タンザワヒゴタイ
タンザワヒゴタイ | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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分類(APG IV) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
Saussurea hisauchii Nakai (1931)[1] | |||||||||||||||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
タンザワヒゴタイ(丹沢平江帯)[5] |
タンザワヒゴタイ(丹沢平江帯、学名:Saussurea hisauchii)は、キク科トウヒレン属の多年草[5][6]。別名、トゲキクアザミ[1][6]。
特徴
[編集]茎は直立し、高さは50-80cmになる。茎に翼があるか、または無く、上部で1-3回分岐する。根出葉はふつう花時には存在しない。茎の下部につく葉は草質、葉身は卵形から三角状卵形で、縁に粗い鋸歯がある。葉身の先端は尾状に伸び、基部は心形になり、葉柄は上部で翼がつくか、または無い[6]。
花期は8-9月。頭状花序は茎先または枝先に2-9個、多いときは20個が散房状から円錐状にまばらにつく。総苞は長さ12-14mm、径5mmになる狭筒形になる。総苞片は6列あって圧着し、緑色で、総苞片間にくも毛があり、総苞外片は卵形で、先端はとがるが尾状とはならない。頭花は筒状花のみからなり、花冠は淡紅紫色になる[6]。
分布と生育環境
[編集]日本固有種[7]。本州の中部地方から関東地方の丹沢山地、金時山、愛鷹山に分布し、山地の夏緑林の林縁や林間の岩石混じりの草地に生育する[6]。
名前の由来
[編集]和名タンザワヒゴタイは、「丹沢平江帯」の意で、タイプ標本の採集地が神奈川県丹沢山地であることに由来する。植物学者中井猛之進 (1931) による命名である[5][8]。
種小名(種形容語)hisauchii は、タイプ標本を採集した植物学者の久内清孝への献名。久内清孝は、新種となる標本を丹沢山地の塔ノ岳と山梨県の三つ峠で採集した[5][8]。なお、中井 (1931) による「日鮮産ひごたい属ノ智識ヘ一寄與」中、「丹澤とうひれん」とある[8]のは、同一号の原著論文中にあるとおり「丹澤平江帯」 Tanzawa-Higotai の誤りである[5]。
種の保全状況評価
[編集]国(環境省)および都道府県のレッドデータブック、レッドリストの選定はない。
ギャラリー
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総苞は狭筒形になる。総苞片は6列あって圧着し、緑色で、総苞片間にくも毛があり、総苞外片は卵形で、先端はとがるが尾状とはならない。
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葉の表面。茎の下部につく葉は草質、葉身は卵形から三角状卵形で、縁に粗い鋸歯がある。葉身の先端は尾状に伸び、基部は心形になる。葉身の側面はバイオリン状に湾入しない。
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葉の裏面。
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葉柄は茎に下がって、上部で翼がつく。翼が目立たない個体もあるという。
分類の混乱
[編集]本種は、久内清孝が丹沢山地で採集した標本をもとに、中井猛之進 (1931) によって新種 Saussurea hisauchii Nakai とされた[1]。その後、北村四郎 (1935) は、本種を富士山と天子山地に分布するヤハズヒゴタイ S. triptera Maxim.の変種とし、S. triptera Maxim. var. hisauchii (Nakai) Kitam. とした[2]。さらに、大井次三郎 (1953) は、ヤハズヒゴタイの品種に格下げし、S. triptera Maxim. f. hisauchii (Nakai) Ohwi とした[3]。また、勝山輝男 (1990、神奈川県立博物館) の調査によると、久内清孝が丹沢山地以外の山梨県の三つ峠で採集した「タンザワヒゴタイ」は、ヤハズヒゴタイとタカオヒゴタイ S. sinuatoides Nakai の雑種群であったという[9]。勝山 (1990) は、「丹沢産のものを TYPE指定したにもかかわらず,多くの記述が(三つ峠産の)CO-TYPEに基づいて書かれてしまったために,タンザワヒゴタイの分類は混乱してしまった」と記述している[9]。
別名のトゲキクアザミは、フランスの植物学者サヴァティエが箱根で採集したものを、フランスの植物学者フランシェ (1897) が、種 S. spinulifera Franch. として記載したもので、和名は後に牧野富太郎・根本莞爾 (1925) がつけた。勝山 (1990) は、「おそらく Franchet の記載より記述し,その内容からトゲキクアザミと名付けたものと思われる」としている[9]。北村四郎 (1935) は、本種をヤハズヒゴタイの変種とした際にも、トゲキクアザミ S. spinulifera Franch. は、「相模、金時山、愛鷹山」に分布し、「頭花は多数、茎葉底は截形又は契形」として別の種として扱っている[10]。しかし、北村 (1978) がパリ自然史博物館で S. spinulifera Franch. のタイプ標本を調査したところ、それは「箱根の金時山頂のものにあてていた」トゲキクアザミではなく、日本に普通に分布するキクアザミ S. ussuriensis Maxim. であったという[11]。勝山 (1990) は、本種とトゲキクアザミを同一の種とした[9]。
現在は、本種の学名は S. hisauchii とし[1][6][7]、分類表内のシノニムはシノニムとして扱っている[1]。和名は「タンザワヒゴタイ」が標準和名で、「トゲキクアザミ」は別名扱いである[1][6]。
脚注
[編集]- ^ a b c d e f タンザワヒゴタイ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ a b タンザワヒゴタイ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ a b タンザワヒゴタイ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ タンザワヒゴタイ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ a b c d e T. Nakai「Contributio ad Cognitionem Generis Saussureœ Japono-Koreanæ」『植物学雑誌(Botanical Magazine, Tokyo)』第45巻第539号、東京植物学会、1931年、518頁、doi:10.15281/jplantres1887.45.513。
- ^ a b c d e f g 門田裕一 (2017)『改訂新版 日本の野生植物 5』「キク科トウヒレン属」p.263
- ^ a b 門田裕一 (2011)「トウヒレン属」『日本の固有植物』pp.147-148
- ^ a b c 中井猛之進「日鮮産ひごたい属ノ智識ヘ一寄與」『植物学雑誌(Botanical Magazine, Tokyo)』第45巻第539号、東京植物学会、1931年、533頁、doi:10.15281/jplantres1887.45.539_531。
- ^ a b c d 勝山輝男「トゲキクアザミ(タンザワヒゴタイ)について」『神奈川県立博物館研究報告(自然科学)』第19巻、神奈川県立生命の星・地球博物館、1990年、89-100頁。
- ^ 北村四郎「日本産トウヒレン属の分類及び分布」『植物分類及植物地理(Acta Phytotaxonomica et Geobotanica)』第4巻第1号、植物分類地理学会、1935年、6, 9頁、doi:10.18942/bunruichiri.KJ00001078819。
- ^ 北村四郎「パリー通信」『植物分類,地理(Acta Phytotaxonomica et Geobotanica)』第29巻第1-5号、日本植物分類学会、1978年、126-128頁、doi:10.18942/bunruichiri.KJ00001078291。
参考文献
[編集]- 加藤雅啓・海老原淳編著『日本の固有植物』、2011年、東海大学出版会
- 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 5』、2017年、平凡社
- 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
- T. Nakai「Contributio ad Cognitionem Generis Saussureœ Japono-Koreanæ」『植物学雑誌(Botanical Magazine, Tokyo)』第45巻第539号、東京植物学会、1931年、518頁、doi:10.15281/jplantres1887.45.513。
- 中井猛之進「日鮮産ひごたい属ノ智識ヘ一寄與」『植物学雑誌(Botanical Magazine, Tokyo)』第45巻第539号、東京植物学会、1931年、533頁、doi:10.15281/jplantres1887.45.539_531。
- 勝山輝男「トゲキクアザミ(タンザワヒゴタイ)について」『神奈川県立博物館研究報告(自然科学)』第19巻、神奈川県立生命の星・地球博物館、1990年、89-100頁。
- 北村四郎「日本産トウヒレン属の分類及び分布」『植物分類及植物地理(Acta Phytotaxonomica et Geobotanica)』第4巻第1号、植物分類地理学会、1935年、6, 9頁、doi:10.18942/bunruichiri.KJ00001078819。
- 北村四郎「パリー通信」『植物分類,地理(Acta Phytotaxonomica et Geobotanica)』第29巻第1-5号、日本植物分類学会、1978年、126-128頁、doi:10.18942/bunruichiri.KJ00001078291。