ジェラルドの汚れなき世界

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ジェラルドの汚れなき世界
ジェスロ・タルスタジオ・アルバム
リリース
録音 1971年12月 ロンドン モーガン・スタジオ
ジャンル プログレッシブ・ロック
時間
レーベル イギリスの旗クリサリス・レコード
アメリカ合衆国の旗リプリーズ・レコード
プロデュース イアン・アンダーソン
専門評論家によるレビュー
チャート最高順位
  • 1位(アメリカ[1]
  • 3位(オランダ[2]、ノルウェー[3]
  • 5位(イギリス[4]
  • 64位(日本[5]
  • ゴールドディスク
    ゴールドRIAA
    ジェスロ・タル アルバム 年表
    アクアラング
    (1971年)
    ジェラルドの汚れなき世界
    (1972年)
    リヴィング・イン・ザ・パースト
    (1972年)
    テンプレートを表示

    ジェラルドの汚れなき世界』(原題:Thick as a Brick)は、イギリスプログレッシブ・ロックバンドジェスロ・タル1972年に発表した5作目のスタジオ・アルバム。アルバムのA面/B面を通じて、タイトル曲のみ収録という構成のコンセプト・アルバムとして制作された。

    背景[編集]

    前作『アクアラング』(1971年)が批評家からコンセプト・アルバムとみなされたことから、バンドは本気でコンセプト・アルバムを制作することにした[6]。本作のコンセプトは、モンティ・パイソンから影響を受けている[6]

    8歳の少年ジェラルド・ボストックが書いた詩に基づいているという設定だが、ボストックは架空のキャラクターで[7]、実際にはイアン・アンダーソンが作詞した。なお、アンダーソンは後年、自身のソロ・アルバム『Thick as a Brick 2: Whatever Happened to Gerald Bostock?』(2012年)でもボストックの人生を描写している[7]。マーティン・バー[注釈 1] によれば、ソングライティングのクレジットには反映されていないが、実際にはバーも作曲に関与し、更に本作ではジョン・エヴァンの貢献も大きかったという[9]

    バンドの初代ドラマー、クライヴ・バンカーは結婚を理由にバンドを脱退し、後任としてバリモア・バーロウが加入した[10]

    本作は短期間で制作され、アンダーソンが2012年のインタビューで語ったところによれば、10日ほどで曲作りとリハーサルを終え、10日ほどモーガン・スタジオに入り、それから数日ミキシングを行って完成したという[11]

    ジャケット[編集]

    オリジナルLPのジャケットは、12ページの新聞を模したギミック付きの見開きジャケットとなっていた[12]。メンバーのうちイアン・アンダーソン、ジェフリー・ハモンド、ジョン・エヴァンが記事を執筆し、アルバム本編よりもジャケットの制作の方が長期に及んだ[6]

    2001年発売の紙ジャケットCD(TOCP-65883)はオリジナル・ジャケットのミニチュア仕様となり、12ページの新聞も再現された。また、40周年記念デラックス・エディション盤には100ページ以上の冊子が付属し、オリジナルの新聞も全ページ転載されている[13]

    反響[編集]

    バンドの母国イギリスでは、1972年3月18日付の全英アルバムチャートで初登場8位となり[14]、その後最高5位を記録して、自身5作目の全英トップ10アルバムとなった[4]。アメリカのBillboard 200では初の1位獲得を果たし[1]、1972年5月にはRIAAによりゴールドディスクに認定された[15]

    評価[編集]

    Bruce Ederはオールミュージックにおいて5点満点中4.5点を付け「遊び心と深遠さと冒険が同居し、それでいて聴き手を捩じ伏せない、輝かしい力作」と評している[16]。『ローリング・ストーン』誌が2015年に選出した「オールタイム・グレイテスト・プログ・ロック・アルバム50」では7位にランク・イン[17]

    ライヴにおける演奏[編集]

    本作リリースに伴うツアーでは、間にコメディの寸劇を挟む形でアルバムが完全再現された[6]。その後のライヴでも本作からの抜粋が演奏され、1978年のヨーロッパ・ツアーの模様を収録したライヴ・アルバム『ジェスロ・タル・ライヴ』には、12分に及ぶヴァージョンが収録されている[18]。また、本作の1997年のリマスターCDには、1978年のマディソン・スクエア・ガーデン公演で録音された11分のライヴ・ヴァージョンがボーナス・トラックとして収録された[19]

    イアン・アンダーソンは2012年のソロ・ツアーで本作を完全再現し[20]、6月22日のレイキャヴィーク公演の模様は映像作品『Thick as a Brick - Live in Iceland』に収録された。

    収録曲[編集]

    全曲とも作詞・作曲:イアン・アンダーソン/編曲:ジェスロ・タル。ただし、クレジット上はアンダーソンとジェラルド・ボストックの共作となっている。

    1. ジェラルドの汚れなき世界(パート1) "Thick as a Brick, Part I" – 22:39
    2. ジェラルドの汚れなき世界(パート2) "Thick as a Brick, Part II" – 21:07

    1997年リマスターCDボーナス・トラック[編集]

    1. "Thick as a Brick (Live at Madison Square Garden 1978)" – 11:47
    2. "Interview with Jethro Tull's Ian Anderson, Martin Barre and Jeffrey Hammond=Hammond" – 16:28

    2012年リマスターCDボーナス・トラック[編集]

    1. "1972 Radio Ad" – 0:59

    他メディアでの使用例[編集]

    イアン・アンダーソンは2001年、現代自動車のテレビCM用に本作の抜粋ヴァージョンを再録音した[21]。ただし、実際にオン・エアされたヴァージョンは編集されており、アンダーソン自身が意図した構成とは若干異なっている[22]

    2006年には、テレビアニメ『ザ・シンプソンズ』シーズン17のエピソード「数学は女の敵?」においてジェスロ・タルのオリジナル・ヴァージョンが使用された[23]

    参加ミュージシャン[編集]

    脚注[編集]

    注釈[編集]

    1. ^ フランス系をルーツとし姓の表記は“Barre”のため、日本では“バレ”と読まれることも多いが、イギリス人であり“バー”と発音するのが正しい[8]

    出典[編集]

    1. ^ a b Jethro Tull - Awards”. AllMusic. 2016年7月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年9月17日閲覧。
    2. ^ dutchcharts.nl - Jethro Tull - Thick As A Brick
    3. ^ norwegiancharts.com - Jethro Tull - Thick As A Brick
    4. ^ a b JETHRO TULL | Official Charts Company - 「Albums」をクリックすれば表示される
    5. ^ 『オリコンチャート・ブックLP編(昭和45年‐平成1年)』(オリジナルコンフィデンス/1990年/ISBN 4-87131-025-6)p.160
    6. ^ a b c d Thick As A Brick”. Jethro Tull Official Website. 2017年9月17日閲覧。
    7. ^ a b Eisen, Benjy (2012年4月4日). “Q&A: Jethro Tull's Ian Anderson On His 'Thick As a Brick' Sequel”. Rolling Stone. 2015年6月23日閲覧。
    8. ^ マーティン・バー、ジェスロ・タルのデビュー50周年を祝うライヴ作を発表【前編】”. 2021年3月31日閲覧。
    9. ^ Lalaina, Joe (2015年11月17日). “Jethro Tull Guitarist Martin Barre Talks Guitars, Jimi Hendrix and "Aqualung"”. Guitar World. Future plc. 2019年12月16日閲覧。
    10. ^ Eder, Bruce. “Jethro Tull Biography”. AllMusic. 2015年6月23日閲覧。
    11. ^ Schlansky, Evan (2012年2月2日). “Jethro Tull's Ian Anderson On Thick As A Brick 2, The Grammys And More”. American Songwriter. ForASong Media, LLC. 2015年6月23日閲覧。
    12. ^ Jethro Tull - Thick As A Brick (Vinyl, LP, Album) at Discogs
    13. ^ Blum, Jordan (2013年3月12日). “Looking Back (and Forward) on Jethro Tull's 'Thick As a Brick'”. PopMatters. 2015年6月24日閲覧。
    14. ^ Official Albums Chart Top 50 |12-03-1972 - 18-03-1972 | Official Charts Company
    15. ^ RIAA公式サイト内SEARCHABLE DATABASE - 引用符付きの"THICK AS A BRICK"と入力して検索すれば表示される
    16. ^ Eder, Bruce. “Thick as a Brick - Jethro Tull”. AllMusic. 2015年6月23日閲覧。
    17. ^ Jethro Tull, Thick as a Brick' (1972) - 50 Greatest Prog Rock Albums of All Time”. Rolling Stone (2015年6月17日). 2015年6月23日閲覧。
    18. ^ Eder, Bruce. “Bursting Out: Jethro Tull Live - Jethro Tull”. AllMusic. 2019年12月16日閲覧。
    19. ^ Jethro Tull - Thick As A Brick (CD, Album) at Discogs
    20. ^ Dunham, Nancy (2012年4月28日). “Jethro Tull's Ian Anderson Takes 'Thick as a Brick' on the Road”. Ultimate Classic Rock. Diffuser Network. 2015年6月23日閲覧。
    21. ^ Thick as a Brick by Jethro Tull”. Songfacts. 2019年12月16日閲覧。
    22. ^ Braidis, Peter (2010年4月1日). “Backstage Pass: Jethro Tull's Ian Anderson”. Goldmine. F+W. 2015年6月23日閲覧。
    23. ^ "The Simpsons" Girls Just Want to Have Some Sums (TV Episode 2006) - Soundtracks - IMDb

    外部リンク[編集]

    先代
    ロバータ・フラック『ファースト・テイク』
    Billboard 200 ナンバーワン・アルバム
    1972年6月3日 - 6月16日
    次代
    ローリング・ストーンズメイン・ストリートのならず者