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サンザシ属

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
サンザシ属
Crataegus ambigua
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: バラ目 Rosales
: バラ科 Rosaceae
亜科 : ナシ亜科 Maloideae
: サンザシ属 Crataegus
学名
Crataegus
英名
haws
hawthorn
quickthorn
thornapple
May-tree
whitethorn
hawberry
  • 本文参照

サンザシ属(サンザシぞく)は、バラ科の属の一つ。

日本では、中国から持ち込まれた Crataegus cuneataサンザシとして良く知られる。 ヨーロッパアジア北アメリカなど、北半球の温帯に分布する。アメリカミズーリ州の州花。英国では5月に花が咲くことから、メイフラワーとして知られる[1]。英語で hawthorn(ホーソーン)とよばれるものは、垣根に使うトゲのある樹という意味があり、haw(ホー)は古い英語で haga (垣根)を、 thorn(ソーン)はトゲを意味する語からなる[1]

果実は、生薬、健康食品、ドライフルーツ、生食、菓子の材料などに用いられる。

分布・種

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サンザシ属は大半が北半球の温帯地域に広く分布する[2]。交雑しやすい特性から、過去に記録された種は1000種を超える。ヨーロッパの原産種が20種、中国の原産種は18種あるが、北米では膨大な野生種が見られ原種がはっきりしない。現在は約140種がサンザシ属として分類されている[3]。 その多様性ゆえ、分類が疑わしい種類がある。またナシ亜科ではなく、シモツケ亜科に分類すべきという意見もある[4]

この属の多くの種はアポミクシスである。

日本の自生種としては、クロミサンザシオオバサンザシの二種を数えるだけで、前者は北海道と長野県、後者は北海道の根室地方に見られる[2]

特徴

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Crataegus punctataの花

落葉性の灌木であり、多くのがある[3]。樹高は、多くは2 - 3メートルの灌木であるが、セイヨウサンザシは数メートルに達する[2]。春に白い花をたくさん咲かせ、ピンク色を帯びたものもある[5]。その後小さな果実を実らせる。果実は1 - 5個の種子を含む。葉と共に野生動物昆虫の食料となる。

実生か接木で容易に増やすことが出来る。特にザイフリボク属ナナカマド属との接木の相性が良い。

利用

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サンザシ属は園芸と果実の利用のために古くから家庭で栽培されてきた。ヨーロッパでは生命力の強さの象徴とされるとともに、不快な花の香りによって、玄関先のリース飾りやメイポールなどの魔除けに使用されている[3]

生薬

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Crataegus scabrifoliaの乾果

サンザシ、オオミサンザシの果実の干したものは、生薬名で山査子(さんざし)といい、消化吸収を助ける作用がある。加味平胃散(かみへいいさん)、啓脾湯(けいひとう)などの漢方方剤に使われる。

セイヨウサンザシの果実や葉は、心悸亢進、心筋衰弱などの心臓病に使われる[6]。また、現代のハーブ療法では、動脈硬化症の原因となる血管壁の蓄積物を軽減する作用があるとしている[3]

ロシア語でサンザシはバヤーリシュニクБоярышник)と呼ばれる。アルコールエタノール)に浸潤して薬用成分を抽出したチンキが製造され[7]、薬局で販売されている[8]。入浴剤[9][10]やスキンローション[11]といった薬用品として流通されているが、これらの薬用品は安価な代用酒として飲用もされている[11][12]。エタノールの代わりに有毒なメタノールを用いた不正規品による被害も生じており、2016年12月にはイルクーツクを中心に多数の中毒死者が出、当局が非常事態を宣言した[9][10][11]

サンザシ酒

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味は甘酸っぱく、一部の中華料理店などでは、中国酒として供されている。またオランダに本社を置くボルスデ・カイパーなどのリキュールメーカーからは、スロー・ジンSloe Gin)リキュールとして販売されている。

ドライフルーツ

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果実を潰して、砂糖や寒天などと混ぜ、棒状に成形して乾燥させたものが多い。中国では、「山査子餅」(シャンジャーズビン)(Haw flakes)という円柱状に成形した後、薄くスライスして10円玉のような形状にしたものも多く、酢豚の様な料理に入れる場合もある。

菓子

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中国では「山査子餅」の他、「山査子糕」(シャンジャーズガオ)という平たい羊羹状の菓子も作られている。中国ではこの菓子を酢豚の酸味付けに使うこともある。

また竹串などに刺して、をかけた「冰糖葫芦」(ビンタンフール)という、りんご飴の様な駄菓子も街角で売られている。

テホコテス

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Crataegus pubescensの果実はメキシコではテホコテスと呼ばれ、生あるいは調理してよく食される。また、ジャムキャンディの材料としても一般的。同属で最も活用されている種と言える。

主な種

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代表的な改良品種

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脚注

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  1. ^ a b 辻井達一 2006, p. 72.
  2. ^ a b c 辻井達一 2006, p. 70.
  3. ^ a b c d ジョンソン et al. 2014, pp. 122–125.
  4. ^ Phipps, J.B.; Robertson, K.R.; Smith, P.G.; Rohrer, J.R. (1990). A checklist of the subfamily Maloideae (Rosaceae). Canadian Journal of Botany. 68(10): 2209–2269.
  5. ^ 辻井達一 2006, pp. 71–72.
  6. ^ Pittler MH, Guo R, Ernst E (2008). “Hawthorn extract for treating chronic heart failure”. Cochrane Database Syst Rev Jan 23 (1): CD005312. PMID 18254076. 
  7. ^ 一例として、ИНСТРУКЦИЯ: для медицинского применения препарата Боярышника настойка (Tinctura Crataegi)” (ロシア語). Частное Предприятие «ЯН». 2016年12月28日閲覧。
  8. ^ За «Боярышник» и валокордин будут сажать” (ロシア語). Газета.Ru. 2016年12月28日閲覧。
  9. ^ a b 酒の代わりに入浴剤飲み49人死亡 ロシア・イルクーツクで非常事態宣言”. ハフィントン・ポスト (2016年12月20日). 2016年12月28日閲覧。
  10. ^ a b ロシア:入浴剤飲み48人死亡 酒代わり、粗悪品出回る”. 毎日新聞 (2016年12月20日). 2016年12月28日閲覧。
  11. ^ a b c 酒代わりに偽の化粧品飲み48人死亡 ロシア”. 朝日新聞 (2016年12月20日). 2016年12月28日閲覧。
  12. ^ ロシア人はなぜローションを飲んだのか パンに靴墨も?”. 朝日新聞 (2016年12月27日). 2016年12月28日閲覧。

参考文献

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  • レベッカ・ジョンソン、スティーブン・フォスター、ティエラオナ・ロウ・ドッグ、デビッド・キーファー 著、関利枝子、倉田真木 訳『メディカルハーブ事典』日経ナショナル ジオグラフィック社、2014年。ISBN 9784863132726 
  • 辻井達一『続・日本の樹木』中央公論新社〈中公新書〉、2006年2月25日、70 - 72頁。ISBN 4-12-101834-6 

関連項目

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外部リンク

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