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パッションフルーツ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
クダモノトケイソウ
パッションフルーツの果実
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 core eudicots
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : バラ上群 superrosids
階級なし : バラ類 rosids
階級なし : rosid I / Fabidae
: キントラノオ目 Malpighiales
: トケイソウ科 Passifloraceae
: トケイソウ属 Passiflora
: クダモノトケイソウ P. edulis
学名
Passiflora edulis Sims (1818)[1]
英名
Passion fruit
パッションフルーツ、(granadilla), purple, raw
100 gあたりの栄養価
エネルギー 406 kJ (97 kcal)
23.38 g
糖類 11.2 g
食物繊維 10.4 g
0.7 g
飽和脂肪酸 0.059 g
一価不飽和 0.086 g
多価不飽和 0.411 g
2.2 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(8%)
64 µg
(7%)
743 µg
0 µg
チアミン (B1)
(0%)
0 mg
リボフラビン (B2)
(11%)
0.13 mg
ナイアシン (B3)
(10%)
1.5 mg
ビタミンB6
(8%)
0.1 mg
葉酸 (B9)
(4%)
14 µg
ビタミンB12
(0%)
0 µg
コリン
(2%)
7.6 mg
ビタミンC
(36%)
30 mg
ビタミンD
(0%)
0 IU
ビタミンE
(0%)
0.02 mg
ビタミンK
(1%)
0.7 µg
ミネラル
ナトリウム
(2%)
28 mg
カリウム
(7%)
348 mg
カルシウム
(1%)
12 mg
マグネシウム
(8%)
29 mg
リン
(10%)
68 mg
鉄分
(12%)
1.6 mg
亜鉛
(1%)
0.1 mg
セレン
(1%)
0.6 µg
他の成分
水分 72.93 g
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。
出典: USDA栄養データベース(英語)

パッションフルーツ: Passion fruit、学名: Passiflora edulis)、和名クダモノトケイソウ(果物時計草)[2]は、アメリカ大陸の亜熱帯地域を原産とするトケイソウ科植物、またはその果実である。

名称

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和名は時計のように見える特徴のある花のトケイソウの仲間で、果実を実らせるであることに由来する[2]。英語では、トケイソウを passion flower と呼ぶことから passion fruit の名がある。なお、この passion は「情熱」の意味ではなく、花の中心が十字架のように見えることから「キリストの受難」を意味する[2]。(詳しくは「トケイソウ#名称」を参照)

本場ブラジルでは maracujá(マラクジャ)と呼ぶほか、ペルーではmaracuya(マラクヤ)、中南米各地で granadilla(グラナディリャ)、ハワイでは lilikoʻi(リリコイ)などと呼ばれ、土地それぞれの栽培品種が流通している。中国語名は西番蓮であるが、近年英語名の「パッション」の当て字+「果」で 百香果(バイシャングオ、拼音: bǎixiāngguǒ)が使われる状況が多いが、前述の「情熱」の意味と誤解されて情熱果(熱情果)と誤訳されることがしばしばある。

日本では沖縄や、鹿児島で栽培されることが多い。

植物学上の特徴と分布

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500種類以上もあるトケイソウ科の仲間で、蔓性常緑多年草[3]。南米を中心に分布している。熟したパッションフルーツの果実は直径5センチメートル (cm) ほどの球状又は卵形で、堅い表皮は滑らかで黄色か濃紫色、赤色など、内部に小さくて堅い種を多く含み、黄色いゼリー状の果肉と果汁がある[2]。果汁及び果肉は強い香気をもつものが多い。果皮が濃い赤紫色をしたもののほか、黄色い果皮のイエローパッションフルーツもある[2]

栽培

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2010年現在では、実を食用とする数十種の中から選抜され品種改良された種が、世界の熱帯から亜熱帯地域の広範囲で栽培されている。ブラジルが最大の生産国で、その周囲の中南米での栽培が主流になっている。近年[いつ?]ミャンマー北部のゴールデントライアングルでケシ(アヘン)の代替作物として栽培が増えており、ヨーロッパ市場へ進出している。また、台湾、インドネシアなど東南アジア圏でも栽培されている。

日本では、別名時計草(トケイソウ)とも呼ばれており、古くは奄美諸島を中心とした南西諸島東京都の島嶼部、鹿児島県沖縄県を中心に栽培されている。栽培面積・生産高ともに鹿児島県が日本一だが、熊本県岐阜県、東京都、長野県栃木県福島県など各地で栽培が盛んになっている。これら栽培はほとんどがハウスを利用したものだが、露地栽培も可能であり、昔から各地で栽培されていた。近年[いつ?]は、千葉県岐阜県でも露地栽培されている[4]

日本国内の栽培はおおむね紫玉、黄玉、中間交配種の3つに分かれ、生食用では甘みの強い紫玉の需要が多い。黄玉は性質強健で果汁の多いものが多く、世界的に加工用原料としての栽培が多い。

生育には一定の温度が必要で、越冬には最低でも4 以上の温度が必要である。亜熱帯植物のわりに高温を嫌い、30 ℃以上の気温が続くと、高温障害を起こし、花芽や未熟果を落下させることがある[5]

開花・受粉から14日で玉伸びを終え、その後45日で完熟、自然落下する。収穫は自然落下したものを回収する(もしくは軽く触れると落下する程度)。蔓ごとに一番花は人工授粉で確実に受粉を行うのが栽培の要諦であり、開花を誘導する技術、多収量の元苗の作り方などにノウハウが形成されている。自然界では、トケイソウ科の花の花粉媒介者はクマバチ類が有力であるケースが多いことが知られ、パッションフルーツの花にもよく訪花し、受粉を手伝っている[6][要ページ番号]

食利用

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甘酸っぱいゼリー状の果肉と、やや固めの小さな種子の部分を食用にする[2]。可食部は果実の大きさからするとさほど多くはないが、芳醇な香りと鮮烈な酸味がある。甘味に比べて酸味が勝る酸っぱい果物であるが、追熟(皮の表面が皺になる程度)すると甘味が増す。食材としてのは6 - 8月ごろとされ、果皮に傷がなく香りが良いものが良品であるが、果皮にしわが出ているものは熟している証拠なので、すぐに食べる分には問題ない[2]。果皮がツルツルしているものは、常温(25℃程度)で3日〜7日ほど、直射日光の当たらない風通しの良い場所において、追熟させると甘味が引き立ち、香りも出てよい[2]

世界の生産量の9割ほどが加工品として利用されており、菓子ジュースの材料として流通している。ケーキペイストリーの具材、ゼリーカクテル用のリキュールシロップなどが作られる。煮詰めて加糖した「希釈用ジュースの素」は東南アジアほか、日本では南西諸島での人気が高い。加工に当たっては、過度に加糖したり、フィリピン産の原産地表示を故意に怠るなどの問題も見られる。

生食の場合は、レモンスカッシュと同じく、果汁を水で割り砂糖を加えて飲んだり、ヨーグルトアイスクリームに入れたり、カクテル材料にしたりする。このほか、果実を半分にカットしゼリー状の果肉をスプーンですくって種ごと食べるが[2]、この場合、種を分離するのは難しいため、通常は種を噛まずに喉ごしを楽しむことになる。酸味が強く、甘味が不足気味なので砂糖をまぶすこともある。

栄養素は、β-カロテンが豊富に含まれていて、体内でビタミンAに変わり老化防止や免疫力の強化に役立つといわれる[2]。高血圧予防の働きがあるカリウム、血流をよくするナイアシン、妊婦によいとされる葉酸なども含まれている[2]

脚注

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  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Passiflora edulis Sims クダモノトケイソウ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年1月28日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 204.
  3. ^ 花図鑑 トケイソウ類”. フラワーパークかごしま. 2024年5月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年7月18日閲覧。
  4. ^ 作物研究所 パッションフルーツ”. 農研機構 (2015年7月24日). 2024年7月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年7月18日閲覧。
  5. ^ 東京都小笠原亜熱帯農業センター (2017年7月3日). “農業センターニュースNo.111”. 東京都小笠原支庁. 2021年12月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年7月18日閲覧。
  6. ^ 日高敏隆(監修)『日本動物大百科10 昆虫III』平凡社、1998年

参考文献

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  • 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編『かしこく選ぶ・おいしく食べる 野菜まるごと事典』成美堂出版、2012年7月10日、204頁。ISBN 978-4-415-30997-2 

関連項目

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