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S-350 (路面電車車両)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
S-350
基本情報
製造所 ソシミ
製造年 1989年
製造数 1両
投入先 ローマ市電
主要諸元
編成 単車(ボギー車
軌間 1,445 mm
電気方式 直流600 V
架空電車線方式
最高速度 70 km/h
車両定員 82人(着席33人)
(乗車密度4人/㎡時)
車両重量 10.5 t
全長 14,000 mm
全幅 2,400 mm
床面高さ 350 mm
車輪径 550 mm
固定軸距 1,400 mm
主電動機出力 20 kw
搭載数 8基
出力 160 kw
備考 主要数値は[1][2]に基づく。
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S-350は、イタリアの車両メーカーであったソシミ(Socimi S.p.A.)1989年に試作した路面電車車両。車内全体の床面高さが350 mmに統一された、世界初の100%超低床電車であった[1][3]

概要

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アメリカヘドリー・ドイル・ステップレス・ストリートカー[4]ドイツ低床構造の二軸車(Niederflurwagen)ドイツ語版[5]など世界各地で導入されながらも、車両自体の不具合や第二次世界大戦などの影響で途絶えていた、段差なしで乗降が可能な超低床電車開発の動きは、1984年スイスジュネーヴ市電英語版向けに製造されたBe4/6形電車から再び始まった。そして1987年から量産が始まったフランスグルノーブル市電英語版向けのフランス標準型路面電車(TFS、第二世代)など部分超低床電車が世界各地で盛んに製造された[6][7]

一方、イタリアでも同時期に超低床電車の研究が開始されており、ジュネーヴ市電と同年の1984年に、ミラノ市電の旧型電車2両を大改造した、電磁吸着ブレーキや出力を増強した電動機を搭載した動力台車と床面高さ350 mmの中間車体を有する2車体連接構造の部分超低床電車がフィレマ(Firema)イタリア語版によって試作された。また1989年からはトリノ市電イタリア語版向けの部分超低床電車がフィアットによって量産された。だが、これらの部分超低床電車は動力台車の箇所が高床構造であるため車内に段差が存在し、乗客の往来や収容量の増加の面で課題があった。そこで同年、動力台車部分も含めた車内全体が低床構造になっている電動車としてソシミが試作したのがS-350である[6]

従来の超低床電車と異なりS-350は単独で走行可能な全長14,000 mmのボギー車で、片側4箇所に乗降扉が設置された片運転台の車両だった。2基搭載されている動力台車は軸距1,400 mmという小型構造であり、各小径車輪の外側上部に主電動機を搭載する事により、車内通路の段差を廃し全体の床面高さを350 mmに統一する事を可能とした。ただし小型とはいえ構造自体は従来のボギー台車であり、曲線通過時に回転する空間を確保するため台車がある箇所の通路が大幅に狭くなるという欠点を抱えていた。軸受にはローラーベアリングが用いられた[3][8]

製造後

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1989年6月に製造後、S-350はローマ市電に導入され各系統で使用された。試験結果は1990年から量産された部分超低床電車であるローマ市電9000形電車イタリア語版に活かされた他、主電動機を小径車輪の外側に配置する構造はソシミが設計に協力したユーロトラムに採用された。だが1992年に発覚したスキャンダルの結果ソシミが1994年に破産した結果、S-350も運用から離脱し、2016年現在はアルストムのサビリャーノ工場で留置されている事が確認されている[3][6][9]

関連項目

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  • ブレーメン形 - 1990年に試作車(GT6N形)が製造された、世界でも最初期の100%超低床電車。S-350と異なり車軸を持たない左右独立式台車を採用した事で車内空間が確保されており、ドイツ日本などで多く採用されている狭軌路線への導入も可能となった[10][11]
  • 長崎電気軌道6000形電車 - 2022年に製造された単車型超低床電車。S-350と同様、全席ロングシートに車軸を持つボギー台車を採用している[12]

脚注

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注釈

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出典

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  1. ^ a b Sergio Vigano 2011, p. 117-120.
  2. ^ Michael I. Darter 1995, p. 149.
  3. ^ a b c tranvieridimilanoの投稿(1089907047736445) - Facebook
  4. ^ Debra Brill (2001). History of the J.G. Brill Company. Bloomington: Indiana University Press. ISBN 0253339499. OCLC 45827904 
  5. ^ 鹿島雅美「ドイツの路面電車全都市を巡る 1」『鉄道ファン』第45巻第12号、交友社、2005年、139頁。 
  6. ^ a b c Sergio Vigano 2011, p. 117-118.
  7. ^ Michael I. Darter 1995, p. 2.
  8. ^ Sergio Vigano 2011, p. 119.
  9. ^ Michael I. Darter 1995, p. 8.
  10. ^ Sergio Vigano 2011, p. 119-120.
  11. ^ Sergio Vigano 2011, p. 122.
  12. ^ 鉄道プレスネット 長崎電軌「6000形」3月24日から 単車型全低床車のロング配置は「世界初」?

参考文献

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  • Sergio Vigano (2011). “Pavimento tutto basso: ne vale sempre le pena?” (イタリア語). INGEGNERIA FERROVIARIA (Collegio Ingegeneri Ferroviari Italiani): 117-137. ISSN 00200956.