コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

2-プロペン-1-チオール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アリルメルカプタンから転送)
2-プロペン-1-チオール
2-Propene-1-thiol
識別情報
CAS登録番号 870-23-5
PubChem 13367
ChemSpider 13836713
UNII 1X587IBY09
EC番号 212-792-7
ChEBI
ChEMBL CHEMBL3222024
特性
化学式 C3H6S
モル質量 74.14 g mol−1
外観 無色ないしごく薄い黄色の液体[2]
匂い 不快臭[1]
沸点

69℃[2]

危険性
GHSピクトグラム 可燃性急性毒性(低毒性)
GHSシグナルワード 危険(DANGER)
Hフレーズ H225, H302, H319, H332
Pフレーズ P210, P233, P240, P241, P242, P243, P261, P264, P270, P271, P280, P301+312, P303+361+353, P304+312
引火点 21度[2]
-15.56℃(密閉式引火点試験)[1]
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

2-プロペン-1-チオールは、化学式C3H6Sの低分子アリル誘導体で、ニンニクや他のいくつかのネギ科の植物に由来する有機硫黄化合物である。アリルメルカプタンの名称でも知られている。既知のニンニク由来の有機硫黄化合物およびその代謝物の中で最も効果的なHDAC阻害剤であることが示された[3]

自然界の存在

[編集]

タマネギ[4]やニンニクに含まれ、アリシンの代謝生成物として人体中にも存在する[5]

合成法

[編集]

ヨウ化アリル硫化水素カリウムと反応させることにより得られる[6]。他の合成法も知られている[7]

性質

[編集]

引火性・揮発性が高い無色ないし淡黄色[2]、淡茶色[1]の液体で、特異な不快臭がある。水にはほとんど溶けない。嗅覚閾値は1.5ppb[8]と、極めて強い臭気を持つ。ヒトの体内では、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害作用を持つ[9]

用途

[編集]

医薬品農薬染料ほか有機合成化学の重要な原料および中間体となる[10]

安全性

[編集]

密閉式引火点試験での引火点は-15.56℃で、日本の消防法では危険物第4類第一石油類に該当する。本物質の蒸気は、空気と爆発性混合物を形成することがある[1]

脚注

[編集]
  1. ^ a b c d 2-プロペン-1-チオール”. シグマアルドリッチ (2022年3月29日). 2022年11月9日閲覧。
  2. ^ a b c d 製品コードA0777 アリルメルカプタン”. 東京化成工業 (2022年3月19日). 2022年11月10日閲覧。
  3. ^ Rajendran, Praveen; Ho, Emily; Williams, David E; Dashwood, Roderick H (2011). “Dietary phytochemicals, HDAC inhibition, and DNA damage/repair defects in cancer cells”. Clinical Epigenetics 3 (1): 4. doi:10.1186/1868-7083-3-4. ISSN 1868-7083. PMC 3255482. PMID 22247744. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3255482/. 
  4. ^ タマネギのお話”. 北海道医療大学附属薬用植物園. 2022年11月10日閲覧。
  5. ^ ニンニク情報館”. 日本エルブ. 2022年11月10日閲覧。
  6. ^ Norman G. Gaylord (1962), Polyethers: Polyalkylene oxides and other polydethers (ドイツ語), Interscience Publishers, p. 8, OCLC 757317775
  7. ^ Tsinghua Tongfang Knowledge Network Technology: Study on synthesis of 2-propene-1-thiol, abgerufen am 7. Oktober 2018
  8. ^ Eula Bingham, Barbara Cohrssen (2012), Patty's Toxicology, 6 Volume Set (ドイツ語), John Wiley & Sons, p. 1054, ISBN 978-0-470-41081-3
  9. ^ H. Nian, B. Delage, J. T. Pinto, R. H. Dashwood: Allyl mercaptan, a garlic-derived organosulfur compound, inhibits histone deacetylase and enhances Sp3 binding on the P21WAF1 promoter. In: Carcinogenesis. 29, 2008, S. 1816, doi:10.1093/carcin/bgn165.
  10. ^ A13616 Allyl mercaptan, tech. 70%”. アルファ・エイサー英語版. 2022年11月10日閲覧。