ウィーンの謝肉祭の道化
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『ウィーンの謝肉祭の道化』または『ウィーンの謝肉祭の騒ぎ』(独語:Faschingsschwank aus Wien)作品26 はロベルト・シューマンが1839年に作曲した全5曲から構成されるピアノ曲。「幻想的絵画」(Phantasiebilder)という副題が与えられている。同時期の作品に『フモレスケ』がある。
概要
[編集]シューマンは1838年の秋から翌1839年の3月にかけてウィーンに滞在していたが、同地では謝肉祭が行われており、その謝肉祭での体験に触発されたシューマンは、そこでの賑やかさなどの様子を幻想的に描写して本作を作曲した(なお、シューマンはこの曲を「ロマンティックなショーピース」と呼んでいた)。5曲のうちの4曲は滞在中の1839年(3月以前)に作曲され、最後の1曲はライプツィヒに帰郷した同年の3月以降(または1840年の初め頃)に書かれている。
出版は1841年にウィーンのブライトコプフ・ウント・ヘルテル社より。楽譜はシナモン・ド・シールに献呈された。
構成
[編集]全5曲で構成される。演奏時間は約23分。単なる描写的作品ではなく、シューマンは当初「ロマンティックな大ソナタ」と名付けようとしていたように、変則的で自由なソナタとしても見て取れる。
- 第1曲 アレグロ(Allegro)
- 変ロ長調、4分の3拍子。「きわめて生き生きと(Sehr Lebhaft)」の指示。「アレグロ」とタイトルが付けられているが、速度を示すものではなく、楽曲の内容を表すものとして付けられている。フランス風のロンド形式による。5つのエピソードが挿入され、このうち第4のエピソードはフランス国歌の『ラ・マルセイエーズ』が一部用いられている。コーダは第2のエピソードによって閉じられる。
- 第2曲 ロマンス(Romanze)
- ト短調、4分の2拍子。「かなりゆっくりと(Ziemlich Langsam)」の指示。3部形式による。全体は25小節の短い楽曲だが、叙情的な旋律によって始まる。中間部はハ長調(4分の3拍子)である。
- 第3曲 スケルツィーノ(Scherzino)
- 変ロ長調、4分の2拍子。「A-B-A-C-A」のロンド形式による。軽快なスケルツォで、明るい民謡風な旋律とリズムの主題が主要な動機となる。
- 第4曲 間奏曲(Intermezzo)
- 変ホ短調、4分の4拍子。「大いに精力を込めて(Mit Größter Energie)」の指示。16分音符による音型的伴奏が装飾風に一貫して置かれた楽曲。書法はメンデルスゾーンの『無言歌』と似ている。
- 第5曲 フィナーレ(Finale)
- 変ロ長調、4分の2拍子。「きわめて元気よく(Höchst Lebhaft)」の指示。ソナタ形式による。第1主題は激しい動きによるトッカータ風な音型。レガートの経過部の後、第2主題(ヘ長調)が現れ、展開部は第1主題を主体にして扱われる。コーダはプレストで力強く終える。