インガム (巡視船)
USCGC インガム | |
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USCGCインガム (1965年撮影) | |
基本情報 | |
建造所 | フィラデルフィア海軍造船所 |
運用者 | アメリカ沿岸警備隊 |
艦種 | カッター |
級名 | トレジャリー型 |
モットー |
Never too old to serve (仕えるに老い過ぎたることなし) |
艦歴 | |
発注 | 1934年1月30日 |
起工 | 1935年5月1日 |
進水 | 1936年6月1日 |
就役 | 1936年9月12日 |
退役 | 1988年5月27日 |
その後 | 博物館船として保存 |
要目 | |
排水量 | 2,700 トン |
全長 | 327 ft(100 m) |
最大幅 | 41 ft(12 m) |
主缶 | バブコック・アンド・ウィルコックスボイラー×2基 |
主機 | ウェスティングハウス2段減速ギアード蒸気タービン×2基 |
出力 | 6,200shp(4,600 kW) |
推進器 | 2軸推進 |
最大速力 | 21 ノット(39 km/h;24 mph) |
燃料 | 147,000 ガロン(556,456 L) |
航続距離 | 8,270海里(15,320km) |
乗員 | 120 - 300名(時期により差異あり) |
兵装 |
竣工時: Mk 7 5インチ単装砲×2基 6ポンド礼砲×2基 1ポンド礼砲×1基 第二次世界大戦時: Mk 12 5インチ単装砲×2基 40mm連装機銃×3基 20mm単装機銃×8基 爆雷投下軌条 爆雷投射機(K砲) 最終時: Mk 12 5インチ単装砲×1基 12.7mm単装機銃×2基[1] |
搭載機 | グラマンJF ダック水上機(のち撤去) |
レーダー | SC-2、SGA(1945年) |
ソナー | QC(1945年) |
その他 |
アメリカ合衆国国家歴史登録財(1992年4月27日指定)[2] アメリカ合衆国国定歴史建造物(1992年4月27日指定)[3] 艦番号:WPG-35(1941年7月1日) WAGC-35(1944年7月24日) WHEC-35(1965年5月1日) |
インガム(USCGC Ingham, WPG/WAGC/WHEC-35) は、アメリカ沿岸警備隊のカッター。トレジャリー型。艦名は第9代アメリカ合衆国財務長官サミュエル・インガムに因む。「インガム」の名を持つカッターとしては四代目。
インガムはアメリカ沿岸警備隊史上最多の勲章を授与され、また殊勲部隊章を唯一二度受章した武勲めでたい船として知られている。
インガムは現在フロリダ州キーウェストで博物館船として保存されており、アメリカ合衆国国定歴史建造物およびアメリカ合衆国国家歴史登録財に指定されている。
船歴
[編集]1934年1月30日にアメリカ合衆国財務省によって結ばれた建造契約に基づき、インガムは1935年5月1日にフィラデルフィア海軍造船所で起工、1936年6月3日に姉妹船ウィリアム・J・デュアンとロジャー・B・トーニーと共に進水した。インガムは同日キャサリン・インガム・ブラッシュによって当初の船名である「サミュエル・D・インガム」(USCGC Samual D. Ingham)と命名され、1936年9月12日に就役した。その後インガムは1937年5月に「インガム」(USCGC Ingham)に改名されている。
第二次世界大戦
[編集]第二次世界大戦が勃発すると、インガムは他の沿岸警備隊カッターと同様に船団護衛任務に就いた。インガムは多数の船団を護衛する中で、悪天候、ドイツ海軍のUボート、そして敵機と戦いながら、イギリスを支える各種物資を運ぶ輸送船を守った。
1942年12月15日、船団護衛中だったインガムはドイツの潜水艦U-626を撃沈した[4] 。さらに1944年以降、インガムは上陸作戦における指揮艦として活動し太平洋戦域で3つの戦いに参加した。インガムはUボートを撃沈したアメリカ艦艇で最後まで現役であった艦だった。
戦後
[編集]朝鮮戦争勃発後は、1950年から1953年にかけて朝鮮半島沿岸へ展開し、海上封鎖のための哨戒活動に従事した[5]。
1966年8月、インガムはアメリカ東海岸で冒険家のウィリアム・ウィリスを救助し、アルゼンチア沿岸警備隊管区へ彼を送り届けた[6]。
インガムはその後1968年8月3日から1969年2月28日にかけてベトナム戦争へ派遣されたが、その間シーローズ作戦(Operation SEA LORDS)とスウィフト・レイダー作戦(Operation SWIFT RAIDER)での活動から殊勲部隊章2個を授かった。
ベトナムでの活動を終えた後にインガムは通常の沿岸警備隊における任務へ戻り、退役する1988年まで活動した。当時インガムの50年以上にわたる現役期間は、航行可能なアメリカの艦艇ではマサチューセッツ州ボストンで保存されているフリゲートコンスティチューションに次ぐ2番目に古い記録であった[2]。
保存
[編集]インガムは1989年にサウスカロライナ州マウントプレザントのパトリオッツ・ポイントが所有権を獲得した。2009年8月20日まで、インガムの傍らには空母ヨークタウンと駆逐艦ラフィー、 潜水艦クラマゴアも同様に保存されていた。
2009年8月20日にインガムはサウスカロライナ州ノースチャールストンの沿岸警備隊埠頭へ曳航され、小規模な修理のために乾ドック入りを待つことになった。ノースカロライナ州デチェンス造船所の乾ドックで短い修理期間を過ごした後、インガムはフロリダ州キーウェストへ曳航され2009年11月24日に到着した。インガムは現在キーウェスト海事記念博物館(Key West Maritime Memorial Museum)の一部である[7][8]。
沿岸警備隊長官(Commandant of the Coast Guard)は、インガムを第二次世界大戦とベトナム戦争で命を落とした沿岸警備隊員たちの国立記念館であると宣言している。インガムの後甲板には、戦死した912名の沿岸警備隊員の名前が刻まれた記念碑が設置されている[9]。
インガムは1992年4月27日にアメリカ合衆国国定歴史建造物とアメリカ合衆国国家歴史登録財にそれぞれ指定された[2][10]。
栄典
[編集]インガムは現役期間で以下の勲章を受章した。
- 殊勲部隊章・・・2個
- 沿岸警備隊殊勲部隊章・・・2個、「O」記章付き[11]
- 沿岸警備隊記念殊勲部隊章・・・2個
- 沿岸警備隊Eリボン・・・3個
- 中国従軍勲章
- アメリカ国防従事勲章・・・「A」記章付き
- アメリカ戦役勲章
- ヨーロッパ-アフリカ-中東戦役勲章・・・従軍星章2個付き
- アジア-太平洋戦役勲章・・・従軍星章3個付き
- 第二次世界大戦戦勝勲章
- 国防従軍勲章・・・星章1個付き
- ベトナム従軍勲章・・・戦役星章(campaign star)3個付き
- 人道支援勲章
- 沿岸警備隊特殊作戦従軍リボン
- フィリピン殊勲部隊章
- ベトナム共和国勇敢十字殊勲部隊章
- フィリピン解放リボン・・・星章1個付き
- ベトナム共和国戦役勲章
出典
[編集]- ^ https://jamesdelgado.com/wp-content/uploads/2017/07/USCGC-Ingham-NHL.pdf 2018年7月30日閲覧。
- ^ a b c “USCGC Ingham”. National Historic Landmark summary listing. National Park Service. 27 March 2008閲覧。
- ^ National Park Service (23 January 2007). "National Register Information System". National Register of Historic Places. National Park Service.
{{cite web}}
: Cite webテンプレートでは|access-date=
引数が必須です。 (説明) - ^ Cressman, Robert (2000). “Chapter IV: 1942”. The official chronology of the U.S. Navy in World War II. Annapolis: en:Naval Institute Press. ISBN 978-1-55750-149-3. OCLC 41977179 15 December 2007閲覧。
- ^ http://www.maritimerestoration.com/naval/uscg_ingham.php 2018年7月30日閲覧。
- ^ Willis, William The Hundred Lives of an Ancient Mariner London 1967 pp174,188
- ^ “Historic cutter en route to Miami”. The State (Columbia, South Carolina: The McClatchy Company). (22 August 2009). オリジナルの24 August 2009時点におけるアーカイブ。 23 August 2009閲覧。
- ^ “USCGC Ingraham WHEC-35”. Patriots Point Naval & Maritime Museum. 23 August 2009閲覧。[出典無効]
- ^ “HNSA Web Page: USS Ingham”. 28 March 2008閲覧。
- ^ Delgado, James P. (1 November 1991). “Maritime Heritage of the United States NHL Theme Study—Large Vessels Registration: Ingham / U.S. Coast Guard Cutter Ingham (WPG-35)” (pdf). en:National Park Service. 27 June 2009閲覧。 and
“Accompanying three photos, exterior, from 1944, 1953, and 1990”. 2 September 2012閲覧。 - ^ http://www.uscg.mil/history/WEBCUTTERS/Ingham_WPG_35.asp
外部リンク
[編集]- ウィキメディア・コモンズには、インガム (巡視船)に関するカテゴリがあります。
- US Coast Guard Cutter Inham WHEC-35