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つる座

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つる座
Grus
Grus
属格 Gruis
略符 Gru
発音 英語発音: [ˈɡrʌs]、口語的に/ˈɡruːs/; 属格:/ˈɡruːɨs/
象徴 ツル[1]
概略位置:赤経  21h 27m 42.7s -  23h 27m 04.4s[2]
概略位置:赤緯 −36.31° - −56.39°[2]
広さ 365.513平方度[3]45位
バイエル符号/
フラムスティード番号
を持つ恒星数
28
3.0等より明るい恒星数 2
最輝星 α Gru(1.71
メシエ天体 0
隣接する星座 みなみのうお座
けんびきょう座
インディアン座
きょしちょう座
ほうおう座
ちょうこくしつ座
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つる座(つるざ、Grus)は現代の88星座の1つ。16世紀末に考案された新しい星座で、をモチーフとしている[1][4]みなみのうお座の南側に位置しており、日本国内からは南の空の低いところに見える。

主な天体

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恒星

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α星とβ星の2つの2等星がある。

2022年4月現在、国際天文学連合 (IAU) によって4個の恒星に固有名が認証されている[5]

星団・星雲・銀河

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欧州南天天文台 (ESO) ラ・シヤ天文台新技術望遠鏡 (NTT) で撮影された惑星状星雲IC5148。

由来と歴史

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ヨハン・バイエル『ウラノメトリア』(1603年)に描かれたつる座(左上)。

つる座は、1598年フランドル生まれのオランダ天文学者ペトルス・プランシウスが、オランダの航海士ペーテル・ケイセルフレデリック・デ・ハウトマン1595年から1597年にかけての東インド航海で残した観測記録を元に、オランダの天文学者ヨドクス・ホンディウス英語版と協力して製作した天球儀にツルの姿を描いたことに始まるとされる[4]ドイツの法律家ヨハン・バイエル1603年に出版した星図『ウラノメトリア』で世に知られるようになったことから、かつてはバイエルが新たに考案した星座として紹介されていた[17]が、日本でも2010年代以降はケイセルとデ・ハウトマンが考案した星座であることが広く紹介されるようになった[18]。しかし2020年代に入ってもバイエル考案の星座と誤って紹介される例が散見される[19]

プランシウスらは、1598年に製作した天球儀に描いたツルの星座に、オランダ語で Krane、ラテン語Grus という星座名を付けた[4][20]。ホンディウスは1600年1601年に製作した天球儀にもツルの星座絵と Grus という星座名を記している[20]1603年、バイエルは、プランシウスやホンディウスの天球儀から星の位置をそっくり写し取って、星図『ウラノメトリア』を出版した[20]。そのため、バイエルの『ウラノメトリア』でも Grus という星座名がそのまま引き継がれた[4][20]

一方で、この鳥の星座に対して異なる種類の鳥を充てようとする動きが見られた。1602年に第2次東インド航海からオランダに帰国したデ・ハウトマンは、1603年に出版したマレー語辞典に付録として付けた星表の中で、オランダ語で「サギ(鷺)」を意味する Den Reygher という星座名を付けた[4][21]。また、オランダの法学者・地理学者のパウルス・メールラ英語版は、1605年の地理書『Cosmographia Generalis』に著した星座解説の中で、ラテン語で「フラミンゴ」を意味する Phœnicopterus という星座名を付けている[20][22]。また、フランドルの地球儀製作者でプランシウスの共同制作者でもあったペトルス・カエリウス英語版も、1625年に製作した天球儀で Phœnicopterus という星座名を充てていた[4]。このカエリウスの天球儀はプランシウスの死後に製作されたものだが、イギリスの天文史家イアン・リドパスは、フラミンゴの星座としたのはプランシウスの影響によるものであるとしている[4]。17世紀初頭に見られたこれら独自の命名は、バイエルの『ウラノメトリア』ほどの影響を与えることなく、結局元の Grus が生き残ることとなった[4]

この星座に付けられたギリシア文字の符号は、バイエルが付けたいわゆる「バイエル符号」ではなく、18世紀フランスの天文学者ニコラ=ルイ・ド・ラカイユによって付けられたものである。ラカイユは、自身が考案した14星座のほか、バイエルが符号をつけていなかった南天の星座にギリシア文字の符号を付しており、つる座の星々にもαからφまでの符号を付した[23]。ただし、このときκ・ξ・ν・οの4つは使われなかった[23]。ラカイユが付した符号は、19世紀イギリスの天文学者フランシス・ベイリーが編纂した『The Catalogue of Stars of the British Association for the Advancement of Science』(1845年)に全面的に引き継がれた[24]。さらに、アメリカの天文学者ベンジャミン・グールド1879年に出版した『Uranometria Argentina』で星座の境界線が引き直された際、ラカイユが使わなかった κ・ξ・ν・οの4星が加えられた[25]

1922年5月にローマで開催されたIAUの設立総会で現行の88星座が定められた際にそのうちの1つとして選定され、星座名は Grus、略称は Gru と正式に定められた[26]。新しい星座のため星座にまつわる神話や伝承はない。

現在のつる座の恒星の一部には、これらがかつてみなみのうお座の領域にあったことをうかがわせる固有名が付けられている。たとえば、α星のアルナイルはアラビア語で「魚の尾の明るいもの」を意味する al-nayyir min dhanab al-ḥūt[4][27]、γ星のアルダナブは、「尾」を意味する al-dhanab に由来した名称である[28]。これは、16世紀にアラビアの天文学者が、みなみのうお座の領域をクラウディオス・プトレマイオスが定めた境界を超えてさらに南へと拡張したことによって生じたものである[4]

中国

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現在のつる座の領域は、中国の歴代王朝の版図からはほとんど見ることができなかったため、三垣二十八宿には含まれなかった。この領域の星々が初めて記されたのは明代末期1631年から1635年にかけてイエズス会士アダム・シャール徐光啓らにより編纂された天文書『崇禎暦書』であった[29]。この頃、明の首都北京の天文台にはバイエルの『ウラノメトリア』が2冊あり、南天の新たな星官は『ウラノメトリア』に描かれた新星座をほとんどそのまま取り入れたものとなっている[29]。これらの星座はそのまま清代1752年に編纂された天文書『欽定儀象考成』に取り入れられており、つる座の星は「鶴」という星官に配されていた[29]

呼称と方言

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日本では明治末期には「」という訳語が充てられていた。このことは、1908年(明治41年)に創刊された日本天文学会の会誌『天文月報』の第1巻第9号に掲載された「十二月の天」と題した星図で確認できる[30]。その後、1910年(明治43年)2月に星座の訳名が改定された際も変更なく「鶴」が使われた[31]。この訳名は、1925年(大正14年)に初版が刊行された『理科年表』にも「鶴(つる)」として引き継がれ[32]1944年(昭和19年)に学術研究会議によって天文学用語が改定された際も変更されなかった[33]。戦後の1952年(昭和27年)7月に日本天文学会が「星座名はひらがなまたはカタカナで表記する」[34]とした際に、Grus の日本語名は「つる」と改定された[35]。この改定以降は「つる」が星座名として継続して用いられている。

現代の中国では、天のツルという意味の天鶴座と呼ばれている[36]

脚注

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出典

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  1. ^ a b The Constellations”. 国際天文学連合. 2023年8月17日閲覧。
  2. ^ a b Constellation boundary”. 国際天文学連合. 2023年8月17日閲覧。
  3. ^ 星座名・星座略符一覧(面積順)”. 国立天文台(NAOJ). 2023年1月1日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j Ridpath, Ian. “Grus”. Star Tales. 2023年3月21日閲覧。
  5. ^ a b c d Mamajek, Eric E. (2022年4月4日). “IAU Catalog of Star Names”. 国際天文学連合. 2023年3月21日閲覧。
  6. ^ "alf Gru". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年2月28日閲覧
  7. ^ a b c 『ステラナビゲータ11』(11.0i)AstroArts。 
  8. ^ "bet Gru". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年2月28日閲覧
  9. ^ Samus’, N. N.; Kazarovets, E. V.; Durlevich, O. V.; Kireeva, N. N.; Pastukhova, E. N. (2017). “General catalogue of variable stars: Version GCVS 5.1”. Astronomy Reports 61 (1): 80-88. Bibcode2017ARep...61...80S. doi:10.1134/S1063772917010085. ISSN 1063-7729. https://vizier.cds.unistra.fr/viz-bin/VizieR-5?-ref=VIZ64170a122aa11c&-out.add=.&-source=B/gcvs/gcvs_cat&recno=22509. 
  10. ^ TRIENNIAL REPORT 2016-2018”. Division C Working Group Star Names. IAU. 2023年2月28日閲覧。
  11. ^ "gam Gru". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年2月28日閲覧
  12. ^ "HD 208487". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年3月21日閲覧
  13. ^ Approved names” (英語). Name Exoworlds. 国際天文学連合 (2019年12月17日). 2023年2月18日閲覧。
  14. ^ "IC 5148". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年3月21日閲覧
  15. ^ Streicher, Magda (2010-12). “Deep-sky Delights: Grus - an Elegant Starry Bird”. Monthly Notes of the Astronomical Society of South Africa 69: 229-234. ISSN 0024-8266. 
  16. ^ From Cosmic Spare Tyre to Ethereal Blossom”. www.eso.org (2012年10月15日). 2023年3月21日閲覧。
  17. ^ 原恵『星座の神話 - 星座史と星名の意味』(新装改訂版4刷)恒星社厚生閣、2007年2月28日。ISBN 978-4-7699-0825-8 
  18. ^ 山田陽志郎「星座」『天文年鑑 2013年版』誠文堂新光社、2012年11月25日。ISBN 978-4-416-21285-1 
  19. ^ つる座”. 88星座図鑑. スタディスタイル. 2023年8月17日閲覧。
  20. ^ a b c d e Dekker, Elly (1987). “Early explorations of the southern celestial sky”. Annals of Science (Informa UK Limited) 44 (5): 451. Bibcode1987AnSci..44..439D. doi:10.1080/00033798700200301. ISSN 0003-3790. 
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  30. ^ 星座名」『天文月報』第1巻第9号、1908年12月、12頁、ISSN 0374-2466 
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  32. ^ 東京天文台 編『理科年表 第1冊丸善、1925年、61-64頁https://dl.ndl.go.jp/pid/977669/1/39 
  33. ^ 学術研究会議 編「星座名」『天文術語集』1944年1月、10頁。doi:10.11501/1124236https://dl.ndl.go.jp/pid/1124236/1/9 
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  36. ^ 大崎正次「辛亥革命以後の星座」『中国の星座の歴史』雄山閣出版、1987年5月5日、115-118頁。ISBN 4-639-00647-0