コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

アカアシカツオドリ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アカアシカツオドリ
アカアシカツオドリ
アカアシカツオドリ(白色型) Sula sula
保全状況評価
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: カツオドリ目 Suliformes
: カツオドリ科 Sulidae
: カツオドリ属 Sula
: アカアシカツオドリ S. sula
学名
Sula sula (Linnaeus, 1766)
和名
アカアシカツオドリ
英名
Red-footed Booby
亜種
  • Sula sula sula
  • Sula sula rubripes
  • Sula sula websteri
Sula sula

アカアシカツオドリ(赤脚鰹鳥、Sula sula)は、カツオドリ目カツオドリ科カツオドリ属に分類される鳥類。属名および種小名の sulaノルウェー語シロカツオドリを指す呼称に由来する。

分布

[編集]

インド洋大西洋太平洋の熱帯および亜熱帯の海域に分布する[1][2]

日本では少数が南西諸島硫黄列島小笠原諸島に飛来する[3]。2017年には南硫黄島で集団繁殖が確認されている[4]。また、八重山列島仲御神島には毎年、若齢鳥を中心に数羽~10羽程度が飛来し、1975年1977年には繁殖も確認されている[5][6]

本州では東京都(1978年)、神奈川県(1975年)の記録があり[7]、近年には東京都内(2008年7月)で保護されている[8]北海道では、茅部郡森町(2008年9月)で幼鳥が保護され[9]利尻島(2006年7月)においても若鳥の飛来が記録されている[10]福岡市西区今津湾に飛来した例もある。[要出典]

形態

[編集]

全長約75cm[11] (70-80cm[2])。翼開長約143cm[11] (140-145cm[2])。翼長30.6-40.2cm、嘴峰長7.19-9.1cm、跗蹠長3.12-4.09cm、尾長19.2-24.3cm[2]。体重0.94-1.07kg[12]。雌雄同色。全身は白色(白色型)や灰褐色(褐色型)の羽毛で覆われる。白い羽毛で覆われるが、翼上面の色彩が灰褐色(さらに頭部から体上面も灰褐色)の個体もいる(中間型)。初列風切や次列風切の色彩は黒い。尾羽はくさび型で先端が尖り[1]、色彩は白色(白色型、中間型)や黒褐色(褐色型)。日本では中間型と思われるものも観察されているが[13]、褐色型は確認されていない[1]

顔には羽毛がなく赤い皮膚が露出し、眼の周囲の皮膚は青みがかった灰色。嘴の色彩は淡青色や青紫色。足は赤い。

若鳥の褐色型は全体として褐色であるが、白色型は全体に白みがある[3]。嘴の色彩はピンク色で、先端は紫がかった褐色[3]。足はピンクがかった灰色[11]。幼鳥は褐色型とよく似るが、足が黄色で[1][14]、白色型の幼鳥は頭部が白みを帯びる[1]

亜種

[編集]

3亜種に分かれるとされる。

  • Sula sula sula (Linnaeus, 1766) - 基亜種。カリブ海ブラジル沖の島々で繁殖する。[15]
  • Sula sula rubripes (Gould, 1838) - 亜種アカアシカツオドリ[16]。熱帯太平洋、インド洋の島々で繁殖する。[15]
日本南部や台湾には、夏鳥として主に6-10月に飛来する[17]
ガラパゴス諸島の繁殖地としては、ダーウィン島、ウォルフ島、マルチェナ島、ヘノベサ島サン・クリストバル島(東部[18])、ガードナー小島(エスパニョラ島沖)が知られ、セイモア・ノルテ島、イサベラ島(モレノ岬[18])、エスパニョラ島などでも観察される[19]

生態

[編集]

熱帯から亜熱帯の海洋に生息し[1]、20羽以下の群れを形成して生活する[12]

食性は動物食で、魚類軟体動物を食べる。主に空中から水中の獲物を探し、獲物を発見すると急降下して潜水し捕らえる。海面付近を跳躍しているトビウオを捕食することもある。

周年繁殖する。集団繁殖地(コロニー)を形成し、低木の樹上に木の枯枝を組み合わせた皿形の巣を作り[7][12]、1回に1-2個(主に1個)の卵を産む。卵は青色無斑で、大きさは5.9-7.2cm × 3.5-4.85cm[7]。雌雄交代で抱卵し、抱卵期間は42-46日。雛は孵化してから100-144日で巣立つが、幼鳥は巣立ってからも数か月は親鳥から食物を与えられる[12]。生後2-3年で性成熟し、寿命は20年以上。

小笠原航路で、聟島列島の北北西約60kmで記録された個体が船に近付き、約1時間・40km飛翔した後、その船に止まり就眠した。その後、青ヶ島の東、約60kmで飛び立つまで12時間10分、約450kmを船上で過ごした記録がある[20]

人間との関係

[編集]

卵も含めて食用とされることもあり、食用の乱獲により生息数は減少している。

日本では1972年に仲御神島が「仲の神島海鳥繁殖地」として国の天然記念物に指定されている[21]。ただし、セグロアジサシ等の海鳥の集団繁殖地としてであり、アカアシカツオドリの繁殖例があるのは指定後である。

絶滅危惧IB類 (EN)環境省レッドリスト

画像

[編集]

脚注

[編集]
  1. ^ a b c d e f 日本の鳥550 水辺の鳥 増補改訂版 (2009)
  2. ^ a b c d 箕輪義隆『海鳥識別ハンドブック』文一総合出版、2007年、49頁。ISBN 978-4-8299-0025-3 
  3. ^ a b c 日本の野鳥590 (2000)
  4. ^ アカアシカツオドリの集団繁殖を初確認 南硫黄島」『日本経済新聞』2017年9月13日。オリジナルの2017年9月12日時点におけるアーカイブ。
  5. ^ 河野裕美、安部直哉、真野徹「仲の神島の海鳥類」『山階鳥類研究所研究報告』第18巻第1号、1986年、1-27頁。 
  6. ^ 河野裕美; 水谷晃『改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(レッドデータおきなわ)第3版 動物編 3.4 鳥類』(レポート)沖縄県、2017年3月、126頁。オリジナルの2024年7月15日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20240715034444/https://www.pref.okinawa.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/004/628/chourui.pdf 
  7. ^ a b c 高野伸二『カラー写真による 日本産鳥類図鑑』東海大学出版会、1981年、201頁。 
  8. ^ 東京農業大学、プレスリリース、2008年8月21日。 Archived 2014年1月28日, at the Wayback Machine.
  9. ^ 那覇自然環境事務所「北海道で保護されたアカアシカツオドリの放鳥について」
  10. ^ 風間健太郎・佐藤雅彦 「北海道利尻島におけるアカアシカツオドリ Sula sula の飛来記録」日本鳥学会誌 57(1): 30–32, 2008
  11. ^ a b c フィールドガイド 日本の野鳥 増補改訂版 (2007)
  12. ^ a b c d 動物大百科7 鳥I (1986)、178頁
  13. ^ 河野ほか (1986)、9頁
  14. ^ 『鳥630図鑑』、増補改訂版、日本鳥類保護連盟、2002年、40頁。
  15. ^ a b c Clements, James (2007). The Clements Checklist of the Birds of the World (6th ed.). Ithaca, NY: Cornell University Press. p. 16. ISBN 978-0-8014-4501-9 
  16. ^ 日本鳥学会(目録編集委員会)編 編『日本鳥類目録 改訂第7版』日本鳥学会、2012年、69頁。ISBN 978-4-930975-00-3 
  17. ^ Brazil, Mark (2009). Birds of East Asia. Princeton University Press. p. 112. ISBN 978-0-691-13926-5 
  18. ^ a b c 藤原幸一『ガラパゴス博物学』データハウス、2001年、60-63頁。ISBN 4-88718-616-9 
  19. ^ Isabel Castro and Antonia Phillips, A Guide to The Birds of the Galápagos Islands, Prinston University Press, (1996) pp. 79-80. ISBN 0-691-01225-3.
  20. ^ 樋口行雄花輪伸一塚本洋三 「小笠原航路におけるアカアシカツオドリの観察」『Strix』2巻、日本野鳥の会、1983年、106-107頁。
  21. ^ 仲の神島海鳥繁殖地 - 国指定文化財等データベース(文化庁

参考文献

[編集]

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]