コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

タトラKT3UA

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
タトラKT3Rから転送)
タトラT3 > タトラKT3UA
タトラKT3UA
KT3UA(キーウ
基本情報
種車 タトラT3
改造所 クエーサー・プラス、パルス・ノヴァ
改造年 2004年 -
改造数 16両
投入先 キエフ・ライトレールクルィヴィーイ・リーフ・メトロトラム
主要諸元
編成 3車体連接車
軌間 1,524 mm
電気方式 直流600 V
架空電車線方式
最高速度 65.0 km/h
編成定員 着席54人
立席138人(乗車密度5人/m2時)
車椅子スペース2箇所
車両重量 34.82 t
全長 29,754 mm
車体長 28,650 mm
全幅 2,500 mm
全高 3,515 mm(集電装置含)
車体高 3,075 mm
床面高さ 900 mm(高床部分)
385 mm(低床部分)
固定軸距 1,900 mm
動力伝達方式 直角カルダン駆動方式
主電動機 TVプログレス
主電動機出力 40 kw
出力 320 kw
制御方式 電機子チョッパ制御IGBT素子)
備考 主要数値は[1][2][3][4]に基づく。
テンプレートを表示

タトラKT3UAは、チェコスロバキア(現:チェコ)で製造されたタトラT3を改造する形で製造された3車体連接式路面電車車両ウクライナ各都市の路面電車に導入され、「コブラ」(Кобра)とも呼ばれる[5][2][3]

この項目では、ロシア連邦向けのKT3Rを始めとした、同様の改造によって誕生した3車体連接車についても解説する[2][3][6]

概要・運用

[編集]

ウクライナ各都市の路面電車では、車両の近代化に際して新型電車の購入費用を抑えるため、既存の路面電車車両の車体改修、機器更新に加え、台車を流用し新造した車体や機器と組み合わせる機器流用車の導入が積極的に行われている。その中で、1996年に設立されたチェコ輸送用機器メーカーであるクエーサー・プラス(KVAZAR Plus s.r.o.)は、旧東側諸国へ向けて大量生産が行われたタトラT3を改造した3車体連接車KT3UAウクライナに向けて展開している[5][2][3]

改造元となるのは2両のタトラT3で、車体・車内の改修やデザインを変更した先頭部・後部の新造に加え、前方の車両は後部を、後方に繋がる車両は先頭部を切断し、連節幌の装着などの改造が行われる。この両車体の間には乗降扉付近が低床構造となっている新造中間車体が挿入され、3車体連接車が完成する。電気機器もチェコ・セゲレツ(Cegelec)[注釈 1]が展開するIGBT素子を用いた電機子チョッパ制御方式TVプログレス(TV Progress)に交換され、回生ブレーキも搭載される。これらの改造内容はウクライナ特許庁による特許を得たものであり、独立国家共同体で用いられるGOST規格に基づき部品の一部にはウクライナ製のものが使用される[2][3]

2004年から改造が始まり、最初の2両はシュコダの子会社であるパルス・ノヴァ(Pars Nova a.s.)で改造が行われたが、以降の車両はクエーサー・プラスと導入先の事業者によって実施されている。2020年現在、キエフ市電キエフ・ライトレール)に14両(401 - 414)、クルィヴィーイ・リーフ・メトロトラムに2両が導入されている[1][8][9]

関連・発展形式

[編集]

KT3R

[編集]
KT3R

ロシア連邦首都モスクワの路面電車であるモスクワ市電に導入された、KT3SUと同型の3車体連接車。新造された車体部分はクエーサー・プラスとパルス・ノヴァが手掛け、電気機器はセゲレツ製のTVプログレスが用いられ、最終組み立てはタトラT3の修繕・更新を主に手掛ける路面電車修理工場ロシア語版(ТРЗ)で実施された。1両のみ製造され、2007年から営業運転を開始した。新造された超低床電車の大量導入に伴い2024年現在は営業運転から撤退しているものの、保存運転が可能な状態が維持されている[6][10][11][12][13][14]

K3R-NNP "カシュタン2"

[編集]

ウクライナ首都キーウを走るキーウ市電に導入された3車体連接車で、先に導入された部分超低床電車・カシュタン(Каштан)にちなみ「カシュタン2」(Каштан-2)と呼ばれる。中間車体に加えて前後車体の中間車体寄りの乗降扉付近も低床車体となり、全長は31 m、総定員数は「カシュタン」(148人)の2倍以上の300人となっている。車内には冷暖房が完備され、安全対策のため監視カメラも搭載されている。最終組み立てはキエフ電気輸送工場(Киевского завода электротранспорта、КЗЭТ)によって行われた[注釈 2][5][15][16][17]

2012年末に製造され、試運転を経て翌2013年8月から営業運転を開始し、2020年現在1両が在籍する[16][17]

K3 KVP Od "オデッセイ・マックス"

[編集]
K3 KVP Od "オデッセイ・マックス"

ウクライナオデッサ公共交通を運営するオデッサゴルエレクトロトランス(Одессгорэлектротранс)は、2019年11月20日からオデッサ市電3車体連接車K3 KVP Od[注釈 3]を営業運転に投入した。中間車体の乗降扉付近は低床構造になっており、全長31 mはK3R-NNPと並んでウクライナの路面電車車両で最長である。定員数は280人(着席62人)で、GPS機能が搭載されているためリアルタイムで車両の位置を追跡する事が出来る。前面に部分超低床電車・オデッセイ(Одиссей)で用いられた独自の流線形デザインが採用されている事から、"オデッセイ・マックス"(Одиссей-Макс)と言う愛称で呼ばれている[5][19][18][20]

車体や連接機器、乗降扉の開閉装置はクエーサー・プラスが製造を手掛け、機器もTVプログレスが用いられた一方、2両のタトラT3から供出した台車を含む最終組み立てはオデッサ市電の修理工場で行われたため、導入費用は72,6000米ドル分に抑えられている[注釈 4][21]

2020年以降増備が続いており、2022年ロシアによるウクライナ侵攻下においても4両目(4067)の製造が実施されている[19][21][22]

K3R-NT

[編集]
K3R-NT

チェコプルゼニ市電向けに、パルス・ノヴァで4両が生産された3車体連接車。改造内容はKT3UAと同様だが、前面形状はタトラT3の原型が保たれており、運転台部分には空調が完備されている[23]

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 2001年まではGECアルストムが製造を手掛けていた[7]
  2. ^ ただし実際の組み立てはキエフパストランス(Киевпасстранс)が実験的に行っている。
  3. ^ 形式名を「K3R-N KVP」とする資料も存在する[18]
  4. ^ 同様の超低床電車を新造した場合、およそ150万ドルが必要となる。

出典

[編集]
  1. ^ a b Владислав Христофоров (2020年1月2日). “ВДарницьке трамвайне депо у Києві продовжує отримувати “Кобри”” (ロシア語). Національний Промисловий Портал. 2020年2月14日閲覧。
  2. ^ a b c d e Trams of the Ukrainian production” (英語). allbiz. 2020年2月14日閲覧。
  3. ^ a b c d e Licenční výroba” (チェコ語). KVAZER Plus s.r.o.. 2020年2月14日閲覧。
  4. ^ Tramvaj KT3UA REKONSTRUKCE A MODERNIZACE” (チェコ語). Pars Nova a.s.. 2007年11月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年2月14日閲覧。
  5. ^ a b c d Антон Лягушкин (2018年9月20日). “Как обновляются трамвайные парки в городах Украины” (ロシア語). Пассажирский транспорт. 2020年2月14日閲覧。
  6. ^ a b Трёхсекционный сочленённый вагон с низкопольной секцией КТ3R” (ロシア語). Трамвайно-ремонтный завод. 2009年7月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年2月14日閲覧。
  7. ^ Harry Hondius (2008年9月3日). “Cegelec alive to world-wide expansion”. Railway Gazette. 2020年2月14日閲覧。
  8. ^ KT3UA” (チェコ語). Pars Nova a.s.. 2012年10月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年2月14日閲覧。
  9. ^ Radim Klement; Libor Hinčica (2013). “Nízkopodlažní tramvaje T-3UA-3 v Kyjevě”. Československý dopravák (1): 36–41. 
  10. ^ Модернизация вагонов Татра Т3” (ロシア語). Трамвайно-ремонтный завод. 2009年7月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年2月14日閲覧。
  11. ^ В «Мосгортрансе» отремонтируют троллейбусы, а трамваи дооборудуют стоп-сигналами” (ロシア語). TR.ru (2018年1月27日). 2020年2月14日閲覧。
  12. ^ “Pars nova a.s. tramvaj KT3R v Moskvě”. ACRI News: 6. (2007-4). https://adoc.tips/200747e0eaecbbfbdbdb4226d479d21d7dd373228.html 2020年2月14日閲覧。. 
  13. ^ The Anniversary of the Moscow Tram”. HSE University. 2024年4月11日閲覧。
  14. ^ Moscow: 200 new trams and a parade for the 125th anniversary of tramway system”. Urban Transport Magazine (2024年4月10日). 2024年4月11日閲覧。
  15. ^ Výroba nových tramvají” (チェコ語). KVAZER Plus s.r.o.. 2020年2月14日閲覧。
  16. ^ a b В Киеве представили трамвай Каштан-2 на 300 пассажиров” (ロシア語). AUTO-Consulting (2013年5月30日). 2020年2月14日閲覧。
  17. ^ a b В тендере на 5 трамвайных кузовов для Одессы соревнуются "Татра-Юг", "КЗЭТ" и завод кранов из Калуша” (ロシア語). Пассажирский транспорт (2016年5月6日). 2020年2月14日閲覧。
  18. ^ a b ВВ Одессе вышел на маршрут самый длинный трамвай в Украине (фото)” (ロシア語). Odessa Online (2019年11月20日). 2020年2月14日閲覧。
  19. ^ a b Новые трамваи на улицах Одессы (ФОТО)” (ロシア語). Пассажирский транспорт (2019年10月11日). 2020年2月14日閲覧。
  20. ^ V ODĚSE MAJÍ NOVOU TŘÍČLÁNKOVOU TRAMVAJ K3R-N” (チェコ語). Československý Dopravák (2019年9月19日). 2020年2月14日閲覧。
  21. ^ a b Odissey Max: Longest Tram in Ukraine to Open” (英語). UA TV (2019年11月8日). 2020年2月14日閲覧。
  22. ^ Александр Вельможко (2022年4月8日). “Життя продовжується: в Одесі під час війни збудували новий трамвай (ФОТО, ВІДЕО)”. Пассажирский Транспорт. 2022年4月11日閲覧。
  23. ^ K3R-NT” (チェコ語). Pars Nova a.s.. 2012年10月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年2月14日閲覧。

外部リンク

[編集]