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オーバードライブ・レーシング

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
半身不随となった元ライダーのイシドル・エステべ・プジョルのトヨタ・ハイラックスT1

オーバードライブ・レーシング(Overdrive Racing)は、ベルギーリエージュ州ヴィレ・ル・ブイエに本拠を置くレーシングチーム。ラリーレイドの四輪競技で活動を行っている。

沿革

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グレゴワール・ド・メビウスと、メビウスやブルーノ・ティリーフランソワ・デュバル、クリストフ・ホロウチェックのナビだったベルギー人のジャン=マルク・フォーティンが2006年に創設。2005年ダカール・ラリーで、フランス日産と組むチーム・ドスードから参戦したが、割り当てられた車の出来が良くなかったのが設立のきっかけであるという[1][2][3]

現在ダカール・ラリー世界ラリーレイド選手権のグループT1(四輪自動車のプロトタイプ)とグループT3(SxSのプロトタイプ)の2部門に渡って参戦しており、2022年ダカールには149名のスタッフを現場に送り込んで、11台のT1車両と4台のT3車両を運用した[4]

グループT1

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クリストフ・ホロウチェック/ジャン=マルク・フォーティン組の日産・ナバラ(2010年)
マレク・ダブロウスキー/ヤチェク・チャコール組のトヨタ・ハイラックス(2014年)

設立直後は南アフリカで日産チームを運用していたホールスピードが製造する、日産・ナバラを運用した[5]。2009年には総合4-5位、グループT1ガソリン車クラスで1-2フィニッシュを果たした[6][7]

2012年からホールスピードがトヨタに鞍替えしたのをきっかけに、オーバードライブもトヨタ・ハイラックスを運用するようになり[8]、以降はトヨタ本隊に次ぐ別働隊として、必要に応じて本隊を支援しつつ参戦を続けている。またオーバードライブは初期から開発・製造・物流・人材面で強力にトヨタをサポートし、カスタマーへの車両供給およびメンテナンスも担当している[9]。トヨタは2019・2022・2023年にダカールを制覇し、2022・2023年のW2RC(世界ラリーレイド選手権)でも3冠を獲得した。

オーバードライブ・トヨタとしてダカールに参戦した主なドライバーはナニ・ロマヤジード・アル=ラジヤクバ・ポリゴンスキー、ルシオ・アルバレス、オーランド・テラノバクリスチャン・ラビエル、イシドル・エステべ、ベルナルド・テン・ブリンケ、エリック・ファン・ルーンがいる。またサッカーチーム監督のアンドレ・ビラス・ボアスも2018年ダカールで二輪から転向する際にオーバードライブから参戦した[10]

2022年にアル=ラジ、2023年はルーキーのルーカス・モラエスがそれぞれオーバードライブのハイラックスで総合3位表彰台を獲得した。また本隊のナッサー・アル=アティヤも、クロスカントリーラリー・ワールドカップにはオーバードライブ名義でエントリーし、タイトルを獲得している[11]

2023年にはレベリオン・レーシングロマン・デュマとアレクサンドロ・ペシ)にも2台のGRダカールハイラックスT1+を納車し[12]、さらにデュマにはナビのマックス・デルフィーノの推薦も行った[13]

グループT3

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オーバードライブは軽量プロトタイプ(グループT3)部門用バギーの「OT3」を開発。カーボンファイバーケブラーの高剛性ボディワークを備えた重量890kgのボディに、6速トランスミッションと177馬力/290Nmの1,000cc 直列3気筒ターボエンジン(製造元は不明だが、一説にはフォルクスワーゲン製)を組み合わせる。ヘッドライトはポラリス・RZRのものを流用している。ナッサー・アルアティヤもテストを行った[14][15]

OT3は2020年から始まった『レッドブル・オフロード・ジュニアプログラム』のマシンとなり[16]、指導役のシリル・デプレ、若手のミッチェル・ガスリーJr.、ブレイド・ヒルデブランドがドライブ。ガスリーJr.はステージ3勝、ヒルデブランドはステージ2勝を挙げた。デプレはエンジントラブルを起こしたガスリーJr.にエンジンを譲ってリタイアした[17]

2021年はガスリーJr.、セス・キンテロクリスティーナ・グティエレス・エレーロが参戦。グティエレスは女性としてはユタ・クラインシュミット以来となるステージ勝利[18]を3回記録したがステージ8でギアボックストラブルによりリタイア[19]。キンテロは当時の史上最年少ステージ勝利記録(18歳118日、2年後にエリック・ゴツァルが更新)を達成してステージ6勝を挙げて才能を示したが、総合では4位に終わった。

2022年はグティエレス、キンテロに加えてWRCウィナーのアンドレアス・ミケルセン、グレゴワールの子ギヨーム・ド・メビウスが加入。メビウスのナビはトラック部門優勝経験を持つベルギー人のトム・コルソウルが就く予定だったが、Covid-19陽性反応により急遽アメリカ人のケロン・ウォルチが就任した[20]。かつてオーバードライブのチームマネージャーを務めた、スコット・エイブラハム率いるサウス・レーシングCan-Amとの一騎打ちとなった。キンテロは怒涛のステージ勝利連発で13ステージ中12ステージを制覇し、ピエール・ラルティーグが1994年に記録していた最多ステージ勝利記録(16ステージ中10勝)を更新した[21]。キンテロが唯一落としたステージ2はメビウスが勝利していたため[22]、OT3は全ステージ勝利という圧巻ぶりであったが、それゆえに信頼性の問題が大きくクローズアップされた年でもあった。メビウスはステージ1[20]、キンテロはステージ2でメカニカルトラブルに見舞われて序盤早々に勝負権を失い[20]、ミケルセンもステージ2でステアリングトラブルが発生。メビウスに助けられるが、このステージで横転しロールケージ破損でリタイア[20]。メビウスもステージ5でラクダ草に衝突したのが原因でリタイアに終わり、またしても優勝は果たせなかった。唯一グティエレスは総合3位完走で、彼女もステージ3でメカニカルトラブルによりストップしたものの[20]、女性としては前年のカメリア・リパロティに続く表彰台となった。この年開幕の世界ラリーレイド選手権(W2RC)でも毎戦表彰台を獲得し、キンテロとメビウスが一勝ずつを挙げたが、タイトルは逃した。

2023年は相次ぐ信頼性の問題が原因でレッドブルとの契約が終了となり[23]、メビウスが立ち上げたGラリーチームとして参戦。メビウスと南アフリカ人のエベニーザー・バッソンの2台のみとなる。晴れてコルソウルがメビウスのナビとなり、メビウス車はオールベルギー体制での参戦となった。メビウスはステージ10まで首位を快走し、OT3の速さが本物であることを示したが、ステージ11で弱点の信頼性の低さがまたしても露呈し1時間半をロス[24]。それでもメビウスは3位で終え、キャリア初の表彰台を獲得した。W2RC最終戦ラリー・デュ・マロックでメビウスはオーバードライブ製のT1+のハイラックスへ乗り換え、オランダの実業家であらゆる部門からの参戦経験を持つキース・クーレンがOT3をドライブした。FIA欧州バハ・カップではギヨームの兄ギスラン・ド・メビウスがOT3を駆り、サウス・レーシングのジョアン・ディアスと同点・同勝利数で並んだが、2位の回数で下回り惜しくもタイトルを逃した[25]

2024年ダカールのミッション1000クラスに、日本6社(トヨタ・ホンダ・スズキ・ヤマハ・川崎重工業・カワサキモータース)で構成する水素小型モビリティ・エンジン研究組合(HySE)が製造する水素エンジンのマシンが参戦することが表明されたが、これのベース車両供給及びチーム運用をオーバードライブが担うこととなった[26]

脚注

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  1. ^ Teamoverdrive Racing公式サイト 2023年8月15日閲覧
  2. ^ Interwiev to our friend Jean Marc Fortin
  3. ^ Overdrive, son boulot au quotidien
  4. ^ Jean-Marc Fortin, le patron de l’équipe belge Overdrive, confiant avant le départ du Dakar (vidéo)
  5. ^ South African teams preview
  6. ^ 【ダカール09】日産 ナバラ がクラス1-2フィニッシュ、総合4-5位
  7. ^ South African Nissan Navaras Finish Fourth, Fifth and 20th on Dakar Rally
  8. ^ Story behind SA's racing Hilux export
  9. ^ OVERDRIVE AND HALLSPEED JOIN FORCES TO RUN 10 TOYOTA HILUXES IN GRUELLING DAKAR RALLY
  10. ^ Portugal’s Ruben Faria switches from two wheels to navigate football star
  11. ^ [1]
  12. ^ Dakar 2023 – Romain Dumas voit la vie en bleu avec Rebellion
  13. ^ Romain Dumas
  14. ^ [2]
  15. ^ RACING Red Bull Announces New OT3 Prototype Race Vehicle, Possibly Testing New RZR?
  16. ^ レッドブル、フォーミュラに続いてラリーレイドでも若手を発掘へ。2020年から育成プログラム始動
  17. ^ シリル・デプレ:チームの栄光を支える陰の英雄
  18. ^ Seth Quintero Arrives To Dakar Rally Rest Day With Stage Win And P3 Overall
  19. ^ [https://www.automobilsport.com/varela-top-gearbox-problems-gutierrez-dakar-rally-ss8---218078.html DAKAR RALLY Stage 8 from Sakaka to Neom Monday, January 11th 2021]
  20. ^ a b c d e Just In Time For Rest Day
  21. ^ Red Bull’s Seth Quintero Shatters Dakar Off-Road Records
  22. ^ Dakar 2022 - Stage 2 | A happy hunting ground for Barreda and Loeb
  23. ^ Cristina Gutiérrez tiene la competencia en casa en el nuevo Red Bull Can-Am Factory Team
  24. ^ Dakar 2023 - Stage 11 | On a comeback mission
  25. ^ Krzysztof Holowczyc headlines FIA European Bajas champions THE CHECKERD FLAG 2023年11月7日閲覧
  26. ^ 日本の技術を結集してダカール2024挑戦! カワサキ、スズキ、ホンダ、ヤマハ、トヨタの共同で水素エンジン車を投入へ Motorsports.com 2023年10月19日閲覧

関連項目

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