パレスチナ国
- パレスチナ国
- دولة فلسطين
-
(国旗) (国章) - 国の標語:不明
- 国歌:فدائي(アラビア語)
革命者 -
公用語 アラビア語 首都 東エルサレム (デ・ジュリ)
ラマッラー(デ・ファクト)最大の都市 ガザ - 政府
-
大統領 マフムード・アッバース 首相 ムハンマド・ムスタファ - 面積
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総計 6,020km2(164位)[1] 水面積率 3.5% - 人口
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総計(2023年) 5,483,450人(119位)[1] 人口密度 910.9人/km2 - GDP(自国通貨表示)
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合計(xxxx年) xxx,xxx新シェケル - GDP(MER)
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合計(2021年) 180億3680万ドル(125位)[2] 1人あたり 3,664[3]ドル - GDP(PPP)
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合計(2021年) 305億1834万ドル(145位)[4] 1人あたり 6,199.5[5]ドル - 独立宣言
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独立宣言 1988年11月15日 オスロ合意 1993年8月20日 パレスチナ自治政府成立 1994年 国連総会オブザーバー 2012年11月29日 パレスチナ問題 未解決[備考 1]
通貨 新シェケル(ILS)など[備考 2] 時間帯 UTC+2 (DST:+3) ISO 3166-1 PS / PSE ccTLD .ps 国際電話番号 970 - [備考 1]
パレスチナ国(パレスチナこく、アラビア語: دولة فلسطين Dawlat Filasṭīn, ダウラト・フィラスティーン、英: State of Palestine)は、地中海東部のパレスチナに位置する共和制国家。国際連合(UN)には未加盟であるが、2024年6月3日時点で、193の国連加盟国の内、145か国が国家として承認している[6]。
領土は自治政府(ファタハ政権)が実効支配するヨルダン川西岸地区およびガザ政府(ハマス政権)が実効支配するガザ地区(パレスチナ領域)から成り、東エルサレムを首都として定めている[7]、パレスチナ自治政府により実際に支配されているのは西岸地区の一部にとどまり[8]、首都機能はラマッラーが担っている。
歴史[編集]
1988年11月15日に初代大統領のヤーセル・アラファートがパレスチナの独立宣言を発表し、パレスチナ国を国号として定めた。1993年にパレスチナ自治政府が発足して、長らくイスラエルに占拠されていたパレスチナでパレスチナ人による実効支配が始まった。2012年11月にはそれまでの組織としてではなく、国家として国際連合総会オブザーバーとして承認された。
政治[編集]
地方行政区画[編集]
パレスチナ国はヨルダン川西岸地区とガザ地区から成る。ガザ地区の面積は365km²で全体の6%程度しかないが、人口は全体の38%を占める。ヨルダン川西岸地区はパレスチナ自治政府の様々な機関が置かれており、首都がある。
西岸地区の総面積は5,660km²であり、以下に区分けされている。
- A地区
- パレスチナ政府が行政権など全てを握っている。面積は西岸地区のうち18%の約1,018km²である。
- B地区
- C地区
- イスラエル軍が行政権など全てを握っている。面積は西岸地区の61%で約3,452km²である。
また、西岸地区のイスラエル軍管轄地域はユダヤ・サマリア地区と言われている。
パレスチナ国は領有を主張する国土に16の県(ガザ地区に5、ヨルダン川西岸地区に11)を設置している。ただしイスラエルの実効支配下にある地域を含んでいるため、ヨルダン川西岸地区の県の多くの地域が統治下にはない。
主要都市[編集]
国際関係[編集]
2024年6月3日時点で、193の国際連合加盟国中、145か国が国家承認している[6]。安保理常任理事国ではロシアと中国が承認し、上海協力機構(SCO)加盟国およびアラブ連盟加盟国は全てが承認、アフリカ連合はカメルーンとエリトリア以外の全て、東南アジア諸国連合(ASEAN)はシンガポール、ミャンマーを除く8か国が、それぞれ承認している。
対して承認していない国連加盟国は48か国[注 1]である。安保理常任理事国であるアメリカ合衆国、イギリス、フランスの3か国に日本、カナダ、ドイツ、イタリアを加えたG7諸国はすべて承認していない。北大西洋条約機構(NATO)加盟国でみると、スペイン、ノルウェー、トルコ、アイスランドの他に旧東側諸国(スロバキア[注 2]、ポーランド、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、アルバニア)が東側陣営時代の1988年、モンテネグロがNATO非加盟時の2006年に承認している。欧州連合(EU)加盟国では上記の旧東側諸国とスウェーデン(2014年承認)、欧州自由貿易連合(EFTA)加盟の4か国のうち半数のアイスランド(2011年承認)とノルウェー(2024年承認[10])が承認している。占領国[11]であるイスラエルは未承認である。ただし、2012年のパレスチナ国のオブザーバー格上げ決議では、非承認国家でも賛成した国もある(得票数:19/67)。例えば日本は「将来の承認を予定した自治区」としてパレスチナ国を扱っており、経済支援や議員外交などを行っている[注 3]。
2024年国家承認の加速[編集]
2023年10月7日にガザ地区を実効支配するハマースなどの抵抗組織[12]が、イスラエル領において治安部隊要員(イスラエル国防軍兵、警察職員、シンベト要員など)と民間人を合わせて1,163人殺害し[13]、245人以上を人質に取ると[14]、その報復[15]としてイスラエルの空爆と地上侵攻を行い、ガザ地区では3万5千人以上が殺害され[16]、推計1万人が瓦礫に埋もれて行方不明となり[17]、中東の和平における二国家解決の重要性が再認識され始めた[18]。
2024年に入ると、カリブ海諸国のバルバドスとジャマイカ[19]が4月に、トリニダード・トバゴ[20]バハマ[21]が5月に、次々とパレスチナ国の国家承認を行った。
2024年5月22日には、EU加盟国でNATO加盟国であるスペイン、EU加盟国であるアイルランド、NATO加盟国であるノルウェーが、5月28日の公式承認に向けて、それぞれの国内で国家承認の手続きを始めると発表した[18][22]。
国家別に行われた発表ではアイルランドのサイモン・ハリス首相が、パレスチナ国の国家承認が二国家解決へ道筋の重要なそして歴史的な一歩となるとし、正しいことをするのに間違ったタイミングはないと述べた。ハリス首相は、占領国イギリスのもとで同じ道を歩み、今も領有権問題を抱えるアイルランドの歴史とパレスチナ国を重ね合わせ、アイルランドの独立の際に、同国の国家としての特有のアイデンティティ、独立への困難な闘い、自決権、そして正義を自由主義諸国へ訴えたが、パレスチナの国家承認に際して同じ言葉を自由主義諸国へ訴えるとした[18]。また、3カ国以外のEU諸国と連絡と協議を続けている事も明かし、その他のEU諸国が3か国を追随することに「自信がある」とも述べた[18]。既にEU加盟国でNATO加盟国であるスロベニアと、EU加盟国であるマルタも近日中に承認予定であることはロイター通信によって伝えられている[23]。一方で同様に承認予定と伝えられていたベルギーは、選挙が3週間後に控えている事もあり、今回の発表に加わらなかった[18]。
ノルウェーのヨーナス=ガール・ストーレ首相も、二国家解決の重要性を訴え、イスラエルとパレスチナ国の国境は第三次中東戦争勃発前日の1967年6月4日のもの、つまり通称グリーンラインとすべきだと述べた[18]。また国家承認には権利だけでなく国際社会での義務も生じることを指摘し、「国際法を遵守し、国際的に認められた国境内で平和的に生きる」必要性を訴えた[18]。
スペインのペドロ・サンチェス首相は、この発表を同国の国会で行い、国会議員達はスタンディングオベーションと拍手で発表に同調した[18]。EU諸国のパレスチナ国家承認議論を先導してきたサンチェス首相は、国家承認は正しい事だと述べた[18]。
2024年5月28日、スペイン、アイルランド、ノルウェーは、和平を促すことを狙い正式にパレスチナ国を国家として承認したことを発表した[10]。
同年5月30日、EU加盟国でNATO加盟国であるスロベニア政府もパレスチナ国を正式承認する方針であると発表した。まだ国内での議会承認が必要だが、ロベルト・ゴロブ首相「これは平和のメッセージだ」と述べ、ガザ地区での戦闘の即時停止と人質全員の解放を訴えた[24]。そして同年6月4日、臨時議会でパレスチナ国家を承認する動議について採決が行われ、90議席中52人の賛成により動議は可決された[25][26]。ただし野党は現時点での承認は反対するとし投票をボイコットしたため、反対票はゼロだった[26]。
同年6月21日、アルメニア共和国もパレスチナ国を正式承認する方針であると発表した。[7]アルメニア外務省は、パレスチナ自治区ガザでのイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘の即時停止に関する国連決議を支持し、パレスチナとイスラエルが平和で安全に共存する「2国家解決」を支持すると表明した。
これらの一連の正式承認は、パレスチナ・イスラエル戦争を終わらせるべくイスラエルに圧力をかける狙いがあるとされている[24]。
国家承認している国[編集]
国連加盟国[編集]
一覧は承認順に並んでいる。
- アルジェリア
- バーレーン
- イラク
- クウェート
- リビア
- マレーシア
- モーリタニア
- モロッコ
- ソマリア
- チュニジア
- トルコ●
- イエメン
- アフガニスタン
- バングラデシュ
- キューバ
- インドネシア
- ヨルダン
- マダガスカル
- ニカラグア
- パキスタン
- カタール
- サウジアラビア
- アラブ首長国連邦
- セルビア
- ザンビア
- アルバニア●
- ブルネイ
- ジブチ
- モーリシャス
- スーダン
- キプロス◎
- スロバキア●◎
- エジプト
- ガンビア
- インド
- ナイジェリア
- ロシア
- セーシェル
- スリランカ
- ベラルーシ
- ギニア
- ナミビア
- ウクライナ
- ベトナム
- 中国
- ブルキナファソ
- コモロ連合
- ギニアビサウ
- マリ
- カンボジア
- モンゴル
- セネガル
- ハンガリー●◎
- カーボベルデ
- 朝鮮民主主義人民共和国
- ニジェール
- ルーマニア●◎
- タンザニア
- ブルガリア●◎
- モルディブ
- ガーナ
- トーゴ
- ジンバブエ
- チャド
- ラオス
- シエラレオネ
- ウガンダ
- コンゴ共和国
- アンゴラ
- モザンビーク
- サントメ・プリンシペ
- コンゴ民主共和国
- ガボン
- オマーン
- ポーランド●◎
- ボツワナ
- ネパール
- ブルンジ
- 中央アフリカ
- ブータン
- ルワンダ
- エチオピア
- イラン
- ベナン
- 赤道ギニア
- ケニア
- バヌアツ
- フィリピン
- エスワティニ
- カザフスタン
- アゼルバイジャン
- トルクメニスタン
- ジョージア
- ボスニア・ヘルツェゴビナ
- タジキスタン
- ウズベキスタン
- パプアニューギニア
- 南アフリカ共和国
- キルギス
- マラウイ
- 東ティモール
- パラグアイ
- モンテネグロ●
- コスタリカ
- レバノン
- コートジボワール
- ベネズエラ
- ドミニカ共和国
- ブラジル
- アルゼンチン
- ボリビア
- エクアドル
- チリ
- ガイアナ
- ペルー
- スリナム
- ウルグアイ
- レソト
- シリア
- リベリア
- エルサルバドル
- ホンジュラス
- セントビンセント・グレナディーン
- ベリーズ
- ドミニカ国
- 南スーダン
- アンティグア・バーブーダ
- グレナダ
- アイスランド●
- タイ
- グアテマラ
- ハイチ
- スウェーデン●◎
- セントルシア
- コロンビア
- セントクリストファー・ネイビス
- バルバドス[19]
- ジャマイカ[19]
- トリニダード・トバゴ[20]
- バハマ[21]
- スペイン●◎[10]
- アイルランド◎[10]
- ノルウェー●[10]
- スロベニア●◎
- アルメニア
国連非加盟国[編集]
- サハラ・アラブ民主共和国(但しパレスチナはサハラ・アラブ民主共和国を承認していない)
- バチカン
国家を承認していない国[編集]
国連加盟国[編集]
- イスラエル
- アメリカ合衆国★●
- カナダ★●
- 日本★
- イギリス★●
- ドイツ★●◎
- フランス★●◎
- イタリア★●◎
- デンマーク●◎
- フィンランド●◎
- オランダ●◎
- ベルギー ●◎
- ポルトガル●◎
- スイス
- ギリシャ●◎
- オーストリア◎
- アンドラ
- リヒテンシュタイン
- ルクセンブルク●◎
- モナコ
- サンマリノ
- マルタ◎[注 1]
- チェコ●◎[注 4]
- クロアチア●◎
- 北マケドニア●
- エストニア●◎
- ラトビア●◎
- リトアニア●◎
- モルドバ
- 韓国
- シンガポール
- ミャンマー
- メキシコ
- パナマ
- カメルーン
- エリトリア
- オーストラリア
- ニュージーランド
- フィジー
- マーシャル諸島
- ミクロネシア
- パラオ
- ナウル
- キリバス
- サモア
- トンガ
- ツバル
- ソロモン諸島
国連非加盟国[編集]
国連総会オブザーバー[編集]
国連との関係[編集]
パレスチナ国は、国際連合機関のうち、国際連合総会(総会)、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)、世界保健機関 (WHO) [32]の活動に参加している。
1974年、パレスチナ解放機構(PLO)が国際連合総会オブザーバーの団体として認めれられ、国連での活動を開始。第1次インティファーダ最中の1988年に団体名称を「パレスチナ」へと変更した。
その後、2012年には、国連総会決議の可決により「パレスチナ国」としてオブザーバー国家に格上げされ、国連非加盟国として事実上国家承認された[33]。決議の採決では、193の加盟国中、日本を含む138か国が賛成し、反対は9か国、棄権は41か国、無投票は5か国だった[34]。反対したのは、カナダ、チェコ、イスラエル、マーシャル諸島、ミクロネシア連邦、ナウル、パラオ、パナマ、アメリカ合衆国だった[34]。
国連総会では、毎年のようにパレスチナ人の民族自決権を確認する決議が提出されている。パレスチナ国を国家承認していない国々も、明確な反対はイスラエル・アメリカ合衆国及び一部の親米国に限られる。直近の2023年12月19日の決議では、日本を含む172か国の賛成で採択された[35]。反対はイスラエル、ミクロネシア連邦、ナウル、アメリカ合衆国の4か国で、棄権はカメルーンなど10か国、無投票はアフガニスタン[注 5]など7か国であった[35]。
また、国連の専門機関のうち、ユネスコには2011年に「パレスチナ国」として正式加盟が承認されている。加盟には14か国が反対したが、そのうちイスラエル・アメリカ合衆国は加盟に対する対抗措置として2018年にユネスコを脱退した。但しアメリカは2023年に復帰している。
2024年5月31日、世界保健機関 (WHO) 総会は、国際連合総会決議ES-10/23(後述)へ呼応すべく、オブザーバーの立場のパレスチナ国の権利を拡大し、事実上加盟国と同等の権利を与える決議を賛成多数で採択した。議案提出権や加盟国席に着席する権利などを認められたが、決議ES-10/23同様投票権は与えられなかった[32][36]。賛成は101か国、反対は5か国、21カ国は棄権した[36]。
2024年国連安全保障理事会正式加盟勧告決議[編集]
2024年4月18日、アルジェリアがパレスチナ国の国連正式加盟勧告案を安保理に提出したが、アメリカ合衆国の拒否権で否決された[37][38][39]。15の理事国のうち、日本を含む12か国が賛成し、反対はアメリカ合衆国の1か国、棄権はイギリスとスイスの2か国だった[40]。
上川陽子外務大臣は、「パレスチナが国連加盟に係る要件を満たしているとの認識の下、中東和平の実現に向けて和平交渉を通じた、国家の自立を促進する等の観点を含め、総合的に判断」し、日本が賛成票を投じた理由を説明した。ただし、安保理における賛成と、日本国がパレスチナを国家として承認することは「別個の問題」であることや、「二国家解決」は当事者間の交渉と通して行われるべきだとの見解も示した[41][42]。
2024年国連総会正式加盟決議[編集]
2024年5月10日、アラブ首長国連邦 (UAE) が、パレスチナ国の国連正式加盟を支持し安保理に加盟勧告を賛成するよう再考を促す決議案を緊急特別総会において提出し、193加盟国のうち、賛成143か国、反対9か国の圧倒的多数で採択された[43]。棄権は25か国だった。決議案にはパレスチナが国連憲章の定める加盟資格を満たしていると明記されており、パレスチナ国を国家承認していない、日本、フランス、韓国、スペイン[注 6]、オーストラリア、エストニア、そしてノルウェー[注 6]の7か国も賛成票を投じた。反対はアメリカ合衆国、イスラエル、アルゼンチン、チェコ、ハンガリー、ミクロネシア連邦、ナウル、パラオ、そしてパプアニューギニアであった[44][45][46]。アルゼンチン、ハンガリー、パプアニューギニアは、パレスチナを国家承認しているにもかかわらず、反対にまわった[47]。それらの加盟国のうちチェコは、国連正式加盟や国連の新たな特権のみでは平和と繁栄をもたらすことはできないと述べ、その前に2国間での協議などによる環境の下地整備の必要があると訴え、また安保理の加盟勧告の無いまま国連の手続きを「迂回して」総会の採決を行ったことに懸念を示し、反対票を投じたと説明した[48]。
G7国においては、前述の通り日本とフランスが賛成にまわったほか、イギリス、ドイツ、カナダ、イタリアが棄権し、アメリカ合衆国の孤立が一層顕著になる形になった[47][49]。国連総会は、パレスチナの国家としての存在を長らく支持して来たが、実際に正式加盟の是非について採決が取られたのはこれが初めてであった[50]。
安保理と違い、総会では拒否権が発動できないことから、拒否権を持つアメリカ合衆国が反対票を投じても決議は可決された。国連の正式加盟には、安保理による加盟勧告と、総会において投票国の3分の2以上の賛成が必要となるが、4月18日にアメリカ合衆国の拒否権行使によって加盟勧告案を否決した安保理に、協議を「差し戻す」形となった[45][46]。しかし、アメリカ合衆国のロバート・ウッド国連次席大使は、安保理で再度加盟勧告案を採決したとしても結果は同じになると述べ、拒否権を発動し続けることを示唆した[50][51]。またその反対理由は、従来通りのアメリカ合衆国の立場である、パレスチナの加盟は「イスラエルとの直接交渉」によってのみ実現されると主張した[51]。一方ロシアは、パレスチナは、今回国連で正式加盟することによって、75年前に既に正式加盟を果たしているイスラエルと同等の立場のもとに交渉の場に立てるとアメリカ合衆国の見解に反する意見を述べた[43]。
また決議案によって、パレスチナ国は国連総会において席が与えられ、パレスチナや中東以外の議題にも発言権が与えられたほか、会議の議題、提案書、修正案の提出、議論に対しる返答、そして国連の主要委員会において委員を送ることなどが可能となり、かつパレスチナ人の自決権を支持する内容だったが、投票権は与えられなかった[45][46]。アメリカ合衆国には1990年に成立した、国連がパレスチナ[注 7]に加盟国と同じ地位を与えた場合、国連と国連機関への資金提供を停止するという連邦法があり、国連最大の分担金及び拠出金提供国であるアメリカ合衆国のその法を発動させないよう、決議案は細心の注意を払って文面が練られた[49][52]。
日本との関係[編集]
国民[編集]
人口構成[編集]
2024年推計で約561万人(西岸地区:約333万人、ガザ地区:約223万人)であり[53]、アラブ系のパレスチナ人が大半を占める。また、国連パレスチナ難民救済事業機関 (UNRWA) によると2021年時点でパレスチナ難民が約639万人(西岸108万人、ガザ164万人、ヨルダン246万人、シリア65万人、レバノン54万人)となる[54]。
言語[編集]
宗教[編集]
イスラム教徒が9割以上(約92%)と多数を占める。次いでキリスト教が約7%で続く。
経済[編集]
パレスチナ中央統計局(PCBC)によると、主要産業はサービス業(20.4%)、小売業・貿易(18.3%)、公共・防衛(12.4%)、鉱工業・電気・水(12.1%)、農・漁業(6.5%)などで、輸出品はセメント、石灰岩、オリーブなど、輸入品は石油・石油製品、穀物、非金属鉱物製品などとなる。輸入先・輸出先はともにイスラエルが最大となるが、2021年度は約30億ドルの貿易赤字となっている。
経済成長率は4%程度となるが、物価上昇率は5%超、失業率は25%を超えている(2022年)。また、独自の通貨がなく、イスラエルの通貨である新シェケルが使用されている[54]。
軍事[編集]
1995年の自治合意後にパレスチナ警察が設置されたが、2000年のイスラエルとの軍事衝突により壊滅的な打撃を受けた。2005年にファタハ出身で大統領に就任したマフムード・アッバースは、国内の治安機関を内務庁・総合諜報局・保安隊の3機関に統合した。一方で、2007年に成立したガザ政府では別に治安部隊が設置された。2017年10月、ガザ政府を率いるハマースは保有する行政権限をパレスチナ国政府に委譲することで合意した[55]。
治安[編集]
人権[編集]
文化[編集]
パレスチナ人の文化は、パレスチナの歴史的地域に存在してきた多様な文化や宗教の影響を受けている。パレスチナの文化的および言語的遺産は、アラビアの要素と、何千年にもわたってこの土地とその人々を支配するようになった外国文化の両方が融合したものである。
芸術、文学、音楽、衣装、料理の分野への文化的貢献は、パレスチナ領土のパレスチナ人、イスラエルのパレスチナ国民、ディアスポラのパレスチナ人の間で地理的に分離しているにもかかわらず、パレスチナ人のアイデンティティを表現している。
パレスチナ文化は、食べ物、踊り、伝説、歴史、ことわざ、ジョーク、俗信、習慣で構成されており、パレスチナ文化の伝統(口頭伝承を含む)を構成している。2023年、国連教育科学文化機関(ユネスコ)は、「パレスチナ住民にとって、アイデンティティーや自尊心の表現でもある」とされる、結婚式などで大勢で踊られるレバントの伝統舞踊「ダブケ」のパレスチナ流派を無形文化遺産に登録した[56]。ニムル・シルハン、ムーサ・アルーシュ、サリム・ムバイイドなどのパレスチナ知識人の間での民俗学者の復活は、イスラム以前の文化的ルーツを強調した。
食文化[編集]
パレスチナの料理は、パレスチナ地域に定住した文明の文化の拡散であり、特にアラブのウマイヤ朝の征服に始まり、最終的にはペルシアの影響を受けたアッバース朝、そしてトルコ料理の強い影響で終わるイスラム時代中およびその後に、その結果として生まれた。オスマン帝国の到来。レバノン料理、シリア料理、ヨルダン料理など、レバント料理に似ている。キリスト教徒のパレスチナ人によって開業された醸造所も存在し、パレスチナの醸造所の先駆けとなったタイベ醸造所は、マイクロブルワリーとしてホップが効いた苦みの強いビールが定評を得ているほか、地元産のブドウから醸造されたワインも生産されている[57]。
世界遺産[編集]
祝祭日[編集]
スポーツ[編集]
サッカー[編集]
パレスチナ国内ではサッカーが最も人気のスポーツとなっており、2010年にプロリーグのウェストバンク・プレミアリーグが創設された。シャバーブ・アル・ハリールSCがリーグ最多7度の優勝を達成している。パレスチナサッカー協会(PFA)によって構成されるサッカーパレスチナ代表は、これまでFIFAワールドカップには未出場であるが、AFCアジアカップには2015大会、2019大会、2023年大会と3度の出場経験をもつ。
著名な出身者[編集]
脚注[編集]
備考[編集]
- ^ a b パレスチナを巡る諸問題は未解決のため、「パレスチナ国」を完全な主権国家と呼ぶかは議論があるが[要出典]、パレスチナは実際にはすでに国家であり、例えば各国が行っている国家承認は単にパレスチナが国家であることが真実であると認めているに過ぎないとしているのが多数派の学者や研究者の意見である[6]。
- ^ 1994年パリ議定書第4条によると、パレスチナは複数の通貨を採用できるようになっている。新シェケルに加えヨルダン川西岸地区ではヨルダン・ディナール、ガザ地区ではエジプト・ポンドが主に使用される。
注釈[編集]
- ^ a b ジャマイカ、トリニダード・トバゴ、バハマ、スペイン、アイルランド、ノルウェーが承認する前の、2024年4月18日時点で国際連合はパレスチナ国を承認している加盟国は140か国としており[27]、その根拠となるモーリタニア、サウジアラビア、ウガンダが作成した同年4月9日付けの文書では承認み加盟国一覧の中に1988年にマルタが承認済みいう内容が含まれていた[28]。しかしマルタは1988年以降にあたる2021年にパレスチナと締結した経済条約の覚書の中では未だパレスチナ暫定自治政府と表記しており[29]、更には2024年3月22日以降度々、同国は近々パレスチナ国を承認する予定であると報道されており[30][31][10]、3か国が作成した文書が誤りの可能性がある。もし誤りの場合、5月28日の時点でパレスチナ国を承認している国連加盟国は147か国ではなく、146か国となる。また、193の国連加盟国で承認していないのは、46か国ではなく47か国となる。
- ^ スロバキアとしてではなく、スロバキアがチェコスロバキアを構成していた1988年に承認が行われた[9]。
- ^ 詳細は「日本が承認していない国一覧」を参照。
- ^ チェコがチェコスロバキアを構成していた1988年に承認が行われたことから、チェコ政府はスロバキアとの分離後のチェコには適用されないとして、パレスチナ国を承認していないという立場を示している一方で、スロバキアは分離の際にパレスチナの国家を承認しているという共通認識を確認したと主張している[9]。
- ^ この時点でアフガニスタンを実効支配するターリバーン政権ではなく、アシュラフ・ガニー政権に任命された大使が投票権を持っている。
- ^ a b 決議時点では未承認。
- ^ 実際の文言は、パレスチナではなく、パレスチナ解放機構に同等の地位を与えた場合となっており、この法がパレスチナ自治政府にも適用されるかについては議論の余地があるとされている[52]。
出典[編集]
- ^ a b “Main Statistical Indicators in the West Bank and Gaza Strip”. パレスチナ中央統計局. 2024年6月5日閲覧。
- ^ “GDP (current US$) - West Bank and Gaza”. 世界銀行. 2022年10月25日閲覧。
- ^ “GDP per capita (current US$) - West Bank and Gaza”. 世界銀行. 2022年10月25日閲覧。
- ^ “GDP, PPP (current international $) - West Bank and Gaza”. 世界銀行. 2022年10月25日閲覧。
- ^ “GDP per capita, PPP (current international $) - West Bank and Gaza”. 世界銀行. 2022年10月25日閲覧。
- ^ a b c Fink, Rachel (2024年6月3日). “Explained: What does recognizing Palestine as a state mean?” (英語). Haaretz 2024年6月14日閲覧。
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関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- 駐日パレスチナ常駐総代表部(公式サイト)(英語) - 日本政府はパレスチナ自治政府の常駐総代表部として承認しているが、非公式に「駐日パレスチナ国大使館」と名乗ることもある。
- 対パレスチナ日本代表事務所 (アラビア語)
- パレスチナ国家承認 特設ウェブサイト(公式サイト)(日本語)