ティム・バーナーズ=リー
ティム・バーナーズ=リー Tim Berners-Lee | |
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2010年、ロンドンのイギリス内務省にて | |
生誕 |
1955年6月8日(69歳)[1] イングランド ロンドン[1] |
住居 | アメリカ合衆国 マサチューセッツ州[1] |
国籍 | イギリス |
教育 | オックスフォード大学クイーンズ・カレッジ |
職業 | 計算機科学者 |
雇用者 | World Wide Web Consortium、マサチューセッツ工科大学およびサウサンプトン大学 |
著名な実績 | World Wide Webの発明 |
肩書き | 教授 |
宗教 | ユニテリアン・ユニヴァーサリズム |
親 | コンウェイ・バーナーズ=リー、メアリー・リー・ウッズ |
公式サイト | Tim Berners-Lee |
補足 | |
MITコンピュータ科学・人工知能研究所内3Com創業者会会長 |
サー・ティモシー・ジョン・バーナーズ=リー(Sir Timothy John Berners-Lee, OM, KBE, FRS, FREng, FRSA、1955年6月8日 - )は、イギリスの計算機科学者。ロバート・カイリューとともに、World Wide Web(WWW)を考案し、ハイパーテキストシステムを実装・開発した人物である。URL、HTTP、HTML の最初の設計は彼によるもの。
経歴
黎明期の電子計算機の一つである Manchester Mark Iの開発チームに参加していた数学者夫妻コンウェイ・バーナーズ=リーとメアリー・リー・ウッズのもと、ロンドンに生まれる。
1973年にロンドンのエマニュエル校を卒業後、オックスフォード大学クイーンズ・カレッジに進学し物理学を専攻。在学時には自身最初のコンピュータをはんだごてと TTLゲート、M6800プロセッサ、中古のテレビ受像機を使って組み立てたこともあり[2]、大学のコンピュータで友人とハッキングをして使用禁止にされたりもしたという[3]。1976年に卒業後、英プレッセイ電信電話会社に2年間勤務。分散トランザクションシステムやメッセージ転送、バーコード技術などを担当した。1978年に英 D・G・ナッシュ社に転職し、インテリジェントプリンタ用のソフトウェアやマルチタスクOS などを開発した。
その後会社を辞めて個人でコンサルタントを営み、1980年6月にスイス・ジュネーヴの欧州原子核研究機構(CERN)にソフトウェア技術のコンサルタントとして6ヶ月間在籍した。バーナーズ=リーは数千人に上る研究者や参加者に効率よく情報を行き渡らせるためのシステム開発を命じられるが、折しもバーナーズ=リーは個人的開発作業の一環として、ランダムに他の文書と連結できる仕組みを持ったENQUIREを開発していた。公表はされなかったものの、WWW の概念の基礎となるものであった。
1981年から4年間英イメージ・コンピュータ・システムズ社の技術デザインの責任者を務めた後、1984年にCERNへ復帰すると科学データ閲覧のための分散リアルタイムシステムに関する業績でフェローシップを贈呈される。1989年3月、後にWWWへ発展することになる、CERN内の情報にアクセスするためのグローバルハイパーテキストプロジェクトの提案を公式に行う[4]。上司Mike Sendallや同僚ロバート・カイリューの支援も受け、1990年11月にはより具体化した提案書 "WorldWideWeb: Proposal for a HyperText Project" を提出[5]。同年12月にNEXTSTEP上で世界初のWebサーバであるhttpdと世界初のウェブブラウザ・HTMLエディタであるWorldWideWebを構築する[6]。
1991年8月6日には「World Wide Web プロジェクトに関する簡単な要約」をalt.hypertext ニュースグループに投稿[7]。この日、WWWはインターネット上で利用可能なサービスとしてデビューした。同日、世界最初のウェブサイト http://info.cern.ch/ が設立されている。公開に際しては社会全体への貢献を第一に考え、特許を一切取得せず使用料も徴収しなかった。CERNは1993年4月30日、WWW を誰に対しても無償で開放することを発表した[8]。
1994年、マサチューセッツ工科大学に着任した直後 World Wide Web Consortium(W3C)を設立。WWWの仕様や指針、標準技術を策定・開発することで、WWWの可能性を最大限に導くことを目的としている。1999年、MITコンピュータ科学研究所内の 3Com 創業者会会長に就任。2004年12月にはサウサンプトン大学電子コンピュータ科学部の学部長兼教授に就任し、次世代のWeb技術として、Semantic Web技術の標準化を進めている。
2007年現在マサチューセッツ州に在住し[1]、W3CのディレクターとしてWWWに使用される各種技術の標準化を進める傍ら、MITコンピュータ科学・人工知能研究所の上級研究科学者を兼務し分散情報グループ(Decentralized Information Group, DIG)の指揮を取っている。
2009年 World Wide Web Foundationを設立した。[9]
栄誉
- 1995年 - アルス・エレクトロニカ賞を受賞。
- 1996年 - サウサンプトン大学から名誉博士号を授与される。
- 1996年10月30日 - C&C賞を受賞。[10]
- 1998年 - USENIX 貢献賞を受賞。
- 1998年6月2日 - マッカーサー特別研究員賞を受賞。[11]
- 1999年 - 『タイム』誌の「20世紀で最も重要な人物100人」(100 Most Important People of the 20th Century)のうちの一人に選ばれる[12]。
- 2000年 - ロンドン王立協会 ロイヤル・メダルを受賞。
- 2000年3月 - オープン大学から名誉博士号を授与される[13]。
- 2001年 - ロンドン王立協会の会員に就任。コロンビア大学、オックスフォード大学から名誉博士号を授与される。
- 2002年4月 - 日本国際賞を受賞。
- 2002年 - 英国王立技芸協会アルバート賞、アストゥリアス皇太子賞科学技術研究部門を受賞。
- 2003年 - World Wide Web開発への重要な貢献に対してコンピュータ歴史博物館フェロー賞を受賞[14]。
- 2004年4月15日 - フィンランドのミレニアム技術賞を受賞。[15]
- 2004年7月16日 - 英エリザベス2世女王から大英帝国勲章中2番目の位のナイト・コマンダー(Knight Commander of the Order of the British Empire, KBE)の称号を授与される。[16]
- 2005年1月27日 - 2004年最も偉大な英国人(Greatest Briton 2004)を受賞。[17]
- 2007年 - 『デイリー・テレグラフ』紙の「存命中の天才100人」(Top 100 living geniuses)の投票で、アルバート・ホフマンと同率1位を獲得[18]。
- 2007年1月8日 - チャールズ・スターク・ドレイパー賞を受賞。[19]
- 2007年6月13日 - 英国王室からメリット勲章を授与される。[20]
- 2009年 - ウェビー賞生涯功績部門を受賞。
- 2009年4月28日 - 米国科学アカデミーの会員に選出される[21]。
- 2009年10月 - アムステルダム自由大学から名誉博士号を授与される[22][23]。
著書
- Tim Berners-Lee, Mark Fischetti, Weaving the Web: The Original Design and Ultimate Destiny of the World Wide Web by Its Inventor, HarperSanFrancisco, 1999, ISBN 0-06-251586-1
- 高橋徹(監訳) 『Web の創成 World Wide Web はいかにして生まれどこに向かうのか』 毎日コミュニケーションズ、2001年、ISBN 4-8399-0287-9
- Tim Berners-Lee, Wendy Hall, James A. Hendler, A Framework for Web Science, Now Publishers, 2006, ISBN 1-933019-33-6
脚注
- ^ a b c d Berners-Lee biography at the World Wide Web Consortium
- ^ Berners-Lee, Tim. “Longer Bio for Tim Berners-Lee” (英語). World Wide Web Consortium. 2007年7月20日閲覧。
- ^ “Tim Berners-Lee / Great British Design Quest : Software Engineer (1955-) - Design/Designer Information” (英語). Design Museum. 2007年7月20日閲覧。
- ^ Berners-Lee, Tim (1989年3月). “The original proposal of the WWW, HTMLized” (英語). World Wide Web Consortium. 2007年7月20日閲覧。
- ^ Berners-Lee, Tim; Robert Cailliau (1990年11月12日). “WorldWideWeb: Proposal for a HyperText Project” (英語). World Wide Web Consortium. 2007年7月20日閲覧。
- ^ Berners-Lee, Tim. “Tim Berners-Lee: WorldWideWeb, the first Web client” (英語). World Wide Web Consortium. 2007年7月20日閲覧。
- ^ WorldWideWeb: Summary - alt.hypertext, Googleグループ
- ^ “10 Years Public Domain” (英語). 欧州原子核研究機構. 2007年7月20日閲覧。
- ^ http://www.webfoundation.org/
- ^ “1996年「C&C賞」(平成8年度)受賞者の決定について”. C&C財団 (1996年9月20日). 2007年7月15日閲覧。
- ^ “MIT scientist Timothy Berners-Lee with $270,000 MacArthur Fellowship” (英語). マサチューセッツ工科大学 (1998年6月2日). 2007年7月15日閲覧。
- ^ “Tim Berners Lee - Time 100 People of the Century”. タイム. 2010年5月5日閲覧。 “He wove the World Wide Web and created a mass medium for the 21st century. The World Wide Web is Berners-Lee's alone. He designed it. He loosed it on the world. And he more than anyone else has fought to keep it open, nonproprietary and free.”
- ^ “ICTlogy, review of ICT4D » Tim Berners Lee: doctor honoris causa”. Open University of Catalonia (2008年10月10日). 2010年5月5日閲覧。
- ^ http://www.computerhistory.org/fellowawards/index.php?id=88
- ^ “WWW発明のバーナーズ・リー氏、Millennium Technology Prize受賞”. ITmedia (2004年4月16日). 2007年6月14日閲覧。
- ^ “WWW発明のバーナーズ・リー氏にナイトの称号”. ITmedia (2004年7月16日). 2007年6月14日閲覧。
- ^ Sturgeon, Will (2005年2月1日). “T・バーナース・リー、「Greatest Briton 2004」を受賞”. CNET Japan. 2007年6月14日閲覧。
- ^ "Top 100 living geniuses" デイリー・テレグラフ 2007年10月28日
- ^ Schorow, Stephanie (2007年1月5日). “Tim Berners-Lee receives Draper Prize” (英語). マサチューセッツ工科大学. 2007年6月14日閲覧。
- ^ “Web inventor gets Queen's honour” (英語). BBCニュース (2007年6月13日). 2007年6月14日閲覧。
- ^ “Timothy Berners-Lee Elected to National Academy of Sciences”. Dr. Dobb's Journal. 2010年5月5日閲覧。
- ^ アムステルダム自由大学 (2008年7月22日). “Uitvinder World Wide Web krijgt eredoctoraat Vrije Universiteit”. 2010年5月5日閲覧。
- ^ 'Bedenker' wereldwijd web krijgt eredoctoraat VU”. 2010年5月5日閲覧。 NU.nl (2008年7月22日). “
関連項目
外部リンク
- Tim Berners-Lee (本人のページ)
- Timbl's Blog (本人が執筆しているブログ)
- 略歴・業績(PDF), C&C財団
- 日本国際賞歴代受賞者 ティモシイ・J・バーナーズリー博士 - 国際科学技術財団