サンルーフ
サンルーフ(英語:Sunroof )とは、自動車の屋根に装備される開口部である。ガラスや透明な合成樹脂の場合は天窓と呼ばれ、通常、その中で開閉式のものを指す。
概要
[編集]サンルーフは多様な構造と形態が考案されており、メーカーにより様々な呼称が用いられている。乗用車に装着されることが多いが、観光バスに装着される例もある。アメリカの高級車市場では、本革シートと並ぶ必須の装備であり、セダン・ワゴン・クーペ・SUV問わず全てのグレードでサンルーフが選択装備できる。冬季の日照が少ない欧州では、早くから大衆車にも広く普及している。車に高級感を求める人が多い中国市場でも装着車が多い。
一方日本国内では、そもそもの気象条件(高温多雨多湿)による錆の発生、重量増による燃費の悪化や室内高の減少、車両価格の上昇や雨漏りなどのトラブルによる出費の増加を嫌う他、後述の死亡事故の懸念から敬遠する者が少なくなく、日本ではサンルーフのオプション設定は、高級車やスポーツ車などに多く、大衆車などでは設定がない事が多い。しかも徐々に搭載車が減っている。
日本では1972年(昭和47年)に、マルエヌが米国のDASと共同開発した後着けタイプのサンルーフであるターポリン製の「オープントップ」を発表[1] し、一般化した。日本車で初めてメーカー装着のサンルーフを装備した車種は、手動スライド式が1968年(昭和43年)6月のホンダ・N360(追加車種)、電動スライド式は1978年(昭和53年)発表の初代ホンダ・プレリュードである。
サンルーフの種類は、ヒンジで開閉し、採光と換気が主目的で開口面積は比較的小さく、開放時には後方が上部に張り出すチルトアップサンルーフ。天窓部を屋根の上か屋根と天井の間にスライドさせることで開放し上述のポップアップ構造を併せ持つ現在サンルーフとしては最も一般的なスライディングサンルーフ。外板にガラスを用いたものはムーンルーフとも。観光バスでは1950年代から流行した、屋根肩部に設けられた窓。高さのある渓谷や建築物の観光に適しているパノラマウインドウなどがある。
材質はスチール、アルミ、FRPなどが使用されるが、ターポリン、キャンバスやガラスが使用されることもある。
安全性への懸念
[編集]サンルーフの装着のデメリットとしては重量の増加、 剛性の低下、室内高の減少、雨漏りなどがあるが、走行中にサンルーフから身体を出すことで、狭隘な道路においては障害物に身体が衝突する恐れがある。実際に1989年には、広島県にてサンルーフ付きの車両が高さ2.7m・通行高さ制限1.9mのJR西日本山陽本線高架下を通過した際に、サンルーフから顔を出して遊んでいた幼児2人が高架手前の高さ制限を示す鉄製防護工に頭部を激突させ死亡する事故が発生[2][3]。2013年10月には、山口県萩市椿東の市道で大型ワンボックスカーが高さ制限1.8mのJR西日本山陰線高架橋の下を通過した際に、後部座席のサンルーフから顔を出していた6歳女児が、高架橋の下に設置された高さ制限を表示した鉄製防護工に頭を強く打ち、救急車で病院に運ばれたが脳挫傷で死亡するという、24年前の前例とほぼ同じ状況の事故も発生している[4]。想像力がない子供や、酔っ払いや無茶振り等でふざけ半分になった大人が軽い遊びのつもりでサンルーフから身体を出して取り返しのつかない事態を引き起こしてしまうという点ではサンルーフを搭載すること自体に大きなリスクがある。
もっとも日本を含む世界の主要国の法律では、走行時の全席シートベルト及びチャイルドシート着用が義務付けられており、そもそも乗員がサンルーフから顔を出した状態で走行すること自体、違法状態にあると考えられる。加えてマニュアルなどでも、走行中に身体を出すなと明記されていることが多く[5]、この手の事故は名目上では屋根から頭を出した本人の自己責任といえるが、実際には運転者が全責任を負わされており、運転者が本人に注意したことが立証されない限り刑事罰を科せられるケースも多い。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ 会社沿革 - マルエヌ株式会社[1]
- ^ 「車の天窓から顔 2児死ぬ 立ち上がり、周囲に夢中」『朝日新聞』1989年7月21日付朝刊、27面
- ^ 観光に関する懇談会(参考資料) - 国土交通省
- ^ サンルーフから頭出し高架橋に接触 6歳女児死亡、山口 - 日本経済新聞 2013年10月1日
- ^ 実際、例えばST180系カリーナEDの取説には「身体を出すな」の他に「荷物も出すな」(例示としてスキー板が出ている様子が描かれている)、「サンルーフの窓枠に座るな」などの旨がイラスト入りで明記されている。
関連項目
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