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イラ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
イラ
イラ Choerodon azurio
保全状況評価
DATA DEFICIENT
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: スズキ目 Perciformes
亜目 : ベラ亜目 Labroidei
: ベラLabridae
亜科 : タキベラ亜科 Bodianinae
: イラ属 Choerodon
: イラ C. azurio
学名
Choerodon azurio
(Jordan & Snyder, 1901)
シノニム
Choerops azurio
Jordan & Snyder, 1901
和名
イラ
イソアマダイなど(本文参照)
英名
Scarbreast tuskfin
Scarbreast turkfish[1]

イラ (伊良[2]、苛魚、Choerodon azurio) は、スズキ目ベラ亜目ベラ科に属するの一種。

分布

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南日本[3](本州中部地方以南[4][5])、台湾[2][4]朝鮮半島[4][5]、シナ海[1][5]東シナ海南シナ海[4])に生息する。

形態

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イラの成魚。黒色斜走帯の後ろを沿うように白色斜走帯が走る。
イラの幼魚。成魚とは模様が異なる。
イラの背鰭。12棘7軟条。

全長約40[1][2][5]-45cm[3][4]。背鰭12棘(11-14棘[4])7軟条、臀鰭3棘10軟条[1]。体は楕円形でやや長く、側扁である[1][3]。また、イラ属はベラ科魚類の中では体高が高い[5]から上顎までの傾斜が急で、アマダイを寸詰まりにしたようである[2]。老成魚のは前額部が隆起・肥大し[1]吻部の外郭は垂直に近くなる[4]。アマダイよりが大きい[2]。両顎歯は門歯状には癒合せず[4]、癒合し鋸歯縁のある隆起線をつくる[1]。しかしブダイ科魚類のように歯板を形成することはない[5]。前部に最低1対の大きな犬歯状の歯(後犬歯[1])がある[4]。側線は一続きで、緩やかにカーブする[4]。前鰓蓋骨の後縁は細かい鋸歯状となる[1]。尾鰭後縁はやや丸い[1]

体色は紅褐色[1]から暗紅色で腹側は色が薄く[2]尾鰭は濃い[2]口唇は青色[1]で、の端はい。背鰭腹鰭、臀鰭は黄色。背鰭棘部の中央から胸鰭基部にかけ、不明瞭で幅広い黒褐色の斜走が走る[1][2][3][5]。その帯の後ろを沿うように白色斜走帯(淡色域[3])がある[4][5]。幼魚にはこの斜走帯はない[4]。雌雄の体色や斑紋の差が大きい[5]

生態

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沿岸のやや深い岩礁[1][4][5]やその周りの砂礫底に見られ[2]、単独でいることが多い[2]日本近海での産卵期は[2][4]。夜は岩陰や岩穴などに隠れて眠る[2][4][5]

雌から雄への性転換を行う[5]

食性

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付着生物[2]底生動物などを食べる肉食性[4]。これはイラ属の魚類に共通する[4]

利用

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食用だが、は柔らかく[1][2]、うまく捌けば上品な白身だが、評価は普通[3]または不味[1][2][4]と分かれる。また水っぽいという意見もある[5]。他種と混獲される程度で漁獲量も少なく、あまり利用されない[2]。 刺身、煮つけ[2]などにされる。

名称

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由来

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和名の由来は以下の説がある。

  • 性質が苛々していることから「苛魚」の意という説。
  • イザ(斑紋)の転訛だという説。

地方名

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地域によって、いろいろな名前で呼ばれる。(以下、五十音順。カッコ内は呼ばれる地域、もしくは漢字表記。) 名前からテンスアマダイブダイカンダイと混同されていることがわかる。

アマ[1]和歌山県太地町)、アマダイ[1]甘鯛)、イザ(斑紋)、イソアマダイ[1](和歌山県)(磯甘鯛)、イダ、オキノアマダイ[2](沖甘鯛)カンダイ[1][2]東京)、カンノダイ[1]、クジ、ケサ(静岡県沼津)(袈裟)、コス、コンス、タツ(愛知県一色)、テス[1][2]和歌浦鳥羽高知[5]、テスコベ[1]三重県尾鷲)、ナベ()、ナベワリ(鍋割)、ハト[1]福岡県志賀島)()、ハトノメ(愛知県熱田)(鳩の目)、バンド[1]愛媛県愛南町)、ブダイ(武鯛)、ベルト(愛媛県愛南町)、ホテイ(神奈川県江ノ島)(布袋)、モクズ[1]富山県)(藻屑)、モブシ[1](和歌山県雑賀崎)(藻伏魚)、モムシなど数多い。

脚注

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa 阿部,1987,p.711(No.2841)
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t 木村,2000,p181
  3. ^ a b c d e f 小西,2011,p.232
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 岡村・尼岡,1997,p.464-465
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n 蒲原・岡村,1985,p.68(No.334,Plate.67)

出典

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  • 阿部宗明『原色魚類大圖鑑』(初版)北隆館、1987年11月25日、711頁。ISBN 4832600087 
  • 木村義志『フィールドベスト図鑑7 日本の海水魚』(初版)GAKKEN、1998年8月4日、181頁。ISBN 4054011217 
  • 小西英人『釣魚1400種図鑑』(初版)エンターブレイン、2011年3月28日、232頁。ISBN 9784047271807 
  • 岡村収・尼岡邦夫『山溪カラー名鑑 日本の海水魚』山と溪谷社、1997年8月20日、464-465頁。ISBN 9784635090278 
  • 蒲原稔治・岡村収『原色日本海水魚類図鑑Ⅰ』保育社、1985年7月31日、68頁。ISBN 4586300728 

関連項目

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