コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

トカゲに噛まれた少年

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
『トカゲに噛まれた少年』
作者カラヴァッジョ
製作年1594–1596年
寸法66 cm × 49.5 cm (26 in × 19.5 in)
所蔵ロベルト・ロンギ財団 (フィレンツェ)
『トカゲに噛まれた少年』
作者カラヴァッジョ
製作年1594–1596年
寸法66 cm × 49.5 cm (26 in × 19.5 in)
所蔵ナショナル・ギャラリー (ロンドン)

トカゲに噛まれた少年』(トカゲにかまれたしょうねん、伊: Ragazzo morso da un ramarro )は、イタリアバロック期の巨匠、カラヴァッジョによる絵画である。二点のバージョンがあり、どちらもカラヴァッジョの真筆であると信じられている。一点はフィレンツェのロベルト・ロンギ財団にあり、もう一点はロンドンナショナル・ギャラリーに所蔵されている。

制作年

[編集]

どちらのバージョンも、1594年から1596年の期間に制作されたと考えられているが、1596年が妥当なようである。というのは、美術史家のロベルト・ロンギにによると、絵画にはカラヴァッジョの洗練された趣味を持つ後援者フランチェスコ・デル・モンテ枢機卿の家で描かれた初期の作品に共通するあらゆる要素がありからであり、カラヴァッジョは、1595年のある時期まで[1]、枢機卿の家であるマダーマ宮に入らなかったからである。

モデルの特定

[編集]

カラヴァッジョの初期のすべての作品と同様に、多くは推測の域を出ず、モデルが誰であるかについて議論されてきた。 一つの仮説は、モデルはカラヴァッジョの仲間であり、当時の他のいくつかの絵画のモデルになったマリオ・ミンニーティであるというものである。ふわふわした巻き毛の黒い髪とすぼめた唇はマリオに似ているが、『果物籠を持つ少年』や『占い師』などの他の作品では、マリオは本作品ほど女性的には見えない[2]

マイケル・フリードは、代案として、本作はカラヴァッジョの偽装した自画像であると述べた。フリードは、モデルの手(片方を伸ばし、もう片方を持ち上げている)は、絵画を描いているときにパレットを持っている画家の手と同じような位置にあると主張している[3]

象徴

[編集]

レナード・ J. スラットケスによると、本作の象徴性は、有毒のサンショウウオが神に打ち勝つというアポロ・サウロクトノスのテーマに由来している可能性がある。また、さまざまな果物の配置は「四大気質」を示唆しており、サンショウウオは、カラヴァッジョの時代には火の象徴であった。サンショウウオはまた、男根の意味合ももある。この絵画は、マルティアリスの叙事詩に触発されたのかもしれない。 その一節に、「君に向かって這っている、このトカゲを救いたまえ、悪童よ、トカゲは君の指の間で死にたいのだ。」[4][5] というのがある。

様式

[編集]

気取ったポーズは、カラヴァッジョが本作で行った実験の必然的な結果であったのかもしれない。モデルが本物の驚きを表すことが不可能で、同じポーズをかなりの間。保持しなければならなかった状況で、激しい感情(驚きと恐怖)を観察して記録するという実験である。カラヴァッジョは現実からのみ描くと主張したが、このことを批判する人々は、後に画家の制作方法に付随する、この限度を指摘することになる。画家の制作方法は、動きや暴力を伴う場面ではなく、激情的だとしても驚くほどリアルな静的構図に適していた。カラヴァッジョが現実からのみ描くことに付随する問題を完全に克服しえたのは、現実よりも想像力を活かして制作をしたように見える後の時期になってからである。それにもかかわらず、『トカゲに噛まれた少年』は、画家の初期の重要な作品である。というのは、『果物を剥いている少年』や『病めるバッカス』などの初期の作品に見られる、空気の存在しないような静けさの表現から脱却しつつあることを示しているからである。そして、『トランプ詐欺師』などに見られる、潜在的には激しい動きの表現ではあっても、実際には動きの停止状態でしかないものからも脱却しつつあることを示しているからである[3]

影響

[編集]

ロベルト・ロンギが最初に言及したように、カラヴァッジョはおそらく、ルネサンスの著名な画家、ソフォニスバ・アングイッソラが描いた、『カニに噛まれた少年』から「指を噛む」というモチーフを借用している[6]

参考文献

[編集]
  • Jürgen Müller: "Cazzon da mulo" - Sprach- und Bildwitz in Caravaggios Junge von einer Eidechse gebissen, in: Jörg Robert (Ed.): Intermedialität in der Frühen Neuzeit.Formen、Funktionen、Konzepte 、Berlin / Boston 2017、pp。[180] -214。 [1]

脚注

[編集]
  1. ^ Roberto Longhi (1998), Caravaggio. Ediz. inglese, ISBN 88-09-21445-5 
  2. ^ Fried, Michael (17 August 2010). The Moment of Caravaggio. Princeton University Press. pp. 7–. ISBN 978-0-691-14701-7. https://books.google.com/books?id=LviRBgAAQBAJ&pg=PA7 
  3. ^ a b Fried, Michael (17 August 2010). The Moment of Caravaggio. Princeton University Press. pp. 7–. ISBN 978-0-691-14701-7. https://books.google.com/books?id=LviRBgAAQBAJ&pg=PA7 Fried, Michael (17 August 2010). The Moment of Caravaggio. Princeton University Press. pp. 7–. ISBN 978-0-691-14701-7.
  4. ^ Leonard J.Slatkes "Caravagio's Boy Bitten by a Lizard", in Print Review #5, Pratt Graphics Center 1976
  5. ^ 'Foulmouthed Shepherds: Sexual Overtones as a Sign of Urbanitas in Virgil's Bucolica 2 and 3', by Stefan van den Broeck
  6. ^ Garrard, Mary D. (Autumn 1994). “Here's Looking at Me: Sofonisba Anguissola and the Problem of the Woman Artist”. Renaissance Quarterly 47 (3): 556–622. doi:10.2307/2863021. JSTOR 2863021. http://myweb.rollins.edu/lboles/web%20page/ARH%20335/Articles/Garrard%20Here's%20Looking%20at%20Me%20Sofonisba%20Anguissola%20and%20the%20Problem%20of%20the%20Woman%20Artist.pdf. [リンク切れ]