γ-デカラクトン
γ-デカラクトン γ-Decalactone | |
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5-Hexyloxolan-2-one | |
別称 5-Hexyldihydro-2(3H)-furanone γ-デカノラクトン ラクトンC10 | |
識別情報 | |
CAS登録番号 | 706-14-9 |
PubChem | 12813 |
ChemSpider | 12285 |
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特性 | |
化学式 | C10H18O2 |
モル質量 | 170.25 g mol−1 |
外観 | 無色の液体 |
匂い | 甘いモモの香り |
沸点 |
281 °C, 554 K, 538 °F |
危険性 | |
引火点 | 146℃[1] |
半数致死量 LD50 | 4696.4mg/kg(ラット、経口[1]) |
関連する物質 | |
関連するラクトン | δ-デカラクトン γ-ノナラクトン γ-ウンデカラクトン γ-ドデカラクトン |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
γ-デカラクトン(がんまデカラクトン)は、芳香のあるラクトンで、化学式C10H18O2で表される有機化合物である[1]。その分子構造から明らかなように不斉中心を1つ持つため、S体のγ-デカラクトンと、R体のγ-デカラクトンが存在する。このうちS体は左旋性(-)であり[2]、R体は右旋性(+)である[3]。デカン酸の4位の炭素に結合している水素のうちの1つが水酸基に置換された化合物である4-ヒドロキシデカン酸が、分子内で脱水縮合を起こして環状になった構造を持つ。γ-デカラクトンはモモの香りを特徴づける成分として重要で、天然には果実や発酵食品、和牛の肉[4]に存在する。モモ、アンズ、イチゴの香料として清涼飲料水や香粧品、医薬品、家庭用品に使用される。日本の法令では、食品添加物としての使用が認可されている[5]。日本の消防法では危険物第4類第三石油類(非水溶性)に区分される[1]。
香りの研究
[編集]広島大学大学院生物圏科学研究科の大村尚の分析によると、キンモクセイの香り成分はγ-デカラクトン、リナロール、リナロールオキシド、β-イオノン、α-イオノンなどで構成され[6]、中でも本物質は特徴的な香りを持つと考えられる[7]。キンモクセイの香りは拡散性が高いことで知られるが、本物質はやや揮発性が低いため、遠くまで拡散しているのはβ-イオノンが中心ではないかとする考えもある[4]。大村の研究により、本物質はモンシロチョウの忌避成分として同定された[6]。
アサヒグループホールディングスの研究では、モルト・ウイスキーの香気成分からγ-デカラクトンとγ-ドデカラクトンが発見された。これはウイスキー製造時に、不飽和脂肪酸が乳酸菌によりヒドロキシ脂肪酸となり、これが酵母のβ酸化によりラクトンへ変換されたものと推察された。脂肪酸の供給源は、醸造時に併用されるビール酵母であると考えられる。この研究は、日本醸造協会より2004年度日本醸造協会技術賞を受賞した[8]。
ロート製薬の研究によると、γ-デカラクトン(ラクトンC10)はγ-ウンデカラクトン(ラクトンC11)とともに若い女性特有の甘い体臭を構成し、本物質は20代、γ-ウンデカラクトンは30代で大幅に減少することが明らかになった。この研究は、2017年9月に神戸市で行われた日本味と匂学会第51回大会でポスター発表され[9][10]、プレスリリースの添付資料によると10代ではγ-デカラクトン(ラクトンC10)の濃度は0.1ppm程度、γ-ウンデカラクトン(ラクトンC11)の濃度はこの1.5倍に相当する0.15ppm程度[11][12]が検出されたとしている[13]。
出典
[編集]- ^ a b c d “γ-デカラクトン”. 東京化成工業 (2018年7月14日). 2018年9月26日閲覧。
- ^ (S)-gamma-decalactone (CAS登録番号 107797-27-3)
- ^ (R)-gamma-decalactone (CAS登録番号 107797-26-2)
- ^ a b “金木犀おもしろ話題集(2018) 香り成分γ-デカラクトン”. 有限会社武蔵野ワークス. 2018年9月28日閲覧。
- ^ “食品添加物リスト ラクトン類”. 日本食品化学研究振興財団 (2003年7月28日). 2018年9月28日閲覧。
- ^ a b 大村尚「総説 チョウ成虫の採餌行動と嗅覚情報物質」『比較生理生化学』第23巻第3号、日本比較生理生化学会、2006年、134-142頁、doi:10.3330/hikakuseiriseika.23.134、2018年9月28日閲覧。
- ^ “みんなのひろば 金木犀の香り方”. 日本植物生理学会 (2015年10月20日). 2018年9月28日閲覧。
- ^ 『ウイスキーの甘い香りを作るのは、乳酸菌が関与していることを発見』(プレスリリース)アサヒグループホールディングス 。2018年9月27日閲覧。
- ^ 『女性の「若い頃のニオイ」を解明!「若い頃の甘いニオイ」の正体は「ラクトンC10/ラクトンC11」』(プレスリリース)ロート製薬、2018年2月14日 。2018年9月28日閲覧。
- ^ 望月佑次, 横山裕実, 山北夏子「P-070 加齢に伴う女性の体臭変化に関する研究」『日本味と匂学会誌』Proceeding集第51回大会、日本味と匂学会、2017年。
- ^ 『プレスリリース:ロート製薬、加齢に伴う女性の体臭変化に関しての研究結果を発表』(プレスリリース)日本経済新聞、2018年2月14日 。2019年6月29日閲覧。
- ^ 『添付リリース』(プレスリリース)日本経済新聞、2018年2月14日 。2019年6月29日閲覧。
- ^ 望月佑次(ロート製薬)「加齢に伴う女性の体臭変化に関する研究」『FRAGRANCE JOURNAL』46(3):pp.66-66,2018