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コメツキムシ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
コメツキムシ
サビキコリ属の一種 Agrypnus murinus
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: コウチュウ目(鞘翅目) Coleoptera
亜目 : カブトムシ亜目 Polyphaga
上科 : コメツキムシ上科 Elateroidea
: コメツキムシ科 Elateridae
和名
コメツキムシ
英名
Click beetle
下位分類(亜科)
擬死行動をとるコメツキムシ

コメツキムシ(米搗虫、叩頭虫)は、昆虫綱コウチュウ目に属するコメツキムシ科に属する昆虫の総称である[2]。和名をコメツキムシとする種はない。

仰向けにすると、自ら跳ねて元に戻る能力がある小型甲虫。米をつく動作に似ていることからこの名前がある。ただしベニコメツキ属など跳ねないものもいる[2]

特徴

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Pyrearinus termitilluminans の幼虫が居候するシロアリ塚で発光する。ブラジル、ゴイアス州ミネイロス英語版にて。

比較的硬い体の甲虫。外見的にはタマムシ類にも似ている。体型としては幅が狭く、縦長で腹背にやや扁平。小さい方は1ミリメートルほどのものから8センチメートルに達するものまであり、日本ではウバタマコメツキCryptalaus berus)やヒゲコメツキなどが3センチメートル程度になるのが大きい方である。

頭部はまっすぐ前を向き、口器は小さいがしっかりした噛む口となっている。触角は先細りの単純な形のものが多い。中には節ごとに突き出して鋸歯状や羽状になった例もあり、日本ではヒゲコメツキが立派な触角を持つことで有名。

胸部と腹部は幅広くつながる。前翅は後方に狭まる。体色は全体に単純で地味なものが多く、黒から褐色のものが多い。しかし熱帯では金属光沢を持っているものもあり、日本では八重山諸島に産するヨツモンオオアオコメツキなどはその例である。また多様な色や斑文を持つものもある。日本ではベニコメツキが真っ赤な前翅を持つのでよく目立つ。主に中南米に生息するヒカリコメツキ類[注 1]は、多くが胸部の背側に1対の発光器を有する[3]

生態

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コメツキムシには普段は草や低木の上などに住む種が多い。石の下に住むものもいる。天敵に見つかると足をすくめて偽死行動をとる(世に言う「死んだふり」)。その状態で、平らな場所で仰向けにしておくと跳びはね、腹を下にした姿勢に戻ることができる。(胸-腹の関節を曲げ、胸を地面にたたきつけると誤解されるが、頭-胸を振り上げている。地面に置かず手に持つことで確認できる。(昆虫の構造については昆虫へ))この時はっきりとパチンという音を立てる。英語名のClick beetleはクリック音を出す甲虫を意味する。

天敵などの攻撃を受けてすぐに飛び跳ねる場合もある。これは音と飛び跳ねることによって威嚇していると考えられている。この行動をとらないコメツキムシ科の種も存在する。

幼虫の多くは土壌性で、細長い円筒形で硬く、光沢のある茶色をしているものが多い。腐植質を食べるものや、他の虫を食べるものがいる。栽培植物の根や地下茎などを食害する種もおり、農業や園芸関係では一般に「ハリガネムシ」と呼んで防除の対象にしている。大根ジャガイモなどの害虫として知られるマルクビクシコメツキMelanotus fortnumi)、クロクシコメツキMelanotus senilis)、クシコメツキMelanotus legatus)、トビイロムナボソコメツキAgriotes ogurae fuscicollis)、コガネコメツキSelatosomus puncticollis)等の幼虫がこれにあたる。標準和名ハリガネムシと呼ばれているのは、類線形動物門に属しコメツキムシと全く異なる生物である。

ヒカリコメツキ類は夜になると自動車のヘッドライトのように連続発光するが、その目的は敵の威嚇と考えられており、刺激を与えることによっても発光する[3]ブラジルエマス国立公園で発見された Pyrearinus termitilluminans の幼虫はシロアリ塚に棲みつきしながら発光し、初めて「光るシロアリ塚」のことが記録された1850年以来、複数の旅行者たちから関心の的とされてきた[4]が、この発光に関してはシロアリなどが光に集まる習性を利用しておびき寄せ、捕食するためのものであると考えられている[5][3]

分類

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世界で約10000種[2]、日本で約700種が知られる[6]。一部を記した。なお、種名など、科以下の分類群名はコメツキムシの前に様々な修飾がつくが、コメツキムシの「ムシ」は省略して記するのが普通。

クシヒゲムシダマシ亜科 Cebrioninae

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Cebrio gigas

クシヒゲムシダマシ亜科[7]Cebrioninae Latreille1802)は、Cebrio 属をタイプ属とする分類群[8]旧北区産の下位分類は Sánchez-Ruiz & Löbl (2007) による。

サビキコリ亜科 Agrypninae

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サビキコリ亜科[10][11][12]Agrypninae Candèze, 1857[13]。分類情報は Kundrata et al. (2019:87–123) に従う。

キバネクシヒゲホタルモドキ [サビキコリ亜科 Drilini 族]
フタモンウバタマコメツキ [サビキコリ亜科 Hemirhipini 族]
Drasterius bimaculatus [サビキコリ亜科 Oophorini 族]
Vesperelater arizonicus (Hyslop, 1918) [サビキコリ亜科 Pyriophorini 族]

亜科 Tetralobinae

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Tetralobinae Laporte1840。2011年の時点ではサビキコリ亜科下の一族とされていたこともあった[70]。分類は Kundrata et al. (2016:130–132) に従う。

亜科 Thylacosterninae

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Balgus tuberculosus。ブラジルはミナスジェライス州ベロオリゾンテのマンガベイラス公園にて。

Thylacosterninae Fleutiaux, 1920。分類は Vahtera, Muona & Lawrence (2009) に従う。

ヒゲブトコメツキ亜科 Lissominae

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ヒゲブトコメツキ亜科[73]Lissominae Laporte1835)。分類情報は Kundrata et al. (2019:123–126) に従う。

亜科 Oestodinae

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Oestodinae Hyslop, 1917。1917年に暫定的に亜科 Pyrophorinae 下の一族 (Oestodini) として設けられ[78]、その後ヒゲブトコメツキ亜科のシノニムとされていた[79]が、分子系統学研究の結果2016年に下記2属からなる亜科として復活させられた[80]

亜科 Campyloxeninae

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ムネピカコメツキ (図155) とサビキコリ亜科 Pyrophorini 族 (図156-160) の後翅の比較。ムネピカコメツキにのみ楔状の中室が存在。

Campyloxeninae Costa, 1975(ウィキスピーシーズ)[81]。分類情報は Kundrata et al. (2019:121–122) に従う。

ムネピカコメツキ サビキコリ亜科
Pyrophorini 族
つめの基部近くの剛毛が ない ある
後翅(うしろばね)に状の中室が ある ない
発光器 前胸にはあるが、腹部にはない 前胸や腹部に存在
中胸腹板: mesosternum)のくぼみ ほぼ水平 正弦波

亜科 Pityobiinae

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京都府レッドデータブック (2002) ではPectocera属のヒゲコメツキがこの亜科のものとして扱われ、「オオコメツキ亜科」とされているが、分子系統学的研究の結果、2016年に下記の2属のみからなる亜科とされ[80]Kundrata et al. (2019:129–130) もこれに準じている。

カネコメツキ亜科 Dendrometrinae

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カネコメツキ亜科[11][85]Dendrometrinae Gistel, 1848)。属よりも上位の分類は Bouchard et al. (2011) および簡易的に Kundrata et al. (2019:85) で示されているものによる。

ミズギワコメツキ亜科 Negastriinae

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ミズギワコメツキ亜科[10]Negastriinae Nakane & Kishii, 1956)。旧北区産の下位分類は特記の無い限り Cate et al. (2007:186–194) に従う。

コメツキムシ亜科 Elaterinae

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コメツキムシ亜科[161]Elaterinae Leach[162]1815)。分類は特記のない限り Bouchard et al. (2011:52, 316–318)、Cate et al. (2007)(主に旧北区における分布情報も含む)に従う。

ハナコメツキ亜科 Cardiophorinae

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ハナコメツキ亜科[10]Cardiophorinae Candèze, 1859)は、Cardiophorus をタイプ属とする分類群[240]旧北区産の属以下の分類は Cate et al. (2007:194–) に従う。

亜科 Hemiopinae

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クビマルキコメツキ [亜科 Hemiopinae]

Hemiopinae Fleutiaux, 1941東半球にのみ分布[247]。属の分類は Kundrata et al. (2019:122–123) に従う。旧北区産の属以下の分類および分布情報は Cate et al. (2007:186) による。

亜科 Physodactylinae

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Physodactylinae Lacordaire1857。分類は Kundrata et al. (2019:128–129) に従う。

亜科 Subprotelaterinae

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Subprotelaterinae Fleutiaux, 1920Kundrata et al. (2019:130) は以下の1属のみからなるとしている。

亜科 Morostominae

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Morostominae[251] Dolin, 2000 は、Morostoma Candèze, 1879 をタイプ属とする亜科[252]

亜科 Parablacinae

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Parablacinae Kundrata, Gunter, Douglas & Bocak, 2016。2016年に新設された亜科で、その際は以下のうち Sharon 属を除くオーストララシア産の属のみで占められていた[80]。分類は Kundrata et al. (2019:127–128) に従う。

亜科 Plastocerinae

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かつては独立の科フサヒゲムシ科[9]Plastoceridae Crowson1972)とされていた[254]が、分子系統学的研究の結果2018年にコメツキムシ科の一亜科 Plastocerinae とされた[255]

亜科 Omalisinae

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Omalisus fontisbellaquaei(撮影地: イタリア)

かつては独立の科 Omalisidae Lacordaire1857 とされていた[256]が、ゲノム解析の結果2018年にコメツキムシ科の一亜科 Omalisinae とされた[257]

亜科 Sinopyrophorinae

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Sinopyrophorus schimmeli

Sinopyrophorinae Bi, He, Chen, Kundrata & Li, 2019(ウィキスピーシーズ)。2019年に以下の新属と共に新設[259]

脚注

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注釈

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  1. ^ 「ヒカリコメツキ (類)」の用語は少なくともサビキコリ亜科英語版 PyrophoriniPyrophorus属およびPyrearinus属の総称として用いられる。
  2. ^ 大平 (1962) は「ヒラタコメツキ亜科 (Athoinae)」のものとして扱っている。
  3. ^ a b マレーシア産の Oxynopterus 属の複数種に 「ミナミオオヒゲコメツキ」の和名があてられており、たとえば ブシャー (2016:333) は O. candezei に対して、海野, 福井 & 法師人 (2023:133) は O. auduoin に対して用いている。
  4. ^ a b 大平 (1962) は「ヒラタコメツキ亜科 (Athoinae)」のものとして扱っており、Cate et al. (2007) は族 Ctenicerini の下に置いている。
  5. ^ Cate et al. (2007:179) は Poemnites 属下の亜属としていたが、翌年に出版された Catalogue of Palearctic Coleoptera 第5巻、p. 24 において、独立属とされた。
  6. ^ Bouchard et al. (2011:316) は族 Quasimusini 下の亜族 Quasimusina Schimmel & Tarnawski, 2009 のタイプ属としている。
  7. ^ a b Cate et al. (2007:118) は Agriotes (Agriotes) subvittatus Motschulsky, 1860 の亜種として掲載し、いずれも少なくとも日本に分布するとしている。
  8. ^ 大平 (1962) は「ムナボソコメツキ亜科 (Agriotinae)」のものとして扱っている。
  9. ^ 大平 (1962) は「ナガコメツキ亜科 (Elaterinae)」のものとして扱っている。
  10. ^ 大澤 (2023:6–7) は Nipponolater 属としている。
  11. ^ 2007年の時点では中国(福建省浙江省湖北省)にも分布するとされていたが、Liu, Prosvirov & Jiang (2021) は従来の中国における報告を誤同定によるものと見做している。
  12. ^ 大平 (1962) は「ニセクチブトコメツキ属」として言及している。

出典

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参考文献

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ラテン語・フランス語
フランス語
日本語
英語

関連文献

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