いけふくろう
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いけふくろう - マイナビニュース |
いけふくろうは、東京都豊島区のJR東日本(東日本旅客鉄道)池袋駅構内にあるフクロウの石像。名称は「池袋にあるフクロウ」を意味する[1]。1987年(昭和62年)に設置されて以来、待合せ場所として駅利用者たちに親しまれている[2][3]。駅の待合せ場所としては、渋谷駅のハチ公、東京駅の銀の鈴、新宿駅のアルタ前などと共に定番とされる[4][5]。また池袋駅以外にも、豊島区の池袋には、東池袋の中池袋公園などにも「いけふくろう」と呼ばれるフクロウ像があることから[6][7]、本項ではそちらについても述べる。
設置の経緯
[編集]JR東日本発足と同年の1987年(昭和62年)3月に[2]、池袋駅のマスコットとなるオブジェの設置が企画された[8]。JR東日本広報部や当時の池袋駅長らによれば、「JR発足の記念となるシンボルを[9][10]」「池袋駅には、これといった待合せ場所がない[2][10]」「待合せの名所である渋谷駅のハチ公に対して、池袋駅にもシンボルを[8]」などの意見が出たことが、企画の理由であった。
池袋駅近くの豊島区雑司が谷の鬼子母神周辺では、ススキで作られた郷土玩具「すすきみみずく」があり、ミミズクがフクロウ科の鳥であることや、「池袋」の地名はかつてフクロウが生息していたことが由来との説もあることから[* 1]、フクロウをデザインした石像を作ることで、話がまとまった[10]。JR東日本広報部によれば、「池袋(いけぶくろ)」と「フクロウ」の語呂合せによる駄洒落の要素もあったとみられている[11]。
池袋駅の当時の助役の1人が栃木県那須町出身であり、同地は芦野石[* 2](安山岩の一種)で知られることから、材料は栃木産の芦野石が使われることになり[9][10]、那須町の石材加工業である鈴木石材工業に製作が依頼された[9]。同社は長年にわたって石材加工を行っていたものの、フクロウの石像の製作は初めてのために困惑した挙句、社長の親類の家に偶然あったフクロウの剥製を見ながら石像を作り上げたという[10][11]。
同1987年9月に[2]、全高2メートル弱の石像が完成し[10]、池袋駅東口の地下通路に設置された[3][13]。
反響
[編集]設置場所は、当時は比較的人通りは少なかったが、ネーミングの妙もあって話題を呼び、周囲はすぐに大勢の人で賑わうようになった[10]。石像前に賽銭を置く高齢者の姿もあった[10]。「火の用心」と書かれた胸当てをかけて、火災予防運動に活用されたこともあった[10]。2006年(平成18年)には子供のフクロウの像が、池袋駅近隣の池袋第三小学校5年の生徒たちから寄贈された[2]。
駅構内のため、雨天でも問題ないことが長所である[14]。池袋は、東武百貨店が西口に、西武百貨店が東口にあって混乱を招くため、待合せ場所として良いとの声もある[15]。一方で、駅構内が広すぎるため、いけふくろうまで辿り着けない人も少なくない[16]。若い世代からは、その外観について「かわいくはない」との声、語呂合わせの名称について「オヤジギャグ」という声も聞かれ[17]、名前を見て失笑する人もいる[13]。待合せの場所としてよく利用される反面、像が小さいため、人々に隠れて像が見つけられないこともある[14]。
いけふくろうによって、フクロウが池袋駅のシンボルとなったことで、池袋駅に一部乗り入れた東北・高崎線の一番列車には、フクロウをデザインしたヘッドマークが飾られた[10]。1994年(平成6年)にオープンした、池袋駅南口と中央改札口を結ぶ連絡通路「アゼリアロード」の中ほどには、オープン当時JR入社3年目の女性社員のデザインよる「いけふくろう」3羽が設置された[18]。
JR池袋駅構内に2011年(平成23年)に開店した菓子店「ハッピーフクロウ」で販売されている菓子[19]、池袋に本店を置く和菓子店の三原堂の商品「池ぶくろう最中[20]」のモチーフにも取り入れられた。
池袋や豊島区を舞台とした創作作品においては、2000年(平成12年)のテレビドラマ『池袋ウエストゲートパーク』で、いけふくろうが登場人物に盗まれるエピソードがあった[11][21]。2010年(平成22年)のテレビアニメ『デュラララ!!』にも登場し、聖地の一つに挙げられている[15]。2020年(令和2年)公開のアニメ映画『君は彼方』でも、いけふくろうが登場した[22]。
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『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の敵キャラクターの扮装のいけふくろう「イケフクエル」 - しらべぇ |
2020年(令和2年)6月には、TOHOシネマズ池袋の開業に合わせ、アニメ映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』とのコラボレーションとして、同作の登場人物たちがいけふくろうで集合するポスターが公開された[23][24]。さらに同映画が公開された翌2021年(令和3年)には、同映画のキャラクター(使徒)「サキエル[* 3]」を彷彿させる面がいけふくろうにかぶせられ、「イケフクエル」の名となり、話題を呼んだ[27][28]。JR東日本によれば、当初は同映画と連携によるスタンプラリーが予定されていたが、新型コロナウイルスの影響で中止となり、スタンプラリーに代わる独自の方法でファンを楽ませようと検討された結果、「使徒を飾ったら面白そう」として実現されたものである[29]。通行人の多くがこの「イケフクエル」を撮影し、Twitterでも「何があった!?」「正直爆笑した」など、多くの反響があった[27]。
池袋駅以外のいけふくろう
[編集]豊島区東池袋の中池袋公園のふくろう像もまた、「いけふくろう」の名で呼ばれ[6][7]、同公園のシンボルとされている[30]。ハロウィンにはイベント参加者の仮装に合わせて様々な仮装をさせられ、写真を撮られるなど、好評を博している[30][31]。
2015年(平成27年)4月には、この中池袋公園の像が、千葉県の幕張メッセ開催のニコニコ超会議の待合せで使われる「超遭遇スポット」に展示され、「いけふくろうが出張」と報じられた[6][7]。この期間内には、中池袋公園には発泡スチロールで作った代理の「いけふくろう像」が置かれた[7]。
この他にも豊島区や池袋には、フクロウにまつわる文化が多数ある。豊島区立郷土資料館の学芸員である秋山伸一によれば、これらの多くのフクロウは、池袋駅のいけふくろうが設置されてから広まったという[32]。池袋駅のいけふくろうがその元祖だという噂もあるが、JR東日本広報部は「いけふくろうが元祖かどうかは不明」としてる[2]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 豊島区南池袋の法明寺の住職である近江正典は、2013年の朝日新聞紙上で「30年ほど前まで寺の樹木にはフクロウがいた」と証言している[11]。
- ^ 栃木県那須町芦野で産出される安山岩の一種[12]。柔らかく掘りやすく[9]、土木や建築に利用される[12]。
- ^ 「使徒」はテレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』に登場するキャラクターであり、「サキエル」はアニメ第1話に登場した使徒[25]。作中で最初に登場したことで印象に残っている視聴者も多いと見られ[25]、「使徒といえばサキエル」との意見もある[26]。ねとらぼが実施したアンケート「あなたが好きな『エヴァの使徒』はなに?」(2020年)では第4位[26]、アンケートモニター募集サイト「ボイスノート」による「『エヴァンゲリオン』見た目で選ぶ『ビジュアルが最高の使徒』ランキング」(2021年)では第3位を記録した[25]。
出典
[編集]- ^ 高橋政士 編『完全版! 鉄道用語辞典 鉄道ファンも鉄道マンも大重宝 9750語超収録!』講談社、2017年11月29日、35頁。ISBN 978-4-06-220769-0。
- ^ a b c d e f シマダマヨ「池袋駅の待ち合わせスポット「いけふくろう」が生まれた理由は? 広報さんに聞いてみた」『マイナビニュース』マイナビ、2015年9月26日。2022年3月26日閲覧。
- ^ a b JTBパブリッシング 2017, p. 160
- ^ 造事務所 2017, p. 173
- ^ 造事務所 2017, p. 206
- ^ a b c 「中池袋公園の「いけふくろう」像が幕張に出張 代理は発砲スチロール製」『池袋経済新聞』2015年4月22日。2022年3月26日閲覧。
- ^ a b c d マッハ・キショ松「待ち合わせにはもってこい! 池袋の「いけふくろう像」がニコニコ超会議2015に出張中」『ねとらぼ』アイティメディア、2015年4月25日。2022年3月26日閲覧。
- ^ a b 松本 2018, p. 159
- ^ a b c d 「Myタウン これナーニ? いけふくろう 東京・JR池袋駅 待ち人来て「ホッホー」」『中日新聞』中日新聞社、1999年9月30日、朝刊、9面。
- ^ a b c d e f g h i j 平しの「駅の物語 池袋駅「フクロウ」街のシンボルに」『読売新聞』読売新聞社、2003年7月8日、東京朝刊、29面。
- ^ a b c d 千葉雄高「ふしぎ探検隊 いけふくろう 豊島区 コツコツ増殖、いま26羽」『朝日新聞』朝日新聞社、2013年9月6日、東京地方版、28面。
- ^ a b 『日本国語大辞典』 第1巻(第2版)、小学館、2000年12月20日、322頁。ISBN 978-4-09-521001-8 。2022年3月26日閲覧。
- ^ a b 大野宏「池袋 柳家喬太郎(ラクゴ@TOKYO)」『朝日新聞』2002年2月19日、東京地方版、34面。
- ^ a b 野田隆「使える! 都内「駅の待ち合わせ場所」10選 混み合う駅でもこれで次から迷わない?」『東洋経済オンライン』東洋経済新報社、2016年8月26日、3面。2022年3月26日閲覧。
- ^ a b 武地 2015, p. 池袋 デュラララ!! 聖地MAP
- ^ 大貫未来「右も左もフクロウだらけ! 池袋にあるフクロウの像を巡ってみた」『ねとらぼ』2015年3月27日。2022年3月26日閲覧。
- ^ 池田敦彦「池袋 1 本家よりも(東京Tokyo 81)」『朝日新聞』2003年7月7日、東京夕刊、14面。
- ^ 「歩き目デス 池袋へ行け! ふくろう」『読売新聞』1996年4月3日、東京夕刊、10面。
- ^ 「池袋駅にパンケーキ風おやつ専門店「ハッピーフクロウ」いけふくろう像モチーフに」『池袋経済新聞』2011年11月18日。2022年3月26日閲覧。
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- ^ 小松芙未 (2020年6月17日). “TOHOシネマズ池袋、7月3日開業!『シン・エヴァ』コラボビジュアルも”. シネマトゥデイ. 2022年3月26日閲覧。
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- ^ a b としながアミ「新世紀エヴァンゲリオン」で一番好きな使徒が決定 ヤシマ作戦でおなじみの「ラミエル」が1位に」『ねとらぼ』2020年11月19日、2面。2022年3月26日閲覧。
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- ^ “「池袋ハロウィンコスプレフェス2018」でアニメ「殺戮の天使」とのコラボ企画が開催決定”. Gamer. イクセル (2018年10月5日). 2022年3月26日閲覧。
- ^ 池田良「各駅停話 JR埼京線 池袋 フクロウ、江戸からゆかり」『朝日新聞』2017年4月17日、東京夕刊、7面。
参考文献
[編集]- 松本典久編著『ぐるり一周34.5キロ JR山手線の謎 2020』実業之日本社〈じっぴコンパクト新書〉、2018年1月10日。ISBN 978-4-408-33759-3。
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- 造事務所 編『なぜ迷う? 複雑怪奇な東京迷宮駅の秘密』田村圭介監修、実業之日本社〈じっぴコンパクト新書〉、2017年7月14日。ISBN 978-4-408-33714-2。
- 武地里加子 編『るるぶデュラララ!!』JTBパブリッシング〈JTBのMOOK〉、2015年3月15日。ISBN 978-4-533-10296-7。