VDVトラムトレイン
VDVトラムトレイン(VDV Tram-Train)は、ドイツおよびオーストリアの鉄道事業者による新型車両導入に関するプロジェクトの名称。路面電車(ライトレール)やトラムトレインおよびそれに準じた路線へ向けて、2020年代以降シュタッドラー・レール製の車両が投入される予定となっている[1][2][3][4]。
概要
[編集]経緯
[編集]2017年、ドイツの全国的社会組織であるドイツ運輸企業協会(Verband Deutscher Verkehrsunternehmen、VDV)に所属する、路面電車(ライトレール)やトラムトレインを運営する、もしくは導入を予定している複数の鉄道事業者は、共同で新型車両を開発・発注するプロジェクトを発表した。これは部品や構造の共通化に伴う導入費用の削減[注釈 1]および導入の迅速化を目的としたもので、「VDVトラムトレイン」と名付けられた。その後、長期にわたる協議の末に標準仕様が纏まった後、隣国・オーストリアの複数の鉄道事業者と共に2020年に共同入札が実施された[1][2][3][5]。
この「VDVトラムトレイン」プロジェクトに参加を発表した事業者は以下の通りである。また、これらに加えてドイツのバーデン=ヴュルテンベルク州鉄道車両所有会社(Schienenfahrzeuge Baden-Württemberg、SFBW)(ドイツ、バーデン=ヴュルテンベルク州)も資金提供などの分野で協力しており、将来的にアルブタール交通やネッカー=アルプ・レギオナルシュタットバーン特別目的協会への所有車両のリースが検討されている[1][2][3][6]。
- カールスルーエ交通事業(Verkehrsbetriebe Karlsruhe、VBK)(ドイツ:カールスルーエ)
- アルブタール交通(Albtal-Verkehrs-Gesellschaft、AVG)(ドイツ:カールスルーエ)
- ネッカー=アルプ・レギオナルシュタットバーン特別目的協会(Zweckverband Regional-Stadtbahn Neckar-Alb)(ドイツ:ネッカー=アルプ地域)
- ザールバーン(Saarbahn)(ドイツ:ザールブリュッケン)
- オーバーエスタライヒ鉄道(Schiene Oberösterreich)(オーストリア:リンツ)[7]
- ザルツブルク州(Land Salzburg)(オーストリア:ザルツブルク)
その後、2022年1月にスイスのシュタッドラー・レールが最大約40億ユーロで契約を獲得し、246両+オプション258両の車両製造および16年+オプション32年分の保守を実施する事となった。これはシュタッドラー・レールの歴史における最大規模の契約内容となっている[4][6]。
車両
[編集]シュタッドラー・レールが「VDVトラムトレイン」プロジェクトに参加する鉄道事業者へ向けて製造する車両は、同社が展開するライトレールやトラムトレイン向け車両であるシティリンク(Citylink)である。3車体連接式の車体、運転台を含めた車内全体へ向けての冷暖房双方を完備した空調(HVAC)、2箇所の車椅子スペースを備えた低床部分の多目的エリアといった構造は共通する一方、車両の全長や対応電圧、乗降扉の数、最大連結両数、手荷物エリアや列車便所の有無など、各社の事情に対応した差異に対応した仕様となっている。製造はスペイン・バレンシアにある工場で実施される[1][2][3][4][6][8]。
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中間車車体側面(ザールバーン向け車両)
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車内(ザールバーン向け車両)
導入地域一覧
[編集]2024年にザールバーン(ドイツ:ザールブリュッケン)向けに製造される試作車4両を皮切りに、以下の都市に向けてVDVトラムトレイン仕様のシティリンクが導入される事になっている[1][2][3][4][6]。
シティリンク(VDVトラムトレイン) 導入都市一覧 | |||||
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国 | 都市 | 両数 | 導入開始年 | 備考・参考 | |
ドイツ | ザールブリュッケン (ザールバーン) |
28両+オプション21両 | 2024年 | 既存の車両の置き換え用[9] | |
カールスルーエ (カールスルーエ市電) (カールスルーエ・シュタットバーン) |
AVG | 75両+オプション73両 | 2025年 | トイレ、自転車用ラックを設置 | |
VBK | 73両+オプション52両 | 2026年 | |||
ネッカー=アルプ地域 | 30両+オプション57両 | 2027年 | |||
オーストリア | リンツ | 20両+オプション50両 | 2026年 | 手荷物用フロアを設置、2020年代末から営業運転開始予定 | |
ザルツブルク | 20両+オプション5両 | 2026年 | 既存の車両の置き換え用 |
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 導入費用は各社が単独で新型車両を発注した場合と比べ1両あたり20 %の削減が見込まれている。
出典
[編集]- ^ a b c d e Albtal-Verkehrs-Gesellschaft mbH (2020). TramTrain connects town and country. An idea from Karlsruhe gains attention (PDF) (Report). p. 14. 2022年5月6日閲覧。
- ^ a b c d e David Burroughs (2022年1月17日). “Stadler awarded €4bn combined tram-train order”. International Railway Journal. 2022年5月6日閲覧。
- ^ a b c d e “ÖPNV-KOOPERATION VERGIBT VIER MILLIARDEN TRAM-TRAIN-AUFTRAG AN STADLER”. KVV (2022年1月17日). 2022年5月6日閲覧。
- ^ a b c d “Tram-Train für alle: Sechs Unternehmen starten gemeinsame Fahrzeugausschreibung”. VDV (2020年8月6日). 2022年5月6日閲覧。
- ^ 髙野裕作『2018年 ドイツ運輸連合調査報告』(レポート)日本都市センター、2020年、250-251頁 。2022年5月6日閲覧。
- ^ a b c d “STADLER TO DELIVER UP TO 504 TRAM-TRAINS TO GERMAN-AUSTRIAN PROJECT CONSORTIUM”. Stadler Rail (2022年1月17日). 2022年5月6日閲覧。
- ^ “Die neue Linzer Stadtbahn im Detail”. KURIER (2021年3月12日). 2022年5月6日閲覧。
- ^ “Stadler wins $4.56bn contract for VDV Tram-Train project”. Railway Technology (2022年1月18日). 2022年5月6日閲覧。
- ^ “AUSNAHMEPROJEKT VDV TRAM-TRAINS - NEUE FAHRZEUGE”. Saarbahn. 2022年5月6日閲覧。
外部リンク
[編集]- シュタッドラー・レールの公式ページ”. 2022年5月6日閲覧。 “