コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

Team GB

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Team GB
所持会社 イギリスオリンピック委員会
使用開始 1999年9月
ウェブサイト www.teamgb.com
テンプレートを表示
画像外部リンク
en:File:Team-gb-logo.svg
? 2012年から使用されているチームのロゴ

Team GB(チームGB[1])は、1999年からイギリスオリンピック委員会 (BOA)オリンピックのイギリス選手団に冠しているブランド名である。このブランドは1996年アトランタオリンピック後に作られ、現在は BOA の商標となっている。ブランド名は選手団全体を1つのチームとして指すもので、競技の垣根を超えて用いられる。また名称の簡潔さを利点とし、マーケティング戦略の一角も成している。ブランド名は「グレート・ブリテン」(: Great Britain)の略称である "GB" を用いており、グレートブリテン島に重きを置いていて北アイルランドなどの他地域は無視されている。このことから "United Kingdom" の略称を用いた "Team UK" に名称変更すべきと主張した批評家もいたが、BOA はこの意見を却下している。

歴史

[編集]

イギリスオリンピック委員会のマーケティング担当理事、マジェナ・ボグダノヴィッツ(: Marzena Bogdanowicz)は、オリンピックのイギリス選手団(英: The Great Britain and Northern Ireland Olympic team)の公式略称は長たらしいと感じていた。彼女が最初に "Team GB" のコンセプトを思いついたのは1996年から1997年のことで[2]、インタビューで次のように語っている。

「わたしは1996年の大会に行っていて、あの時のロゴはただライオンと輪をあしらったものだったけれど、あの時のわたしたちはそのロゴにふさわしいほど強いブランドではなかった[注 1]。帰国してから、わたしは長たらしくなくて、チームを感じることのできる何かを求め始めた。色々候補を見て Team GB に辿り着いた」
"I went to the games in 1996 and the logo at the time was just the lion and the rings, but we weren't strong enough as a brand to just be a lion and the rings. So coming back I wanted to find something that was less of a mouthful, and also had that team feel. We looked at the options and came up with Team GB."[2]

このブランド名は1999年に、イギリス知的財産庁へ商標登録されている[3]

ブランド戦略

[編集]

イギリスオリンピック委員会は、「グレートブリテン及び北アイルランドにはひとつのオリンピックチームしかない、それは Team GB だ」[4] と発表している。

2000年に開かれたシドニーオリンピックでの成功を受け、Team GB のブランドは、ライセンス契約・商業戦略の一角を成した[5]。ボグダノヴィッツはイギリスオリンピック委員会が「イギリスの一般人の心の中に Team GB のブランドが深く刻み込まれる」(: "cement the Team GB brand in the minds of the British public")ことを望んでいると述べた。

改称を求める声

[編集]
本来「グレート・ブリテン」とは、イングランド・スコットランド・ウェールズの位置するグレートブリテン島のみを指す言葉である

オリンピックのイギリス選手団の公式名称は "The Great Britain and Northern Ireland Olympic Team"(訳:グレートブリテン及び北アイルランドオリンピックチーム)である[4]。この略称として、イギリスオリンピック委員会 (BOA) のブランドである "Team GB" を使うことは、イングランドスコットランドウェールズの位置するグレートブリテン島のみを特記していて不適切だとの意見が上がった。BOAの選手選考対象だが、自前の国内オリンピック委員会を持ち合わせていない地域の選手を除外しているようだと批判されたのである。ここで言及される地域とは、北アイルランド、いわゆる王室属領マン島ジャージーガーンジー)、イギリスの海外領土などを指す。

2009年6月、民主統一党の政治家で北アイルランドのスポーツ相を務めていたグレゴリー・キャンベル英語版は、「北アイルランドの人々を事実上外国人として締め出す」このブランド名は変更されるべきだと主張した[6]。キャンベルの後を継いだネルソン・マッコースランド英語版も、このブランド名は改称されるべきだと提案した[7]。また2012年ロンドンオリンピックでは、北アイルランド出身の選手20人のうち、13人がアイルランド代表として出場した[8]

結局 BOA は愛称を "Team UK" に変更することを拒否したが、これに際して、"Team GB""Team UK" のどちらも英国の選手全体を指すには不適切な名称であり[注 2]"Team GB" との名称は「IOCコードの GBR と最も符合する効果的な商号だ」と主張した[9]

ブランドの受け入れ

[編集]

"Team GB" のブランドはチームの一体感を作るとされている[2]。ブランド名制定に関わったボグダノヴィッツは、ブランドが使われていなかったアトランタオリンピック(1個)とこのブランドの元に参加したシドニーオリンピック(11個)でのオリンピックのイギリス選手団の金メダル獲得数を挙げて成果を強調している[2]

コメディアンでコラムニストのデイヴィッド・ミッチェル英語版[注 3]は、愛称を作って代表チームのイメージを変えた BOA の決断について、「資本主義の最終的勝利」(: "capitalism's final victory")で「哀れだ」(英: "pathetic")としているほか、このブランド名が多くのメダル獲得に繋がったと考えている人は「馬鹿かアスリートを馬鹿だと思っている」(英: "are either morons or they think our athletes are")とけなした[10]スコットランドのコラムニスト、ゲリー・ハッサン英語版は、「Team GB は政治形態とは一致しない、絵空事や幻想を表しているようだ」とコメントした[11]

ヴィクトリー・パレード

[編集]

ロンドンオリンピックパラリンピックの開催を祝し、2012年9月10日に祝賀パレードが開かれた[12][13]

このロンドンオリンピックに際しては、BOA による 'Our Greatest Team'(意味:我々の素晴らしきチーム)とのスローガンが用いられた。

類似の議論

[編集]

インターネット国別コードトップレベルドメインで使用されるISO 3166-1では当初”.gb”がイギリスに割り当てられていたが、1985年に”.uk”が追加されて以降は全くと言って良いほど使用されなくなった。連合王国(United Kingdom)に含まれない王室属領ガーンジーには”.gg”、ジャージーには”.je”、マン島には”.im”がそれぞれ割り当てられている。

連合王国の構成国であるイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドにはISO 3166-1のアルファベット2文字のコードが割り当てられていないが、北アイルランドでは中米ニカラグアに割り当てられた”.ni”が好んで使用されている。かつてはアフリカセーシェルに割り当てられている”.sc”がスコットランド向けに販売されていた。

関連項目

[編集]

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 因みに現在のブランドロゴは、ユニオンジャックと同じ赤と青で描かれたライオンと五輪旗をあしらったものである。
  2. ^ 確かに "GB" とは本来「グレートブリテン島」のみを指す単語だが、一方の "UK"(連合王国の略称)には王室属領が含まれないため、これもまた不適切である。
  3. ^ ピープ・ショー ボクたち妄想族』や『おーい、ミッチェル! はーい、ウェッブ!!』などの作品を手掛けている。ケンブリッジ大学の演劇サークル『フットライツ』のプレジデントを務めていた経験もある。

出典

[編集]
  1. ^ 栗原正夫 (2012年7月13日). “【イギリス】40年ぶりの五輪代表はどんなチームになるのか”. web Sportiva. 集英社. 2016年8月23日閲覧。
  2. ^ a b c d Stephen Moss, Kira Cochrane and Simon Burnton (19 August 2008). “Baffled by Beijing”. London: Guardian. http://www.guardian.co.uk/sport/2008/aug/19/britisholympicteam.olympics2008 2016年8月23日閲覧。 
  3. ^ team GB trademark details”. Intellectual Property Office. 2016年8月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年8月23日閲覧。
  4. ^ a b FAQ - What is Team GB?”. British Olympic Association. 2016年8月23日閲覧。 “There is only one Olympic team from Great Britain and Northern Ireland; Team GB. There is not an Olympic swimming team or Olympic rowing team. The individual sports join to become Team GB, the Great Britain and Northern Ireland Olympic Team.”
  5. ^ Kleinman, Mark (2000年10月19日). “BOA to launch Team GB in high street”. PR Week. 2012年9月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年4月21日閲覧。
  6. ^ Don't call it Team GB, says Gregory Campbell”. Belfast Telegraph (19 June 2009). 2016年8月23日閲覧。 “"This excludes, and indeed alienates, the people of Northern Ireland," he said.”
  7. ^ McGarrigle, Heather (10 March 2011). “No place for 'NI', says Olympic Team GB”. Belfast Telegraph. 20 April 2012閲覧。
  8. ^ “Who's who? Meet Northern Ireland's Olympic hopefuls in Team GB and Team IRE”. BBC News. (28 July 2012). http://www.bbc.co.uk/news/uk-northern-ireland-19019557 2016年8月23日閲覧。 
  9. ^ “Minister urges BOA to change 'erroneous Team GB name'”. BBC News. (10 March 2011). http://www.bbc.co.uk/news/uk-northern-ireland-12688705 2016年8月23日閲覧. ""It was decided that the creation of Team GB as an effective "trading name" fitted best with the Olympic identification of GBR," a spokesperson said." 
  10. ^ Mitchell, David (23 August 2008). “Olympics: Why 'Team GB' is capitalism's final victory”. London: Guardian. http://www.guardian.co.uk/sport/2008/aug/23/olympics2008.britisholympicmedals 2016年8月23日閲覧。 
  11. ^ Gerry Hassan (21 April 2012). “Gerry Hassan: Olympics to kick off with national confusion”. Scotsman. 2016年8月23日閲覧。 “Team GB represents something which is a fiction and an illusion which doesn’t correspond with any political form.”
  12. ^ Gibson, Owen (28 August 2012). “Our Greatest Team: Olympians and Paralympians to parade in London”. The Guardian. http://www.guardian.co.uk/sport/2012/aug/28/our-greatest-team-parade?newsfeed=true 30 August 2012閲覧。 
  13. ^ Our Greatest Team – athletes parade route details confirmed”. Greater London Authority (27 August 2012). 30 August 2012閲覧。

外部リンク

[編集]