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女王蜂 (横溝正史)

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女王蜂』(じょおうばち)は、推理作家横溝正史が著した長編推理小説、およびそれを原作とした映画テレビドラマ作品である。2008年現在までに映画2本、テレビドラマ5作品が制作されている。代表作と見なす人は少ないが、華やかな人物配置や背景、20年に及ぶ因縁のドラマなどが好まれて映像化の機会が非常に多い。

小説は『キング』に連載され(1951年6月号~1952年5月号)、1952年講談社から「傑作長篇小説全集」第14として刊行。

1931年(昭和6年)に雑誌『文学時代』に発表された同名の短編があり、角川文庫版『殺人暦』に収録されているが、中島河太郎による同書の解説では、内容は長編とは特に関連がなく、『仮面舞踏会』『迷路の花嫁』といった作品など、同名で内容が違う短編と長編が存在する他の例を挙げている。

あらすじ

「…彼女は女王蜂である。慕いよる男どもをかたっぱしから死にいたらしめる運命にある。…」

昭和26年、月琴島で育てられた大道寺智子は18歳になり、父・大道寺欣造の住む東京の屋敷に引き取られることになっていた。その欣造宛てに奇妙な手紙が届き、智子を呼び寄せてはいけないと警告していた。手紙は月琴島で19年前に起こった学生の事故死にも触れ、「あれは果たして過失であったか」と疑問を投げかける。不安を感じた欣造は金田一耕助に調査を依頼。金田一は智子の後見人として月琴島に渡り、智子の東京行きに同行することになる。

一方、智子は、東京行きの直前のある日、椿の根元から開かずの間の鍵を見つけ出した。好奇心に駆られた彼女が、開かずの間の中で見たものは、血のついた月琴であった。

島を出て、伊豆のホテル松籟荘に着いた智子の前に、大道寺欣造、文彦らのほか、欣造の薦める3人の婿候補者(遊佐三郎、駒井泰次郎、三宅嘉文)と、謎の手紙で呼び出された多門連太郎が現れる。智子を巡る争いのうちに、惨劇の幕が開かれる。

登場人物

  • 金田一耕助(きんだいち こうすけ)…私立探偵
  • 等々力大志(とどろき だいし)…警視庁警部
  • 亘理(わたり)…修善寺警察署署長
  • 工藤(くどう)…下田警察署署長
  • 宇津木慎介(うつぎ しんすけ)…新日報社調査部社員、金田一の同郷の後輩
  • 大道寺鉄馬(だいどうじ てつま)…源頼朝の血を引くという伝承を持つ旧家の当主。故人
  • 大道寺槙(だいどうじ まき)…鉄馬の妻
  • 大道寺琴絵(だいどうじ ことえ)…鉄馬の娘、智子が五歳の時に死亡
  • 大道寺欣造(だいどうじ きんぞう)…琴絵の夫(婿養子)。智子を私生児にしないために戸籍上夫婦になったに過ぎず、智子と血の繋がりは無い
  • 大道寺智子(だいどうじ ともこ)…琴絵の娘
  • 大道寺文彦(だいどうじ ふみひこ)…欣造と蔦代の息子、智子の弟(血の繋がりは無い)
  • 蔦代(つたよ)…元大道寺家女中、欣造の愛人(実質的には妻)で文彦の実母
  • 神尾秀子(かみお ひでこ)…琴絵・智子の家庭教師
  • 伊波良平(いなみ りょうへい)…大道寺家執事、蔦代の兄
  • 九十九龍馬(つくも りゅうま)…月琴島出身、加持祈祷の行者で、政財界にも影響力を持つ怪人物
  • 遊佐三郎(ゆさ さぶろう)…智子の婿候補者の一人
  • 駒井泰次郎(こまい たいじろう)…智子の婿候補者の一人
  • 三宅嘉文(みやけ よしぶみ)…智子の婿候補者の一人
  • 姫野東作(ひめの とうさく)…ホテル松籟荘使用人
  • 衣笠智仁(きぬがさ ともひと)…元宮様、ホテル松籟荘の前の持ち主
  • 日下部達哉(くさかべ たつや)…欣造の友人で智子の本当の父。19年前、学生のときに島を訪れ琴絵と結ばれるが、謎の死を遂げる
  • 多門連太郎(たもん れんたろう)…特攻隊帰りですさんだ生活をしている。遊佐と面識がある
  • カオル…連太郎の恋人
  • 加納辰五郎(かのう たつごろう)…加納法律事務所所長

注意:以降の記述には物語・作品・登場人物に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。


映像化リスト

映画

毒蛇島綺談 女王蜂 (1952年2月・大映、監督:田中重雄
出演:岡譲司(金田一・千木良兼吉(偽))、荒川さつき(神尾秀子)、森雅之(速水欣造)、久慈あさみ(大道寺智子・琴絵)、船越英二(日下部達哉)、見明凡太郎(大道寺鉄馬)、瀧花久子(大道寺槇)、菅原謙二(沢村光一)、加原武門(九十九龍馬)、水原洋一(遊佐三郎)、植村謙二郎(伊庭良平)、小林三保(お蔦)、星光(嵐三朝)、斎藤紫香(千木良兼吉)、由利恵子(三原町子)、他。
  • 原作で金田一が石を投げつけられ負傷するという場面があるが、本作では銃で撃たれ生死不明、さらに銃弾が命中したはずなのになぜ助かったのかの説明もなくクライマックスで変装をして現れ推理を披露するという、後の土曜ワイド劇場の『江戸川乱歩の美女シリーズ』を先取りしたような作りになっている。
女王蜂1978年2月・東宝 監督:市川崑 主演:石坂浩二
  • この映画では舞台が東京から京都に変更されているほか、月琴島が伊豆山中の「月琴の里」に変更されている。この映画の放映時期に合わせるように、コミックスも出版された。過去3作の犯人役を総出演させての豪華キャスト、カネボウ化粧品とのタイアップなど話題作りなどでヒットしたが、日程がタイトでベテラン松林宗恵がB班監督として協力した。

テレビドラマ

横溝正史シリーズII 女王蜂 全3回(1978年年8月12日 - 8月26日、毎日放送三船プロ
出演:古谷一行(金田一)、岡田茉莉子(神尾秀子)、片平なぎさ(大道寺智子)、斉藤恵子(大道寺琴絵)、神山繁(速水欣造)、南美江(大道寺槇)、夏夕介(多門連太郎)、岩本多代(蔦代)、川合伸旺(九十九龍馬)、坂東正之助(速水文彦)、田中春男(姫野東作)、赤塚真人(遊佐三郎)、菊池太(日下部達哉)、三谷昇(山本巡査)、長門勇(日和警部)、他。
  • このドラマでは作中の全事件が月琴島内で起こったことになっている。
火曜ミステリー劇場・女王蜂 (1990年10月2日、テレビ朝日系列)
出演:役所広司(金田一)、石立鉄男(等々力警部)、小川知子(神尾秀子)、井森美幸(大道寺智子・琴絵)、大出俊(大道寺欣造)、川崎麻世(多門連太郎・日下部達哉)、寺田農(九十九乙郎)、梅津栄(嵐三朝)、服部賢悟(文彦)、なべおさみ(吉田茂巡査)、長門裕之(加納弁護士)、河内桃子(衣笠)。
月曜ドラマスペシャル・女王蜂 (1994年4月4日、TBS系列)
出演:古谷一行(金田一)、沢田亜矢子(神尾秀子)、墨田ユキ(大道寺智子・琴絵)、原田芳雄(大道寺欣造)、嵯峨周平(遊佐三郎)、粟津號(印南連太郎)、名古屋章(亀井警部)、藤原考一(駒井泰次郎)、清水冠助(三宅嘉文)。
金曜エンタテイメント・女王蜂 (1998年4月17日、フジテレビ系列)
出演:片岡鶴太郎(金田一)、池上季実子(神尾秀子)、初瀬かおる(大道寺智子)、筒井真理子(大道寺琴絵)、細川俊之(大道寺欣造)、中山俊(多門連太郎)、鶴田忍(九十九龍馬)、伊集院光(遊佐三郎)、二宮さよ子(蔦代)。
金曜エンタテイメント・女王蜂 (2006年1月6日、フジテレビ系列)
出演:稲垣吾郎(金田一)、小日向文世(横溝正史)、手塚理美(神尾秀子)、栗山千明(大道寺智子・琴絵)、石橋凌(大道寺欣造)、及川光博(多門連太郎)、高橋昌也(衣笠宮智仁)、杉本哲太(九十九龍馬)、並樹史朗(伊波良平)、染谷将太(大道寺文彦)、青木伸輔(遊佐三郎)、徳井優(今井支配人)、池内万作(駒井泰次郎)、萬雅之(日下部達哉)、波岡一喜(若い頃の欣造)、塩見三省(橘署長)。
ストーリーはほぼ原作通り進行していくが、登場人物が何人か省かれている。また、原作で歌舞伎座で殺害される三宅嘉文が登場せず、その代わりに原作では殺害されなかった駒井泰次郎が殺害される。また、三宅嘉文が登場しない関係で、三人目の婿候補が九十九龍馬になっている。金田一が襲撃されるシーンはないが、代わりに歌舞伎座で奈落に突き落とされるというシーンがある。

関連項目

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