[13]

諸元(試作機)[編集]

出典:「大型産業用無人ヘリコプタ RoboCopter 300」59,60頁[3]

  • 全長:7.37 m
  • 胴体幅:1.99 m
  • ローター直径:8.18 m
  • 全高:2.65 m
  • 空虚重量:500 kg
  • 全備重量:794 kg
  • エンジン:ライカミング HO-360改造(168 hp) × 1
  • 航続時間:100分 - 4時間
  • 有効搭載可能重量:294 kg
  • 乗員:0名

脚注[編集]

参考文献[編集]

  • 川田技報編集委員会「川田グループ100年の技術史 ―創業100周年記念―」『川田技報』第41巻、KTI川田グループ、2022年、67,68頁、ISSN 2185-02912024年6月27日閲覧 
  • 宮森剛趙群飛塚田郁弘平井正之赤地一彦太田成彦大型産業用無人ヘリコプタ RoboCopter 300」『川田技報』第18巻、川田工業、1999年、59 - 63頁、ISSN 2185-02912024年6月27日閲覧 
  • 宮森剛、赤坂剛史中村優RoboCopterの自律飛行についての研究」『川田技報』第21巻、川田工業、2002年、36 - 41頁、ISSN 2185-02912024年6月27日閲覧 
  • 「日本の航空宇宙工業50年の歩み」編纂委員会 編『日本の航空宇宙工業50年の歩み日本航空宇宙工業会、2003年、292,294頁。全国書誌番号:20475271https://www.sjac.or.jp/aboutsjac/index_detail.html2024年6月27日閲覧 
  • 実機を無人ヘリに改造 ROBO COPTER 300”. ワーナー・グレイ. 2024年6月27日閲覧。

関連項目[編集]